はい。というわけで最終決戦です。取り敢えずぶち抜きましたけどまだ元気ですね。やっぱ神サマとして完成してんじゃん。しかも、なんかでかいエヴァいるし。何ですかあれ私あんなもん知りませんよ。
『で、誰か。状況はどうなんです?』
『私たち以外は退避完了。アスカはリリスに取り込まれた。リツコさんとマヤさんによるとほぼ完全に同化してるって』
黒波が即座に答える。
『ありがとう』
悪知恵が働きますねあのクソ神め。それでですか初号機がシン化してるのは。うーわ。初号機に保管された魂まで出張ってきてますね。勝ったな。
『初号機パイロットさん。これは私がやるからそっちはよろしく』
『…頼む!』
Mark10の剛腕が放たれるが、ATフィールドで弾き飛ばす。そんでもって、エネルギーを纏わせつつロンギヌスの槍を投擲。轟音の後に十字架が刻まれる。
『…ちっ。生命の実持ちですか…。めんどくさい』
さて、この木偶は少し彼には荷が重いかな。出力がほかのエヴァと桁違いというか、エヴァとしても運用していること自体がおかしい。そんな機体だ。槍を回収してっと。この槍を呼び出す能力強いですね。対称が刺さったままであろうとそのまま戻ってきますので。
『…せい』
頸に刺さった槍をMark10に蹴りを入れて抜く。うへー。再生速度が速い…。
【封印システム解除。システム開放】
カッ!!
第7号機から光線が放たれMark10の身体を八割ほど消し飛ばす。だが、Mark10は即座に上半身を再生させるこちらに光線を放とうと瞳を光らせる。
『………』
Mark10の光線が届く前に衝撃波がMark10を吹き飛ばした。
…えー…今の攻撃は私のデストルドーを二本の槍で増幅させて叩き込んだ言わばプチインパクトなんだけど。やっぱATフィールドないか…。アンチATフィールドで倒せないとか…マジなんなん?偽神でも消せるぞ。そもそも、ATフィールド無いのになんで形保ってんですか。
…いやこれATフィールド内側に展開している…?なるほど。溢れ出るエネルギーを内側に閉じ込めてるからそんな馬鹿みたいな再生力なんですね。完全にシン化出来てないからでしょうね。というかまずいですね。その支えてるATフィールド消したんでエネルギーががが。
『なんてね』
形状崩壊を始めたMark10にカシウスの槍を突き刺すぱち波。するとMark10の形状崩壊は止まる。
折角なのでこのエネルギー使いましょう。カシウスの槍を通して機体に流し込めば…
『…ごっふ…キッツ…いやこれキツイ』
身体痛くてワロエナイ。まぁ、人をやめたんで前よりも頑丈ですけど。さて、彼はどうかな。
リリスは困惑していた。この少年はこんなにも強かっただろうか。少なくとも立ち直らないようにしたはずだ。それがどうして私の前に立ちふさがっている?
