戦姫絶唱シンフォギア01 ~Take off toward a dream~ 作:光からの使者
更新は遅くなりますが、必ず書ききりたいと思います。
「ねえ‥‥。ラセツは死ぬのが怖くないの‥‥?」
散っていった仲間へ祈りを捧げているラセツへティキは問いかけた。機械であるために泣くことが出来ないティキだが、年頃の少女のようにその声はとても細く、弱々しい。
「‥‥全く怖くない、と言えば噓になるだろう。だが、既に覚悟は決まっている。誰かを犠牲にするよりも、消えるべき人間が消えた方がいい」
「――それが‥‥あなたの本心なのね」
ラセツが真意を打ち明けると、その場に居合わせていたイヴが口を開く。
「だから、貴女は錬金術師たちを始末するのを躊躇っていたのか。自分が全ての罪を背負って死ぬにふさわしいと自覚していたから。貴女のことわからなくなってきたわ」
どこか呆れる様子を見せるイヴをラセツは睨みつける。
「‥‥わかることはないでしょう。あの頃の面影すら消え去ったアナタには‥‥ッ」
◆ ◆ ◆ ◆
(‥‥ラセツ。一体何が貴女を追いつめているというの‥‥)
時、同じくしてS.O.N.G.から借り受けているラボでは、サンジェルマンが引き続きバリュエル光明結社との戦いに備え作業に取り掛かっていた。するとドアを開けカリオストロとプレラーティがラボへとやってきた。
「ちょっといいかしら?」
「どうした2人とも」
「少し話があるワケダ」
急な話にサンジェルマンは不思議に思いつつ2人の会話を聞くことにした。
「それで、話ってなにかしら?」
すると2人は、ばつが悪そうながらも口を開く。
「‥‥‥すまなかったワケダ」
「‥‥ごめんね」
2人から放たれた謝罪の言葉。思っても見なかった事態にサンジェルマンは思わず戸惑う。
「何故、2人が謝る?」
理由を問われたプレラーティとカリオストロは再び口を開いた。
「‥‥バリュエル光明結社と対面した時からサンジェルマンの様子がおかしかったワケダ」
「そうね。まるで、何か焦っているみたいだったもの。だから正直、心配だったの」
「個人的な問題に私たちが深い入りするべきではないと思い黙っていたワケダが‥‥」
「黙っていた結果が、これなのよね‥‥。全く、自分が嫌になるわ」
彼女たちの告白にサンジェルマンは思い当たる節が沢山あった。
本来であれば、すぐにでも自分は2人を頼るべきだっただろう。しかし、バルベルデでラセツと対面した時バリュエル光明結社の野望を、絶対に彼女を止めなくてはならないと一種の強迫観念に陥っていた。一時的な感情でラセツを追い詰めてしまったことへの罪悪感か、はたまた悲劇を繰り返させないために必死なっていたのか。
今になって、自分が1人で突っ走っていたことに気づいたのだ。幹部として、友として、今日に至るまで自分を支えてくれた存在がいたというのに。
「‥‥いや。謝るべきなのは私の方だ」
「私情に流されて、2人の気持ちを測れてなかった。指揮を執る者としてあるまじき失態よ」
「1人で抱え込まずに2人に頼るべきだったわ」
「「サンジェルマン‥‥!!」」
「我々の理念は1つ。支配、権力におもねることなく錬金術を以て無力な人々を導くこと」
「私はこの理念を叶えたい。けれど1人だけでは到底叶うまい」
「だが、只の夢で終わらせるつもりはないと思っている故に」
「何としてでもバリュエル光明結社の野望を阻止しなくてはならない。奴らが何を思うとも『神の力』は誰の手に余るもの。強大過ぎる力は大きな争いの火種にもなるだろう。それだけは何としても防がなければならない」
「そのために2人の力を貸してくれるか?プレラーティ。カリオストロ」
以前よりも晴ればれとした表情のサンジェルマンにプレラーティとカリオストロも笑顔で答える。
「もちろんッ!!」
「断固として不足無しなワケダッ!」
3人は決意を新たに、団結する。
その表情に、もはや曇りは無かった。
「それでねサンジェルマン。今後のことで大事な話があるの」
