遡る彼は何を見るか   作:幽凪

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二人の別れはそれぞれの視点に分けて書こうと思います
先に永琳の視点からです
ではどうぞ………


最後の贈り物

 

 

……………永遠にこの日々が続けばいいと思っていた

 

 

 

……………私の人生で一番輝いていたこの日常が、ずっと続けばいいと思っていた

 

 

 

……………離れ離れになったとしても、きっとまた元に戻ると思っていた

 

 

 

……………もしも、もっと早く出会っていたら、こんなことにはならなかったのだろうか

 

 

 

……………もしも、あんなものを渡さなければ、こんなに苦しむことはなかったのだろうか

 

 

 

……………もしも、もしも、もしも………すべての可能性を模索した

 

 

 

……………考えて、考えて、考えて………そしてすべてが手遅れだったことを、何度も何度も自覚した

 

 

……………それでも、だけれど、もしかして

 

 

 

……………浮かんでは………また消える

 

 

 

……………私の考えを、たった一つの確証が、そのすべてを潰してく

 

 

 

……………光が消える、色が消える、見たことのある光景………もう二度と見ることは無いと思っていた

 

 

 

……………苦しい、悲しい、怖い………寂しい

 

 

 

……………あぁ、また一人になってしまった

 

 

 

これは、私と楔の別れのお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と楔の永遠の別れのお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・

・・・

 

外はすでに明るくなってきて、朝を知らせるかのように鳥のさえずりが聞こえてきた

 

「………遂に完成したわ」

 

私の目の前には今しがた細工を施し終えた楔への贈り物

 

「それにしても本当にギリギリだったわ」

 

こんなに時間がかかるなんて思ってなかった。専門外のことはするものではないわね

 

「楔………喜んでくれるかしら?」

 

頭の中に思い浮かぶのは私の最愛の弟の喜ぶ顔

 

「………きっと喜んでくれるわ」

 

根拠はない。でも、そんな気がする

 

「そう思えるのも家族だからなのかしら……」

 

家族だから、根拠もなくそんなことを思えるのだろう。そう思うと私と楔はちゃんとした家族なのだと実感する

 

「……………」

 

ふと、朝日のさす窓とは反対側の窓から空を見る。そこには明るくなった空に浮かぶ月があった

 

「…………たまには私が起こしに行くのもいいわね」

 

時計の針は五時を過ぎている。何時もより早いが今日は少しでも楔との時間を作りたい

 

 

 

 

 

今日で楔としばしの別れになるのだから

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

「楔?入るわよ」

 

まだ眠っているだろうが一応声をかけてみる。やはり返事は

 

「ん?入っていいよ」

 

………意外にも起きていたようだ

 

「おはよう楔」

 

「うん、おはよう姉さん」

 

楔の姿を見ると既に寝巻きからこの前楔にと思って神社から奪………拝借してきた緋袴、世間一般に言う巫女装束を着ていた……………え?何でそんなものをですって?似合いそうだったからに決まっているじゃない

 

「どう?似合ってるかな?」

 

「えぇ、とても良く似合ってる………………………一瞬妹になったのかと思ったわ」

 

「へ?」

 

「いえ、なんでもないよ」

 

楔は線が細い見た目のためか、童顔だからか、またその両方のせいか、女物の服を着せるとずっと一緒にいた私でさえ初見では楔が女に見えた。ちなみに楔は私が渡した服は何の疑いもなく着てくれるので(ネコミミと尻尾は何故かガクガク震えながな断られた)女物を着ていることを知らない

 

「今日は早いわね」

 

「少しでも姉さんと一緒の時間を作りたかったからね」

 

「お姉ちゃんと同じこと考えるところを見ると、やっぱり私達は仲良し義姉弟ね」

 

「今更だよ、そんなこと。じゃあ朝ごはんにしよっか」

 

「それもそうね。お姉ちゃんも手伝うわ」

 

楔と一緒に廊下を歩きながら、今日はどうしようかと考えた

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

「「ごちそうさま」」

 

楔の(家族)愛の詰まった朝食を食べ今日何をするか楔に聞くと

 

「あの家まで歩いて行きたいな」

 

と、言った

 

「そんなことでいいの?」

 

「もうほとんどやり残したこと無いし、姉さんと一緒に居られるからいいよ」

 

「嬉しいこと言ってくれるわね」

 

「それにこの家からは能力使ってでしか言ったこと無いし、歩いてならちょうど夜には着くでしょ」

 

「あら、夜に何かあるのかしら?」

 

