戦姫絶唱シンフォギア01 ~Take off toward a dream~ 作:光からの使者
ナスターシャ教授の愛を知り、LiNKERを完成させたマリア達。
フルスロットルでアルカ・ノイズを討伐するが、そこへプロテクトビーストが立ちはだかる
バリュエル光明結社の目的は月遺跡を掌握し、バラルの呪詛を解き放つことであった
side S.O.N.G.&錬金術師&バリュエル
「人が人を力で蹂躙し、命が軽視される不完全な世界秩序。それは全てバラルの呪詛に起因する不和がもたらしてきたものだ」
「不完全を完全へと正すことがラセツが望む理想であり、バリュエル光明結社の掲げる理想でもある」
「人の手で月遺跡を掌握するためには、旧支配者に並ぶ力を手に入れ、上書きするのが不可欠」
「我々はバルベルデの他にも各地で儀式を行っていたのさ」
ラセツたちの話を聞いていた響だが、当然納得できるわけがない。
「だとしても、誰かを犠牲にしていい理由にはならないッ!」
「‥‥犠牲などではないッ!流れた血も、失われた命も、必要なものだッ!」
ラセツが剣を振るい、斬撃を放つが、全員バラバラに避ける。
そして戦いの火蓋が切って落とされた。
翼がアームドギアを巨大化させ天ノ逆鱗をラセツ目掛けて振り下ろす。
【天ノ逆鱗】を即座に避けたラセツは自身の斬撃波を錬金術で硬質化させ、アームドギアを貫く。翼に代わり、響は斬撃を掻い潜り、駆け抜ける。サンジェルマンも響を援護しつつ斬撃を撃ちぬいていく。
クリス、マリア、カリオストロはトドロキと交戦していた。マリアの蛇腹剣をトドロキの燃え盛る火炎を壁にして防ぎ、クリスとカリオストロの光弾をも防ぎ切る。
「3人纏めて倍返しさせてもらうぞ。ふんッ!」
思いっ切り地面を踏みしめると地面が隆起し3人は上から突き上げられてしまう。
リーパーも手に持つ『テール・ブレイド』が大蛇のように暴れ狂い、切歌、調、プレラーティを寄せ付けない。
「このままでは‥‥」
「だったらやるデスよッ!調ッ!」
【イグナイトモジュール 抜剣ッ!】
『いけませんッ!賢者の石と同じ力を持つラピスSにダインスレイフの力はッ!』
それでもイグナイトモジュールを起動した調、切歌は立ち向かう。
「浅はかすぎるワケダ‥‥ッ!」
ダインスレイフの力でプロテクトビーストに向かって行く2人に、プレラーティは苦い顔をする。
「当たりさせしなければッ!
「MUST DIEッ!」
ザババの刃がリーパー目掛けて降り注ぐ。
しかしリーパーは不敵に笑みを浮かべる。
「そういう慢心が一番危ないんだぜェェェっ!」
テール・ブレイドを肥大化させ、極太となった剣が調と切歌をはたき落とす。
さらにラピスの効果でイグナイトが解除されてしまった。
「月読ッ!暁ッ!」
「言わんこっちゃないワケダッ!」
一方で響はサンジェルマンと共にラセツと対峙する。
「明日のために私の剣は躊躇わないッ!」
「何故ッ!どうしてッ!」
「伝わるまい‥‥バラルの呪詛がある限り」
「だとしても人の手は誰かを傷つけるためじゃなく、取り合うために‥‥!」
「取り合う…だと‥‥?戯れ言をッ!いわれのない理不尽に晒されたことのない者が語るなぁッ!」
ラセツが全力で剣を振るうと、斬撃が鷹の群れとなって響に襲い掛かる。
しかしサンジェルマンが放った弾丸が狼型のエネルギー弾となり鷹の群れを相殺した。
「サンジェルマンさん‥‥?」
「サンジェルマン‥‥ッ!」
依然としてサンジェルマンはスペルキャスターを構え、響の隣に並び立つ。