「もしかすれば、この一手が運命を大きく左右するかもしれないワケダ」
「‥‥わかった。聞かせてくれ」
ラボで何やら話しを進めるサンジェルマン、プレラーティ、カリオストロ。果たしてこれが吉と出るか、凶と出るか。それは神のみぞ知る。
「終わったぁ~~~。まさか、終わるとは思ってもなかった~~」
「お疲れ様」
夕方を迎えたリディアン音楽院。その教室の隅で夏休みの課題を無事終えた響は思いっ切り机に突っ伏す。
そんな響に未来は呟く。
「ありがとう。響」
「ほぇ?ありがとうは課題を手伝ってくれたこっちだよ。何で?」
首を傾げる響に未来は
「課題も任務も頑張るって約束、守ってくれた」
「‥‥わたしはきっと楽な方に流されてるだけだよ。賢くどっちか選択なんてできないし」
「結局、わがままなんだよね」
自虐そうに言う響。未来はそんな響でも良いと感じていた。
「響らしいね」
笑い合う2人。そんな中、切歌が教室の黒板を叩く。
「響さんッ!どうやら近いらしいんデスよねッ!」
「そう、あと2日ッ!!」
「後2日で響さんの誕生日g‥‥」
こつんと切歌の頭に黒板消しが当たる。投げたのは頬を膨らませ、赤らめている。
「どうしたの皆?」
「クリスさんから聞いたデスッ!」
「響の誕生日を?」
「覚えててくれたんだぁッ!!」
「偶々だ。偶々‥‥」
響は喜ぶ一方で、クリスはプイと恥ずかしそうにそっぽを向く。
そんな姿を見て調と切歌は茶化し始める。
「それにしても気にしてた」
「分かりやすかったのデースッ!!」
2人に茶化されたクリスの顔は真っ赤に染まる。
「はしゃぐな2人ともッ!!そろそろミーティングに行く時間だぞッ!!」
「揃ったな。早速ブリーフィングを始めるとしよう」
S.O.N.G.本部の発令室に集まった装者と雅人たち。前の画面には赤い点と蒼い線で結ばれた古文書のようなものが映し出される。
「調神社の古文書とその伝承。そして錬金術師との交戦から敵の第一の目的は地に描かれた鏡写しのオリオン座」
「神出ずる門より解き放たれし神の力。その創造で間違いなさそうだ」
「神社本庁とも連携して、近隣住民に避難勧告を広げ疎開準備を急がせています」
神の力と聞いた一同はバルベルデで相まみえた不死の怪物 ヨナルデパズトーリを思い返していた。
こちら側の攻撃は響と雅人の合わせ技以外では一切無効化され、圧倒的な防御力で一方的に攻撃できる恐ろしい存在。あれが不完全な状態で生まれて来たのだから、完全な神の力となればどれだけ凄まじいか想像に難くない。
「一体‥‥どれほどの怪物を創り出すというの?」
「神出ずる門から解き放たれし、神」
「正直。勝ち目が望める相手かわからないな」
「それでもどうにかするしかないよ」
「対抗できる手段とあるならば、『神殺し』しかあるまい」
「神殺し‥‥」
「デスか…?」
弦十郎は神殺しについて説明し始める。
「神と謳われる存在の死にまつわる伝承は、世界各地に残されている」
「前大戦期のドイツでは優生学の最果てに、神の死にまつわる力を収集したとあります」
「それなら‥‥ッ!」
「残念ながら‥‥戦時中の資料を保管した旧風鳴機関は統制局長イヴ・ヴァイスハウプトによって焼失しました」
弦十郎と了子はイヴ・ヴァイスハウプトがツングースカ級の術を使ってまで風鳴機関を消滅させたことに疑問を抱いていた。
「この一連の流れ、どうも用意周到だと思わない?まるで、証拠隠滅するのになりふり構わず動いたって感じが」
「奴が隠蔽を測ったことは逆に神殺しの存在を証明しているとも考えられないだろうか?」
「神殺しが‥‥!」
「‥‥存在するッ!!」
緒川さんを始めとした諜報部が情報収集に努めている。
S.O.N.Gの食堂では神殺し存在することに大半の意識が集中していた。
「神の力に対抗する‥‥神殺しの力‥‥」
バルベルデにて不死身とも思われたヨナルデパズトーリを打ち破った2つのガングニール
「まさか‥‥ガングニールが‥‥!」
「その場合はわたしも考えた。だが、ドイツ由来とは言えガングニールに神殺しの逸話は聞いたことが無い」
