合間を開けてしまったついでに今回はオール三人称でやってみようと思います
では、どうぞ………
無数の岩石が蛙山の木々を薙ぎ倒し地面を抉った。岩石を消した後、見晴らしの良くなった蛙山を見渡すと、山の頂上近くに一つだけポツンと建っている建物が見えた。
「あそこか、思ったよりも距離があるね」
建物がある場所は諏訪子が最初に神力を捉えた場所から遠く離れていた。それは先程の幼女の能力で位置情報までもが惑わされていたこと他ならず、諏訪子は素直にあの妖怪たちの力量に感心した
「あのまま鳥っぽいのと犬っぽいのを倒したところで、あいつが無事ならずっと迷い続けていたかもね。姿を現した幼女の方もきっと幻覚だろうし……というより少なくとも犬の方も幻覚だったかな」
諏訪子に直接攻撃を加えた鳥は本物、支援型が前線に出て来るのは普通ではないことからそう結論付け、諏訪子は建物に向かい歩み始めた。勿論、現在見えている建物も幻覚かもしれない可能性はあったが、諏訪子はその可能性を少しも感じていなかった………何故なら
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!どどど、どうしよう草のやつ気絶しちゃったよぉぉぉぉぉ!!!!!」
「五月蝿いぞ犬ッ!!奴に聞こえたらどうするつもりだ!!草の気絶さえ知られなければまだてのうちようだってあるのだぞッ!!!!」
「鳥だって大声だしてるじゃんかよ!!!!」
「お前ほどでは無いわッ!このアホ犬ッ!!!!!」
「……………う、うきゅぅぅぅぅ……」
「……………………さ、行くか」
少し感心してしまった自分は間違っていたと思いながら、今だ途絶えることを知らない喧騒の先を目指した
このとき、諏訪子は気づかなかった。妖怪たちの声に注意を向けてしまったがために気づかなかった。
自らが落とした岩石によって抉れた地面が修復され、気づかぬほどに徐々に木々が治り始めていることに
………………………
…………………
……………
諏訪子が歩み始めた頃、妖怪たちはと言うと………
「起きて起きて起きてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!早くしないとあの子が来ちゃうよ!!!!」
「お、おい、そんなに激しく揺らしたら起きるものも起きんだろうがッ!!こうゆう時は軽く頬を叩いてやるとだな……………」
「草ぁぁぁ!!早く起きてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」バシンッバシンッバシンッバシンッ
「叩きすぎたこのバカ犬がッ!!!!」
「……………う、うう………ガクッ」
見事に混乱していた
元々この山に入って来る者など今までに一人もいなかったこともあり、想定した訓練をしたわけでもなくぶっつけ本番で考えた策は、要となる草と呼ばれる幼女が気絶したことにより破綻。この妖怪たちもまさか最初の侵入者が神、しかもかなり上位の存在だったことは予想もできなかったであろう
「と、とにかくこの後どうしよう、鳥は何かかんがえないのッ!?」
「我に振るなッ!元はと言えば参謀担当なのにこんな杜撰な策を考えた犬が悪いのだろがッ!!責任とって草のやつが起きるまで時間稼ぎしてこいッ!!!!」
「そんなの戦闘担当の鳥がやればいいじゃんかッ!そもそも鳥でも勝てない相手に私が勝てるわけ無いじゃん、私やだよあの子規格外に強すぎるよぉぉぉ………外にはあんなのばかりいるの?」
外を知らず、自分たち以外の存在を知らずに生きてきたここにいる妖怪たちがこう思うのも無理はない…………だが、実際はこの妖怪たちは強い。犬の少女の考えた策は侵入者を迷宮へと誘い、草の幼女の力は相手の認識すらも惑わせる。鳥の少年が本気を出せば勝てるものの方が少ないだろう。だか如何せん、相手が悪過ぎた。理不尽な力の前では、風の前の塵に同じなのである
「他に策はないのか?」
「あったらとっくに言って…………あ」
