遡る彼は何を見るか   作:幽凪

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大変長らくお待たせしました。幽凪戻ってまいりました( ̄^ ̄)ゞ
大学にもある程度慣れてきたのでこれからちまちま書いていきます。
それでは約9カ月ぶりの投稿です。どうぞ


起床

 諏訪子side

 

「……………は?」

 

 いかに前言撤回せず、少しでも此方側に利益の出るよう振舞うにはどうすればいいか………と、思考を巡らしていた私は、予想外の条件に思わず声を出していた。……………いや、そんなことよりッ!!

 

「正気か?そんな……簡単なことでいいって言うのか?神であるこの私に、妖怪らしく己の欲に塗れた願いでなく、主を助けろと…………そう言っているのかい?」

 

 ………声は落ち着いている……と思う。自分でもわからないが犬の少女の願いに、何故か憤りを感じていた………いや、違う。憤りではない。もっと違う、今まで感じたことのない感情が私の中で渦巻いていた

 

「うん………私達も色々やったんだけどね、巫女様には今の私達は近づけない………けどね、神様ならなんとかなるんじゃないかなっと思うんだ………うん、私の鼻もそう言ってるし、えへへ………」

 

 犬の少女は力無さげに、涙を目に溜めながら、しかしこれが私の意志だと強く主張する様に私に見た

 

「……ッ!!後ろの奴らはどう思ってる?自分で言いたかないがこの洩矢の国を左右出来る機会に直面してるんだよ………それをおいそれと逃すのはどうかと思うけど………?」

 

 何故自分に不利になるようなことを言っているのだろうか……こんなことを言ってしまったら妖怪達の願いが変わることなど目に見えている。妖怪は何処までも欲に忠実に動く。それは大妖怪だとしても例外はなく、多少抑えられるとしても根本的には変わらない。そういう生き物なのに、何故この口は勝手に話してしなうのだろうか

 

「さぁ、どうする?今ならまだ条件を変えてもいい。私の気が変わら「何を言っているのだ貴様は」ない内………に」

 

 私の提案に返答したのは鳥の少年だった

 

「己に不利になることを望むのが神の間で流行ってでもいるのか?そんな遊びに付き合ってやるのはごめんだ。さっさと犬が言った条件を飲め。あれはあれでいつも巫女様を第一に物事を考えているからな………それだけで我らが貴様に語ってやる言葉なぞ一つもない」

 

「……………右に同じ」

 

 少し苛立った様に鳥の少年が応え、草の幼女は眠たげな雰囲気を醸し出しながらもその意見に賛同する

 

「………わかった。その条件で受けよう」

 

 おかしい………本来なら私になんの害もないと表に出さないまでも内心喜ぶ所だろうに、未だ正体のわからない感情が変わらずに………いや、先程よりも勢いを増して私の中をグチャグチャに掻き乱していた

 

「それじゃあ、私に付いてきてね。巫女様のいる部屋に案内するよ………鳥と草は直ぐに動ける様に準備怠らないでね」

 

「心得ている(……………当たり前)」

 

 犬の少女、私、鳥の少年、草の幼女の順で進む。背後からは一挙一動を見逃さないと鋭い視線が突き刺さる中、得体の知れない思いを胸に、私は巫女様とやらがいる部屋に辿り着いた

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………

 …………………

 ……………

 

 三人称side

 

 辿り着いた部屋の前に三匹の妖怪と一柱の神が立っている………否、立っていた(・・・・・)

 

「………ッ!?私達じゃ、やっぱり駄目か………」

 

「……まだ、大丈夫………だ……我なら……いける……ッ」

 

「……………うん、非力なウチは無理ぽ」

 

「「だと思った」」

 

 諏訪子は一瞬こいつら言ってるほど辛くないんじゃないかと思ったが三匹の現状を見て、その考えを頭の隅に投げ込んだ。それもそのはず、今一番マシな状態の鳥の少年は産まれたての子鹿の如く脚が震えながらも辛うじて立っている状態だった。犬の少女は片膝をついて頭を垂れるー主君に忠誠を誓う騎士のようなー格好で苦しげに呻く。草の幼女は廊下に倒れ込んでいた。時折「……………どうせ惑わせるくらいしかできないよ………」「……………だいたいウチは犬鳥みたいな脳筋じゃ………」など聞こえる独り言が何とも「私脳筋じゃないよッ!?」………何とも哀愁を漂わせていた