「そのガングニールをモデルにしたプログライズキー自身に宿ってるなんてアタシもちょいと信じ難いな」
「‥‥いまのあたしらにできるのは待ってることだけ」
「ギアとプログライズキーの反動汚染の除去が終わるまでは‥‥」
陰気な空気が漂う中、切歌は明るく別の話題を切り出そうとしていた。
「皆さんに提案デスッ!2日後の13日、響さんのお誕生日会を開きませんか?」
「ええぇッ!?今言う、今言うの!?」
「もしかして迷惑だった…?」
「いやいや、嬉しいよ」
それでも響の表情は浮かなかった。
「でも、今はこんな状況だし戦えるのはわたしと切歌ちゃんだけだからさ‥‥」
「俺のことがいることも忘れないでよ」
そんなツッコミはさておき、
「せっかくの誕生日デスッ!ちゃんとした誕生日だからこそお祝いしないとデス!」
何故か、誕生日に対し拘る切歌。そんな彼女にクリスは釘をさす。
「困らせるな。お気楽が過ぎるぞ」
「お気楽‥‥デスか‥‥」
『大丈夫とは、随分な余裕があるものだな。能天気少女ッ!』
『‥‥他愛ない』
自分のせいで、逃げ遅れた職員の人たちは焼き殺された。
自分が大丈夫と簡単に言ってしまったばかりに助けられなかったのだ。
「あたしのお気楽で‥‥困らせちゃったデスか‥‥?」
「ううんッそんなことないよ。ありがとう」
響のフォローが入るも重い空気が漂う。そんな中、雅人は陽気に振舞って見せる。
「だったら、早く終わらせないとね。俺も誕生日会したいし」
その言葉に切歌の表情は明るくなる。
「そうデスよねッ!」
「あのなぁ‥‥」
クリスはため息交じりに話すも、ふと雅人がふらついた様子を見せる
「大丈夫ですか、雅人さん!」
「雅人は連日での戦闘が多かった。もしかしたら疲労が祟っているのかもしれない」
「あなたは無茶しすぎなのよ。ちゃんと休みなさい」
「ははは‥‥まぁ、善処するよ」
そう言うもののどこか疲労を隠せない雅人だった。
それから数時間経ち、ラセツはティキとアズを連れて夜の神社へ現れていた。
神社を警備していた黒服の男たちを1人1人始末し生命エネルギーへと変換していく。
「ここまで警備が厳重なんて‥‥。もしかしたら、こっちの計画がバレてるのかな?」
「如何なさいますか、ラセツ様。一度引き上げるというのも‥‥」
「その必要はない。今宵が神の力を降ろす決行日。この程度で引き揚げるなど断じてありえないッ!」
見張りを始末したラセツは着ていたコートを脱ぎ棄て、裸になる。背中に刻まれた魔法陣を展開し始める。
「大祭壇、設置完了」
今日まで蓄えた生命エネルギーを使い、展開した魔法陣でオリオン座を描く。
「クッ‥‥」
背中を焼かれるような痛みを、歯を食いしばって耐える。
(これでも足りないか‥‥!だが、その分のエネルギーは私の命を燃やしてでも‥‥)
同じ時刻、S.O.N.G.の発令室でも異変に気付いていた。警備対象である神社から膨大なエネルギー量が検知したのだ。
「し、司令ッ!これは‥‥!」
「―各員に通達を急ぐんだッ!」
弦十郎の指示で、それぞれの場所にいた装者たちに通信が入る。
リディアンの寮で寝ていた響にも通達が入る。起きた響は携帯を手に取る。
「‥‥はい、はい、分かりました」
通信を終えた響が着替えようとすると添い寝していた未来が目を覚ます。
「響‥‥?」
「未来、わたし行かなきゃ」
「ぁ‥‥待っ…ごめん…」
「心配しないで。誕生日だって近いから。すぐ帰ってくる」
そう言って響は寮を飛び出し、空が荒れる中ヘリポートへと急ぐのであった‥‥
同じく司令からの通信で目覚めた雅人も、謎の疲れが癒えぬまま出動の準備を進める。
そこへ調整したプログライズキーとドライバーを用意した亡が部屋へと入ってくる。
「雅人さん。ゼロワンドライバー並びにプログライズキーの調整が終わりました」
「亡さん、ありがとうございますッ!」
早速キーとドライバーを受けるが先程と同じく足がおぼつかなくなってしまう。
「雅人さん!?大丈夫ですかッ」
