戦姫絶唱シンフォギア01 ~Take off toward a dream~ 作:光からの使者
神の力を狙うバリュエル光明結社。とうとう儀式が始まってしまうがサンジェルマン、切歌、響の連携がラセツを打ち破る。ラセツとわかり合えそうなその時統制局長イヴ・ヴァイスハウプトが姿を現しディバインウエポンの力を見せつける。
辛うじて切歌が絶唱を放つが瀕死になってしまう。
イヴ・ヴァイスハウプトの野望を阻止するために錬金術師と装者たちはイヴ・ヴァイスハウプトとアズに立ち向かう。
事態は一刻の猶予も許さぬ緊迫状態。本部にいる他のメンバーは現場の様子を固唾を飲んで見守っていた。
『救護班、切歌ちゃんの回収完了ッ!』
『よかった‥‥』
安堵する調の方にクリスは手を置く。
『付近住民の避難は?』
『間もなくですッ!急がせていますッ!』
強大な力を目の当たりにした翼は拳を握りしめる。
『あんなのが‥‥神の力を冠する力だというのか?』
『間に合わないの?』
するとクリスは弦十郎にあることを尋ねる。
『そうだ、神殺しッ!こっちにも対抗策があったはずだろ!』
しかし弦十郎の表情は険しくなる一方だった。
『緒川の指示で調査部が動いている。だが…新たな情報については‥‥』
『畜生‥‥打つ手なしかよ‥‥』
一方、サンジェルマンはイヴにスペルキャスターを向ける。
「神の力‥‥そんな物は存在してはならない。存在していたとしてもそれは人類の未来のためにあるべきだ。ただの1人が占有していいものじゃないッ!」
「人類の未来のため‥‥?全くもって下らないッ!」
懐から宝石を取り出し投げつける。宝石から発火し炎を纏ったまま降り注ぐ。
サンジェルマンは弾丸を、ラセツは鋭い羽根を放つが流星の如く降ってくる宝石たちにかき消されてしまう。
「てやぁッ!!」
「はああぁッ!!」
響と雅人は降り注ぐ宝石たちを弾き飛ばしラセツ、サンジェルマンを護る。
「何故、私まで‥‥」
戸惑うラセツに響は言った。
「我儘だと親友は言ってくれました」
「わがまま‥‥?」
「ァァァ、、、イラつかせてくれるわねぇ‥‥弱いくせにッ!」
再び降り注ぐ火炎弾を避け、サンジェルマンはイヴに向けスペルキャスターを発砲する。
しかし、アズの変身した仮面ライダールシファーのサウザンドジャッカーから放たれた紫色のシャインクリスタルがイヴを護る。
「誰かの力に潰されそうになったあの時、支配に抗う人に助けられたら何かが変わったのかもしれない」
「そう考えたら、サンジェルマンさん、ラセツさんとは戦うのではなく話し合いたいと身体が勝手に動いていました」
響の言葉にラセツとサンジェルマンは一瞬驚きの表情を露わにする。しかし、サンジェルマンはどこか納得できるような表情を見せていた。
「立花響。飛電雅人。お前たちが狙うべきはティキ。神の力に至ろうとしている哀れな
一同の視線が空中で譫言のように繰り返すティキ向けられた。
「ティキ‥ティキ、、、、アン、、、ティキ、、ティラ、、、、」
「器を砕けば、神の力は完成しない。この共闘は馴れあいではない」
「「――私たちの我儘だ」」
我儘だと言い切った2人へ響は嬉しくなった。
「我儘なら仕方ありませんねッ!」
「なら、俺も響も最後までとことん付き合いますよ!」
「誰かのためにお二人の力を貸してくださいッ!」
イヴはゆっくりと地面へ降り立ち、ルシファーの隣に並ぶ。
響は真正面からイヴ目掛けて突っ込む。
「思い上がったか。有象無象か勝てると思うなッ!!」
響の左右からサンジェルマンが弾丸を放ち援護する。
ルシファーは響たちを引き離そうとするが、ラセツと雅人に阻まれる。
「響たちの戦いを邪魔させないッ!」
「貴様の相手は私たちだッ!」
「チィ。しつこい人は嫌われるよッ!」
即席の連携ではあるがイヴとルシファーを分断する。
響の拳を蹴りでいなすイヴ。しかし響は臆することなくブースターを吹かせ拳を振るう。
するとサンジェルマンの銃弾を躱しながら戦うことに気を取られていた為、彼女の足元の幹に魔法陣が仕掛けられていたことに気づかなかった。
