戦姫絶唱シンフォギア01 ~Take off toward a dream~ 作:光からの使者
プレゼントを巡り大ゲンカしてしまう奏とセレナ。
落ちこむセレナへナスターシャ教授は、奏が彼女と同じ思いであることを教える。
一方奏は了子と亡に呼ばれ、復元した友だち型AI『アイちゃん』と出会うのであった
~sideS.O.N.G.~
奏は目の前で音声を発する機械に思わず驚く。
「なぁ、了子さん、亡さん。色々聞きたいんだけど‥‥」
2人は困惑する姿を想定していたようで、了子は意地悪そうに微笑む。
「その子のことね。簡単に言えば、メンタルケア用のマシンよ」
かつてアイちゃんは、飛電製作所によって製造された人の心の不安を緩和させる機械であった。
人型であるヒューマギアではなく、箱のような形だからこそ人に対し面と向かっては離せない悩みを、素直に打ち明けられる存在だ。
アイちゃん自身に搭載されている人工知能は、使用者のことを肯定し、否定せず、ただ話を聞いてくれるだけだがそれだけでも抱え込んだ悩みを祓うのに十分だった。
「なるほどな‥‥。だけど、そんな機械いつの間に造ったんだ?」
再度の疑問に亡が答える。
「それは、先日皆さんが調神社へ赴いた際に造りました」
彼女曰はく、回収したマギアの残骸からヒューマギアモジュールの基になるデータが採取されたという。
さらに、組み込まれたゼアから設計図を取り入れ、バリュエル光明結社との長期的な戦いで疲弊するであろう精神のケアを務めるべく亡が急いで造ったようだ。
また、『友だち型AIアイちゃん』は当時、ヒューマギア事業の傍らで、精神医療の画期的な発明品であったと言われており、2020年以降増加していた自殺者の数を大きく減らすことに成功。世間からも多くの注目を浴びた。
「物は試し、私たちは席を離すから話してたら?」
「きっと奏さんの役に立つ筈ですよ」
そう言って了子と亡は退室する。
~side 奏 アイちゃん~~
「ホントに効果あるのかよ‥‥?」
『とにもかくにも、私に話してみて』
半信半疑の奏を前に依然として、アイちゃんはフレンドリーな姿勢を変えない。
仕方なく、彼女はアイちゃんへ今回の件を話してみることにした。
「‥‥実はな。あたし、仲間と喧嘩しちまって、困ってるんだ…」
『なるほどね。奏さんは、その喧嘩しちゃった人へどうしたいの?』
「できることなら、素直に謝りたいさ」
『なら、もう一度会ってみればいいんじゃない?』
「えッ!?」
アイちゃんからの提案に奏は驚く。
「会ってみるって言っても‥‥あたしは‥‥知らずとは言えセレナのプレゼント台無しにしちゃったし‥‥」
『だとしても、このまま引きずるわけにもいかないでしょ?』
「まぁ、な‥‥・」
『奏さんが、その人に対してどう動いたらいいか、素直に自分へ聞いてみなよ』
~side奏 セレナ~~
S.O.N.G.本部内にある食堂でセレナは昼食を済ませていた。
「セレナ‥‥」
「奏さん‥‥ッ!」
奏の声にセレナははっと驚きつつもすぐに表情を落ち着かせる。
気まずい空気が漂う中、奏は真っ先に頭を下げる。
「‥‥本当にごめんッ!あのプレゼントはセレナにとって大切な物だったのに、あたしは自分のことしか考えてなかった‥‥」
心からの謝罪を受けたセレナは、奏に優しく言う。
「‥‥顔を挙げてください奏さん。謝るのはわたしも一緒ですから」
「わたしも、奏さんの気持ちを考えずに自分の気持ちばかりをぶつけてしまいました。本当にごめんなさい」
お互いの気持ちを素直に明かした2人は、なんだかすっきりと晴れやかな気持ちになっていく。
「なんか、わたしたち似た者同士ですね」
「ああ、そうだな。似た者同士さ」
「フフフッ」
「アハハハッ」
あれほど喧嘩していたはずなのに、いつの間にかわだかまりが解けていた。
いがみ合っていた心は既になく、2人は食堂で熱く語っている。