咄嗟に亡が肩を貸したことで、辛うじて倒れることは免れる。
「た…助かりました。亡さん」
「もしかしたらここ最近の連戦で身体に疲労が蓄積しているのかもしれません」
「‥‥それでも、俺は行かなきゃ‥‥」
身体を何とか動かし、部屋を出ようとする雅人に亡は告げる。
「”決して行くな”とは言いません。ですがこれだけは覚えておいてください」
『あなたには帰る場所がある、あなたの帰りを待つ人がいる』
「そのことをお忘れなく」
告げた亡の声は、厳しくもどこか心配そうにも聞こえた。まるで、”帰ってこれなかった人”を知っているかのようも感じとれた。続けて亡は言う。
「必ず、帰って来てください。約束ですよ」
亡の並々ならぬ気迫に、雅人も頷く。
「もちろん。必ず帰ってきますよッ!」
先程の足取りとはうって変わり、雅人は軽快な足取りで部屋を飛び出すのであった
1人残された亡は、自身のメモリー内を検索しとある人たちの記録を再生する。
『なぁに、心配するな。俺も刃も絶対に帰ってくる』
『当然だ。わたしは
『刃、今お前なんつったッ?』
『な、何でもないぞ』
懐かしき日々。自分の
それを失う悲しみなど味わいたくはない。機械である自分が言うのもおかしい話だが、向かう彼の背中が暖かいと感じるのであった‥‥
『首尾はどうかしら?』
「今のところは順調といった所ね。流石は完全な肉体の持ち主」
「ぁぁぁ‥‥あああああッ!!!」
ラセツの肉体を中枢とし、儀式はさらに進んでいく。
うめき声をあげるラセツの横でティキは満点の星空を見上げていた。
「天地のオリオン座が儀式で定められたアスペクトで向かい合う時、ホロスコープに門が描かれる‥‥。その場所と位置を割り出すのがあたしの本当の役目」
「そして――」
ラセツの苦しむ声が大きくなると共に儀式の勢いも凄まじくなっていく。
この騒ぎにS.O.N.G.が気づかないはずがなかった。
『弦、こちらの準備はできている。いつでも行けるぞ』
「うむ」
◆◆◆◆
「ぁ、ぁ、ぁぁ‥‥‥」
(トドロキ‥‥リーパー‥‥アルセーヌ‥‥。お前たちの命、無駄にはしない‥‥ッ!そしてわたしを恨み散っていた者たちよ。お前たちの怨み、全て持って行こう)
(サンジェルマン‥‥。すまない‥‥。こんな不器用なやり方しか私にはできなかったんだ‥‥貴女を犠牲にするくらいならぁッ!!)
レイラインからラセツ達のいるポイントまで尋常ではない程のエネルギーが活発に流れていく。そして天まで伸びる光の柱から波紋が現れる。
「開いたッ!神出ずる門ッ!」
「レイラインから抽出されたエネルギーに純粋無垢にして恋乙女の概念を付与させる‥‥ッ!」
光の柱に入ったティキの口へ神出ずる門から具現化したエネルギーが膨大に入り込んでくる。
ヘリで現場に向かっていた響たちにも大地に描かれた模様を見て取れる。
「凄いことになってるデスッ!」
「あれが‥‥ッ!」
「鏡写しの‥‥」
「オリオン座ッ!」
『レイラインを通じて観測地点にエネルギーが収束中ッ!』
『このままでは、門を越えて神の力が顕現しますッ!』
「弦十郎君ッ!」
『合わせろ弦ッ!』
「応ともッ!兄貴ッ!!」
弦十郎と八紘は鍵を手に持ち、同時に鍵穴へと挿し込む。
「『決議 執行ッ!』」
2人の号令が合図となって鏡写しのオリオン座を形成していたレイラインに位置する要石の封印を一斉に壊した。
封印が壊されたことで、エネルギーを供給していたレイラインが遮断され神出ずる門が閉じていく。
『各地のレイラインポイントに配置された要石の一斉起動を確認ッ!』
『レイライン遮断作戦、成功ですッ!』
『手の内を見せすぎたな、錬金術師。お役所仕事も馬鹿にできまい」
「ぁ、ぁ、ナイ‥‥ナイ‥‥」
「ティキッ!!」
門が閉じられたことで、ティキは思い切り地面に打ち付けられる。
――Balwisyall nescell gungnir tron
――Zeios igalima raizen tron
ジャンプッ!オーソライズッ!