「あるのか犬!?」
「あぁ………うん、最後にして最低な………それでいて”巫女様のためになる"かもしれないのが一つだけ………ある。でも草が起きたらそのままさっきので行くからね、これ使うと役目を果たせなくなるかもしれないから」
「役目が果たせなくなるのなら意味が無いではないかッ!!」
「でも考えつくのがこれしかないんだもん!!」
「……………もう、うるさい………あと、ほっぺが痛い」
二人が言い争っている間に草の幼女が目を覚ます。その頬は犬の少女によって透き通るような白い肌から真っ赤なトマトのように腫れていた………がそれも束の間気づくと元の白い肌に戻っていた
「……………やっぱり、巫女様の力はすごい」
「今更そんなことはいいから早く幻覚をかけてよッ!!!!」
「その必要はないぞ」
「おい鳥何言ってんの!?さっき行ったこと忘れたの!?三歩歩いて全部忘れちゃう系な妖怪なの!?」
「お、おい、我は喋っていないぞ」
「へ?」
その言葉を聴き三人とも声のした方へと顔を向ける………そこには
「やぁやぁ、さっきぶりだねぇ………元気にしてたかい?」
にこやかな笑顔の神様が建っていらっしゃいました
「おう………」
「これは………」
「……………詰んだ」
三人の心が一つになった瞬間であった
………………………
…………………
……………
「さぁ、お前たちが仕えている現人神に合わせてもらおうか」
「どどどどうしようッ!そうだいっそのこと鳥と草を囮にして逃げよう巫女様と二人で逃避行を……………」
「……………ずるい、囮は犬と鳥、うちが巫女様と………ポッ」
「しょうがない、鳥が囮で三人で逃げよう……………あ、いっけね巫女様の部屋入れないんだった!!ところで現人神ってなに?」
「貴様らぶっ飛ばすぞ!あと、さも当然のように俺を囮に使おうとするな!かなり傷つくだろうが!!」
「お、久々に口調が戻ったね。威厳を出すために一人称を我にするとか一人で変なこと叫びながらポーズをとってた時はどうしようと思ったけど、素の方がが似合ってるよ」
「……………元々ない威厳に何を足しても意味はない」
「今はそんなこと話してる場合じゃねぇだろぉがッ!!あと、い、威厳とか関係ねぇし、我が素だし、たまたま言っちゃっただけだしッ!!!」
最早諏訪子のことから現実逃避している二人と遥か未来に流行している病の患者がそこにいた
ドスンッ!!!!
「………少し、頭冷やそうか」
「「「ごめんなさい(……………ごめんなさい)」」」
揉める三人に容赦無く石柱を降らせる。神様を怒らせてはいけない
「早く合わせてくれないかねぇ」
「……合わせる前に聞いておきたいことがある」
「おい、何を言って「少し黙ってて」………わかったよ」
合わせるという犬の少女の発言に待ったをかけようとした鳥の少年は、いつになく真剣な犬の少女の表情を見て静観することに決めた。………ちなみに草の幼女は緊張感がないのか、頭が船を漕いでいた
「………いいだろう。答えられることには全て答えてやろう」
犬の少女の返事に余裕を持って返す。もとより何を話したところで諏訪子の圧倒的優位は変わらない
「じゃあまず一つ、あなたは何者なの?」
「神様、土着神、この洩矢の国を治める者」
「現人神ってなに?」
「人でありなが信仰をうけ神となった者のことだ」
「あなたの目的は?」
「私への信仰が僅かにこの山に流れていたからその調査」
「その原因を見つけたらどうするの?」
「現人神っていうのも珍しいからねぇ、私の属神にしてやってもいいが………無理なら殺す」
淡々と、矢継ぎ早に質疑応答を繰り返す犬の少女と諏訪子。犬の少女は先程とは打って変わって冷静に、必要最低限の質問を繰り返す。諏訪子もその全てに偽りなく答えてゆく。他にも幾つかの質問を繰り返した後に犬の少女はこう切り出した
「最後に、これは質問じゃなく巫女様に合わせるための条件だよ」
ピクリ、と諏訪子の表情に陰りが見えた
「この私に条件?ハッ!あんた状況がわかっているのかい?その気になればこの山ごと消すことだってできるんだけど」