「それでな、翼はバイクに乗って飛んでズバッとノイズを斬っただぜ?凄くないか?」
「それは凄いですッ!でもマリア姉さんだって負けてませんよッ!なんなら――
奏は、セレナへ二課時代からの相棒『風鳴翼』について
セレナは、奏へ生まれた時から家族『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』について
お互い知らないこと全てを話し、すっかり打ち解けていく。
「どうやら、杞憂だったようだな」
「そうね。でも2人が打ち解けてよかったわ」
心配からか物陰から2人のやり取りを眺める翼とマリア。ただ、2人のことをべた褒めする内容の会話に多少顔を赤らめいたが…
(もう、そこまでにしてちょうだい‥‥どんな顔をして出てくればいいのか、わからないじゃない‥‥)
(奏も、話を合わせるためとはいえ、褒めすぎだ‥‥。このまま聞いていたら、顔から火が出てしまう‥‥)
「翼さんとマリアさんは、一体何してるんだろう‥‥?」
トレーニングを終えた雅人が、覗いている2人をばっちり見ていたのは言うまでもない。
~side バリュエル光明結社~~
一方バリュエル光明結社が滞在するホテルの一室では、緊迫した空気が続いていた。
ラセツの口から生贄の話を告げられたアルセーヌだったが、どこか察していた様子を見せていた。
「なんとも、意地悪じゃないかリーダー?そんな大事な話を隠しとくなんて」
言葉の節々に嫌味を織り交ぜながらイヴを見つめる。
「すまないね。こればかりは簡単に話す内容ではないのさ」
「それで、聞かせてもらおうかしら?君の決断を?」
「いいよ。この命、くれてあげる」
「アルセーヌ‥‥ッ!」
心配するラセツへアルセーヌは安心しろと目配せを送る。
「ただし、条件がある」
「何?」
――今まで生きて来た中で最大の盗みをさせて欲しいの
~side SONG~~
「これを見て欲しい」
発令室に集められた一同は、モニター画面に映る一通の手紙を見る。
今宵、歌姫と戦士の心を頂く。
阻止したくば今夜、都内国立博物館にて皆様を心よりお待ちしております。
「このタイミングでの予告状‥‥バリュエル光明結社が仕掛けたものだと間違いないだろう」
神出ずる門を開く儀式を行うため、その時間稼ぎか。或いは、必要な聖遺物を確保するのが目的か‥‥
真相がはっきりしない以上この予告状を無視するわけにはいかなかった
「出撃できる装者たちは、ただちに国立博物館へ向かってくれ。目的が何であれ、バリュエル光明結社の好きにさせるわけにはいかないッ!」
~~東京都国立博物館敷地内~~
反動汚染で動けない翼、調、クリス、マリアを除いた面々が警備にあたっていた。
パトカーのサイレンが夜に響き渡る中‥‥
「居たっ!居たぞーッ!!」
「どこだッ!」
辺りが騒ぎ初めたことに気づいた装者たちが駆けつけると、博物館の屋上を幾つものスポットライトが1つの人間を照らす。
『あれが…ッ!』
『アルセーヌ‥‥ルパンッ!!』
全身を白い衣装で統一した人物は下から眺める人間たちに声高らかに叫ぶ
「皆様。今夜はようこそお集まりいただきありがとうございます!」
「此度を持ちまして、人類守護の英雄はS.O.N.G.から私とさせて頂こうと存じます」
意気揚々と喋るアルセーヌはジュエルドライバーを腰に巻き、ビーストライズキーを起動する。
【STRANGEッ!!】
「嵌装ッ!!」
キーをドライバーに装填し変身する。
【プロテクトビースト・STRANGEFoxッ!】
オレンジ色の宝石『アンバー』で型取ったキツネのビーストモデルがアルセーヌの身体を包み込む。
尻尾や耳などキツネの特徴が大きく反映されたプロテクトビーストへと変身する
「さらに今夜は大サービスッ!誰も見たことがない輝きをご覧あれッ!」