「変身ッ!」
プログライズッ!
ライジングホッパーッ!
"A jump to the sky turns to a rider kick."
ヘリから飛び降りた響、切歌、雅人はラセツたちの元へ降り立つ。
さらに、ファウストローブを纏ったサンジェルマンもこの場へ現れた。
「そこまでデスッ!」
「お前たちは‥‥どこまでも‥‥ッ!!」
【ジュエルドライバーッ!】
blade
【ビーストライズッ!】
――SLASHING EAGLEッ!
【グリード オブ ビースト】
ラセツの身に纏う全身装甲の各部位が可変し、背中には宝石で造られた大きな翼を。手足には鋭い鉤爪が生える。
「「はああああ――ッ!!」」
「てぇあああッ!!」
同時にイグナイトを纏った響の拳とサンジェルマンの銃剣がラセツの剣を受け止める。
「やっぱり戦うしかないんですかッ?」
「お互いの信じる正義を握りしめている以上、他に道はありはしない。そうだろうッ!」
「嗚呼。わたしが望む明日を掴むためにお前を力づくでも止めるッ!」
響、切歌はユニゾンで攻撃を仕掛け、サンジェルマンはラセツに戦いを挑む。
「響、切歌、サンジェルマンさんッ!」
「あなたの相手は、こいつらよ」
3人の加勢に向かおうとした雅人の前に、アズが立ちはだかる。
「行きなさい。アーク様の僕たち」
アズは、3体のバトルマギアとクラッシングバッファロータイプのアークマギアを差し向ける。
side 響&切歌、サンジェルマンVSラセツ
「――信念とか、宿命とか重さじゃないんだッ!」
ラセツの繰り出す剣戟を響は的確に捌いていく。
「――そうは言っても一直線が何故か伝わらない」
切歌も羽根の弾丸を躱しながら大鎌を振るいラセツに立ち向かう。
「中々、届かないッ!」
更に羽根の弾丸を乱れ撃ちするも、サンジェルマンが弾丸たちを纏めて撃ち落とす。
ラッシュ、斬撃、銃撃の猛攻を受けきりながらラセツは冷静に反撃する。
「ガムシャラなBelieve song」
「「途中経過の言葉じゃとかなく、本当の想いを見てッ!」」
ユニゾンのペースを上げて連携の速さが増していく。
切歌はイガリマの鎌を2つ合わせ大きな鋏のような形を作り、響は勢いよく突っ込んでいく。
2人の挟み撃ちをラセツは咄嗟に空へ飛び、迎え撃つ。
弾丸を防ぎつつ向かって来る両者の攻撃をいなすが‥‥
「背後ががら空きよッ!」
「くッ!?」
後ろに回っていたサンジェルマンがかかと落としでラセツを叩き落とす。
だが、負けじとラセツも翼を広げ突風を起こし3人を地面へ落とす。
すぐさまラセツが剣を振るい襲い掛かるが、響たちを守るべくサンジェルマンが猛攻を受けきる。
「神の力を持ってして、月遺跡の権限を掌握するッ!」
「バラルの呪詛を消し去り、負の歴史に終止符を打つッ!」
ラセツの斬撃が巨鳥となって襲い来る。
「だとしてもッ!誰かを犠牲にするやり方はッ!」
響はドリルアームを形成し、真正面から巨鳥を貫く。