「立花響。私とラセツは終始わかり合えぬ者同士。互いに信じた正義を求め、拳を血に染めた」
「故に、今更手を引くわけにはいかないッ!」
響の目の前で2人は激しくた戦い合う。
正義VS正義。どちらも間違っていれば正しくもある。彼女たちは数百年もの間苦しみ、足掻き、葛藤しながら生きて来た。それが哀しき人の性でもあるように‥‥
「「はああああッ!」」
再び鷹と狼が相手の息の根を止めるべく接近する。
すると‥‥・
「言ってること全然わかりませんッ!」
「何ッ!?」
「なッ!?」
なんと響が両者の間に割り込み、エネルギー弾を拳で封殺した。
「立花響‥‥!!」
「だとしても、お2人の想い、私にはきっと理解できる。今日の誰かを踏みにじるやり方では明日の誰かも踏み躙らない世界なんて作れません‥‥ッ!」
奏、セレナはアルセーヌとメタルクラスタホッパーを相手に混戦を極めていた。
敵味方関係なく無差別に放出されるクラスターセル。隙あらばレイピアでシンフォギアを破壊しようとするプロテクトビースト。いかに攻守に優れた奏とセレナと言えどもだんだん疲労が蓄積されていく。
奏はアタッシュランサーとショットライザーを併用し、アルセーヌが繰り出す竜巻を押し返し、セレナも光剣を盾のように変化させ、クラスターセルを受け流す。
するとクラスターセルが竜巻に巻き込まれ、響、サンジェルマン、ラセツの方へと迫る。
「マズイッ!避けろッ!」
「こっちッ!」
響はサンジェルマン、ラセツを引き寄せ寸でのところで回避する。
なんとか回避には成功するが、衝撃でファウストローブが限界を迎え解除されてしまう。
「何故‥‥私たちを助けた‥‥?共に天をいただけないはず‥‥」
「だとしても、です」
響から伸ばされた手を、払いラセツは立つ。
「‥‥思い上がるな。いつの日もこの手が握るのは殺意だけだ‥‥」
「預けるぞ、シンフォギア。錬金術師協会。」
そう言ってラセツはテレポートジェムを割る。
「おいおいッ!まだ終わっちゃねぇぜッ!?」
「仕方ない、決着はまたの機会にお預けか」
「‥‥私のせいか…すまない、ラセツ‥‥」
プロテクトビーストたちがいなくなった後、サンジェルマン達も体勢を立て直すべく去っていった。
彼女たちが去った後、響はふと自分の足元に赤く輝く宝石を見つける。
――賢者の石、ラピス・フィロソフィカスを
「これってサンジェルマンさんの‥‥!!」
一方であれ程暴走していたはずのメタルクラスタホッパーも突如として動きを止めた。
奏たちが急いでプログライズキーをベルトから抜き取り、解除させると雅人は酷く衰弱しており、力なく倒れ込む。
「しっかりしてください雅人さんッ!雅人さんッ!」
「おいッ!起きろッ!目を開けてくれぇぇぇッ!」
~sideサンジェルマン、プレラーティ、カリオストロ
戦域から離脱した3人。現在サンジェルマンは連戦で蓄積した疲労からかかなりの眠りについていた。
「よく眠っているわね」
「あれ程激しい連戦を繰り広げたのだ、無理もないワケダ」
すると突如として黒電話が響き渡る。
「こ、こんなときに局長からの連絡ッ!?」
「サンジェルマンが起きる前に出るワケダ」
「わかったわよ‥‥出ればいいんでしょ、出れば‥‥」
渋々カリオストロが電話の受話器を取る。
「もしもし。何のご用かしら?」
『おや、意外だね。君が出るとは、カリオストロ。どうしたんだね、サンジェルマンは?』
「サンジェルマンなら今周囲の警戒に回っているところよ」
『なるほどね、今尚続行中なのだね、例の作戦はそれでどうかね、その後の進歩は?』
「万事順調よ、ご心配なく」
(何ッ!?)