「い、いや何も無いよッ!?うん、何もッ!」

 

「そうなの」

 

楔は少し安心したようにため息を吐くけどバレバレよね。まぁ、夜まで楽しみはとっておきましょう

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

「うん!」

 

楔のサプライズ、とても楽しみだわ

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

時刻はもう三時をになっていた

 

「少し遅くなったけどお昼にしよう、おにぎり作って来たんだ」

 

「おにぎりなんていつの間に……」

 

「朝ご飯を作る時に一緒にね」

 

………あの場には私も居たのに気づかなかったわ

 

「この辺も随分来たわね」

 

「あんまり憶えてないけどここで姉さんに拾ってもらったんだよね」

 

「特訓の鬼ごっこもだいたいここでやったわね」

 

いつの間にか楔と出会った名の知らない森まできていた。歩いて来ると結構な距離があったのね。そう言えばここであれも拾ったのよね、ちょうど楔を拾った日に

 

「はい、おにぎり」

 

「いただきます」

 

一口食べると甘酸っぱい風味が口全体に広がった

 

「どう、新作のハチミツ梅なんだけど美味しい?」

 

「とても美味しいわよ。よく作れるわね」

 

「まぁね」

 

少し得意げになっている。将来いいお嫁さんになるわ

 

「あえて言うならお婿さんだよ………」

 

一転変わってしょげてしまった

 

「そうしょげないで、姉さんが悪かったわ」

 

「うぅ、冗談きついよ」

 

……………冗談じゃないんだけど

 

そんなたわいもない会話をしていたら二時間も経っていた

 

 

 

・・・・・・・・・

 

「随分暗くなってきたわね」

 

「そうだね…………急がないと」

 

楔が足を早める。何故そんなに急ぐのだろうか

 

「姉さん早く!!」

 

っと、少し考え事をしていた隙に楔が結構先に進んでいる

 

「ちょっと楔待ちなさい!」

 

「早く早く!」

 

楔を追いかけているうちに辺りはすっかり暗くなり、ようやく目的地に着いた

 

「なんとか間に合った………」

 

「何が間に合ったの?」

 

周囲に明かりはなく今は自らの霊力で照らしている状態だ

 

「姉さん明かり消して」

 

「?まぁいいけど」

 

楔の言う通りに霊力を出すのを辞める。そうすると月明かりだけが周囲を照らした

 

「それで何がしたかったの?」

 

私の質問に楔は無言で空を見上げているだけで答えない。視線の先に何があるのか気になり私も空を見上げる

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!?」

 

見上げた空には煌びやかな宝石が辺り一面に散らばっていた…………

 

「この前ここに来た時に気付いたんだ。あっちじゃ街の灯りのせいで星がこんなに見えなかったからさ……………最後の思い出にと思って」

 

楔の言葉を聞きながら、私はずっと星空を眺めていた。どんなサプライズが待っているかと思っていたら予想の斜め上をいっていた。時間が経つのを忘れるほどの光景に、私が言葉を発したのは三十分もだってからだった

 

「こんな素晴らしいものをくれるなんて…………一生忘れないわ」

 

「僕も………絶対忘れないよ。姉さんが帰ってきたら、ここで、この星空を見てお酒でも呑もう」

 

「あら、いいわね……………お姉ちゃんも楔にプレゼントをもってきたのだけど………この後だと出しずらいわね………」

 

「姉さんにもらうものだったら何でも嬉しいけど」

 

「そう…………?じゃあ、はい」

 

今朝完成させた物を楔に渡す。装飾も何も無い、シンプルな指輪を

 

「…………これは」

 

「気に入ってくれた?」

 

「うん!凄くいいよ!!」

 

そういって楔は自分の右手中指にはめ、手を伸ばして眺めていた

 

「その指輪は楔を見つけた時に拾ったの。見たことない物質でできているみたいだったから調べようと思ってね。それにはちょっとした仕掛けを施してあるのよ…………少し霊力を流して見なさい」

 

「こう?」

 

そうすると楔の周りに薄い球状の膜のような物が現れた

 

「簡易結界…………ちゃんと作動してるわね」

 

「…………すごい、何これ凄いよ!!」

 

すごいすごいと騒ぐ楔は子供のようで微笑ましい。こんな日じゃなければ血が出ていたわ

 

「その結界は楔の霊力で出来ているから、楔の能力を付加できるはずよ」

 

そうすれば大抵の攻撃からは身を護れるだろう

 

「姉さん………ありがとう。最後まで僕の心配をしてくれて」

 