『…はああああッ!』
目障りだ。
お前はいらない。
必要ない。
そう精神に語りかけても止まる気配がない。こいつは違う。こんな人間は違う。私が知っている碇シンジではない。
『いい加減気付いた?もうお前の考えたシナリオ通りになっていない』
また、不完全な生命に出し抜かれた。そのどうしようもない屈辱から激しい怒りを覚えた。
初号機の腕がリリスのコアに触れようとした時にリリスは姿を変えた。リリスの姿は第13号機から長い髪と健康的な肉体を持つ女性の姿に変化した。アスカそのものに変化した。初号機の顔に手を添えてキスをするように顔を近づけてくる。初号機の瞳が一層深い赤になった気がした。
綾波を助けた時のように僕はアスカを探していた。でも、アスカの姿が見えない。黒い壁が僕の邪魔をする。
『碇君。私が支えるから行って』
黒い壁を綾波がこじ開ける。こじ開けた手が赤く染まっている。僕の身体もそう長くはもたないだろう。
『アスカッ!!』
力の限り叫ぶが声も聞こえない。
周りを見渡した瞬間何かに引っ張られ、僕は黒い海に沈んでいった。
僕はどこか来たことがある場所に横になっていた。そして、自分の上にはアスカが僕の首に手をかけていた。
『…アスカ…』
赤い目をした彼女が僕をのぞき込んでいる。首をにかかる力が増えた気がした。僕はそのまま彼女の行為を受け入れた。かつて、彼女が僕を受け入れてくれたように。
『………なんで……死んでくれないの』
首を絞める力が強くなる。
『…まだ…ッ…アスカを助けてないから』
『助けてほしいなんて思っていない!!』
『…うん。だから、僕が勝手に助ける』
『余計なことしないでよっ!!私は死にたいの!だって、私は…』
『…僕のそばで死んでほしい。これは僕のわがままだ。アスカ』
『うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!!アンタもあいつらと変わんないわよ。どうせ私を捨てるんでしょう!?』
『アスカ。僕はそばにいるよ。僕だけじゃない。綾波やミサトさんだっている』
『嘘よ。だったらなんでこんなにも私は寂しいの…』
首にかかる力が弱まる。
『バカだなぁ。僕と同じだ』
僕は起き上がり泣いてる彼女を抱きしめる。憧れてた彼女はこんなにも小さかった。そう思った。
『大丈夫。僕がそばにいるよ。だから、僕を信じて』
『…なら、私を好きって言いなさいよ…』
消え入りそうな声でそうつぶやくアスカ。うん。誰かを好きになることなんてなかった。でも、色々考えてちゃんと君に伝えることができるよ。
『好きだ。だから、生きて…アスカ…』
『…気色悪い…』
抱きしめる力が強くなる。この空間も崩壊し始めた。
『…私も好きよ…バカシンジ…』
黒い海から2人が飛び出し、1人の少女が受け止めた。
アスカは誰かの体温がこんなにも安心する事を思い出した。
3人の子供は光の中に消えていく。
離れないように固く手を握り合いながら。
彼は約束をちゃんと守ったみたいでよかった。神から2号機のコアを抜き取って形状崩壊させるとはね。本物の神様相手によくやったものです。神から何かを奪うなんてさすがですね。
『そうです。それでこそ人間です。誰かを傷つける事、傷つけられることを受け入れることで生きていく。それが誰かを好きになること。私がここまで生きてきた理由』
神が不完全と評した存在はここまで進化した。私も最後の仕事を終わらせるとしましょう。
2号機のコアを抱いたまま地上に落ちていく初号機に手をかざす。
さて、お別れの言葉は何にしようか。
ふむふむ。見つけましたよ。なんかいい雰囲気だけど無視していきましょう。
『…お疲れ様。素晴らしい活躍でした。次は私の番です』
『…いい雰囲気に首突っ込んでじゃないわよ』
『…また、甘えてきてもいいんです…いったい!あれ、なんで感触あるんです?』
『愛よ』
『…怖いですねぇ』
初号機パイロットと手をつないでいる私と同じ顔をした子がこちらを見て言う。
『…あなたは私だけど違うのね』
『それは当然。中身がパチモンだからね』
『…でも、あなたにもいるのね』
『いるとは?』
『ぽかぽかする存在』
『まぁ、いたかもしれませんね』