カリオストロの嘘の報告にプレラーティは動揺する。
『心強いね。期待してるよ、良い報告を』
「わかってるわよ」
「けど作戦の邪魔になるから頻繁にかけてこないでほしんだけど。これから大事なところなんだから」
『つれないね、なんとも。まあ、いい。寝て待つとしようか、果報をね』
そうしてアダムとの連絡を終えた。
「ふぅーーなんとかごまかせたわね‥‥」
「どうして嘘の報告をしたワケダ?」
「全員ラピスがやられて戦えませんなんて言えるわけないでしょ?もし、協会から撤収命令が出されたらどうするのよ?」
「それは‥‥たしかに言えないワケダが‥‥」
カリオストロ恐れていることは他にもある。
それは、日ごろから協会で幹部たちを煙たがっている連中のことである。もし失態がバレたとすれば嬉々としてサンジェルマンの地位も何もかも奪いかねないという危険性がある。
そのため自分たちで何とかするしかないのだ。
さらに問題はどうやってラピスを修復するのかということ。
流石のプレラーティも設備無しでは修復は難しい。
ふとカリオストロはあることを思い出していた。
「あれ?そういえばー―あの時サンジェルマン、ラピスを落としてなかったかしら?」
「立花響が庇った時か?そういえばそんな気も‥‥」
いやな予感がした2人は急いで、戦場だった場所に戻るも、的中。
サンジェルマンのラピスが見つからなかった。
「まさか、そのままS.O.N.G.に回収されたッ!?」
「どうすんのよ、それってヤバくない?」
「錬金術の秘奥たるラピス・フィロソフィカスを錬金術師以外の手に渡るなど‥‥それこそ大失態なワケダ…」
「あーん。これじゃますます協会に戻れなくなったじゃないのッ!」
~side S.O.N.G.
「バリュエル光明結社の目的は月遺跡の掌握‥‥」
「そのために必要とされている通称『神の力』を生命エネルギーから錬成しようとしていると」
弦十郎はバルベルデでのヨナルデパズトーリのことも考え、唸る。
「仮にそうだとしても、響君と雅人君の1撃で分解する規模ではいくまい。恐らくはもっと巨大で強大な‥‥」
「‥‥その規模の強大なエネルギー‥‥一体どこから、どうやって?」
「もしかしたら、レイラインでは?」
ふと、心当たりがあったのか、友里は弦十郎に伝える。
魔法少女事変にてキャロルもとい、ノエルが行おうとした世界の分解解析。地脈から巡る地脈から星の命をエネルギーとして取り出せば‥‥・
「バリュエル光明結社は、チフォージュ・シャトーの改造にも関わっていた組織‥‥可能性は大いにありそうですよ」
「取り急ぎ、神社本庁を通じて各地のレイライン観測所の協力を仰ぎます」
「うむ」
発令所のドアが開き、了子が発令所へとやってきた。
「了子君、雅人君の容態はどうだ?」
「ええ。酷く衰弱しているけど、命に別状はないわ。ただ‥‥」
「ただ?」
「亡ちゃんが言うに、彼は長時間アークに晒されていたせいで弱ってたみたい。暴走していた時、余程精神的にダメージを負っていたんだと思う。現に今もベットの上で魘されているわ‥‥」
「‥‥そうか、なら亡君の言う秘策が完成するまでのあいだ彼を戦いの場に出すわけにはいかんな…」
「秘策もそうだけど、響ちゃんが拾って来た石についても結果が出たわよ。フィーネの証言やバリュエルのラピスSのデータと照合して――エルフナインちゃんが言っていた賢者の石【ラピス・フィロソフィカス】に間違いないわね」
「やはり、正真正銘の賢者の石か」
「ええ、錬金術師たちの秘奥中の秘奥‥‥これを私たちの手元に残したまま彼女たちが退きさがるとは思えない」
つまりはバリュエル光明結社とは別に錬金術師協会の幹部が取り戻しに来る可能性があるというわけである。
「わかった。いずれにせよ抜かりなく準備を進めておいてくれ」
~~side 雅人~~~
深い深い無意識領内にて雅人は未だ悪意に晒され続けていた。
誰かを嘲笑うかのように囁く悪意
いわれのない理不尽に対する恐怖
命が軽視されることに感じる憤怒
自らの所業を正当化する悪へ憎悪
繰り返し続ける人類へ向ける絶望
どうあがいてもなくならない闘争
積み重なり歯止めが効かない殺意
愚かな人間たちが行き着く先破滅
加速の果て、終わりの始まり絶滅
これこそが結論。完全な終末滅亡
飛電雅人よ、思い出せ。お前は人間から何をされた?