【プライド・オブ・ビーストォォォッ!!】
ジュエルドライバーのスイッチを押し込みリーパー、トドロキと同様獣の精神を解放される。
”
”
身に纏う全身装甲が砕け、露わとなったボディにダイヤモンドをはじめとした宝石たちが組み込まれていく。
スーツは真っ赤なルビー色に
胸部の真ん中にはダイヤモンドが埋め込まれ、両手足は黒く金の装飾が施されている。
さらに尻尾と耳はそのままにマスクが狐面を思わせる形に変化する。
『傲慢』を司る感情の獣プライド・オブ・ビーストが此処に誕生した。
「さて、折角のお披露目会だが‥‥」
アルセーヌは装者たちを一瞥する。
「ギャラリーの皆さまには一度ご退場願いましょう」
アルセーヌは天に向かって指を鳴らす
すると地面に魔法陣が描かれ、そこからネットが放出。咄嗟に躱した奏とセレナ以外のメンバーを絡めとってしまう。
「みんなッ!」
「皆さんッ!」
「こんなもの――ッ!」
響がネットを引きちぎろうとするが、うんともすんとも言わずにむしろ動けば動く程絡みついてしまう。
「だったら――」
雅人もアタッシュカリバーでネットを切断しようとするが、その刃すらも通らない。
「無駄だよ。そのネットは超合金で作られた特注品。そう簡単には破られない」
動けない一同を守るべく奏とセレナはアルセーヌと対峙する。
「みんなは私たちが護りますッ!」
――HUNT
「それに、あんたには松代での貸しもあるしなッ!」
――ASSAULT BARRETT
――オーソライズ
――オーバーライズ
――【DAINSLEI】
「「変身ッ!!」」
【ショットライズッ!】
彼女が纏うシンフォギアの上からライダモデルがアーマーとなって装着されていく。
――ファイティングジャッカルッ!
――レディーゴー!アサルトウルフ!
――"
――"
「いくぞッ!」
「いきますッ!」
抜剣したセレナと奏を前に傲慢の獣は告げる。
「さあ、踊ろうかッ!!」
~side 奏&セレナVSアルセーヌ~~
欠けた月に照らされた世界で互いの武器が激しく交差する。
「おりゃあ――ッ!」
奏はアタッシュランサーをアルセーヌへと鋭い突きを繰り出す。アルセーヌも繰り出される槍をレイピアで華麗に捌いていく。
「見るがいいッ!美しき舞をッ!」
するとアルセーヌの足取りが軽く、ステップを刻み始める。
そして、身体をくるくると回転させ2人の動きを撹乱し始める。
「あの時の動き‥‥ッ」
松代で自分を無力化させた舞に、奏は警戒する。
風と共に舞っていたアルセーヌは、音を消し背後から奏の首筋へ刃を向ける。
「「「奏さんッ!!」」」
『奏ッ!!』
「しまっ――」
「まずは1人ッ!」
しかし首筋へ迫っていた刃は貫くこと無く、何かに阻まれ静止していた。
「ぐッ‥‥」
アルセーヌの刃から奏を護ったのはセレナの纏うシンフォギア『クラン・ソラウ』が作り出したシールドであった。アルセーヌが奏の背後に回り込んでいた一瞬にセレナはすぐさまアームドでのエネルギーシールドを形成し、飛ばしていたのだ。
「サンキュー、セレナ」
「どういたしまして」
ガングニルバルカンが攻めを、バルキリーが護りと援護に徹しビーストが付け入る隙を与えない。
「ふんッ!!」
アルセーヌが小型のルビーを砕いて2人へばら撒くと、破片が炎となって襲い掛かる。
しかし、
「「はぁぁぁ―――ッ!!」」
襲い掛かる火の粉を避け、奏とセレナは左右から疾走。円を描くようにアルセーヌへショットライザーの弾丸を撃ちこんでいく。
「ぐ‥‥ッ」
衝撃で後退した相手を奏は掴んで勢いよく背負い投げを決める。
さらに奏の背中に支えに、セレナの飛び蹴りが炸裂。立ち上がろうとしていたアルセーヌは再び地面を転がる。
「何故‥‥これ程までに息の合った動きができる…?」
「それはですね」
「わたしたちが――」
「あたしたちが――」
『似た者同士』だからさッ!ですッ!
