戦姫絶唱シンフォギア01 ~Take off toward a dream~   作:光からの使者

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前回までのあらすじ
ツクヨミの試練を乗り越え、新たなデュオレリックを獲得した調。
自身の悩みを克服し翼とプレラーティと共に嫉妬の蛇となったリーパーを撃破する。

一方、トドロキに続き、リーパーを倒されたことを受けラセツの心境は揺れ動き始めていた‥‥


似た者同士のディーヴァたち

~side S.O.N.G.~

 

「奏さんッ!わたしは、貴女のことが許せませんッ!!」

 

「そいつはこっちだって同じだッ!あたしもアンタのことが許せないッ!!」

 

眼には見えないものの、お互いバチバチと目を合わせ火花を散らす奏とセレナ。

 

「やめなさいセレナッ!少しは落ち着いてッ!!」

 

「止まってくれ、奏ッ!それ以上はいけないッ!」

 

 

翼とマリアがそれぞれ今にも一触即発の2人を後ろから羽交い締めにし、それでも動こうとするので響とクリスが翼に。調と切歌はマリアに加勢し、何とか司令が来るまで取り押さえている。

 

「‥‥いったいどうしてこうなったんだ‥‥」

 

全ては少し前に遡る

 

 

 

 

 

 

 

 

~side セレナ~~

 

「プリン、プリン~~みんなで食べる期間限定プリン~~♪」

 

紙の箱を抱えながら鼻歌を交え、軽快な足取りのセレナ。

何故、彼女があそこまでご機嫌なのか理由は彼女の持つ箱の中身が理由であった。

 

期間限定商品(‥‥‥)『甘栗のホイッププリンアラモード』

 

大のプリン好きであるセレナだが、彼女はよく休日の合間を見つけては町の美味しいお菓子屋を探している。

今回買ってきたプリンアラモードは、その名の通り期間限定でしか発売されず、さらにすぐに売り切れとなってしまうことから入手難易度が高いことで有名だ。

 

バリュエル光明結社との戦いが激しくなり、緊迫した状況が続く中でこのプリンを変えたことは奇跡に近い。

さらに、姉のマリアや調と切歌のケーキを買えたので余計に気分が高ぶっているのである。

 

早くみんなの元に行こうと足早に向かっていると‥‥

 

「きゃッ!」

 

「うわッ!」

 

曲がり角に差し掛かったところで、ぶつかってしまい尻餅をつく。

 

「痛たた‥‥」

 

「セレナ、大丈夫か?」

 

「奏さんッ!」

 

セレナと衝突したのは同じく小さい袋を手にした奏であった。

 

奏は申し訳なさそうにセレナへ手を伸ばし、立ち上がらせた。

 

「怪我しなくてよかった。悪いな、あたしの不注意だった」

 

「いえ、わたしも悪かったですよ」

 

謝る2人だったが両者共に何やら急いでいる様子であった。

 

「それじゃ、また後で」

 

「ああ」

 

セレナは急いで、マリア、調、切歌が居ると思われる部屋へと足を急がせる。

 

 

「姉さんッ!調さんッ!切歌さんッ!」

 

「あら、セレナどうしたの?」

 

「これ、プレゼントですッ!」

 

「これって‥‥あの有名なお菓子屋さんのじゃないッ!?」

 

マリアの言葉に調と切歌も目を輝き始める。

 

「流石セレナデースッ!!」

 

「マリア、早く皆で食べようッ!」

 

「そうね、2人ともお皿取って来てくれるかしら?」

 

和気あいあいとした雰囲気の中、いよいよマリアが代表で箱を開けるが‥‥・

 

「ッ‥‥」

 

中身を見た途端、マリアの表情が一瞬だが固まる。

 

「どうしたのマリア?」

 

「食べないのデスか?でしたらあたしが――」

 

「「あッ‥‥」」

 

続いてはこの中身を見た2人もマリアと同じく固まってしまう。

 

「どうかしましたか?」

 

きょとんとするセレナも中身をみると‥‥

 

 

 

 

箱の中にあったのは、形の崩れたケーキや倒れて中身がこぼれているプリンであった‥‥

 

 

流石のセレナもこれにはショックで何も言い表すことが出来ないでいた。

 

「あッ‥‥あああ‥‥」

 

「大丈夫よセレナ。まだ、食べられるむしろ美味しいわ!」

 

