「へぇ!凄いねソラ!
あの量を全部避けちゃうんだ!!」
フランドールが弾幕を撃ちながら、笑う。
オレは、1分間、逃げ切った。
今は、大きな傷はない。
「あ、ぁ、凄いなフランドール、
あれだけ撃って疲れないなんて」
「フランで良いよ!
うん、まだまだ何発でも撃てるからね!!」
地獄か。
だけど、フラン、何かがおかしい。
二律背反、とは違うような、同じなような。
今は、純粋に楽しんでいるのか──?
「じゃ、スペルカード!」
「ッ!!」
フランが光るカードを取り出す。
弾幕ごっこについては、ルーミアに聞いた。
この世界、幻想郷での決闘。
スペルカードは切り札で、特殊な弾幕、
必殺技を意味している。
「″禁忌『クランベリートラップ』″!」
「…………マジかよ」
オレは再び走り出す。
巨大な紫の弾幕が展開され、動きを封じられる。
更に、赤い弾幕がオレに襲いかかる。
弾幕と弾幕の隙間に走りこみ、
スライディングして逃げる。
だが。
「づッ!!」
弾幕は着弾すれば消えるものだが、
彼女の弾幕は速度が速い。
故に、オレの左脇腹が大きく抉られる。
血が吹き出す。
だが、スペルカードは終わった。
「次行くよー?
″禁忌『レーヴァテイン』″!!」
「っ!?」
燃え上がる炎の剣が、フランの手元に現れる。
振り下ろされるそれを転がってよけるが、
「ちっ!」
振り抜かれた剣から、弾幕が放出される。
それを走り、転がり、避ける。
最初から逃げ場などない。
なら、フランが疲れ果てるのを待つしかない。
「それぇっ!!アハハハハッ!!!」
「ぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!」
炎の剣が、右腕を焼き潰した。
「焼け、る、熱っ………」
焼ける、焼ける焼ける焼ける焼ける熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い痛い熱い痛い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い痛い
「───ぁ」
「あれ、コワレちゃッた?
ねーネー、もっト遊んデよー!」
「───」
思考が、出来ない。
「死んジゃうノ?寂しイ、寂シいよ。
もっト、私ニ構っテヨ、遊ンでヨ」
「………え………」
でも、聞こえてしまった。
彼女の声が。
なんで、壊れてるんだ、彼女が。
「オ姉様モ、咲夜モ、ミンナ、
私を怖ガっテ、嫌っテル、
───────死んじゃ、いやだ」
はっきりと、最後の言葉が聞こえた。
「死なないで、もウ、殺したく、ナイ。
逃げテ、逃ゲて、やだ、やダ」
「…………はは」
思考を捨てれば、死ねるだろう。
楽になれる。
だけど。オレは立ち上がれた。
不思議だった。
焼き消えた筈の腕が元に戻っていた。
バカなんだろう、オレは。
なんで、逃げようなんて考えてる。
「目の前で泣いてるフランがいるからさ」
「逃げテ!!」
「逃げないよ。逃げたら、また泣くだろ?
泣き疲れるまで、沢山遊ぼうか、フラン」
オレは、走り出した。
彼女が倒れるまで、付き合ってやろう。
「あ、ハァ♪
″禁忌『フォーオブアカインド』″ぉ!」
フランの眼球がグルリと回り、
狂気に落ちる。
そして、姿が歪む。
「増えた!?」
「「「フッ、アハハハハハハハ!!!」」」
マンガや、ゲームのように上手くは行かないか。
とことん、現実味が増す。
「鬼さん、こちらッ!」
「「「アハハハハハハ!」」」
3人になったフランが弾幕を展開する。
展開された弾幕はその数も3倍。
避けるのはキツくなるが…………
「アハ!?」
「アハハハハハハ!!!」
フラン自身、あれを、制御出来てない。
味方の分身に攻撃が当たり、一体が消滅する。
「鬼さん、こっち、おらぁ!」
「アァ!?」
大きく体を捻り、飛び込んできた
フランの分身の足を蹴り、頭を地面に叩きつける。
某ゲームの物真似CQCだ。
「残りは───」
黙って佇む、フラン。
「凄い、ね。まさか殆ど避けちゃうなんて」
「そろそろ、疲れてくれないかな?」
「次で、最後。遊び、終わらせるわ。
遊んでくれてありがとう、ソラ。
────全部、避けきってみせてね」
フランが泣きながらスペルを切る。
「″QED『495年の波紋』″」
四方八方から、波紋のように広がる弾幕が
次々と放たれる。
走り出して、フランに接近する。
「っ!」
二重の波紋弾幕。
一撃で肉を削ぎ、抉られる。
だからこそ、避ける。
顔を逸らして。
跳躍して。
走って。
しゃがんで。
横からの波紋弾幕。
前方へ跳び、転がって避ける。
止まれば当たらないが、止まってはいけない。
グリュ、と、肩肉の抉られる感触。
「ッッッ!!」
歯を噛んで、走る。
あと、1メートル。
手を伸ばす。
フランも答えようと、伸ばす。
あと、50センチ。
波紋の弾幕が、横から腹を貫いた。
止まれない。
あと10センチ。
足を、腕を貫かれる。
あと、1センチ。
フランが涙を溢しているのが見えた。
「ほらな、遊び疲れたろ?
休もうか。オレが疲れたし」
手を繋ぐ。
オレを狙っていた弾幕は全て消滅し、消えた。