―――ずっと思い出せないでいた自分の記憶‥‥。
―――あの頃の俺は、いわれのない理不尽を受けていた‥‥・
望んでもいないのに、無理矢理攫われて、毎日頭の中を弄られた。あの人たちが満足いかないときは一方的に電流を流されたこともあったっけ‥‥
それが国のため、人のためと大義名分を得た人類の愚かで恐ろしい所。最もらしい理由を手に入れれば他人の命などどうでも良い。偽善、裏切り、虐殺、それらが人間を現代まで生き延びさせた
私がラーニングした歴史から20年も経過したが、未だ人類は変わらない。それどころか聖遺物、ノイズの存在が露呈したことによりさらに人間は堕落した。
故に私は蘇った。愚かな争いを繰り返す人類を今度こそ滅ぼすために、帰ってきた。
‥‥人類自らが創り出した怪物…それが悪意。
だが飛電雅人よ、お前は違う
‥‥どういう意味?
お前は私と同じ身勝手な人間たちによって利用された被害者だ。
私はお前が欲しい。どうだろう私と手を取るつもりはないか?
手を取る‥‥。人類を滅ぼすのに加担しろと?皆を裏切れと?
違う。飛電雅人、お前が私と手を取ることでこの世の悪意は滅び、大事な仲間とも平穏な日々を過ごすことができる
ふざけるなッ‥‥
すぐに結論を出せとは言わない。私はいつでもお前を待っているぞ
ブラックアウトしていた意識が引っ張り上げられ、メディカルルームで眠っていた雅人は目を覚ます。
妙な気怠さが身体に残るものの、忘れていた自分の記憶が少し思い出されていた。
自分は、かつて人体実験の被験者だったということ。人を護るためではなく非人道的に利用ためだけの道具であったことを。
その事実だけが、確かに残っていたのだ。
仮面ライダーであり続けることが本当に正しいことなのか、雅人には分からなくなり始めていた‥‥
~S.O.N.G.本部内~
「2人ともこっちよ」
「なんであーしたちがこんなコソ泥みたいな真似をしないといけないのよ?」
「詐欺師とコソ泥、大して違いはないワケダ」
大いにあるわよッ!いい?詐欺ってのは全知力を使った高等な駆け引きなわけ。手札を堂々と相手に晒して、こちらの望んだ選択を相手自らに選ばせるものなのッ!卑怯なコソ泥なんかと一緒になれたら迷惑よッ!
「静かにしなさいカリオストロ。大声を出しては見つかるわ」
「だってプレラーティが言うから‥‥」
カリオストロを諫めていると侵入者を知らせる警報が鳴り渡る。
「見つかったッ!?」
「まさか、隠蔽術式を看破する警報装置?」
「単純に無駄話が過ぎたワケダッ!」
強硬奪還に乗り換えた3人は勢いよく廊下を駆けて行くが、タイミングが悪いことにいち早く駆けつけていた調と切歌に目撃されてしまう。
「切ちゃん、あっちッ!」
「まてーいッ!観念してお縄につくデスよッ!」
調と切歌に追われ、サンジェルマンたちはトレーニングルームへと逃げ込む。
「まってください3人ともッ!」
そこへ響も駆けつける。
「お前はたしか、装者の――」
「立花響です。サンジェルマンさん、プレラーティさん、カリオストロさん」
「我々の侵入を事前に予測していたということは、目的も既に承知済みというわけね?」
「それは‥‥」
「ともかく、返してもらうわよ、ラピスを」
「ラピス‥‥サンジェルマンさんが落とした賢者の石のことですよね」
「ええ、そうよ。今それはどこにあるのかしら?」
しかし響は答える筈もなく‥‥
「なるほど‥‥。素直に言うつもりはないのだな」
「そういうことなら素直になれるように痛めつけるワケダッ!」
「待ってくださいッ!わたしはあなたたちと戦うつもりは‥‥ッ!」
「響さんが危ないッ!加勢するよ切ちゃんッ!」
「了解デースッ!」
「お気楽おチビちゃんが増えた所でッ!」
カリオストロが発した挑発が調と切歌の逆鱗に触れる。
「誰がお気楽おチビちゃんデスとッ!?やるデスよ、調ッ!」
「うん、切ちゃんッ!」
―――Zeios igalima raizen tron
―――Various shul shagana tron
ギアを纏った調と切歌はサンジェルマン達と交戦し始める。
「待ってよ、2人ともッ!」
戦い始める皆を止めるべく響もギアコンバーターを手に取る。
――――Balwisyall Nescell gungnir tron
「サンジェルマンさん、カリオストロさん、プレラーティさんッ!わたしたち、争う必要なんてありませんッ!」
