神様の引退垢から最強のエルフアバターもらったよ   作:三次元豚

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二話更新一話目


冒険者ギルド

 冒険者ギルドは都市を横断する運河に沿って建っていた。

 この街で見かける平均的な住居を三つほど束ねたくらいの幅があり、下から見上げると大きな壁のように見える。

 

「でかいなー、儲かってるのかな」

 

 景気がいいのはいいことだ。ぜひ僕もあやかりたいものだ。

 

「お邪魔します」

 

 場所を間違えてたら気まずいので、念のため小声で挨拶をしてからドアを開けた。

 

「酒場?」

 

 外観相応に広い室内には、乱雑に並べらたテーブルと、卓を囲みジョッキを煽るガラの悪い男たちが確認できた。

 窓が小さく採光が足りないためか、室内は夕暮れ時のように薄暗い。壁にかかったランタンのオレンジの明かりが、より一層その印象を強くしている。

 ぶっちゃけ不良のたまり場にしか見えない。この中に入らないといけないなんて、どんな罰ゲームだ。見た目美少女エルフとか完全にアウェーじゃないか。

 しかもこいつら全員が全員、酒を飲む手を止めてこっちを見ている。おまけに「おい見ろよ!」とか「ヒュー」とか言って、テンションあげあげだ。

 

 一刻も早く帰りたい……。とにかく酔客以外で話ができそうな人を見つけないと。

 店内を見渡すと客席とは離れた位置に大きいカウンターがあった。カウンターの中には女性が二人にいる。そのうちの一人が僕に向けて、こっちだよとばかりに手招きをしていた。

 あそこが受付なのか。僕はカウンターまで脇目も振らずに駆け付けた。

 

「いらっしゃい、お嬢ちゃん。ご依頼かしら?」

 

 二十代の半ばくらいのお姉さんが、気だるげに声をかけてきた。眠たげな眼をこちらに向けて頬杖をついている。まるでやる気が見られない。

 だが僕は知っている。こういう人こそ信用できるのだ。おそらく面倒事があっても上司に報告したりせずに、場当たり的な処理でうやむやにするタイプだ。

 僕のブラックカードを見せるに相応しい相手と言えよう。きっと不審を抱いても、面倒くさがってなあなあで済ませてくれるはずだ。

 

「あのー、こちらで仕事を紹介してもらえるって聞いたんですけど……」

 

「うちで斡旋してるのは商会の護衛やモンスターの討伐よぉ? 荒事が前提になるから、銅札以上しか受け付けてないけど、お嬢ちゃんはお持ち?」

 

「えーと、これじゃダメですか?」

 

 僕はおそるおそるブラックカードを差し出す。

 

「だからぁ、鉄札じゃあ……って、なにこれ! 黒くない?」

 

 お姉さんは僕の手からカードを奪い取ると、顔の前に近づけてまじまじと見つめた。

 それだけでなく手を遠ざけたり裏返してみたり、照明に当てて色合いを確認したりと目立つことこの上ない。

 

「ちょ、見せびらかすのやめて」

 

「ねぇ、これなんだかわかる?」

 

 僕が奪い返そうとするより先に、お姉さんが隣の席の同僚の人にカードを渡してしまった。

 くそう。全力で楽天的な予測を立てたけど、こんなカードを見せられたら誰かに相談するのは当たり前だった。

 二人は「わー、こんなの見たことない」「これって鉄札かな?」などと盛り上がってる。おかげで周りの視線を集めて仕方ない。

 

「もう返して!」

 

 カウンターから乗り出して、二人からカードを奪い取った。

 

「あー、ごめんねぇ。でも、そのカードじゃ仕事は紹介できないかな。鑑定で戦力値を見せてもらえれば話は別だけど」

 

「じゃあいいです」

 