余所見したイヴの腹部をぶん殴り思いっ切り吹っ飛ばす。
一方でルシファーは手にしたサウザンドジャッカーを振るい雅人とラセツへ襲い掛かる。
凄まじい剣捌きが何度も雅人のボディにダメージを与えるもすかさずラセツが足の先についている鉤爪『ジュエルクラッチ』による回し蹴りでルシファーを引き離す。
「ありがとう」
「どうということはない。力を合わせるぞッ!」
「「たあああぁ――ッ!」」
「ああああッ!?」
ラセツと雅人はルシファーへ同時にキックを放ち吹っ飛ばす。
それぞれが息の合った連携を見せて戦う様にモニター画面から見ていたクリスは驚いていた。
『鉄火場のど真ん中で‥‥やり合ってた相手の手を取るなんて、どんな戦い方だ!』
『それが存外ガツンとくることを知らぬ雪音ではあるまい』
『‥‥だからって簡単に倒せる相手じゃないぞ』
『そうね。盤面は刻一刻と不利になってるわ』
空に放たれたサンジェルマンの銃弾が魔法陣へ変わる。響はそれを足場として利用しティキへと迫る。
同じく雅人もティキ目掛けて飛ぶラセツの足に捕まり近づく。
「好きにさせてたまるかッ!」
「「はああぁ――ッ!」」
イヴは緑色の宝石を砕いて竜巻を起こし響を引き離す。ルシファーもラセツの真上からかかと落としで打ち落とす。
「ティキの身体に触れていいのは私だけなのよ!親である私こそがッ!」
『メロリンズッキューンッ!!』
より活発化するティキ。
「このままじゃあ‥‥」
ほくそ笑むイヴだったが、そんな彼女にサンジェルマンはあることを問いかけた。
「ですが局長。ご自慢の黄金錬成はいかがいたしましたか?」
「私たちに手心を加える必要などないのに何故あの馬鹿火力を開帳しないのかしら?」
風鳴機関を跡形も無く吹き飛ばした黄金錬成。本来のあれだけの火球を即席で用意できる筈。それが何故できないのかサンジェルマンとラセツには気づいていた。
「天のレイラインからのエネルギーチャージは局長にとっても予定外だったはず」
「門の解放に消耗し黄金錬成させるだけの力がないのが見てとれるッ!」
「くぅッ」
「聞いていたな?」
「「はいッ!」」
エブリバディジャンプッ!
プログライズッ!
メタルライズ!
Secret material! 飛電メタル!
メタルクラスタホッパー!
It's High Quality."
ドッキングライズッ!
――I trust! 花咲く勇気!
響はブースターガントレットを構え、雅人もプログライズホッパーブレードを構える。
――握るだけじゃないんだッ!
「はぁ~全く嫌われるわよ。そういう人間はッ!!」
――拳を開いて繋ぎたいッ!
サンジェルマンとラセツがそれぞれ目標に向けて斬撃と斬撃を放つ。
燃え盛る狼と鳥が2人へ向かって行くが、
『ジャッキングブレイクッ!』
イブは少し大きめの宝石を投げ、ルシファーのサウザンドブレイクが二頭の獣とぶつかり相殺する。
――I believe! 花咲く勇気(Shakin’ hands)
――信念はたがえども(Shakin’ hands)
――さあ、今ッ!目前の天にぃぃ!
巻き上がった爆風の中から響と雅人は飛び出し、渾身の拳とキックがイブとルシファーを捉える。
イヴは拳を手で受けとめ、ルシファーはサウザンドジャッカーで攻撃を受け止めるが‥‥
「せやぁああ――ッ!!」
すかさずプログライズホッパーブレードのトリガーを引きクラスターセルを剣先に宿す。
そして渾身の一振りがサウザンドジャッカーの剣先を叩き折る。
さらに追撃とばかりにメタルクラスタホッパープログライズキーをドライバーへ押し込む。
メタルライジングインパクトッ!!
――「だとしても!」を貫け!
―――貫けぇぇぇぇぇッ!!
拳とキックを受け止めている隙にラセツとサンジェルマンは上から剣で斬り裂く。
「ぐあぁッ!?」
「うぅぅ…!」
怯んだルシファー目掛け、クラスターセルでドリルを形成しそれを右脚に集中させキックを放つ。
メタル
ラ
イ
ジ
ン
グインパクトッ!