「そうデスよッ!」

 

「うん、まだ食べられる」

 

しかし3人のフォローも甲斐なく、セレナはぷるぷると震え始める。

 

「せっかくの‥‥だったのに‥‥」

 

「え?」

 

「せっかくのプレゼントだったのに――ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

~side 奏~~

セレナ側が大変なことになっている一方。奏は一目散に翼の元へと駆けこんでいた。

 

「翼ぁッ!サインを頼むッ!」

 

「奏ッ!?」

 

放っておくと今にも土下座しそうな勢いの奏に翼は困惑していた。

 

「急にサインだなんて、一体どうしたの?」

 

「実はだな‥‥」

 

奏曰はく、まだ先ではあるものの妹の誕生日のプレゼントとしてツヴァイウィングのCDをプレゼントしたいと考えていた。ただ、CDをそのまま渡すのは味気ないと思い自分と翼の直筆サイン入りを送ろうと思っていたのだ。

 

「それで奏は、どんなCDを?」

 

「それはだな翼。見て驚くなよ?じゃあーんッ!」

 

意気揚々と奏は袋から取り出したのは、ツヴァイウィングの珍しいCD容器であった。

 

「奏、これってッ!」

 

「ああ!来週に発売される『ツヴァイウィングのメモリアルCD特装版』さッ!」

 

「何故、それを奏が持っているの?」

 

「ちょっと前に緒川さんへ頼んで前借りさせてもらったのさッ!こう言うことは前代未聞だけど、CD会社の人も融通利かせてくれて特別に貰ったんだッ!」

 

興奮気味に話す奏だが、少し照れくさいような表情をする。

 

「実を言うとな‥‥ノイズを倒す力が欲しくて家を出たっきり帰ってないんだ。二課時代から家族とは連絡は取ってるんだけど会えず仕舞いで‥‥」

 

「奏‥‥」

 

「だからせめて、プレゼントだけでも良い物を渡したいんだ」

 

奏の胸の内を知り翼は納得していた。

 

「てなわけだからサインよろしくッ!」

 

「わかった。せっかくのプレゼントだものね。いいものにするわ」

 

笑顔で奏からCDを受け取る翼だが、裏面を見るとCD容器に薄いひびが入っていることに気づく。

 

 

「奏、このCDすこし亀裂が入ってないかしら?」

 

「え?いやだなぁ、翼。そんなわけ‥‥」

 

だが、直接触れてみると確かに亀裂が入っていた。

 

「ええッ!?なんでッ!」

 

慌ててパニックになる彼女だが、ふとあることを思い出す。

 

ここに来るまでの間、セレナとぶつかっていたこと、それも両者かなり急いでいたので相当な勢いで衝突していたのだ。その反動で落としてしまい、結果CDが力強く地面に落ちひびが入ってしまったのだ。

 

 

「ぁぁぁ‥‥」

 

「か、奏?」

 

 

「せっかくのプレゼントだったのに――ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ユニゾンを高めるべく行われたペア対抗の模擬戦闘訓練にて2人は奇しくも同じペアとなった。

本人たちはいかにも大丈夫そうな様子を見せていたが、いざ実践となると互いに対する罪悪感からか、上手く連携が取れず足を引っ張り合っていた。

 

弦十郎からもそのことを指摘され、仲直りしようとトレーニングルームで特訓していたが‥‥

 

何度やっても向上せず、次第に苛立ちを覚え始めていた。

 

「セレナッ!何回あたしの足引っ張れば気が済むんだッ!」

 

「そういう奏さんだって、1人で突っ走りなんですッ!そもそもの原因は奏さんに――」

 

 

次第にヒートアップしていく空気。そしてついに‥‥・

 

「大体奏さんが走ってこなければ、わたしのプリンたちは無事だったんですよッ!」

 

「なんだとッ?あたしだってあんたとぶつかりさえしなかったらCDは無事だったんだぞッ!」

 

もはや、一触即発の事態にまで陥り、互いに変身して大げんかにまで発展してしまう。

 

お互い胸倉を掴み相手に向かって殴りかかろうとする。

 

この状況に戦慄したエルフナインは急いで装者たちを呼んで自体の収拾を図ろうとして現在にいたる。

 

 

2人の怒りは頂点を越え、それぞれの制止も振り切れようとしたその時

 

 

「そこまでだッ!!」

 

突如弦十郎の拳骨が振り下ろされ、奏とセレナを気絶させた。

 

