SAMURAI DEEPLY GIN 作:TubuanBoy
雲にかけれていた月が顔を出し、路地裏を照らす。
その男、 手には五尺の大太刀、背には太極図の紋、そして面には鬼が如き『深紅の眼』が輝いていた。
『深紅の眼』の男が喋った。
「テメェ…その刀…」
男は大太刀を銀時に振り下ろす。
銀時は咄嗟に小刀を手に持ち攻撃を防いだ。
それはまるで勝手に刀が動いたかのような錯覚を生んだ。
二撃目、三撃目、次々と繰り出す『深紅の眼』の男の攻撃を防ぐ。
「……」
男は何かを納得して攻撃をやめて刀を納めた。
銀時は困惑していた。
目の前にいる男には幼少期にあった記憶が微かにある。
歳を取ったようにも見えないそのままの姿で。
そして、先程の剣撃。
間違いなく自分は死んでいた。
この小刀がなければ確実に。
死の恐怖に飲まれているわけでは無い。
しかし、自分がろくに剣を受けることもできない高みの侍がこの時代にいるとは思わなかった。
どんなやつにも、勝てるわけではないが、戦えないことはないと思っていた。
男は振り返り、その場を後にしようとする。
銀時はそれを慌てて呼び止めようとした。
「おっ、おい!…」
そこに銀時の言葉を遮るものが現れた。
「テメェぇぇぇ!」
先程投げ飛ばされた神楽が小川の水を被りながらも這い出し、先程切られた男と勘違いして斬った男に襲い掛かった。
べこっ!!
神楽が振り下ろした拳が路面を割る。
その男が攻撃を避けたことは確認できたが体捌きがまるでわからなかった。
「馬鹿力……天人か…」
次々に繰り出される拳を紙一重で全て避ける男。
明らかに力の差がそこにはあった。
男は刀の柄に手が伸びた。
「神楽!やめろ!!」
このままでは不味い。
そう思った銀時は神楽を止めようと声をあげたが、遅かった。
刀が一瞬光ったかと思ったら神楽の体をその光が通過した。
手には刀が収まったままであったが銀時には分かっていた。
光は剣気の解放と高速で抜納刀された時の刀身の光の反射。
目で追えないほどの斬撃が神楽を襲った。
「え…!?」
何かが体を透き通った感覚に襲われた神楽は一瞬戸惑った。
そしてその瞬間、神楽の服が弾け飛んだ。
「ギャァァァァ!!」
露わになる体を隠して神楽は蹲った。
しかし、『ギャァ』はヒロインの恥ずかしがる反応では無いだろうと言いたい。
「ふっ…やっぱガキじゃねぇか。
せめて俺に歯向かうなら後二年分くらい成長してからかかってくるんだな。」
「何するアルか!変態!
この作品をSQ送りにでもしたいアルか!!」
「ガキとToLOVEっても嬉しくねぇよ。」
神楽とコントを繰り広げていると遠くから音が聞こえた。
カサカサカサツ
草鞋が地面で擦れる音。
派手に戦闘を繰り返したせいで警官が嗅ぎつけたのだ。
「チィッ…」
やはり警官に捕まると不味い立場のようで男は早々に立ち去ろうとすると銀時は咄嗟に呼び止めた。
「ウチに来ないか!?」
男は足を止めた。
「ウチで匿ってやるよ…
警察から逃げるのも余所者には限界がある。」
銀時は男をこの町で見た事がなかった為、余所者と判断した。
「……酒はあるんだろうな……」
「下にスナックがある。」
「……連れてけ。」
その日、白き夜叉と紅き王は出会った。
そして二つの物語は交差し、一つの物語として動き出すこととなった。
********************
そこは新八の姉、志村妙が勤務するキャバクラその日の夕礼で店長から新しいスタッフが紹介された。
髪を後ろで縛った黄色い髪を携えた綺麗な女性であった。
「はじめまして、私、椎名ゆやと申します。
こういった仕事は初めてですがよろしくお願いします。」
彼女を見たお妙の感想は『不思議な子』であった。
********************
場所は変わり『江戸城』。
そこには限られた者しか入れない特別な倉庫があった。
その倉庫の異変を感じた現将軍・茂々とその妹・そよ姫の世話焼き係である六転舞蔵は中を確認しに入った。
「やはり抑え切れぬか…」
そこには封印の札がそこら中に貼られながらも震え、異様な妖気を漂わせている槍があった。
「封印の札を貼りながらもこの力…
やはり共鳴、他の『村正』が動き出したと言う事。」