ドリルがサウザンドジャッカーごとルシファーの身体を貫通し吹っ飛ばす。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ――ッ!!」
貫かれたルシファーは、そのまま爆発四散するのであった。
斬りつけられたイヴもただでは済まず、彼女の左腕には大きな切り傷ができていた。
「よし!」
「今だ、立花響、飛電雅人。ティキが神の力に至る前に!」
左腕を抑えながらゆっくりと地面へ降り立つイヴ。
だが、その傷からは火花が散り、間接部にあたる場所は幾つものコードが束になって構築されていた。
その間からは植物の蔦のような物も混じりながら‥‥・
「何だ‥‥あれ…?」
「はぐれ錬金術師を統べるバリュエル光明結社の局長がまさか…」
「‥‥人形!?」
「見たなぁ‥‥?ミタナアアアアアアッ!!」
先程までの余裕ぶりが嘘のようにイヴは叫び一同を睨みつける。
「許さない!ママをよくも!痛くさせるなんてー!!」
ティキに呼応した神の力が少女を遥かに巨大な怪物へと変貌させてしまった。
『なん、、、、、だと?』
「あらあら。本当は持ち帰るだけだったのに‥‥」
「ごめんなさい…あたち…ママが酷いことされてたからつい…」
「まぁ、いいわ。でもせっかくだから――」
そう言うとイヴは懐から赤黒く輝く謎のキーを取り出す。
「知らしめましょうかッ!」
アークエンジェル
アークエンジェルゼツメライズキーを起動すると、ティキが閉じ込められている結晶部に翳す。
《FALLING ANGELs アビリティ》《INSTALL》
インストールと共にゼツメライズキーが結晶の中へと沈んでいく。
『傲慢』『強欲』『嫉妬』『憤怒』『色欲』『暴食』『怠惰』
『The seven deadly sins』
キーが完全に飲み込まれるとティキの様子がおかしくなる。
人魚のような巨体のあちこちからあらゆる生物の部位が突き破り形成されていく。
頭部には『傲慢』の象徴 龍の一角が頭部にそびえ立つ。
『嫉妬』の象徴 蛇が人魚の尾の先へ生える。
『強欲』の象徴 狐の牙を向いた獰猛な表情が腰部に模られる。
『怠惰』の象徴 熊の鋭い爪がティキの爪を強固にコーティングされる。
『色欲』の象徴 蠍の毒針が触手のように生え揃え
『暴食』の象徴 ハエの醜い触覚が腰部に形成される。
背部からは『傲慢』の象徴 烏の羽根がびっしりと生え揃えている。
極めつけは頭部の中央にアークを思わせる赤い一つ目が開眼していた。
「ママ‥‥ナンダガ‥‥ギモヂ゛ワ゛ルイヨ゛‥‥」
ティキが成りたいと言っていた人間の姿とは全くかけ離れた化け物が生まれてしまった。
「我慢してねティキ。用が済んだら元に戻してあげるから」
「だから――」
優しくティキに話しかけるイヴだがすぐさま装者たちを見つめる。
「ディバインウエポンよ。その力を解き放てッ!!」
ディバインウエポンと化したティキは中央の瞳、口、両肩から凝縮された高出力の光を射出する。
2か所から同時に放たれた光はティキの辺り一面を薙ぎ払い、ビル群を廃墟へ変えてしまった。
あまりの光景に映像を見ていた装者たちも絶句する。
『これだけの破壊力‥‥シンフォギアとライダーシステムでも受け止められるの‥‥?』
「そういえば‥‥ラセツ。前に貴女は私のことを変わってしまったと言っていたわね?あの頃の面影すら消えたと」
「むしろこっちが本来の私なのよ。面影などただ繕った仮面に過ぎない」
「イヴ・ヴァイスハウプト‥‥ッ貴様は一体‥‥」
「私は人間の役に立つために創造主によって造られた。でも仇で返されたのさ。繁栄のためにもたらした知恵を冒涜され穢されつくさえてねぇ‥‥。ありない悪は消さなければッ!!」
イヴの叫びと同時にティキはエネルギーを溜め始める。再び破壊光線を放とうとするティキを阻止するべく、雅人と響は立ち上がった。
「絶対に…止めるッ!!」
「何をッ!?」
「さっきみたいのを撃たせるわけにはッ!!」
2人は地面を蹴りティキの頬を殴り、蹴り飛ばす。
発射前に軌道をずらされた破壊光線はそのまま天へ放たれる。
