銀河英雄伝説~黄金樹《ゴールデンバウム》と2人の英雄~   作:フリードリヒ提督

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前書き~戦乱の宇宙~

―――宇宙は、無数の輝きに満ちている。

 

星の瞬きもあれば、中には、生命の営みの中で放たれるものもあるだろう。

 

そう言った意味に於いて、天の川銀河・サジタリウス腕の“ある時期”は、無尽蔵とも思える様な煌めき―――命を対価に放たれる光に満ちていた。

 

 

―――宇宙歴640年/帝国歴331年標準時2月頃、戦艦同士の突発戦闘と言う形で、2つの勢力が邂逅(かいこう)を果たした。

 

曰く「人類の唯一の政体」を自認する、銀河系オリオン腕にその領土を有する専制国家「ゴールデンバウム朝銀河帝国」と、民主共和制を標榜し、同じ銀河系のサジタリウス腕に領土を持つ共和制国家「自由(Free)惑星(Planets)同盟(Alliance)」である。

 

 その当時、第20代皇帝フリードリヒ3世の治世にある銀河帝国では一世紀以上の前の古記録を漁り、アルタイルから集団脱走した政治犯達が生き延び、今や一国を建てる程の大勢力と化したことを知ったのである。その上で帝国は自ら以外の対等な人類の政体を認めず、自由惑星同盟を「辺境の叛徒」と称し、フリードリヒ3世の三男ヘルベルト大公を司令官として、直ちに52,600隻に上る大艦隊を編成して討伐に乗り出す事となった。

一方でこの時が来る事を予め知っていた自由惑星同盟も、マヌエル・ジョアン・パトリシオ最高評議会議長の指示により、その持てる戦力を結集して、同盟軍宇宙艦隊司令官の一人であるリン・パオ中将を総司令官、ユースフ・トパロウル中将を参謀長として、直接参加戦力26,000隻で以て、帝国艦隊を迎撃するべく準備を始める。

 

これが、「ダゴン星域会戦」と呼ばれる、帝国と同盟最初の艦隊戦のあらましである。

 

 以降150年以上に渡って、同盟と帝国は、ある同盟政府財務委員長の言葉を引用すれば「財政の許容する範囲で」戦争を継続したが決着は付かず、しかし腐敗した同盟軍は、1人の英雄の為に散々なまでに打ちのめされた挙句、政治・人材共に一新された新帝国軍によって反論の余地なく打ち砕かれ、宇宙暦800年/新帝国暦2年2月20日、自由惑星同盟は滅亡の運命を辿った。世に言う、「冬バラ園の勅令」である。

 

これによって銀河帝国の覇権が確立され、小さな小競り合い―――と言うには余りに大規模な戦闘―――を経て、長い平和な時代に再び突入する事になる―――それが、本来あるべき、我らの歴史である。

 

 

 

―――だが、歴史家達は必ずしも思う事がある。それが所謂「IF」である。

 

 もし仮に、「同じ陣営」に、「不世出の英雄」が「2人」いたら、果たして歴史はどう動いていたのか。興味深い設問である。そのもしが成立するとしたら、どの様な境遇であれば有り得るのか。どういった立場であればどうなるのか。多数の仮説を立てる事が出来るだろう。

 

 だが、過去に対して「もしも」は存在しない。それは結果が全ての世界であり、過去に確定した「結果」が、今の全てであるからである。皆、そんな事は分かっている。だからこそ、仮想の歴史を追い求めようとする者もまた、絶滅する事は無いであろう。

そこには、言葉には言い尽くせない様々なものがあるからだ。「現在」とは違った未来、起こり得なかった出来事、「正史ではありえない」人物の遍歴―――それらを「ロマン」と称し、追い求める「興味」が、絶滅しない限りは。

 

 新帝国歴211年の現在で、最も多く仮説を求められているものの一つとして、「もし有力な皇位継承者の男子が、フリードリヒ4世の死後に存在していたら」であろう。

今回はより現実的な観点から、この仮説を検証してみようと思う。しかしここで一つの疑問があるであろう。

 

―――「果たしてそのような仮説が成立し得る家があるのか?」ということである。

 

 端的に言えば、「ある」。と言うより、これですら「そう在り得た」と言う可能性の領域でしかないが、いくつか候補になり得る家は確かに存在する。

無論それは旧銀河帝国開闢以来の門閥の家柄であったり、皇帝一族の庶家であったりなど由来は様々とは言え、数々の政治闘争や事件などによって絶えてしまったり、歴史の闇に葬り去られたものも数多い。その最も著名な例は、やはり第14代皇帝「流血帝」アウグスト2世であろう。

 彼は最低でも600万人から、一説には2億にも上る人々を、単なる保身や自身の快楽の為に殺害したとされており、その中には多くの貴族や皇族などが含まれているからである。それ故にアウグスト2世がいなければ、皇位継承順位は大きく変動した事は疑いようのない事実であった。

 

 今回私が目指したのは、可能な限り現実的で、且つ、“夢のある”シナリオをご用意した。なぜならそれが成立する家が1家、存在したからである。

それが、今作の主役を飾る事になる公爵家である、「ブランデンブルグ公爵家」である。

 歴史が、その手の指の隙間から零れ落とした砂粒の一つ。それが零れ落ちる事無く残った時、歴史はどのような変化を及ぼすのか。今回はそれを、当時の帝国・同盟双方の事情に照らし合わせながら、考証と構築を試みた次第である。その結果の程を、この作品を手に取った諸氏にも、是非ご覧頂きたいと思う。

細やかな娯楽に過ぎないものではあるが、どうか、お付き合い頂きたく、切にお願いする事にしよう。

 

 

―――歴史評論家/作家 ルーカス・ミンツ

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