SAMURAI DEEPLY GIN   作:TubuanBoy

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第二話

「かえれ!ガキども」

 

 銀時と分かれて情報収集を始めた神楽と新八は知り合いの警察官のところに来ていた。

 

 場所は新撰組屯所、相手は鬼の副長と謳われた土方十四郎。

 

「そんなこと言わないで教えてくださいよ。

今回は犯人じゃなくて刀の出所を調べたいだけなんですから。」

 

新八の言葉に土方が返した。

 

「なんだ、お前らあの噂に釣られた口か。」

「どういうことです?」

 

「あれはデマだよ。

回収された刀は普通の刀だよ。

しかも、何者かによって折られていたしな。」

 

 その刀は特徴こそ村正に似ていたが、調べても何も出なかった。

 

 しかし、土方は知らない。

 本当に恐ろしい妖刀はただの刀だということ。

 

 ナノマシンの技術を投入した『紅桜』やそれそのものが天人の『草薙』とは違い刀匠が己の技術と魂をすり減らして打った刀はその想いが刀に、そして使用者に乗り移る。

 

 土方は経験上、そう言った妖刀の恐ろしさを知る者だが、彼の刀は折れたわけではなく、乗り移る魂が成仏した事によってその効力を失っていた為、その辺の事情を知らなかった。

 

「もう、いいだろ。

奴ら俺たちの警戒網を尽く回避するから連日走り回ってるんだよ!

お前らガキみたいに暇じゃねぇんだよ。」

 

「…」

 

「さもないと…」

「さもないと?」

 

「この喧嘩の被害額の請求を萬屋に送る事になる。」

 

 気づくと庭が戦争でもあったのではないかという大惨事になっていた。

 

「こぉのぉ!ドSゥゥ!!!」

「クソチャイナァァ!!」

 

 神楽と新撰組一番隊隊長の沖田総悟の最早日常化した喧嘩が繰り広げられていた。

 

「帰らせていただきます…」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 帰り道、神楽は新八に土方との会話の内容を聞いた。

 

「つまり、何にも聞けなかったアル?」

「…いや、そうでもないよ。」

 

 新八は自慢の眼鏡をクイっと上げて語り始めた。

 

「土方さんは奴ら(・・)と言っていた。

つまりは複数犯、もしくは組織的な犯行。

更に警察の警戒網を潜り抜けるって事はかなりの頭脳犯か警察の情報を得られる存在がいるって事。」

 

「だったら尚更捕まえるのは難しそうアル」

 

「でも、探し方は教えてもらったよ。

相手が警察の警戒網をすり抜けるなら僕らはそれ以外を探せばいい。」

 

「………」

「どうしたの?神楽ちゃん?」

 

バシッ!

 

「何すんだよ!痛ったいな!」

 

 突如、新八の頭を叩く神楽。

 

「眼鏡キャラだからってインテリぶるなよキモいんだよ。

 お前は駄眼鏡な眼鏡かけ機で十分アル。」

 

「喧嘩売ってんのか?喧嘩売ってるんだな?

言っておくけど可愛い顔してればなんでも許されると思うなよ。」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 二人が帰り道に仲良く喧嘩している頃、新撰組屯所では沖田と土方が辻斬りの件で話していた。

 

「土方さんも人が悪い。

彼奴らに情報を流して、相手の出方を見るなんて。」

 

「うるせぇ、こちとら今は猫の手も借りたいんだよ。

誰かさんが働かないからな。」

 

立場上、情報を流せない土方が当回しに新八達に

 

「しかも、肝心な話は黙ってるときた。」

 

 土方は言わなかった。

 実は辻斬りの犯人はもう何人も捕まっている。物言わぬ死体として。

 それは警察よりも早く辻斬りを始末している輩がいるという事。

 

 捕まらない辻斬りは二人いる。

 

 民衆を襲う辻斬りと辻斬りを狩る辻斬り。

 

 前者は組織的な反抗である可能性が高く。

 後者はそれさえもわからない。

 

 それもまた捜査を難航させている原因であった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 一方その頃、銀時は前回の辻斬り事件の主犯であったかつての戦友高杉の情報を得るために同じく戦友であり、現在は反政府集団攘夷志士の桂小太郎を訪ねていた。

 