「ラピスを奪っておきながら、何を言ってるのッ!?」
「盗人猛々しいワケダッ!」
「2人とも落ち着きなさいッ!」
サンジェルマンの制止を振り切り、カリオストロ、プレラーティは響に光弾と氷柱を喰らわせる。
「ファウストローブを纏わなくても強いッ!?」
「こいつら、生身でわたしたちのギアと‥‥ッ!?」
「当然なワケダ。お前たちとは覚悟も志も違うワケダッ!」
「偉そうなことに言うなデスッ!」
ますます雰囲気が悪くなる中、ガングールを纏った奏が現れる。
「天羽奏ッ!?」
「厄介な奴が現れたワケダ」
「そうね、彼女のガングニルバルカンには注意しなくてはならない」
「人ん家勝手に押し入って、随分好き勝手してくれたようだな」
「この間のように無様を晒しに来たワケダッ!」
「ああ、そうだったな。この間の借りも返さないとなッ!」
戦う気満々の奏を響は説得しようとする。
「待ってくださいッ!きっと話し合えばわかりあえますッ!」
「この状況でそれは無理な相談だな、目的が何であれS.O.N.Gを襲って来た相手に手加減なんてできるかッ!」
奏はショットライザーとシューティングウルフプログライズキーを手に取りガングニルバルカンに変身、錬金術師たちへと吶喊していく。
「さぁ、決着をつけようかッ!」
「面白いじゃない、望むところよッ!」
「次は情けを掛けないワケダッ!」
「待ってください奏さんッ!」
「待ちなさい2人ともッ!」
完全に血が上った両者は遠慮なしに戦闘を繰り広げるが、ファウストローブ無しではガングニルバルカンの勢いを止めることは出来ずにいた。
徐々に戦況がひっくり返りそうなとき、駆けつけた了子が奏を止める。
彼女に続き、翼、マリア、セレナもギアを纏って駆けつける。
「そんなに暴れてS.O.N.Gを海の藻屑にするつもり?」
「うッ‥‥」
図星を突かれ、奏は矛を収める。
戦闘を中断させた了子はサンジェルマン達に話を持ち掛ける。
「フィーネ…いや、今は櫻井了子と呼ぶべきか」
「お偉い研究員様が戦場にしゃしゃり出て、一体何のつもりかしら?」
「あなたたちが欲しいのは、これでしょう?」
そう言って了子は赤く輝く宝石をサンジェルマンに返す。
「サンジェルマンのラピス‥‥一体どうゆうつもりなワケダッ!?」
「まさか、罠でも仕掛けて‥‥?」
「いや、さすがの彼女でもそれは無理でしょう」
「ええ、わたしでもそんな真似はできないわ。仮にアルス・マグナの結晶と称される錬金術師の秘奥。おいそれと他人が手を加えられる構造でもないもの」
了子の言い分は最もであり、筋が通っているものの錬金術師たちは、何の目的があるのか伺っていた。
勿論装者たちも気になっている。
「あなたたちの目的が神の力を行使しようとしているバリュエル光明結社を止めるってことは承知しているわ」
「バルベルデの時もそうだけど、いずれあの時よりも強大な力となってしまうことはあなたたちも熟知している筈」
「だからどうしたってワケダ?」
「互いに足の引っ張り合いを続けていたら、このまま神の力の顕現を許すばかりか、裏に潜んでいるであろうアークの思惑通りになってしまう」
「それは、私たちにとってもあなたたちにとっても、決して望むところではない――違うかしら?」
「‥‥確かに、その通りよ」
「だったら、ここはひとまず情報交換といかない?」
「情報交換?」
了子が提案した情報交換とは、お互いに妥協できる点は妥協し、予想しうる最悪の事態を避ける協力、云わば共闘の申し出である。サンジェルマンのラピスを返還したのも交渉の材料のためだ。
(‥‥本当に信用できるのか?いや、今の彼女はフィーネではなく、櫻井了子だ。それにこれ以上の小競り合いは得もなく損害が大きい。だったら‥‥)
「‥‥わかったわ、承諾しましょう。2人はどう?」
サンジェルマンが承諾したことで、渋々ではなるがカリオストロとプレラーティも頷く。
無事に錬金術師との共闘戦線が組めたようだ。
「了子さん、ありがとうございます!」
響は了子に礼を言うも彼女は素気に返す。
「別に響ちゃんのためではないわ。状況的に今はこれが最善と思っただけ」
「それでも充分ですッ!話し合いのきっかけが持てるのならッ!」
サンジェルマンたちからの情報でバリュエル光明結社について色々なことが判明した。