 

「ほぉう、流石に百年くらい私の信仰を奪っていただけはあるね」

 

 唯一普段と変わらない様子で立っていた諏訪子はこの残念な光景を作り出した原因を見て犬の少女の方へ振り向く

 

「ここがあんたらの言う巫女様がいるところ………で、合ってるね?」

 

「……そうだよ。巫女様から変な力が溢れてきたと思ったら触ろうとするとバチバチするし、今じゃこの部屋いっぱいに充満して………」

 

「最近になって遂に障子すら開けることが叶わぬ程になってしまった」

 

「……………巫女様の布団でお昼寝も出来なくなっちゃった」

 

「ちょっとそんな事してたのッ!!??う、う、羨ましけしからん!!!!!」

 

 犬の少女は草の幼女に掴みかかろうとするが、上手く進めないようで、一歩進むたびに逆の膝をつき右、左と交互に突き出す様子に

 

「……………右膝左膝交互に「草のバカァァァァァァァァッ!!!!!私も昼寝に誘ってくれれば良かったのにぃぃぃぃ!!!!!」犬、今本当シャレにならないから落ち着いて」

 

 草の幼女が何だか聞き覚えのある似た様な言葉を言い切る前に犬の少女が草の幼女の元に着き、はたから見ても渾身の右ストレートを放つが見当違いの場所に当たる。草の幼女が犬の少女の狙いを『惑わせた』様だ。渾身の右ストレートは床に大穴………だけでは収まらず、大穴から覗いた地面をも抉り取っていた。修復される様子を見ながら草の幼女は顔を青く染めて固まっていた。

 

「……………………………」

 

 諏訪子は消去法で鳥の少年へと顔を向ける。鳥の少年は身内の喧騒をスルーした。これ以上ストレスをかけると羽毛が落ちていくのではないかと心配になってきてしまう。後ろからは犬の少女の喚き声が聞こえるが気にしない。ドゴンッ!!とかバゴンッ!!とか聞こえるけど気にしない。諏訪子と鳥の少年は今この時だけ意見が一致した。

 

「すまないな、こいつらは一定時間深刻な雰囲気にあると死んでしまう病気にかかっているんだ。大目に見てくれ」

 

 死ぬに死ねないとこ空間で死ぬことはないのでは?とか、そもそも病気にならないのではないか?という疑問はもっともである。鳥の少年は胃と毛根への深刻なダメージを避けるため無意識にそう思い込んでいるだけで、その様な事実はない。諏訪子はその事を瞬時に理解した。普段からの苦労を感じとりその思い込みを己の胸の底にある鍵付きの箱に仕舞って

 

「いや、この結界の中じゃそもそも病気にならなくないか?」

 

 その箱ごと外界へ弾き飛ばした。因みに鍵は掛かっていなかった。

 

「………………………………………………………………………………………ガフッ」

 

 諏訪子の言葉をフリーズした頭で理解した鳥の少年は吐血しながら倒れた。溜まりに溜まったストレスが修復する暇さえ与えず胃へダメージを通したのだろう。だが諏訪子に後悔は無い。妖怪もそうだが神もまた大概は欲に忠実なのである。

 

「………行くか」

 

 未だに床を殴り続ける犬の少女と当たりそうで当たらない、気を抜くと真っ赤なザクロが咲きかねないとうつ伏せの体をプルプル震わせる草の幼女、これまでのストレスが胃へ出力され続け血の池を生成する機械とかしている鳥の少年に背を向け、溢れ出る黄金色の神力を物ともせず、部屋へと踏み入る。

 

 この出会いはある意味必然だったであろう。運命というモノを初めて信じた瞬間であった、と後に諏訪子は語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………全ての運命が好意的なモノから始まるとは限らないが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………

 …………………

 ……………

 楔side

 

 暗く昏く、闇くて、闇が互いに喰らいあっているようだ。それが僕がこの光景に抱いた初めの印象だった。

 

 見渡す先々の全てが一色に染まっていて、いったいここがどこなのかも分からない。

 

 この暗闇で目覚めたのはいつだったか。どれだけの時間を過ごしたか分からない。

 

 何時間前?何時間?