立場、境遇、生まれた場所
たとえ全てが違くとも、誰かを想い、ひたむきであろうとする意志は同じ。
その心の重なりがユニゾンとなって、フォニックゲインがさらに上昇していく。
「「うぉぉぉ――ッ!!」」
2人の激しい勢いが 叫びが 怪盗の情熱を増々燃え上がらせる。
「その心意気、応えねば紳士の名が廃るッ!」
アルセーヌは、再度ビーストライズキーをジュエルドライバーに押し込む。
STRANGE・NEO・ORNAMENT
「はあッ!!」
幾つもの宝石をばら撒くと、それらが次第に集まり狐の手、脚、九つの尻尾となってアルセーヌに装着される。
そして鉱物の九尾となったアルセーヌは奏とセレナ目掛けて勢いよく飛びかかる。
「どんな敵が立ち塞がろうと」
「わたしたちは絶対に諦めません」
共に笑い、日常を過ごす人たちがいるこの世界を明日へと続かせる為に
2人はトリガーを引く。
アサルトチャージッ!!
――FIGHTING†BLAST FEVERッ!
――MAGNET STORM∞BLAST FEVERッ!
クラン・ソラスが放つ光エネルギーを右脚に込め、弧を描くように、鋭く、ビーストの胴体を蹴り上げる。
天高く打ち上がったビースト目掛けて奏は勢いよくジャンプする。
そのまま足先に狼型のエネルギーを纏いアルセーヌの頭部へ叩き込もうとする。
しかし、アルセーヌも負けじと奏の足を両手で掴み取る。
「なんだとッ!?」
「このままやられるつもりはないッ!」
そのまま両者は地面へと急降下していく。
「奏さんッ!」
けれども奏はセレナへ冷静に目線を送る。
「‥‥わかりましたッ!」
目線から察したセレナも同じようにジャンプし、左足でアルセーヌへキックする。
「くッ‥‥」
やむを得ずアルセーヌは、尻尾を使いセレナの足を掴み防いでしまう。
「これを待ってたよッ!」
「何ッ?」
すると2人は先程までキックしていた脚を引っ込め、反対側の脚にエネルギーを込めてダブル急降下キックを決める。
「ぐおぉぉ―――ッ!!」
急降下の威力もあり、2人のダブルライダーキックは叩き付けた地面を大きく抉る。
そして傲慢の獣は爆発に呑まれて消えた。
夜が明け始め、地平線から朝日が昇る。
そんな空に砕けた宝石の粒たちが、ダイヤモンドダストのように舞い散っていた‥‥
翌朝、カリオストロとプレラーティは、アルセーヌとの決戦の場に来ていた。
「なーんか、変な勘がするのよね~~」
「女の勘とやらか?まぁ、私も同じ理由なワケダが」
愚痴を言いながら、周囲を散策していると奏とセレナの必殺技でできたクレーターの中心に紙が置いているのに気づく。
「あれ、なにかしら?」
「見てみるワケダ」
封を開け、中の手紙を読む2人。
始めはなんて事もなく感じていたが、読み進めていく内に段々と深刻な表情になっていく。
「これは――」
「我々の想像を遥かに超える事態なワケダ…ッ!」
手紙を読み終えた頃には、2人はある決意を固めていた。
「こればかりは、彼女に黙っているわけにはいかないワケダが‥‥」
「あーしたちを信じて託してくれるか、一か八か掛けてみましょう。そのためにも―――」
――サンジェルマンに、謝らないと
~side イヴ・ヴァイスハウプト~~
「まったく‥‥意地を張って死ぬとは‥‥」
ため息をつき、統制局長イヴ・ヴァイスハウプトは新聞を読む。
新聞の一面には大きくアルセーヌがシンフォギアたちと戦い死亡した記事が書かれている。
(最後の晩餐‥‥の代わりに条件を呑んだが、我ながら反省しなければ)
ふとイヴはベットで目を閉じているティキに視線を合わせる。
(だが、不幸中の幸いか‥‥これで私の正体を探ろうとする者はいない)
(ティキにも十分すぎるほどの釘を刺した。後は、神の力を完成させるのみ‥‥ッ!)
――アズやアークは神の力が手に入れ次第、すぐに処理する。
「後は少し‥‥あともう少しなのだ‥‥ッ!」
一体幾多の年月をを迎えただろう。
肉体を失おうと、この魂、執念だけでこの日まで辿り着いた
・設定集
『プライド・オブ・ビースト』(傲慢の獣)
3番目の感情の獣で、派手な振舞いを以て相手と戦う。
本来であれば何事にも傲慢な態度になってしまうが、アルセーヌの怪盗魂によって抑えられている。
*モデル
仮面ライダードライブより、仮面ライダールパン
本小説版LOST-SONG編、読んでみたい?*XV編後
-
勿論ッ!
-
う~ん・・・