神様の引退垢から最強のエルフアバターもらったよ   作:三次元豚

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説明会

「ふぅー、状況は飲み込めました。お話を続けてください」

 

 僕は大きく息を吐いて気持ちを切り替えた。

 

「はい、それでは……」

 

「あっ、その前に。一体あなたは何者なんでしょうか?」

 

「これは申し遅れました。そうですね。私のことは、ずばり神のようなものと思って頂ければ差し支えないかと。

 と言っても、できることが多いだけで、信仰を集めるような存在ではないのですけれどね。

 まぁ、このへんは掘り下げると長いですから。機会があれば、またその時にでも

 

 ……さて、前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入りましょう。

 あなたのこれからについてです」

 

 やっぱり神様的な存在なんだ。まー、神でも悪魔でも言われたままを信じるしかないけど。

 今の僕にできるのは、せいぜい彼の機嫌を損ねないように心掛けるくらいだ。

 

「……これからというと、死後の世界でもあるんでしょうか? ちょっと地獄行きはカンベンして欲しいんですが……」

 

 さすがに在宅ワークでうんこ製造を生業とする身分で、天国へ行けると思うほど僕も厚かましくない。

 少しでもマシな将来があるとしたら、それに縋りたい。

 

「いえ、そういった類のお話ではなく、とある世界への転生のお誘いです。」

 

「転生?」

 

「まずは前提のお話からしましょう。

 通常、死者の魂というものは一度粉々に分解されて、魂の海とも呼べる根源へと帰ります。

 これは例えるなら、魂が溶け合い混ざり合ったスープのようなイメージです。

 いわゆる輪廻転生とは、このスープから必要量の原液を汲み上げて、新たな生命に合わせて注入、成型することを指しています」

 

 えぇー、輪廻転生グロいな。工業プラントかなにかなの?

 まるで再生ペレットがペットボトルに生まれ変わる無限ループだ。

 転生と地獄の二択を迫られたとしても、甲乙つけがたいんですけど……。

 いや待てよ。美女の魂と混ざり合う可能性を考えれば……ないな。

 確率的に考えて、じぃばぁが主成分ですね。ないない。

 

「今回ご提案させて頂くのは、これらのプロセスを踏まない転生です。

 具体的に申しますと、こちらで用意した肉体に、あなたの魂をそのまま移植する形になります」

 

 ほー、いいじゃないか! そういうのでいいんだよ。そういうので。

 この際、高望みはしません。健康な身体さえあれば人生なんとかなりますからね。かくいう僕も健康が取り柄だったんだ。

 

「ハイハイッ! 顔はイケメンでお願いします!」

 

 無意識のうちに声に出していた。おまけに起立と挙手まで。

 望外のチャンスを前にして、この身の勝手を許してしまったようだ。

 いかなる時も冷静沈着たれ、をモットーとする僕としては珍しい醜態だ。

 

「落ち着いてください。新しい肉体を創造するわけではありません。

 既存のものを使うので容姿は決まっています」

 

 既存? ふーん、死体でも使うのかな? 亡くなった人に憑りついて替え玉をやれ、とか?

 だとしても、通常コースの転生に比べれば許容範囲ではあるけれど……。

 

「実際にお見せしたほうが早いですね。こちらです」

 

 そう言っておじさんはパッチンと指を鳴らした。

 すごい……。僕がかつて習得できなかった技を易々と。僕にはペチンという、しけた音しか鳴らすことができない。

 おじさんの指パッチンに少し遅れて部屋の照明が落ちる。そして壁にかかったスクリーンに映像が浮かび上がった。

 