 

 何日前?何日間?

 

 何ヶ月前?何ヶ月間?

 

 もしかして年単位で時が過ぎているかもしれない。

 

 以前姉さんに教えてもらったことがある。人は太陽の光で時を刻む、例え正確に時刻のわかる道具がその場に無かったとしても、陽の光がある限り、人は一日を感じることができると。ならば、その陽が無かったら。陽の無い地下や外界から閉ざされた場所ではどうなるか。なんの基準の無いこの暗闇ではどうなるか………まさか僕自身体験することになるとは思わなかった。

 

 この時ようやく時間感覚がなくなっていることに気がついた。

 

 そもそも何でこんなところにいるのだろう?

 

 僕は姉さんを待っていたはずなのに……………

 

 悩んでいても仕方がない。いったいどれだけの時間を無駄にしたかも分からない。兎に角行動あるのみだ。気合いを入れようと声を

 

「…………………………………ッ!!!!????」

 

 ………声が出なかった。呆れて声が出ないとか、そういう比喩ではなく、元から僕には発声機能が無かった、八意 楔は声を出す生き物ではないと定義付けられている………と、今言われたら胡散臭さ満載の詐欺師の言葉すら信じてしまうかもしれないくらい、震える喉から音は発せられなかった。あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも声ってこうやって出すものだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 腕も脚も頭も体も、どうやれば動くんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………呼吸ってどうやってするんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………ッ!!!!!!!!????????」

 

 それらを自覚した途端に僕を取り巻く状況は変わった。悲鳴をあげようにも助けを呼ぼうにも辺りは静寂を保っている。身体が苦痛を感じ始めた。酸素を求めて必死に脳に指令を出す。だけど、願い届かず、先程まで動いていた喉さえもう震わせ方を忘れてしまっていた。

 

 死。

 

 記憶を失ってから三度目となる死の恐怖が、僕の身体を深淵の底へ引き摺り込もうと手招いている…………?

 

「…………………………………?」

 

 未だ苦痛を味わい、身体一つ動かせないこの状況で、自らの思考に違和感を感じた。

 

 頭の中で誰かが囁く。

 

 

 

『…………せ…め……』

 

 

 

 

 不思議と恐怖は感じなかった。寧ろ息苦しさが和らいでいた。

 

 

 

 

『……い…せしめ……』

 

 

 

 

 その声は直接脳に言葉を発しているように響く。次第に、鮮明に、意思を伝えようと語りかけてくる。

 

 

 

 

『お…い…せしめ…を』

 

 

 

 

 僕はこの声を知っている………いや、語りかける存在を知っていた(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

『思い出せ使命を』

 

 

 

 

 ………こいつは僕の消えた記憶だ

 

 ひたすら拡がっていた暗闇に、僕の知らない場面が浮かび上がった。

 

 

 それは虹色の翼の悪魔だった。

 

 

 それは死を彷彿させる蝶の群れだった。

 

 

 それはこの世のものとは思えない美しい女性(ひと)。傍には懐かしい姉さん(ひと)がいた。

 

 

 それは花畑に佇む暴虐だった。

 

 

 それは神々しい天と地だった。

 

 

 それは黒い翼を持つ太陽だった。

 

 

 それは全てが終わった世界だった。

 

 

 一つ一つの光景は、一瞬にして過ぎ去っていった。断片的なイメージしか読み取れなかったが、これは僕の経験した出来事の記憶なのだろう。でも、どうして喪ったはずの記憶に姉さんがいたのだろう?それに使命って………

 

 そんな事思っていると再び暗闇が降りてきた。先程とはうって変わって苦しみがなくなっていた。

 

 

 

 

 ………………………

 

(……………あれ?)

 

 記憶を垣間見てからどれほど経っただろうか?

 

 そう思うほどには、同じ暗闇を見続けていた僕の思考は、この代わり映えのない環境にある変化を見つけた。

 

(光………なんの光だ?)