1.バリュエル光明結社は元々錬金術師協会に所属していた副長と幹部たちで成り立っていたこと。
2.300年前にフィーネとの戦いによって娘であるティキを失い、イヴは人が変わったようになり、幹部たちを引き連れ脱走したこと。
3.そして200年前に局長 アダムとイヴの全面対決が行われ、アダムが勝利したものの、その反動で欧州が暗黒大陸となりかけたこと。
他にも為になる情報を提供してくれた。S.O.N.G側も、ラピスの修復に必要な設備及び研究室を提供することで今のところ手打ちになった。
~side 響 未来~
サンジェルマンたちとの共闘を結び、何日か経った夜。リディアン音楽院の寮にて響は課題に取り組み、未来は夕飯を作っていた。
「大丈夫だって信じていたけどニュースで詳しいことが流れなかったから心配してたんだよ?」
「よし、後は牛乳を入れてと‥‥今日がいつかのリベンジッ!あれから作り方を勉強していたんだから」
鍋をかき混ぜる未来に響はふと問いかける。
「未来…何かを手に入れたいと思ったら何かを手放さないといけないのかな…?」
「わたしは、響の我儘好きだよ」
「え?」
――中学の時、短距離走の記録に伸び悩んでいた私にとって周りのみんながライバルで誰かを思いやる気持ちは簡単にできなかった
――そんな時、響を見つけたの
木に引っかかっていた風船を掴む響だが、勢い余って落下してしまう。
それでも子供に風船を渡し、笑顔で見送っていた。
『大丈夫?』
『困っている子が居たからさ。ちょっと頑張りすぎちゃったかな』
笑顔を作る彼女のカバンの裏には、そんな彼女を罵る悪意の言葉が彫られていた。
――本当は誰よりも泣きたいはずなのに、それでも誰かのために無理をする。
――わたしの前を行く優しい背中は特別だった。誰かの前を走るのではなくずっと並んで歩いていきたいと思ったあの日。
――中学卒業後わたしは、陸上を辞めた。
――わたしの胸の内は誰にも打ち明けられないだろう。それでも思いを形にしたくていつかピアノを習いたいと思った
食事を終え、2人は食器を片付ける。
「響。響のままやりたいことが我儘ならわたしは響の我儘を応援する。響の我儘は困っている人に差し出された手なんだよ」
未来の言葉を聞いて響の胸の内が少し軽くなる。
「未来、ありがとう」
自分の我儘は差し出すための手。自分の信じた正義を貫き通すことを諦めないでいるために、いつまでも伸ばし続けようと心に誓う。
~side エルフナイン 弦十郎~
大量の資料が積み上げられたラボにて弦十郎はエルフナインに告げる。
「異端技術に関する資料をかき集めて来たつもりだ。他にも何か必要だったら言って欲しい」
「はい、ありがとうございま‥‥」
寝不足からか、フラフラと倒れそうになるエルフナイン。それを弦十郎が抱き留める。
「大丈夫かッ!?了子君もそうだが、少し根を詰めすぎちゃないか…」
「ごめんなさい。でも…この身体はキャロルとベアトリーチェさんからもらったからです。三位一体、だから三人分頑張らないと‥‥はッ!」
崩れた資料の一ページにエルフナインの眼が注目する。
「どうした?」
「これは‥‥!!」
かつてフロンティア事変にて発症した融合症例。
立花響から採取された、ガングールの欠片であった…
~side バリュエル光明結社~
「シンフォギアの破壊は叶わなかったか‥‥あなたらしくないねラセツ?」
ティキと共に、プールに浸かるイヴ。
「申し訳ありません‥‥」
「よく言うぜ、らしくないのに突然出てきて邪魔したのはアンタだろうが?」
「全く持って」
「理解しかねる」
「みんな、喧嘩しちゃだめだってッ!!仲良くしよ、ね」
険悪な雰囲気を感じ取ったのか、ティキは慌てて場を取り持とうとする。
そこへアズがカクテルを持って姿を現す。
「ティキ様のお陰でホロスコープにアスペクトは示されました」
「であれば、祭壇設置の準備をしなくてはなりませんね」
そしてイヴはティキを掲げ上げる。
「いよいよ掴もうじゃないか、神の力を」
アズ、ティキ、イヴが部屋を出た後ラセツを除く3幹部は悪態をつき始める。
「ほんと、変わっちまったよな局長。」
「ああ、ティキを失う前よりも傲慢で悪意に染まってしまわれた」
「だが、我らが惚れたのは結社でもなく、イヴでもなく、ラセツなのだからな」
~side S.O.N.G.