妖刀『村正』は徳川家とは深き因縁がある刀。
そしてその象徴ともいえる物がそこには封印されていた。
「この槍は天下人の血を欲する…
…しかし、そうはさせぬ。茂々様も、そよ姫さまもワシが御守りする。」
六転舞蔵は心に誓った。
********************
カタカタカタカタ…
背中に薬箱を背負った。男が夜道を歩いている。その薬箱の上には長い刀がボロボロの布に巻かれて積んであった。
「紫微垣が鳴いている…やはり狂もこっちに来てるんだね。」
その男の横には美しい女性が並んでいた。
「行きましょう、京四郎。
ゆやさんも先に向かったらしので…」
********************
戦闘音を聞きつけ、現場に駆けつけたのは新撰組。
そこには、真っ二つにされた死体と折れた刀が落ちていた。
「ちっ!また空振りかよ」
「あ〜らら、土方さん。こりゃあ責任問題ですよ。」
悔しがる土方に煽る沖田。
「うるせぇ!テメェが肝心な時に居眠りするから悪いんだろうが!」
「部下のミスは上司の責任、だから早く責任取れよ土方クソ野郎」
「ミスした本人の言うセリフじゃ無えよ沖田この野郎!」
いつもの空振りした光景だが、その日はいつもと少し違った。
(大きく争った形跡がある…
しかも、これは刀による戦闘痕じゃねぇ…)
神楽の戦いの痕はそこいらの人が行える物ではなく、侍による戦闘痕とも違っていた。
(……まさかな……)
********************
所変わって、柳生家総本山。
その日、柳生家次期当主筆頭の柳生家嫡女、柳生九兵衛は秘密の特訓を行なっていた。
「くはぁ!……はぁはぁ」
その特訓は血反吐を吐くかのような壮絶な物であった。
「はぁ、はぁ!必ず習得してみせる…
柳生陳陰流の全てを…『柳生新陰流』を…」
数日前、日に日に妖刀の共鳴が強くなってきた六転は秘密裏に柳生家に通達していた。
『柳生新陰流を持って将軍家を御守りせよ』
それを聞いた九兵衛の祖父柳生敏木斎は苦渋の決断を強いられていた。
柳生家は古くから徳川家を陰から守る一族であった。
しかし、徳川家が天下を取り、柳生家も剣術指南役を仰せつかることになり政界などの表舞台に顔を出すようになった。
そうなっては陰の剣である源流は逆に邪魔なものとなる。
だから流派を道場剣術に適した型に変え、源流を資格と才覚を持つ者のみに伝授することにしたのであった。
兼ねてから敏木斎は後継に悩んでいた。
息子は表の剣を習得には至ったが、源流まで習得できる才覚は無かった。
その辺の事情も九兵衛が抱えていた問題に拍車をかけて銀時達と激闘を繰り広げた事件に繋がっていた。
幾ら九兵衛に才覚があれど、女の身で源流の習得は熾烈を極める。
これまで家の事情で苦しめてしまった孫に更なる苦しみを与えることを躊躇していたが、銀時達との事件から精神的に一皮向けた孫を信じて真実を伝え、九兵衛自身も『大切なものを守る為に強くなりたい』と修行を開始したのであった。
********************
江戸から少し離れた住宅密集地。
そこの長屋に鍛冶屋を営む男がいた。
赤髪短髪で幼い顔立ちが残る好青年の様な出立で毎日の様に刀を叩いていた。
そこに中性的な顔立ちの少年が訪ねてきた。
「首尾は上々、細工は流々ってね。
どうだい?そっちの調子は」
「
「知ってるよ。いい
少年は水晶を取り出すと、その中に尾行中の男が映る。
「桂小太郎、
「手は貸さないからな。」
「いいよ、彼にピッタリな刀を作ってくれるだけで。」
********************
桂小太郎は辻斬り事件の捜査の末、錯乱した辻斬りを野に放つ犯人の足取りを掴んでいた。
(しかし、辻斬り事件の関係者にあのような子供が関わっているとは…)
少年の容姿は萬屋の神楽と同等かそれよりも幼く見える。
そんな子がこんな事件に関わっているとは世も末だ。
(やはり、紅桜の時の様に腕のいい刀鍛冶が絡んでいたな。
少年を捕まえるか、刀鍛冶を問い詰めるか…)
桂が次の手を考えていると何も感じなかった背後から透き通る様な少年の声が聞こえてきた。
「君を世界の王にしてあげる…」
********************