……結局、今日の勝負は一体どうなったんだろうか。
先ほどからベッドの上で落ち着かなく転がりながら考えるのは、その事ばかりだ。
音ゲーがひと段落ついた時に、ふと結果はどうだったんだろう? と確かに疑問には思ったのだ。
……だけど、自分が負けていたらと思うと怖くて、そんなときに「さぁ、次はレースゲームをプレイしに行きますよ」という楽し気な声に引っ張られ、結果を聞くのは後でもいいかって先延ばしにしてしまって……そして三人でその後もいろんなゲームをしている内に、頭の中から勝負の事なんかすっぽ抜けてしまっていた。
「でも、楽しかったなぁ……」
今日みたく以前のように――といっても二人っきりではないのだけど――一緒に時間を過ごしたのは随分と久しぶりだ。
考えてみれば、最近はずっと二人で争ってばかりでまともに話せてすらいなかった。
それなのに今日は――否、今日だけじゃない。
ここ三日、勝負が始まってからずっと楽しかった。久しぶりに一緒にいれて、話して、笑顔が見れて、そして……。
……そして、それと同時にずっと邪魔者としか思っていなかった存在が、思っていたほど意地悪でも性格が悪い訳でもないと知ってしまった。
顔を思い出しても、以前のように嫌な気持ちにはなれない。
まあ確かに、これから教え教えられの関係になるからそんなんじゃ困るんだけど。
少し前までは考えもしなかった関係に少し笑ってしまう。
……だけど。
だけどそうだからといって、やっぱり自分が一番の存在だという気持ちに変わりはない。
「あー、なんで思い切って聞かなかったんだろう……」
自分のつぶやきだけが妙にしんとした部屋に木霊する。
もしちゃんと聞いていれば、もっと今頃すっきりした心持でいれたのに。
……否、それはあくまで自分が勝っていればという願望の混じった予想でしかない。
もし勝っていれば、こんなことで悩まず明日の遊園地の為の服を選んだり、アトラクションを確認したりと、少し落ち着かないながらも心晴れやかに過ごせていることだろう。
だけど……もし、もしも自分が負けていたら。
想像するのも怖くなって、もう一度スマートフォンのロックを外す。
が、新着を知らせる通知はやはりない。
そりゃそうか、だってもし連絡が来たらすぐわかるようにと音量最大に先ほど設定したばかりなのだから。
ため息交じりに携帯を元に戻す。
そもそも、こんな風に連絡が来るものなのだろうか。
いつも通りならあの姉妹が勝負終わりに出てきてなんらか連絡をくれるはずなのだが、今日はいつの間にか消えていて、これからの事はさっぱりだ。
だけど、勝者には明日ペアチケットで遊園地デートに誘って貰うと言っていたし、勝っているならやっぱりなんらか連絡があってもよさそうなものだが……。
もしかしてやはり自分は負けていて、だから連絡が一切ないのだろうか。
そうだとしたら、週明け楽しそうに日曜の事を話しているだろう二人に対してどんな顔をすればいいんだろうか。否そもそも――
思考が無限に負の方向への螺旋に迷い込みそうになったその時だった。
大音量のSNSの通知音が耳元で鳴り響き、思わず体が跳ねる。
緊張に震える手で取り落としそうになりながらなんとかロックを外すと、現れたのは結月ゆかりからの新着メッセージがあるという表示。
ごくりと乾いた喉に唾液がひっかかりながら、震える指を『開く』に近づける。
指が画面に接し、閉じそうになりそうな目を何とか薄目に開けてその内容を脳へと送り。
「やっったあぁっ!!」
スマートフォンを残し、ベッドから飛び起きた。
明日の服を選ばなければならないし、待ち合わせ場所までの電車も調べないといけないし……そういえば、今日はまだお風呂にも入っていない!
慌てて着替えをもって彼女は部屋から飛び出した。
暗い部屋の中、まだ煌々と光るスマホの画面には短く一文『明日遊園地前まで来てください』と、そう表示されていた。