「師匠ッ!?」

 

「司令ッ!」

 

「全く‥‥。バリュエル光明結社が神の力を狙っているこの状況下で喧嘩している場合ではないッ!」

 

翼とマリアからのフォローもあったが騒動を起こした2人は、その後弦十郎にたっぷりと説教されたのであった‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side バリュエル~~

トドロキに続きリーパーまで倒されたことによって、ラセツの心労がいよいよ限界まで迫っていた。

 

(このままでは、生贄がアルセーヌに決まってしまう…。そんなことさせられるわけがない。だが、それでは、我々の悲願が‥‥)

 

気が気でないラセツの様子をアルセーヌは察していた。

 

 

(さて‥‥どうしたものか)

 

そんなアルセーヌはティキの方を見ると、普段は陽気な彼女がどこか気落ちしているように見えた。

 

「ティキ?どうした、調子が悪いのか?」

 

アルセーヌが声を掛けると、不意だったのかティキは慌てだす。

 

「う、ううん。何でもないよッ!」

 

 

 

~~昨晩~~

リーパーが翼、調、プレラーティによって倒されたのを見届けると、身体を振るわせているティキの耳元で囁いた。

 

『貴女が真実に気づかなければ、リーパーがこんなに早く死ななかったのにねぇ?』

 

自分の言動と行動がリーパーを死に追いやってしまった罪悪感から、駆動部が小刻みに震えるティキ。

そんな彼女へイヴは告げる。

 

『ティキ。あなたは、統制局長イヴ・ヴァイスハウプトの愛娘であればいいの。これ以上、余計な詮索をすれば、残った2人の願いを踏みにじることになる。わかったわね?』

 

『うん‥‥ママの言う通りにする‥‥』

 

~~現在~~

 

ティキは自身の母親の身に起こっている異変を一刻も早くラセツやアルセーヌ、父であるアダムに知らせなくてはならない。だが、イヴの身体に潜む謎の存在が家族を人質に取っているために身動きが取れない。

 

 

(こんな時‥‥サンジェルマンならどうしたのかな‥‥)

 

 

いよいよ大祭壇設置の儀式前日となりイヴはメンバーを招集する。

 

「間もなく、計画が最終段階へと入る。それに対し今回は重大な宣告をしなくてはならない。ラセツ?」

 

「はい‥‥」

 

イヴに促され、ラセツはアルセーヌへ告げる。

 

 

「アルセーヌ。貴女の命を我々に捧げて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side セレナ~

 

『それで、盛大に喧嘩してしまい退くに引けなくなってしまった‥‥というわけですね?』

 

「はい‥‥」

 

説教の後、セレナはモニター越しにナスターシャ教授とテレビ電話を行っておいた。

ナスターシャ教授とはフロンティア事変解決後、教授の身体を脅かしていた病は治療の甲斐あって見事に完治した。その後マリア達を含めた武装組織フィーネの面々と同じように日本政府の保護下に置かれた。

現在は聖遺物に関する異端技術や知識を役立てるべく、S.O.N.G.へ協力。F.I.S時代にレセプターチルドレンと仲が良かった職員と協力しながら孤児の保護を行っている。

 

孤児院時代から彼女を母親のように慕っているセレナたちも時間を見繕っては、テレビ電話で互いの近況を話すなど親密な関係を続けている。

 

今回セレナがナスターシャ教授を頼ったのは、マリア達を頼れないからであった。

 

自分の我儘で大切な家族の眼前で醜態を晒してしまったのが相当堪えられなかったのだ。

 

 

「ねえ、マム。わたしは、あの時どうすればよかったの‥‥?」

 

セレナがあそこまで落ち込んでいるのか、ナスターシャ教授にはよく理解できた。

 

 

『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』という少女は、とても可憐で温和であった。

 

白い孤児院に居た時でも、姉 マリアの側にいて、年下の調や切歌を実の妹のように接していた。

 

シンフォギアを纏った時だって、それは家族を愛し護りたいという想いからくる行動であった。

 

そのため、セレナはここまで激しい喧嘩を経験したことがなかったのだ。

 

優しいが故、自分よりも他者を思いやる気持ちが強い。しかしその反面、想いが挫かれた時の怒りが凄まじい。

 

今回の大ゲンカで自分が経験したことがないことが起き、それに対してどう動けばよいのかわからなくなっているだけなのだ。

 