 彼も高杉も派閥・組織は違えど同じ攘夷志士。ならば何かと情報が入ってくるだろう。

 

 しかし、桂の答えは思った内容ではなかった。

 

「残念だが、今回の件に高杉は絡んでいない。」

「たしかかよ。」

 

「お前も知っているだろう、銀時。

奴は春雨と手を組んで今は何処とも知れぬ宇宙にいる。

戻ってきてるとは思えん。

それに今回の事件、攘夷志士は寧ろ被害者だぞ。」

 

「どういう事だ?」

 

「この事件、辻斬りとそれを狩る辻斬りがいることは知っているか?」

 

「いや、知らない。」

「なら良く聞いていけ、まず辻斬りとして一般人を襲っているのは腕が立つこと以外何のつながりも無い幕府の犬や攘夷志士だ。」

 

「おいおい、警察までいるのかよ。」

 

「その中には我々の仲間もいた。

志士とは言え穏健派の彼等がこの様な事をするとは思えない。

 目撃者談も合わせると、薬物か催眠かわからんが鬼の様な凶暴性で錯乱していたらしい。

 

…銀時…まるで以前の辻斬り事件と同じだとは思わんか…」

 

 あの時使われた紅桜の量産型は全て破壊したが、その技術が残っていて、誰か邪な考えを持つものに渡ったのなら見過ごせない。

 

「まるで実験体を野に放っている様に次々に辻斬りが現れている。

後者の辻斬りは別勢力なら妨害、同勢力なら役目を果たした被験体を始末して回っているとか…」

 

「分からないことが多すぎる。

他にいい情報はないのかよ。」

 

「残念ながら今はこれが限界だ。

だが、ツテはある。…かなり危険なツテだがな。」

 

 桂は更なる手がかりを掴むため、より危険で闇の深い場所へと赴くつもりだった様だ。

 

「おい、お前がこの事件でそこまですることは無いだろ。」

「あるさ。」

 

 この事件は紅桜事件が絡んでいる可能性があり、同志も被害を受けている。

 それだけで桂が体を張る理由がある。

 

「行く前に銀時と話せてよかった。

俺にもしものことがあったら皆を頼む。」

 

 それだけの覚悟が桂にはあった。

 

「頼まれてやんねーよ。

俺はもう攘夷志士じゃなぇし、彼奴らはお前を慕って集まった仲間だろ、帰ってくるのがお前の責任だ。」

 

「そうだな。まぁ心配するな。

『逃げの小太郎』と言われた男だぞ、そうそうやられはしない。」

 

 そういうと桂は銀時の前から立ち去った。

 

 

 

 

 この時、桂の身に降り掛かる厄災を誰も知らなかった。

 

********************

 

 合流した萬屋一行はそれぞれが集めた情報をまとめて次なる作戦を考えていた。

 

「人を喰らう鬼に鬼を喰らう鬼…ですか。」

 

 新八は銀時からの情報から辻斬りを鬼と例えた。

 

「……新八ぃ…詩人っぽく言っても何もカッコよくないぞ。」

 

 返しに銀時が茶化すと流石の新八も少し怒った。

 

「だから!なんであんたらさっきから人を小馬鹿にして!」

 

 先程の神楽に続いてひどい言われ様だが、今回は新八が悪いとも取れる。

 

 外道丸なんかのガチの鬼が関わる話ならともかく、『鬼と言われた人間』というワードは銀時にとって言いたくない昔を連想させる為、若干不機嫌になったのだ。

 

「とりあえず今晩から張り込み始めますか。」

 

「そうだな。」

「また、睡眠時間が削られるアル。

寝不足は美容の天敵アル。」

 

 

********************

 

「ZZZzzz」

「て言ってた奴がいの一番で寝てんのな。」

 

 夜になり、作戦を開始した銀時は小川沿いの並木道を見張る様に路地裏に隠れていた。

 

 この場所は辻斬りの出現傾向と警察の警戒範囲外、そしてある程度の勘から絞り出した場所である。

 

「にしても人がいないな…」

「もう、この辺は辻斬りの噂が広まっちゃって誰も寄り付かないんですよ。」

 

「こりゃ、辻斬りも姿を現さないだろな。」

 