「それはさせないし、それ以前に出来ない。やろうとしたら私達も全力を出すよ」
その言葉に諏訪子がこの山を活火山に変えてやろうかと能力を発動させ
「動くな」
ようと行動を起こす前に、鳥の少年の鋭い爪が先程の邂逅の時とは比べものにならない速さでもって、諏訪子の首に添えられていた
「………確かに、さっきのは互いに本気じゃなかったみたいだね。その速さ、あんたの能力かなんかかい?」
「確かに能力を使ったが………俺は犬見たくバカじゃないのでね、教えるわけなかろうが。それに貴様も我ら以上に化け物というのも今ので理解した」
口調が戻った鳥の少年の"喉元に地面から生えた鋭く尖った岩"が浅く刺さった状態での言葉に
「最高の褒め言葉だよ」
と、そう返した
「下がって鳥。で、条件は飲んでくれる?」
鳥の少年を下がらせ再び問う犬の少女に諏訪子は
「その条件を聞く前にこっちも条件を出す」
と返した。条件を聞く前にこちらの条件を飲まさせる。そう"聞く"前である。たとえ犬の少女諏訪子の出す条件を飲み、こちらの条件を提示したところで断られてしまう危険性がある。これはある種の神に条件を出したこの妖怪への嫌がらせも含まれていた。賢い者、いや、普通誰もが断るであろう提案を犬の少女は当然
「わかった。そっちの条件を教えて」
当然だと言わんばかりに飲んだ
これには鳥の少年も目を見開いて驚いている。草の幼女は不穏な空気を察したのか夢からさめたようだった
「………本気で行ってんのかい?」
「神様相手にこれくらいの危険はあって当然だよ」
可愛らしく首を傾げながらそう返す犬の少女は、やはり只者でない。瞬時に諏訪子にそう思わせた
「……ぷ」
「ぷ?」
「ぷぷっはははっはぁはははっははぁぁぁぁ!………いいねぇ、あんた。久々に腹の底から笑った気がするよ!こっちの条件はそっち現人神とあんたらの能力を教えること。それが出来たらそっちの条件は絶対飲んでやろう、この諏訪子様に誓って嘘わ言わないよ」
「鳥、草、いいよね?」
「ふぅ、どうせやめろと言っても聞かないのだろう………好きにしろ」
「……………激しく同意」
「うん、ありがとう…………まず私から、私の能力は『どんなものも嗅ぎつけ、嗅ぎ分ける程度の能力』だよ」
「我の能力は『先手をとる程度の能力』だ」
「……………ウチのはもう知ってると思うけど、『惑わせる程度の能力』」
「それで、あんたらの主の能力は?」
少しの間が空いた、犬の少女も流石に主の許可無しに言うのは躊躇っているのだろう。だがそれも束の間。犬の少女の口が開いた
「巫女様の能力は『あらゆる物を戻す程度の能力』………それと巫女様は知らないけどあと二つ、『維持する程度の能力』と巫女様の周りに霊力じゃない力が漂い出した時から宿った能力。後者は使ったことがないから私の能力でもわからないんだよ」
「……………………は?」
諏訪子にも予想外だった。諏訪子は自分自身を理不尽で規格外な存在だと自負しているが、この妖怪たちの主も同等な規格外だと今の確信した………危険な存在だが条件を飲むと言ってしまった手前、後には引けない
「ほら、この山を見て。この山の結界は"戻す"力のある結界"維持"する力で少ない霊力で展開できる。で、その中の空間は"戻す"力を"維持"するようになってるから、ここでは壊れても死んでも、直って蘇る」
諏訪子は振り向いて山の現状をみた。そこには来た時とかわりのない風景が広がっていた。これを先に気づいていれば、能力を推察でき交渉の手札も増えただろうに
「そ、それでそっちの条件はなんだい?」
出来るだけ平然を装って条件を聞く。諏訪子にとって条件次第では妖怪たちの主は百害あって一利無しな存在になってしまう。そんなことを思っている諏訪子に犬の少女は言った
「巫女様を助けて」
ただただ簡潔に、泣きそうな表情で、そう言った
今後も受験が控えておりますので次話の投稿は合間を開けてしまうと思いますがご容赦くださいm(_ _)m