『‥‥セレナ』

 

「どうしたのですか、マム」

 

『あなたが、他の誰よりも家族を想い、愛しているのか、私にはよく知っています』

 

『ですが、それは相手も同じことだと思いますよ』

 

「同じ‥‥?私と、奏さんが?」

 

ナスターシャ教授はセレナへゆっくりと諭し始める。

 

『お話を聞くところによれば、お相手の天羽奏さんも家族へ送るプレゼントを用意していたようで』

 

「プレゼント‥‥」

 

『彼女は、幼い頃家族をノイズとマギアに奪われそうになったことがあるそうです。そのため、家族に対する想いが凄まじく高い。シンフォギアを纏うようになったのも、もう二度と奪われたくないという考えからくるようです』

 

天羽奏は、家族を失わないように

 

セレナは、家族を救うために

 

置かれた立場や境遇が違えど2人は似た者同士だと言える。

 

『セレナ。プレゼントを台無しにされて怒るのは無理もありません。ですが、それは向こうも同じことなのです』

 

『家族を愛しているからこそ、感情が昂って怒りに身を任せてしまった。違いますか?』

 

「‥‥‥‥」

 

『互いに家族を想っているなら、きっと仲直りできるはずです。必要なのは一握りの勇気と心からの言葉なのですから』

 

(一握りの勇気と‥‥言葉‥‥)

 

 

 

 

~side 奏~~

弦十郎の説教から解放された奏は、なんとも言えない気持ちで本部内をうろついていた。

 

(さすがに、熱くなりすぎちまったなぁ‥‥)

 

喧嘩から時間が経ったことで、頭も冷め落ち着きを取り戻してはいたもののセレナへ言い過ぎたばかりか自分の我儘で翼たちまで巻き込んだことにかなりの罪悪感を覚えていたのだ。

 

現にこうしてほっつき歩いているのも、申し訳なさで翼にも相談できそうになかったからである。

 

「さてと、セレナになんて謝ればいいか‥‥」

 

困った奏は、ふとこういう時の対処法を知っていそうな人物を思い出し研究室へ急ぐ。

 

「了子さん、亡さん、いる?」

 

「あら、奏ちゃんじゃない」

 

「お説教からの帰還、お疲れ様です」

 

「ちょっと相談に乗ってもらえないかな?」

 

 

 

奏は、2人に今回の騒動へ至った経緯を打ち明けた。

 

「あたしが悪いことしちまったってのは十分理解できてる。でも、謝ろうにもなんて謝ればいいのかわかんねぇんだ」

 

どうにかしてセレナと仲直りをしたいと思っている奏。

だが、あんなに派手に喧嘩してしまい、気まずいのか戸惑っている様であった。

 

「‥‥なるほど、それは確かに難しい問題よね」

 

奏の相談を受けて、了子は考え込む。

 

少し考えていると、了子ははっと何か思いついた表情をする。

 

「亡ちゃん、アレ(‥‥)、持ってきてくれないかしら?こういう時こそ役立つはずよ!」

 

了子からの提案を亡は察し、頷く。

 

「わかりました。すぐに持ってきます」

 

そう告げると亡はラボの方へ入っていく。

 

「なあ、了子さん。アレってなんだ?」

 

「今の奏ちゃんにはきっと必要になると思うわよ」

 

「?」

 

首を傾げていると、ラボから手のひらサイズの機械を持ってくる。

 

「お待たせしました」

 

「ありがとうね♪」

 

「これは‥‥?」

 

「ちょっとお待ちくださいね」

 

手のひらに収まるコンパクトサイズながら上部にはヒューマギアモジュール

困惑する奏を余所に亡は機械の起動スイッチを押す。

 

「はじまして。私、アイちゃんです。よろしくねッ!」

 

 

かつて飛電製作所にて作られたヒューマギア以外の発明品『友だち型AI アイちゃん』

僅かながらも人とAIを橋渡し役を担った存在が、そこにいた。

 




というワケで、オリジナルストーリーがAXZ編に追加されましたッ!
セレナって優しい性格だからあまり身内以外の人と喧嘩したことが無さそう‥‥

さらにアイちゃんも登場しましたッ!果たして2人の喧嘩の行く末とはッ!

本小説版LOST-SONG編、読んでみたい?*XV編後

  • 勿論ッ!
  • う~ん・・・
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