 餌がなければ魚は食いつかない。

 銀時も無関係な一般人を餌にしようとは考えていないが、辻斬りが出てこないのでは話にならない。

 

 すると一人の男が歩いていることに新八が気がついた。

 

「誰かいますね…

黒い着物を着た男、腰には…

刀が刺さってますね。」

 

 こんな場所で刀なんて差しているのは、辻斬り本人か、辻斬りの噂を聞いて返り討ちにして名をあげようとする馬鹿しかいない。

 

「まさか、いきなり当たりを引くとわな」

 

 銀時が腰の木刀に手をかけると、先ほどまで寝ていた神楽が目を覚ます。

 

「気をつけるアル。」

「なんだよ神楽、さっきまで寝てた奴に言われなくてもわかってる。」

 

 神楽は夜兎族の本能により、殺気を感じて起き上がった。

 ただし、二人が発見した男のものではなかった。

 

「そっちじゃないアル…」

「え!?」

 

「後ろアル!!」

 

 月明かりに照らされていた裏路地は月に雲が重なりその闇を深める。

すると二つの光が暗闇から現れた。

 

 場所は三人が張っていた路地裏の奥の方。

 そこから異様な雰囲気が漂い、身抜きの刀を持った男が呻き声を上げて歩いてきた。

 

「うぅぅうぅぅうぅ」

 

 その男、五尺の大太刀を手に持ち、その瞳には真っ赤な目が輝いていた。

 

(こいつは危険だ…)

 

 神楽は夜兎族の本能でその男が危険だと悟った。

 

「ウラァッ!!」

 

べこっ!!

 

 神楽はすぐさま襲いかかる。

 渾身の拳が男の頬にヒットする。

 

 夜兎族の渾身の拳が当たれば当然骨は砕ける。

 しかし、男はそれに耐え、逆に神楽の腕を掴み神楽を投げ飛ばした。

 

「どわっ!!」

 

 神楽は軽々と数メートル程投げ飛ばされた。

 投げ飛ばされた先には小川があり、水に落ちる音が確認できた。

 

はぁ…はぁ…はぁ…

 

 男は神楽に顎を砕かれている為、口が開きっぱなしだ。

 血と涎がダラダラと口から流れ出ながらも男は怯む気配はない。

 それが彼の異常性を際立たさせる。

 

カタカタカタカタカタッ…

 

 男は次なる標的を新八に定めた。

 新八は男の異常性に足が震えていた。

 

「新八っ!!!」

 

 男は新八に突きを繰り出す。

 銀時はその剣に木刀を差し込ませ軌道を変えた。

 

 新八を庇った銀時は直ぐ様、攻勢に切り替える様体の向きを変えたが、アイアンクローで地面に叩きつけられた。

 

「ぐはぁ!!」

「銀さん!!!」

 

 男は反対の手に持つ刀を振り上げ、銀時にとどめを刺そうとした。

 

「銀さぁぁぁぁん!」

 銀時のピンチにようやく体が動く様になった新八が助けに入るが間に合わない。

 

(くそっ……)

 

 銀時は逃れられないと死を覚悟した瞬間。

 腰の小太刀が光り輝いた。

 

カァッ!!!

 

 ほんの一瞬、閃光弾の様に光り輝いた刀は銀時を守った。

 

 その光に弱った男は後退りした。

 

 すると上の方から『カチャッ』と音がした。

 男と銀時は上を見上げた。

 

 

 瓦を踏む音、それは屋根の上に誰かがいる事を指し示していた。

 

 屋根から落ちてくる黒い影、影から一閃の太刀。

 太刀は男を一刀両断したかに見えた。

 

 黒い影は先ほど目撃していた黒い着物の男。

 発狂していた男が、黒い着物の男を確認すると敵だと判断したのか着物の男に斬りかかった。

 しかし、その攻撃が届くことはなかった。

 

 先程の太刀による攻撃が効果を表し、男は縦に両断される。

 

 人体を縦に両断するだけでもかなりの使い手である事が窺えるのに、攻撃後のタイムラグは神がかり的な技術を秘めていることがわかった。

 

 

 その瞬間、雲にかけれていた月が顔を出し、路地裏を照らす。

 

 その男、 手には五尺の大太刀、背には太極図の紋、そして面には鬼が如き『深紅の眼』が輝いていた。

 

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