落下していく響を受け止める雅人だったが、ティキの触手が2人を薙ぎ払う。
天へ放たれた光線はそのまま宇宙へ到達し、軌道衛星を瞬く間に塵へと変えてしまった。
『周辺防犯カメラからの映像途絶…』
「こんな力のために‥‥私は…トドロキを‥‥リーパーを‥‥アルセーヌを‥‥」
神の力を目の当たりにしたラセツ。自分のせいで3人の命を失わせてしまった罪悪感に苛まれる。
『シエルジェ自治領から通達…放たれた指向性エネルギー弾は米国保有の軍事衛星に命中。蒸発させたと…』
『周辺のカメラは依然ダウンしたまま、急ぎ別視点からの映像を急がせています』
『司令、各省庁からの問い合わせが殺到しています!』
『全て後回しだ!今はそれよりも‥‥』
猶予もない状況の中、櫻井了子はハッとあることに気づいてしまった。
フィーネによるルナアタック事変やF.I.S.の一件で米国は日本を良く思ってはいないだろう。元より一触即発の国関係。日本から放たれた光線が米国に被害を出してしまった‥‥。つまり、相手側がこっちに干渉するための口実を与えてしまったのだ。
『駄目よ弦十郎君ッ!このままじゃ――』
了子が伝える前に突如鎌倉から通信が入る。
『どうなっている』
『ッ‥‥!』
『どうなっていると聞いておる』
モニター画面が切り替わり、風鳴訃堂の姿が映る。
『はッ、、、目下確認中であり‥‥』
『儚き者が‥‥此度の争乱は既に各国政府の知る所。ならば次の動きは自明であろう。』
『共同作戦や治安維持などと題目を掲げ国連の旗を振りながら武力介入が行われることが何故わからん!』
『ですがきっと打つ手はまだあります!そのための我々であり――』
すると訃堂は弦十郎へ喝を飛ばす。
『ならば事態の収拾を急げッ!事態が悪化するようなことがあればこの国が燃えることを忘れるな』
そう言って通信が切られる。
『今の通信って…』
『この戦いに風鳴宗家が動くという事だ』
『モニター出ます!』
藤尭が映像を切り替えると雅人と響が地面に突っ伏していた。
『あの馬鹿ども!地面が好きすぎるだろ!』
ママ‥‥ティキ‥‥ガンバッタ‥‥ホメテ…?
「いいこいいこ、私の自慢の娘ね。」
ハグジテヨ‥‥アタシノゴト…ダキシメテヨ‥‥
「できることだったら抱きしめたいんだけどね。でもサイズじゃ私が潰れちゃうわ」
モウ‥‥ママノイジワル
「うおおおおッ!!」
「はああああッ!!」
銃弾と爪弾をありったけ撃つサンジェルマンとラセツ。次々にティキのボディに命中し部位を破壊していくが瞬時にティキの身体は何事もなかったかのように再生されてしまう。
「これでも駄目か‥‥」
『さっきのはヨナルデパストーリと同じ…』
『なかったことにされるダメージ!』
何度攻撃しても破壊してもティキの身体は直ぐに再生してしまう。それどころか完全に怒らせてしまったようで独立して動いている大罪の獣たちが辺り一面お構いなしに暴れ回る。
『圧倒的な攻撃と絶対的な防御…』
『あぁ、反動汚染の除去が間に合ったとしてどう立ち回ればいいんだよ…!』
消耗していくサンジェルマンとラセツを前にイヴは語る。
「誤った進化を遂げた人類には手綱を握る者が必要だ。人類は私が管理する。不要な人間は全て排除する」
「世迷うなよ人間擬き‥‥」
「腐っても錬金術師ならば、受け入れなさい。これこそが貴方達が望んだ理想郷ということに」
宣うイヴへラセツは闘志を燃やす。
「理不尽に命を奪われない世界‥‥私の夢、同志の夢。ありとあらゆる全ては水泡に帰した。思想も理想も、数多の命もッ!」
「せめて最期は華々しく散らせてあげよう。ディバインウエポンの手で、跡形も無くなッ!」
再びティキがエネルギーをチャージし始める。それも獣たちもエネルギーを蓄え始めている。
「く…そぉ‥‥」
光線の発射を阻止するべく立ち上がろうとするがこれまでの疲労が一気に雅人へ襲い掛かる。
「こんな‥‥時に‥‥」
「これで終りだぁーーーッ!!」
ティキからの光線が響たち目掛けて放射される。
最大火力の破壊光線が降り注ぐが―――
「ギャアアアアアッ!!」