「当たり前よ。お姉ちゃんなんだから」

 

ちなみにあれにはもう一つ細工してあるのだが…………楔には言わなくていいだろう

 

 

 

 

そして私達の最後の夜は素敵な贈り物によって終わった

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

「…………………もう、行かないと」

 

「………うん」

 

楽しい時間は終わりを告げる

 

「楔、送ってくれる」

 

「…………わかった」

 

最後にいい思い出が出来た。楔はここに残り、私は月へ行く

 

「またね、楔。元気でいるのよ」

 

「またね、姉さん。そっちも元気で」

 

楔が能力を発動させて、瞬きをするともうそこには楔は居なかった

 

「…………またね」

 

そういってこの住み慣れた家からも出る

 

もう空を見てもあの星空は見えない

 

「八意様、お迎えに上がりました」

 

「ご苦労様」

 

玄関の前には使者が迎えに来ていた

 

「出発まで後一時間もありません。お急ぎくださいませ」

 

「わかってるわ」

 

「ではこちらへ」

 

用意された乗り物へ乗り込み、私はロケットに乗り込んだ

 

 

 

・・・・・・・・・

 

発射は思ったよりもすんなりと行われ、外はもう無限に広がる宇宙空間が広がっている

 

「それにしても此度の計画は見事ですなぁ、八意様」

 

「どうも」

 

見たことあるようなやつの社交辞令を適当に流し、少しでも早く楔の元に帰れるようにするにはどうするかを考える

 

「これで我々に穢れはなくなり永久に生きれる。賢者様がいたからこそ実現できたのです。賢者様は月の頭脳だ」

 

「ええありがとう」

 

今度は知らない奴が話しかけて来た。邪魔をしないで欲しい

 

「それに今頃、地球の穢れは一掃されていることでしょう。母星にせめてもの恩返しと言うものです」

 

「ええそう…………なんの話」

 

「おや、賢者様はご存知なさらないのですか?」

 

「ええ、なんの話かしら」

 

私が反応したことに気を良くしたのか男は饒舌に喋り出す

 

 

ドクンッ

 

 

「賢者様も地球の穢れの影響で寿命が制限されることはもちろんご存知でしょう」

 

 

ドクンッ

 

 

「ですから穢れの無い月へ行くことで寿命を克服するのですよね」

 

 

ドクンッ

 

 

「穢れの原因は妖怪にある。もしも妖怪どもが月に足を踏み入れて月が穢れたら大変だ」

 

 

ドクンッ やめて

 

 

「少しでもそんな可能性は潰しておきたいと思われるでしょう」

 

 

ドクンッ おねがいだから

 

 

「だから妖怪をすべて殺してしまおうと考えたのですよ。賢者様には知らされて居なかったようですが」

 

 

ドクンッ もう

 

 

「ですから」

 

 

ドクンッ

 

 

ドクンッ

 

 

ドクンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

「地球を核で浄化することにしたようですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・

・・・

 

気づいたら私に割り振られた部屋に居た。もうすぐ月に着くそうだ。さっき様子を見に来た者がそう言っていた

 

「……………………」

 

左手を天井にかざして見る。正確には左手の中指。そこには楔に贈った物と全く同じ指輪がはまっていた。だが、その輝きには陰りがあるように見える

 

「楔…………………」

 

楔の指輪にはもう一つ細工がしてあった。それはこの指輪があって初めて機能する。もう何度目かもわからなくなってしまったがそれでも霊力を送る。そうすれば楔が今どのような状態か色を変えて知らせてくれる。健康である色の緑色の輝きが…………見えるはずなのに

 

「なんで何にも何ないのよッ!?」

 

何の反応もしない。それが意味するのは…………………

 

 

初めは故障かと思った。二回目も三回目も。四回目からは修理してからやってみた…………何回やっても結果は同じだった

 

 

もしかして楔は無事で指輪だけが壊れてしまったのではとも考えた

 

だが、あの結界と能力の併用がなければ凌ぎきれない

 

他にも考えた

 

楔が自身の身体だけ戻し続けるーーーーー霊力がもたない

 

核だけを戻したーーーーー地球を浄化するといったのだ、一発だけでは無いだろう

 

すべての可能性は潰えていき、悪夢だけが残っていった

 

 

 

 

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

 

 

信じたくない、認めない、そんなこと、私が赦さない……………

 

 

 

 

けど

 

 

 

 

「ごめんなさい…………楔……ごめんなさい…………」

 

 

 

 

そう言わずにはいられなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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