「今日まで背負った罪と罰、生半可な覚悟で務まるかッ!」
「‥‥お前は、一体何人もの命を犠牲にしてきた?」
「今更‥‥数え切れるかぁッ!」
再び響とサンジェルマン目掛けて羽根の弾丸を放つ。2人は咄嗟に防御態勢をとるも羽根の軌道が曲がり真横から受けてしまう。
「たあああぁッ!!」
倒れた響目掛けてラセツは足の先についている右脚の鉤爪を突き出す。
「響さんッ!」
「響ッ!」
「立花響ッ!」
ラセツの鋭い爪が響の首目掛けて振り下ろされた。
その様子にモニターを通じて見ていた一同は愕然とする。
『――ッ!?』
『嘘だろッ!?』
しかし、響は咄嗟に右脚を脇で挟んでおり、首を貫かれるのを防いでいた。
そして腰のブースターエンジンを吹かせて、体勢を立て直しラセツの腹部へ拳を叩き込む。
そこからさらに、切歌もブースターを吹かせ響の脚と連結する。ダブルブーストで加速したまま勢いを増す。
「立花響、暁切歌ッ!」
そこにサンジェルマンがスペルキャスターでビームを放つ。するとビームが通った跡に幾つもの魔法陣が形成された。魔法陣を通過するたびにスピードが勢いを増し、さらに加速していく。サンジェルマンも魔法陣を潜り抜け、ラセツ目掛けて突っ込んでいく。
自分らしい覚悟を
――握ってぇぇぇぇぇッ!!
必愛デュオシャウト・ブルーム
突進したサンジェルマンがすれ違いざまに剣で斬りつけ、響の渾身の拳が炸裂する。勢いのままに地面に叩き付けながら進んでいく。神社の石垣を抉り、物凄いほどの土煙が起こる。
~side 雅人~
「いくぞッ!」
【アタッシュカリバーッ!ブレードライズッ!】
アタッシュカリバーをアークマギア バッファロータイプへ振り下ろし斬撃を与えていく。けれども3体のバトルマギアが雅人の背後から短機関銃「トリデンタ」を発砲し邪魔をする。銃弾をアタッシュカリバーの柄で防ぎつつ、4体のマギアを相手取る。
「ゔぉぉォォッ!」
ブースターを吹かせ、頭部の角「レッドブルーザー」を構え突進するバッファロータイプのマギア。
「はッ」
突っ込んでくるマギアの背を蹴って踏み越え、アタッシュカリバーを一度アタッシュケースに戻す。
【チャージライズッ!フルチャージッ!】
「はあああッ!」
カバンストラッシュッ!
再度ブレードモードに展開し、刃に宿したエネルギーで一閃する。
斬撃を喰らった3体のバトルマギアは吹っ飛ばされ、そのまま爆散した。
「グォォォォッ!!」
雅人がバトルマギアを蹴散らすとバッファローマギアが両腕のバッファブロウを繰り出し再び襲い掛かるが、これを華麗に避け、逆にマギアを蹴り飛ばして吹っ飛ばす。
そして‥‥‥
ライジングインパクトッ!
吹っ飛ばされたマギアへ瞬時に近づき、すかさず上空へと蹴り飛ばす。
空へ投げ出されたマギアよりも上から急降下キックを放つ。
ライジングインパクト
上空から放った飛び蹴りはマギアの胴体を貫通し粉々に破壊したッ!