私の記憶はスカスカですから。もしかしたら、いたかもしれませんね。一時期それを避けてたような気がしますし。
『さて、君の物語はここで終劇なわけだけど何かをのぞみはある?』
『…出来るなら、また皆と出会いたいな』
『謙虚ですねぇ。俺をモテモテにしてくれとかないんです?』
『僕を好きでいる人はもういるから』
はぁ~このすけこましめ。二人が赤くなってますよ。
『君らしいですね。対価としてこれをもらっていきますよ』
子ども達が消え始める。そろそろ限界ですね。
『では、さよなら』
『…待って』
初号機パイロットが私を呼び止める。
『君ともいつか出会えるかな』
…なんとも…度し難いですね。
『…えぇ。いつか…。…その日まで覚えていたらきっと』
その言葉を最後に子ども達は消えていった。ほら、君たちも行くんですよ。
感覚が戻ってくる。彼らの魂は解き放つことができた。
「…ん。はぁ…覚えていられるかなんて分からないですけどね…」
まぁ、やってみよう。
「…全制御リミッター解除。出力全開」
シン化の過程をぶっ飛ばしてガフの扉をこじ開ける。
「…せぇのっ!ごほっ…ううっ…!』
神が持っていたロンギヌスの槍を自身に突き刺し、カシウスの槍へと変化させる。これで道具はそろった。
私の人類補完計画の始まりだ。
ロンギヌスとカシウスの槍がそれぞれ融合し、世界を破壊して行く。
「…俺はまた、ユイに出会えるだろうか」
「さぁ?あんな先輩もうこりごりだにゃ。それよりもあいつが気なる」
「人間にはできないことをやろうとしている。また出会える可能性は低いだろう」
「私は人間だからこそできると思うけどニャー」
とある二人はいつもの様子で消えていった。
…どうでしょうね。取り敢えず髭の恋路は厳しくしときましょう。具体的には相手を薔薇と百合の道を示します。
「また、私は子どもに何かを背負わせるのね…」
「そうね。そのことを忘れないようにしたいけどできそうもないわ」
「でも、心…魂に刻むことはできると思わない?」
「そんなこと有り得ないわ。というには早いかしら」
とある二人は何かに刻み込みながら消えていった。
貴女たちは大人になりきれなかった。でも、私達に示してくれたものがあることを忘れないで下さいね。
消えていった。全てが消えていった。
「第二段階ですね」
融合した槍は第7号機を貫き、世界を再構築していく。
「げほっ!…まったく。シンクロ率が高いのも困りものですね」
後はもうこの機体が巻き戻った地球に墜ちて、私が消えるのを待つだけ。
消えることは今でも怖い。でも、あの光景を見たら別にいいかなと思ってしまった。
私はこの世界に生まれて幸せだったか?まぁ、幸運とは言えない人生ばかりだった。
それでも幸せだったのかもしれない。この世界で生きていただけで。
たしか…私には隣にいたかった人がいた。
困ったことに欠片もその人のことを覚えていない。というかほとんどの記憶が朧気だ。頑張れば思い出せそうだけど…時間がなさそうね。
世界から彼女は消え、その記憶も消える。
こうしてどこかの誰かは消えていく。
他者がいなければ人は生きていけない。
だから、彼女は消える。
その事に変わりはない。
「誰だっけ…私を繋ぎ止めていた人達は…」
私の声はLCLに溶けていく。そのまま、ゆっくりと目を閉じてボロボロになった記憶をあさる。その時の感情は覚えてるのにそれ以外は忘れてしまった。
自分の首に付けたチョーカーをなでる。もう本来の機能はない。ただの飾りだ。でもなぜか私はそれを付けなければならないと思う。
…あぁ…その誰かもこれを付ける意味も…
「せめてこの意識が消えてしまう前に思い出せたらいいな」
彼女の物語は素晴らしいハッピーエンドで締められる。
異物が消え、何の悲劇もない素晴らしい世界に変わった物語… この結末をハッピーエンドと呼ばなくて何と呼ぶのだろうか。
堕ちた天使の物語はここで終わる。
めでたし、めでたし。
いやー素晴らしいハッピーエンドでしたね。
あっ、誰も彼女のことを覚えていないのでぱち波は消えます。
まぁ、もしとある天使に救われたこととか、その天使が人であったことを覚えている人ががいるのならきっと…。