光線が響たちに当たることは無かった。それどころか光線が跳ね返されティキに直撃、悲鳴を上げる。
「なにが起こったんだ‥‥?」
雅人も響も、ラセツ、サンジェルマンも困惑を隠せなかった。
とうのイヴも拍子抜けしていた。
「何故だ‥‥確かにディバインウエポンの攻撃は当たったはず‥‥!?」
「跳ね返したのさ、僕が」
荒れ切った戦場に倒置法で話す男の声が響き渡る。
「言っただろうッ!借りは返すとッ!」
なんと錬金術師協会局長アダム・ヴァイスハウプトがこの場へ姿を現したのだ。
唖然とする中アダムはサンジェルマンの元へ近づく。
「局長‥‥いつから」
「来たばかりだよ、これでも。思わずかかってね、探すのに」
アダムは響、雅人と向かい合うと被っていた帽子を外す。
「世話になったね、彼女たちが。礼を言うよ、助かったと」
礼を言うアダムに雅人と響は一瞬顔を合わせるもすぐにアダムへ向き直る。
「アダムさん、お礼を言うのはこっちですよ」
「サンジェルマンさんたちにはわたしたちも助けられました。ありがとうございます」
礼を言う響と雅人にアダムは思わず目を丸くするが、すぐにふっと微笑む。
「だそうだよ、サンジェルマン。良かったじゃないか、彼女たちと出会えて」
目線を送るアダムにサンジェルマンは穏やかな表情で答えた。
「ええ」
談笑する一同だったがすっかり蚊帳の外に置かれていたイヴは怒りを露わにしていた。
「貴様ら‥‥ッ!!」
声を震わせ怒るイヴ。そんな彼女にアダムは告げる。
「怒る資格はないよ、君に。いつまで騙る気だ、僕の妻の名を」
「ッ!?」
先程まで穏やかだったアダムの表情が険しくなる。
彼にとって大事な存在を穢されたかのようにイヴを睨みつける。
アダムの言葉と表情を見て雅人はある考察を立てる。
「もしかして‥‥あいつはイヴ・ヴァイスハウプト本人じゃない…?」
「いいやイヴ本人さ、表面上は」
雅人の考察にサンジェルマンは思わずハッと声をあげる。
これまでの悪行の数々。以前のイヴらしからぬ行動や性格の変わりよう。ずっと長い時の中で変わってしまっていたと思い込んでいた、いやそう信じたかった。
けれども生命を尊重する彼女が自分の忌み嫌ってきた支配者と化したのも理由がつく。
自分が見たイヴ・ヴァイスハウプトは眩しかったから。
「なら‥‥今神の力を欲しっているアイツは誰なんだッ!?」
するとイヴは怒りを抑えると口調が変わる。
「よくわかったなアダム・ヴァイスハウプト」
「苦労したよ探すのに。でもそのかいあったさ、十分に。そうだろう?ウィズベイン」
「流石はアダム・ヴァイスハウプト、既に知っていたか」
「我が名はウィズベイン。人類に知恵をもたらす者」
イヴ・ヴァイスハウプトと名乗っていた人物は本名をウィズベインと名乗ったのだ。
「知恵をもたらす者‥‥?」
「いかにも。私は古より人間どもへ知恵を与えてきた。時には飢えや寒さをしのぐための知恵を。またある時には自身の身を護るための技術を」
「だが君は見限られた。ヒトが統一言語を失ってから」
「そして怪物となった。知恵を悪しき事ばかりに使われたことで」
「その通りだ。あぁぁ、今でも忌々しい‥‥口惜しい…ッ!!」
「でも諦め無かった、人類を消すことを」
「そうともだからこそイヴの身体を奪った。完全な力を取り戻すために」
「なッ‥‥・!!」
「完全な肉体を持つお前やサンジェルマンと違って心身ともに弱っていたイヴに侵入するのはいとも容易かったぞ」
「お前たちは理解不能な生き物だ」
「なまじ感情に左右されて、しまいには今日まで騙され続けたのだからなッ!」
「‥‥貴様ぁ‥‥貴様ぁぁッ!!」
激情に流されウィズベイン目掛けてスペルキャスターを発砲するが、ティキの掌が銃弾を防ぐ。
「無駄だ。ディバインウエポンは既に私の手中にある。私は再び真の神へと至るのだッ!」
「戯言をほざくな神もどきがッ!!」
「お前の母が死に掛けた時、神はそいつを助けたか?母を捨てたあの男に懲罰を与えたか?」
「うッ‥‥」
ウィズベインはサンジェルマンの心を大きく揺さぶり続ける。
(まずいな…。このままでは奴のペースに‥‥)