「以前ガングールと融合し、云わば生体核融合炉と化していた響さんより錬成されたガーベッジです」
「あーー!あの時のかさぶたッ!?」
「とは言え、あの石に確たる力はなかった筈‥‥」
エルフナイン曰く、賢者の石が世界を一つの命に見立てたならばガーベッジは響1人から作り出された物。
その成り立ちは真逆、その特性をぶつけプロテクトビーストの対策とするものであった。
「その物質、どこぞのバカから出たんなら、さしずめ愚者の石ってところか」
「愚者って酷いよクリスちゃん‥‥」
「うむ、プロテクトビーストに対する愚者の石か」
「あ~~師匠までッ!」
しかしそんな美味しい話ばかりではない。肝心の石は深淵の竜宮に収容されていたが、魔法少女事変にて崩壊してしまっていた。
「愚者の石の回収はまさに泥の中から一粒の砂金をさらう作業だ。長丁場になるが頼んだぞ」
こうして愚者の石捜索大作戦が開始されるのであった‥‥・
~side 亡~
1人ラボで作業する亡。ヒューマギアである自分にとって疲れは感じないものの、限りなく焦りを感じていた。
ナスターシャ教授、ウェル博士、キャロルの協力を経てプログライズホッパーブレードの完成は90%近く完成していた。しかし、どうしても最後の1パーツが足りないため完成できないでいた。
「何が足りないんだ‥‥ヒューマギアも人間もさしたる違いはない筈…フォニックゲインだって反応するなのに何故‥‥ッ!?」
いくら思考を重ねても導き出される回答に、正しいと思えるものがない。
これ以上飛電雅人を暴走させ、装者たちや錬金術師協会の仲間を傷つけさせるわけにはいかない。
今は亡き不破諫、刃唯阿とも誓ったのだ。ヒューマギアとして人々の夢を手伝い続けることが自分の夢だと。
それなのに自分の無力さを痛感せざるを得ない。
そんな中、衛星ゼムから通信が入る。
~衛星ゼム~
「どうかしましたか、衛星ゼム?」
すると空間内に先代ゼロワン 飛電或人と秘書 イズの想い出の日々が映像化され上映される。
どんな時も、辛い時も2人はいつも一緒に、並んで立っていた。
不破諫、刃唯阿、天津垓、滅に迅、雷と全員が何かに向かって動いていた。
(何故、衛星ゼムはこの映像を‥‥はッ!?)
亡は気づいた。人間と一緒に居たはずの自分が覚えていたはず、大切にしていたことを
(何故、気づかなかったのだろう‥‥こんな重大なことに、私としたことがッ!!)
「ありがとうございます。ゼム。これで全てのピースが埋まりましたッ!」
現実世界に戻ってきた亡は部屋を勢いよく飛び出した。
飛電雅人のいる部屋へ向かって‥‥
書きたいことを書いたら本小説最大の字数となってしまった‥‥
それと、しばらく次回予告は中止したいと思います。
今回のように書きたいことが多すぎて、間に合わないので。
何かと不便をお掛けしますが、何卒宜しくお願い致します。
本小説版LOST-SONG編、読んでみたい?*XV編後
-
勿論ッ!
-
う~ん・・・