「ふぅ‥‥」
地上に降り立ち、一呼吸入れる雅人をアズは見ていた。
「やっぱりマギア程度じゃ、君の相手にはならないかぁ」
「アズ‥‥ッ!」
雅人はほくそ笑むアズを睨みつける。
「F.I.S。キャロル。そして今度はバリュエル光明結社。お前たち、一体何が目的だ?」
「ふふふっ、何って私たちの目的は人類を滅ぼしこの星の新たな支配者となることだよ」
不気味に笑うアズに対し雅人は疑問をぶつける。
「‥‥本当に人類を滅ぼす気になれば、アークの頭脳を敵対組織に与えあっという間に滅ぼすことが出来たはず。でもあえてそうはせず、止めを刺せるはずなのに装者や俺を見逃した‥‥。どういうわけだ」
「そーだねぇー。言うなれば、まだその時じゃなかったからって感じかな」
「何?」
何かをはぐらかしているアズはおどけながら話続ける。
「この星を統べるのは人間ではなくアーク様。拗らせた巫女でもなく、似非英雄でもなく、ましてや魔女っ娘如きがだなんて絶対にあってはならないわ」
「それに―――」
するとアズは雅人を見つめる。
「――アーク様は貴方に興味を持っているの」
「‥‥‥アークが俺に?」
「いずれわかるかもね」
2人が話していると大きな衝撃が伝わってくる。響と切歌、サンジェルマンがラセツと戦っている場所からのようだ。
「行かないの?」
「‥‥ッ、」
止む終えず雅人はアズを置いてその場を離脱する。
雅人が離れた後、アズは自身のモジュールを発光させ先程の戦闘のデータをアークへ転送する。
ルナアタック事変、月の落下事件、魔法少女事変。世界の危機を幾度となく装者たちと切り抜けた雅人は仮面ライダーゼロワンとして大きな成長を遂げていた。
その事実にアズは喜びを隠せずにはいられない。
「ふふふッ。あの時の子供がまさかこれほどまでに成長するなんてね。それにヒューマギアのシンギュラリティデータよりも多くの悪意を集めることもできたし、そろそろ潮時かな」
くるくると赤黒白の3色で塗られた謎のプログライズキーを回す。
「さぁてと、もう一仕事頑張りますか」
side 響、切歌 サンジェルマン ラセツ
3人のユニット技に大きく吹っ飛ばされたラセツだったが、身体がボロボロになりながらも立ち上がろうとする。
「はぁッ‥‥はぁッ‥‥もう誰も‥‥あんな目には‥‥ッ!」
「不条理に命を奪われることも‥‥救えずに悔やみ続けるのも‥‥全て終わらせるッ!」
「‥‥ぐふぅッ!?」
しかし、儀式で既に体力を消耗していたラセツはゆっくりと膝から座り込んでしまう。
「わたしも正義をずっと信じて握りしめて来た。拳ばかりでは変えられないことがあることも知っている。だから――」
すると響は自らの手を開き、腕をラセツの方へと伸ばす。
「握った拳を開くのを恐れない」
「神様が仕掛けた呪いを解くのに神様みたいな力を使うのは間違ってます」
「人は人のまま変わらなきゃいけないんです」
(人は人のまま、か。立花響‥‥この日本に来てからというもの貴女には驚かされるばかりだ)
そう思いながらもサンジェルマンには響の言うことに納得していた。
「ならば私も手を開くことを恐れてはいけないな」
「サンジェルマンさん‥‥!」
サンジェルマンも穏やかな表情を浮かべラセツに手を差し伸べる。
「‥‥『だとしても』。いつだって何かを変えるには『だとしても』という不倒不屈の想いなのかもしれない」
「私は私のまま変わりたい。ラセツ、貴女もきっと‥‥」
「『だとしても』‥‥か‥‥」
ラセツは響とサンジェルマンの手を取ろうとするが、その瞬間
「これは何の茶番かしら、ラセツ?」
突如、空にイヴ・ヴァイスハウプトが現れる。
イヴが手を天に挙げると赤い魔法陣たちがオリオン座を形成する。
赤いオリオン座は空からエネルギーをどんどん吸い取っていく。
「何が起こってるデスかッ!?」
「チィッ!やっぱり現れたかッ!」
雅人も響たちの元へ駆けつける。
イヴが行っている様子を映像を通じて見ていたエルフナインは固唾を飲んでいた。
『天を巡るレイライン‥‥ッ!』
『イヴはこの星からではなく天の星々から命を集めるため、オリオン座そのものを神出ずる門に見立てて‥‥ッ!』
『マクロコスモスとミクロコスモスの照応は錬金思想の基礎中の基礎だというのにッ!』
『まずいわねぇ…このままじゃあ、神の力が顕現してしまう…』
「イヴ‥‥わたしの‥‥マ、、マァ‥‥ママが‥‥キテクレタァ・・・・」
倒れていたティキはイヴの姿を見た途端、再び眩い光に包まれる。
『星の海にて開かれる』
『もう一つの神出ずる門‥‥ッ!』
『超高レベルのエネルギー来ますッ!』
レイラインから降り注がれたエネルギーがティキをバリアーのように囲む。
「目標が空高くじゃあ、到底遮断できないまい」
「「止めてみせるッ!!」」
響と雅人は神の力の顕現を阻止するべく、ティキ目掛けて飛びかかるがイヴは赤い宝石とオレンジの宝石を放つ。
放たれた宝石は2人に触れた途端、火炎と爆発となって吹っ飛ばす。
「教えて下さい統制局長ッ!その力で全ての命を護れるのですかッ!」
ラセツの叫びにイヴはとぼけた素振りを見せる。
「護る…?ああ、できる、と思うよ。ただ――」
「
ラセツの信念をどうでもいいと吐き捨てたイヴにサンジェルマンは怒鳴る。
「謀ったのかッ!?トドロキ、リーパー、アルセーヌ。今日まで失われた全ての命をッ!」
「わたしの母を救ったのも‥‥全て偽りの感情で動いていたのかッ!!」
しかしどんなに叫んでもイヴの態度は悪びれる様子もない。
「もう用無しなのよ。貴方たちは」
”パチィン”
指を鳴らすと音を鳴らしティキの口から高エネルギーレーザーが放たれた。
細いながらも瞬く間に大爆発を引き起こしきのこ雲を創り出す。
――Emustolronzen fine el zizzl‥‥ッ!!