 女の子だ。ふわふわの長い金髪の女の子が映っている。

 十代の真ん中くらいか。透き通るような白い肌。少しあどけなさの残る顔立ちは驚くほど整っているが、その瞳は静かに閉じている。

 そして特徴的なのがその耳。ちょっと長いのだ。ひょっとしてエルフというやつだろうか。

 服装は黒を基調としたワンピースで、上半身は軍服調のカッチリとしたジャケット。キュッと絞った腰から下は、膝丈のスカートがふんわりと広がっている。

 いわゆるミリタリーロリータ。キュートなのに格調高くもあり、甘すぎないのがいい感じだ。

 

「も、もしかして、この子に僕が乗り移るんですか? 僕みたいな中年男性が年頃の女の子の身体を奪うってのは、さすがにちょっと抵抗が……」

 

 いくら亡くなっていたとしてもこの子が不憫だ。それに性転換というのもハードルが高い。なんとか女装くらいにまからないものか……。そっちなら僕も興味あるのに。

 

「ご安心ください。その身体は以前に私が使っていたものです。藤木さんにお譲りしたところで誰はばかることはございません。」

 

 えぇー、わけがわからないよ。じゃあ、なんでそんなハゲ散らかした姿に……。前の身体捨てるメリットないでしょ。

 

「彼女はですね。レクリエーション用に創造された世界での私のアバター。言うなればゲームの使用キャラになります。

 かれこれもう二千年ほど経つでしょうか。私はすっかりその世界にインすることもなくなってしまい、どうにも彼女を持て余していたのです。

 気持ちの区切りに消去することも検討したのですが、思い入れもあってそれも忍びなくてですね……。

 そのような経緯で以前から、どなたかにこれを譲れないものかと考えていたところに、折りよくあなたが現れたというわけです」

 

 ほー、なるほど。でも気持ちはわかる。

 僕も引退したソーシャルゲームで、とくに思い入れの深いものは、アプリを消さずに残していたりする。

 リアルマネーでアカウント売買なんて手もあるけど、顔も知れない誰かに売るのは、どうにも二の足を踏んでしまうのだ。

 売った相手がデータを大切にしてくれる保障はないし、運営に知られてアカウントを停止されては目も当てられない。

 そんなリスクを負うくらいなら、いっそ欲しがっている人に無償で譲ってしまえばいい。そんな風に考えるのも人情だろう。

 

 だからと言って僕が女の子になるというなら話は別だ。できればこの提案を拒否したい。けれどそれでは魂分解コースが待っている。その結末だけは絶対に回避しなければならない。

 なんとか交渉で上手いことできないものか……。

 

「あ、あの。アバターっておっしゃいましたよね? そういうゲーム的な存在ならキャラクリはできないんですか? キャラクリで容姿や性別をいじれるなら、こちらとしては大変ありがたいんですけど……」

 

「できるかできないかで言えばできます。しかしやりません。私は言いましたよね? 思い入れがあると。ですから彼女の容姿を変えることは許可できません」

 

ううぅ……手強い。だけどここで引き下がるわけにはいかない。なんとかギリギリまで攻めて突破口を見つけないと。

 

「じ、じゃあ、性別だけ! 見た目はそのままで性別だけ男にしてください! 今流行りの男の娘ですよ。これはかわいい。服を脱がないと男女の区別がつかないなら、これはもう同じ容姿と言っても過言ではないでしょう!

 ですから何とぞ僕にちんこをください。どうしてもちんこが欲しいんです!」

 

「……はぁ、仕方ないですね。わかりました。性別変更を認めましょう。

 まぁ、私のこの姿をご覧になればおわかりでしょうが、私自身さほど性別にはこだわりはないですからね。そこは妥協できます。

 ただし容姿はこのままですよ」

 

 性別どころか容姿にもこだわりがなさそうなヘアスタイルでなにを言ってるのやら。でも、そこをつっこむとヤブヘビになりそうだし、触らぬ神になんとやらだ。

 ともあれ僕のあまりの欲しがりっぷりに、神様も気持ちがほだされたようで、なんとかちんこをゲットすることができた。

 成人向けコンテンツの快楽堕ちヒロインを意識しておねだりした甲斐があったというものだ。

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