 こんなところで僕の異常な戦力値は見せたくない。そもそも彼女たちは僕の1~2%程度の戦力値しかないはずだ。これほどの格差がある場合、はたして鑑定が通じるのだろうか。手のひらを見せても無理という可能性がある。

 

「あ、でも戦力値を見せてもらうだけじゃダメかも。黒いカードなんて前例がないし、ちゃんとギルドマスターの許可をもらわないとね。今聞ければいいんだけど、あのオッサン出かけてるのよねぇ。なんでもワイバーンが出たんですって。知ってるワイバーン? こーんなでっかい飛竜。って私も実際に見たことないんだけどねぇ。

 あ、でも安心してね。ワイバーンに襲われたリアトリス家の騎士たちが、そのまま倒しちゃったそうだから。まあ、そんなわけで今現在ギルドマスターは、ギルドの腕利き連中を連れて死体の回収に行ってるってわけ。なにせワイバーンの素材となると、一千万ノリタマは下らない大商いだしねぇ」

 

 もしかしなくてもワイバーンって、僕が撃ち落としたあの翼竜のことだよね。

 それにしても一千万ってどういうことだよ。死骸置いてきちゃったじゃないか。しかも回収に行ってるだと? 他人様の成果を横取りしようとは、なんてけしからん奴らだ。どうにか落とし前をつけてやりたいところだけど、さてどうしてくれよう……。

 

「リアトリス家が倒したものを冒険者ギルドが回収するんですか?」

 

「そうよぉ、死体漁りは我ら下賤の仕事ってね。って言うのは冗談としても、うちには解体のノウハウも販路もあるからねぇ。全部投げてくれたほうがお互い楽なのよ」

 

 ふーん、出張買取みたいなものか。しかし、ちゃっかりしてるなぁリアトリス家。人の成果を掠め取ってお金儲けとは、貴族にあるまじき所業。

 決めた! ここはリアトリス家からこっそりお宝を頂いて、一千万ノリタマ分の損失補填をしてもらおう。彼からしたら、一千万盗られたところで金銭的に損はないし、ワイバーンスレイヤーの名声は得られたんだ。むしろ収支は黒字なくらいだ。これぞ、俺にヨシお前にヨシの良案ってやつだよ。

 

「ところでリアトリス家というのは、どういったお家なんですか?」

 

「リアトリス伯爵家を知らないの? ここリアトリスのご領主様よぉ?」

 

 へー、街の名前にもなってる貴族なんだ。

 それにしても伯爵家か。爵位ってよく知らないけど上級貴族ってやつ?

 僕の認識だと、公爵とか侯爵とか頭にコウが付くやつがデカい領地を持ってる大大名って感じだ。

 伯爵はそいつらのワンランク下の小大名。子爵と男爵は、旗本や御家人と言った下っ端役人のイメージだ。

 

「はー、伯爵様ですか。さぞかしお偉いんでしょうね」

 

「実際偉いのよぉ? リアトリスは交通の要衝だし、交易から得られる税が大きいから、下手な侯爵家より力があるって噂なんだから」

 

 ほー、そんなに儲かってるなら、ますます打ってつけだな。多少多めに金品を頂いても家計が傾くこともなさそうだ。冒険者ギルドを出たら早速お邪魔しよう。ここで得るものはなさそうだしね。

 

「景気が良さそうで羨ましいです。僕もお金が欲しいので、他所で仕事を探してみようかと思います。このカードじゃ冒険者の仕事は無理みたいだし」

 

「ええ、それがいいと思うわぁ。薬草採取なら誰でも受け付けてるから、よかったら検討してみて。別の日ならギルドマスターも居るはずだから、カードのことを相談してみるのも手よ? それじゃあ、お仕事探しがんばってねぇ」

 

 薬草採取ってなんだそれ? まともな収入になるとは思えないんですけど……。もう盗賊プレイに気持ちが傾いてるから、そんなシケた仕事する気になれません。すまんなお姉さん。

 

「はい、検討してみます。それでは、お世話になりました」

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