切歌が決死の絶唱を唄い、たった一人で受けとめていた。
「たしかにあたしはお気楽者デスッ!だけど‥‥誰か一人くらい何も背負ってないお気楽者がいないとッ!もしもの時に重荷を肩代わりできないじゃないデスか!」
「絶、唱、、、、?」
『だめぇッ!!』
何とか受け止めていた切歌だが、やがて耐えられず吹っ飛ばされてしまう。
辛うじて衝撃はかき消されたものの切歌の身体はズタズタになってしまっていた。
「切歌ちゃんッ!絶唱で受けとめるなって無茶を‥‥」
「切歌ッ!死ぬなッ!しっかりしてッ!」
「響さんはもうすぐお誕生日デス…誕生日は重ねていくことが大事なのデス…」
「こんな時にそんなこと‥‥」
「私は…本当の誕生日を知らないから…誰かの誕生日だけは大切にしたいのデス…」
雅人は何故切歌が誕生日にこだわっていたのか、ようやくわかった気がした。
ナスターシャからかつて切歌のことを聞かされていた。切歌は自分の本当の誕生日を知らない。今の誕生日だってレセプターチルドレン時代に施設の職員が付けたものだということ。それ故にせめて自分は本当の誕生日を待ち望んでいる人を祝ってあげたかったのだ。
すると切歌の懐から数本のLiNKERの瓶が転がり落ちる。
「LiNKER‥‥ッ!」
『過剰投与で負担を最小限に‥‥。でも体への薬害が大変なことにッ!』
『切ちゃんッ!切ちゃん!お願いッ!!』
血涙を流す切歌を目の当たりにし調は錯乱しそうにまで叫んでいた。
『直ちに切歌君の回収を急げッ!体内洗浄の準備もだッ!』
だが、イヴは装者たちに構うことなく始末しようと迫る。
そんな中ラセツとサンジェルマンは武器を手に取り構える。
「あの子たちに手出しはさせない」
「ほぅ、それが貴女たちの決断なのかい?」
「もうお前は、私たちが心から慕った人ではない。倒すべき支配者だ」
「はぁ、、君たちも頑固だねぇ。でもだからこそ忌々しく鬱陶しいッ!!」
「神の力は間もなく完成する。もはや止めることなど不可能だッ!!貴方も来なさいアズッ!」
「かしこまりました。変身」
ルシファーッ!
プログライズッ!アークッ!
OVER THE EDEN
—―そいつはやってみなきゃわかないよ。お前を止めるのは俺たちだ
――私たちは、互いに正義を握り合い、終生分かり合えなかった仇同士」
———敵は強大、圧倒的。ならばどうする立花響!
――いつだって、貫き抗う言葉は1つ
だとしてもッ!!
狙うはバリュエル光明結社 統制局長イヴ・ヴァイスハウプト 悪意の使者 アズ 仮面ライダールシファー
今決戦が始まる
本小説版LOST-SONG編、読んでみたい?*XV編後
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勿論ッ!
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う~ん・・・