楔side
「はぁはぁはぁ」
止まるな、振り返るな、走り続けろ
「はぁはぁはぁ」
息が苦しい、それでも走れ、さもないと………
「くぅぅぅさぁぁぁびぃぃぃ………どこにいるのぉ?」
鬼がやってくるぞ!!
「はぁはぁ……どうして………こんなことに……………?」
時は朝まで遡る
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「うぅぅぅん………………よく寝た」
三ヶ月間の体力作りが終わった次の朝。姉さんの薬のおかげで凄まじい早さで体が出来ていき、最初は筋肉痛で苦しんだ身体も、今では何時間走り続けても息が上がることも無いほどになっていた。こんなに効果があって副作用が無いなんて凄い薬だよね
「今日から姉さんが教えてくれるんだよな………頑張らないと」
グッと拳を握って気合いを入れる
「イタッ!」
手のひらに鋭い痛みが走った
「いたた……爪がささった……」
拳を握った時に爪が手のひらにささったようだ
「でもこんなにとんがってたっけ?」
あとで切っておこう
「まず姉さんを起こしに行かないとな」
僕は姉さんよりも早く起きるので姉さんを起こしに行くのが朝の日課となっていた。自分の部屋を出て姉さんの部屋に向かう。身体が軽く感じるのは特訓のおかげだろう
「あれ?この服こんなに裾長かったっけ?」
いつも着ている服はちょうどよかったと思ってたけど………
「新しい服を買ってきてくれたのかな?」
僕はその能力故人目につかないようにこの家の外には出ていない。だから買い物は姉さんが行っているので、たぶん昨日買ってきてくれたのだろう
「あとでありがとって言っておかないと」
そう思いながら姉さんの寝ている部屋へと足を進めた
もしかするとこの時、僕の身体に起きている異変に気づいていればこんなことにはならなかったのかもしれない………
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「姉さん、朝だよ起きて」
姉さんは朝に弱いわけではないが、僕が義弟になってから起こしに来るように言われていた
「ほら、朝だよ姉さん起きて」
「うぅぅ………くさび……………」
どうやら昨日は夜遅くまで薬を作っていたのだろう。今日はなかなか起きない
「起きてってばぁ」
姉さんをゆすってみる。これは流石に効いたらしくようやく起きた
「おはよう姉さん。今日はよろしくね。あと新しい服ありがと」
「おはよう楔。ビシバシやるから覚悟しなさい。あと服なんて買ってきてな……………」
「?姉さんどうしたの?」
「………………お姉ちゃんまだ眠ってるみたい」
「何言ってるのさちゃんと起きてるじゃない」
「………………そうね。現実逃避はやめるわ。ちょっと鏡見てきなさい楔」
「?」
何を言ってるのかさっぱりだが言うとおりに姿見の前に立つ
そこにはネコミミと尻尾を生やした僕似の子供の姿が……………
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
僕の絶叫がこの家に響いた
・・・・・・・
・・・・・
・・・
永琳side
「まさか副作用があっただなんて………」
「ごめんね楔。あの薬ほんの少しだけだけど副作用があるのよ。でも百回くらい服用して蓄積しないと出ないはずだったんだけど………楔、お姉ちゃんよりも背が低いし三ヶ月間分でちょうど副作用が出ちゃったのね………まさかこんな副作用とは思ってなかったけど………」
「そんなぁ………」
落ち込む楔。耳と尻尾も力なく垂れてしまっている………感情と連動しているのかしら
「そんなにおちこむことないわ。副作用と言っても一日もあれば元に戻るわ」
「本当!!」
あっ今度は凄い勢いで尻尾が振られてる………やだ可愛すぎる。あ、鼻から………
「お姉ちゃんも早く収まるようになんとかしてみるわ」
「ありがと姉さん!!」
まるで花が咲いたかのような笑顔でそう言った楔はお持ち帰り決定ね………もう家か、ここ
「………楔、お願いがあるのだけど」
「なに?なんでも聞いてあげるよ!」
若干精神も子供に近くなっているようだ。なんでも聞くなんて言ってるのがその証拠
「お姉ちゃんのことお姉ちゃんって言って欲しいの………ダメかしら?」
自分から姉さんと言えと言ったのもなんだが一度お姉ちゃんとも呼ばれてみたいと日頃おもっていた。精神が子供に近い今なら簡単に言ってもらえるかも………
「そんなことでいいの?」
かかった!!
「じゃあお姉ちゃんの後に大好きも言ってくれるかしら?」
普段の楔からは絶対に行ってくれないものね
「うん、いいよ
”お姉ちゃん大好き!!”
って姉さん大丈夫!?凄く血が出てるけど!?」
「おね…ちゃんだいすきって……………」
「姉さん?」
もう………我慢できそうにない………
「楔今から一緒にお風呂に入りましょうか朝だけどいいわよねああもちろん夜も一緒に入るわよ洗いっこするのもいいわね今日の特訓はお休みにしましょうお昼はのんびりしましょうか楔はお姉ちゃんの膝の上に乗ってね寝るときは一緒に寝るのは当たり前だしそうたわご飯を食べさせてあげる代わりに楔もお姉ちゃんに食べさせてねフフフそれからそれから…………………あら楔どこに行くの?」
楔が何故か泣きながら部屋を猫のように飛び出して行った………さては鬼ごっこね!一緒に遊びたいならそう言ってくれればいいのに
「いっしょにあそんであげる…………フフフ」
ああ、たのしみね
・・・・・・・
・・・・・
・・・
楔side
「くぅぅぅさぁぁぁびぃぃぃ………どこにいるのぉ?」
「はぁはぁ……どうして………こんなことに……………?」
全速力で逃げてきたはいいがすぐに姉さんは追ってきた。どうやら今の僕は猫並の身体能力があるようで今はそれを活かし庭にあった高い木の上に隠れている
「鬼ごっこの次はかくれんぼか………見つかったらどうなるんだろう」
こんな時に能力は使えないし………ハッ!?
「そうだよ僕にはこの能力があるじゃないか!!」
僕に副作用が出る前に身体の状態を戻せば…………………
「なん………だと………!?」
能力が使えない!!なんで!?
「多分、子供の姿になっているから能力も弱まって、発動するけど副作用が出る前には戻せない………ってことじゃないかしら?」
「そういうことか………………ん?」
今後ろから声が………いやいやここは木の上だぞしかもかなり高い所だしいくら姉さんでもここまでは
「霊力があれば誰でも飛べるわよ」
……………振り返ると
「さぁくさび、今日はお姉ちゃんとたくさん遊びましょうか」
ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「ハッ!!」
ここは………僕の部屋か………
「身体はッ!…………なんともなってない」
夢………だったのか
「考えてみれば副作用でネコミミや尻尾が生えたり子供になったり………そんなのあり得ないよね」
それにしてもリアルな夢だったな………はて?
「日にちが一日過ぎている………」
おかしいな今日は姉さんから教えてもらえる最初の日のはずなのに
「うぅぅぅん………」
「……………」
隣から声がした……………
掛け布団が妙に膨らんでいる……………
「ま、まさかね………」
恐る恐る掛け布団をめくってみるとそこには………
最後なんかホラーでありそうだよね