 

 闇のある一点に、夜空に光る星のように、淡い光が灯っていた。そう認識した時には二つ三つと星が増えていく。

 

(あぁ、綺麗な光だな………)

 

 まるで姉さんと見た星空みたいだ。そう呑気に考えていると、今度は淡かった光が煌々と眩しい光へと変わっていく。

 

(ん!?眩し過ぎじゃない!?)

 

 光を遮るように顔を手で覆う。だが一向に光はおさまらない…………あれ?

 

「腕が動く…………声も出てる!!」

 

 今まで機能が停止していた身体が、元通りに動くようになった。その事を嬉しく思いながら、しかし、その視線は自分の右手に向いていた。

 

「これは…………指輪が光ってる?」

 

 右手の中指、そこには姉さんから貰った指輪がはまっている。その指輪があの星々と同じく輝き、光が強くなるたびに亀裂が走っていた。

 

「え!?ちょっ壊れないで!?」

 

 折角の思い出が!?と、いう声も虚しく、より一層強く黄金色の輝きを見せた後、パリンッ、と音を立てて壊れてしまった。その音を聞いたのと僕の意識が引っ張られたのは同時だった。

 

 

 

 

 ………………………

 …………………

 ……………

 

 諏訪子side

 

「ぅぅん…………」

 

「どうやらこれで良かったようだな」

 

 軽く布団の中で身じろぐ奴らの主を見て、私の考えは正しかったと確信した。犬の少女に頼まれてから、どのように治すか起こすか、まずどのような状態なのかを、一応条件だったので考えていた。

 

 しかし、部屋に入って横になっている人物を一目見てすぐに対処法は見つかった。

 

「霊力不足でぶっ倒れてるっていうなら、霊力を吸ってる物を壊せばいい…………というのに何であの三匹は気づいてなかったのかね?」

 

 症状は深刻な霊力不足で倒れているだけだった。時間をおけば自然と治る症状だ。しかし、はめている指輪に霊力を吸われ続け回復せずに眠っていた。こんな結界の中じゃなければ餓死直行だっただろう。よって神力を込めて指輪を砕いた。

 

「でも、こんなに簡単に済んで、なんか拍子抜け「あ、そうそう、巫女様のはめてる指輪は壊さないでね。巫女様の宝物だから!!」…………………………」

 

 犬の少女よ、殴ってる余裕があるなら先に言え

 

 指輪を壊した影響がもうじき結界に及ぶだろう。バレるのも時間の問題か…………

 

「…………いや、手はある」

 

 今思えば先に言わなかったあいつらが悪いわけで、こんなコソコソとしなくてもいいだろうに。しかし、この時の私は何故かどうにかしないとと慌ててしまっていた。それはもう壊れた指輪の残骸を急いで集めるくらいには。

 

「これの材料は………いや、全ては大地の物で作ってるから問題ない………よね」

 

 手のひらに集めた残骸に能力を使ってるのは修復を試みる。残骸は元の形に戻り、ひびが直っていく

 

「ふぅぅぅ、なんとかなったね」

 

 とりあえずこれでいいだろう。

 

「…………姉さん?」

 

 ッ!?

 

 いつの間にか奴らの主が布団から体を起こしてこちらを見ていた。寝ぼけているようでその瞼は半分ほど閉じている。

 

「起きたか、起きたなら私のいうことを聞け。いいか?お前は私に「姉さんッ!!!」フギャァァァァァァァァ!!!!????」

 

 神らしからぬ声をあげてしまったのも無理はない。こいつ突然抱きついてきやがった!?

 

「姉さん帰ってきたんだね!嬉しいよ話したいことがあるんだ、そういっぱい…………!!」

 

 だめだこいつ私を誰かと勘違いしてやがる。しかも意外と抱きしめる力が強い、本当女なのかこいつ?まぁ、私は〈寛大〉で〈懐が広く〉て〈優しい〉神様だからちょっとやそっとのことは許してやらんでも

 

「あれ、姉さんさん縮んだ………その、色々と」

 

 そういった奴の目線は私のむ

 

「死に晒せ!!!!!!!!!!!」

 

「ゴベラッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが私と楔の出会いだった。ただし、最悪の、が前につくが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みに楔君はずっと巫女服です
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