永琳side
『あらゆる物を戻す程度の能力』
使い方を誤れば何が起こるか分からない危険な力………のはずだったのだけど
「…そういうわけでわなさそうね」
「……………ガクッ」
目の前で倒れた楔を見てとりあえず布団に寝かせましょうかと考えた。
何が起きたかと言うと少し前までさかのぼる…
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「『あらゆる物を戻す程度の能力』…ですか?」
「昨日あったことをふまえるとそうとしか言えないわ」
「昨日って…薬に名前を付けたい以外何もやっていませんが…」
「小瓶、落としたでしょ」
「そうですが小瓶は無事だったですよね………まさかッ!?」
気づいたようね、もう少し早く気づくと思ったけど
「そう、割れたのよ。それから戻った」
「あの、つかぬ事をお聞きしますが……割れてたら僕どうなってましたか?」
そんなの決まってるじゃない
「まずこの前作った薬を飲ませて経過を見てから昔作りかけて副作用が酷かったから実験するのはやめておこうと思った薬の実験を久々にやろうかしらその後しばらく何もせずに警戒心がなくなってきた頃に毎食食事に薬を混ぜて食べさせてそれから………フフッ」
「いくらなんでも酷すぎませんかねッ!?」
「それくらい奇跡的な調合で作られたものなのよあれは」
材料も希少なものが多くてもう作れないしね
「知らずに命の危機にあったのか………能力があって助かった」
「その能力のせいで場合によっては、私はあなたを殺さないといけなくなったのだけどね」
「へ?」
呆れるほど面白い顔にってるわ。でも笑っている場合じゃない。それほどまでに深刻な問題になっている。
「な、なにを言ってるんですか永琳さん。あ、わかりましたよどうせ仮死状態にする薬とか作ったからそれを試すんですね。だったらそんな回りくどい言い方しなくても「冗談じゃないわよ」………」
「楔はわかってないわ。その能力は危険すぎる。あらゆる物を戻す、それだけを聞けばひどく便利なものに聞こえるわ。怪我をしても物を壊しても戻せる。過去の失敗だって、時間を戻せば成功に変わるかもしれない。でもね楔、あらゆる物を戻せるなら、”あらゆる存在を生まれる前に戻す”………そんなことが出来ても不思議ではないわ」
「………」
楔は真剣に私の言葉に集中している。それもそうよね自分の生死がかかってるのだもの
「悪用すればこれ程厄介な能力はないわ。向かうところ敵なし。街ごと出来る前に戻せるかもしれない。もしかしたらこの星を誕生する前に戻すことができるかもしれない。そんな危険な能力を持った存在を、楔はどう思う?」
「永琳さん」
「何かしら?」
いつになく真剣な顔でこちらを見てくる。その口から出る言葉は命乞いか、それとも私に対する怒り
「僕を殺してください」
………………きっと今後一生見ることができないほど、一つの感情で表情が変わっているだろう。
驚愕
一瞬の迷いも見せずに自ら命を差し出そうと言っている。ありえない、そんなことがあるはずがない。現に永遠に生きようと穢れのない月に移住しようとする計画が立っているのだ。人間だれだって命が惜しい、永く生きようと心の何処かでは思っているはずだ。
「楔はそれでいいの?」
無意識にそんな言葉がでていた。
「確かに死にたくわないですよ。だからあの時だって生き延びようと必死でした訳ですし…」
でも、と楔は言葉を続ける
「考えたんですよ、ほんの一瞬でしたけどそれだけで答えは出ました。そんな力、怖いに決まってるじゃないですか。気づいたら世界が終わっているかもしれない、その気がなくてもですよ。そんな力を僕が持っている。怖いに決まってます」
「………」
今度は私が楔の言葉に耳を傾ける
「死ぬのも怖いですよ。でも、そんなことより………こんな僕の為に泣いてくれてる人がいなくなってしまうことが一番怖い!!」
「ッッッ!?」
いつの間にか泣いていた。楔とはたった一ヶ月の間一緒に暮らしてただけなのに
「そんな優しい人が………永琳さんがいなくなってしまうなら、僕は喜んで死にます」
言葉が出なかった。楔の言葉には覚悟がみえていた、つまり本気で言っている。
………こっちも決心はついた
「さぁ、できることなら痛みの無いように一瞬でお願いしますね」
「………楔」
「はい」
「あなたに八意の姓をあげるわ。今後、八意 楔と名乗りなさい。八意家の一員として恥ずかしく無いように努めるのよ」
「………え?」
「だから私の家族になりなさいと言ってるのよ。年齢から私が姉で楔が弟ね。八意の人間たるもの勉学が出来なければいけないわ。武術もある程度出来ないといけないわよ。さぁ明日から忙しくなるわよ楔」
「いいんですか?」
「いいも何もないわよ。家族なんだから、私も協力するから。まずは現状どの程度のことができるのか調べる必要があるわね…ってちょっと聞いてる?」
楔目には涙が溢れていた
「グスッ、えぇぇぇぇりんさぁぁぁんありがどぉごじゃいましゅぅぅぅ!!」
「ほら泣くんじゃないわよ。あと、これから私のことは姉さんと呼びなさい」
「ハイッ!わかりました……………ねえさん」
「はうぅ!?」
今まで姉と呼ばれたことがなかったからか、楔の凛々しいというより可愛さの残っている顔を恥ずかしさからか赤く染めていたからか、もしくわその両方か………
「………もう一回言って」
「………ねえさん」
「…もう一回」
「…ねえさん」
「もう一回!!」
「ねえさん!!」
ダキッ
私の中の何かが切れた
楔side
永り…姉さんのホールドから抜け出してお互いに落ち着いてからこれからどうするかはなしあった………抱きしめられた時に感じた柔らかさを何処かで感じた気がしたのは気のせいだろうか?
「それでこれからどうするんですか姉さん?」
「まずこれを飲みなさい」
手渡されたのはやはり薬
「あの……これは?」
「能力を暴走させる薬よ「それってまずいじゃないですか!?」まぁ聞きなさい。楔の能力の限界を知るためよ。大丈夫、何かあってもお姉ちゃんがなんとかするわ」
己の限界を知るため、それだけでこんなにリスクの高いことをしていいのだろうか?
「お姉ちゃんを信じなさい」
そう言われたら、僕のことを信じてくれる人を信じないわけないじゃないか!?
「行きます!!」
永琳side
「…そういうわけでわなさそうね」
「……………ガクッ」
薬を飲んだ楔は能力を発動させた。楔の限界、それは
「家がピカピカね、あら家具も」
私達の家と家具を新品同然に戻す程度だった。
………それもそうよね、あんな能力何の代償もなしに使えるわけないわよね。それでいて限界が思ったよりもかなり低い。
「代償は霊力と体力、他にもありえるわね………記憶とか」
だとしたら楔は何を戻したのだろう?
記憶を失うほどのもの………か
「考えていても仕方が無い」
今は体力がカラカラになって気絶している弟をはこびましょうか
ブラコンえーりん………やっちゃった