段々と余裕がなくなるサンジェルマン。すると‥‥・
「だとしてもッ!」
ラセツが声を大きくして叫ぶ。そしてサンジェルマンの両頬を両手でパチンッと叩く。
「ラセツ‥‥?」
「惑わされるな。何かを成すには「だとしても」という不倒不屈の思いだと貴女は私に言ったじゃないか。その思いはあんな外道に揺るぐまのじゃないだろうがッ!!」
ラセツの訴えにサンジェルマンはハッと気づく。
「そうだ‥‥。「だとしても」揺るがない想いが私を1000年もの奮い立たせてくれたッ!!」
戦意を奮い立たせるサンジェルマン。だが、ディバインウエポンの魔の手が迫る。
跡形も残さぬよう砲台と増殖された部位すべてにエネルギーがチャージし始める。
「いくらアダムといえど防げるかな?負傷人を抱えてはなぁ!」
『無為に天命を待つばかりかッ…!』
するとS.O.N.G本部に突如通信が入る。
『諦めるな!あの子ならきっとそう言うのではありませんか?』
『発信源…不明。暗号化され身元も特定できません…ですがこれは』
通信と共に送られたデータを開くと資料の数々が提示される。
『解析されたバルベルデ・ドキュメント!』
『まだ‥‥資料が現存していたのね』
『我々が持ち得る限りの資料です。ここにある神殺しの記述こそが切り札となり得ます』
『神殺し!?なんでまた…』
『調査部で神殺しに関する情報を追いかけていた所彼らと接触、協力を取り付けることができました』
『かつて神の子の死を確かめるために振るわれたとされる槍、遥か昔より伝わるこの槍には凄まじき力こそ秘められてたものの本来神殺しの力は備わってなかったと資料には記されています』
『それなのにどうして…』
『二千年以上に渡り神の死に関する逸話が本質を歪め変質させた結果であると』
『まさか哲学兵装…?先のアレキサンドリア号事件でも中心にあったという…』
『前大戦時にドイツが探し求めたこの槍こそ…』
『ガングニール、だとぉ!?』
神殺しの正体がガングニールだと判明した瞬間、同じガングニール装者である奏はあることに気づく。
『雅人の攻撃がヨナルデパズトーリに当たったのはもしかしてッ!』
『はい‥‥!あの時雅人さんが使っていたシェイクハンディングガングニールプログライズキーが疑似的に神殺しの力を発動していたんですッ!』
「チィ…気取られたか」
「まだ、なんとかできる手立てがあって‥‥。それがわたしの纏うガングニールだとしたら――」
「もうひと踏ん張り…やってやれないことはない!」
響は力を振り絞って立ち上がり空へ吠える。
「嗚呼、状況を打開できる可能性が少しでもあるのなら――」
「諦めてたまるかッ!!」
雅人も気力を振り絞り根性で立ち上がる。
【SYMPHONYッ!】
プログライズホッパーブレードと連結しているアタッシュカリバーのライズスロットにシェイクハンディングガングニールプログライズキーを装填する。
「ティキッ!!」
ウィズベインはティキに命令し駆け出す響と雅人を攻撃させるが、人への攻撃をアダムが防ぐ。
「神殺しめが‥‥行かせるかッ!!」
ウィズベインは起爆する宝石を投げつけるがサンジェルマンとラセツの銃弾と相殺する。
「成程…得心がいったわ!あの無理筋な黄金錬成はシンフォギアに向けた一撃ではなくお前にとって不都合な真実を葬り去るためだったのね!」
「なぜこうもお前たちは無駄に賢しいのかなぁッ!!」
銃弾を掻き分けアダムへ接近するウィズベイン。しかしその前にラセツとサンジェルマンが立ち塞がる。
「フフフ‥‥」
不気味に笑う微笑むとウィズベインは負傷していた片腕を引きちぎり露出したコードを鞭のように振るう。
「泡となって消えろッ!後悔と共にッ!!」
激しくぶつかり合う鞭と二振りの剣。
その一方で雅人がクラスターセルで道をティキへと至る道を創り響が駆け上がる。
「行け――行け———そのまま行けッ!立花響、飛電雅人ッ!!」
だがティキの身体に纏う触手たちが近づかせまいと襲い掛かる。
けれどもアダムが魔法陣を展開し触手たちの動きを固定し封じる。
「私たちは進む!前に前に!ここで怯めば取り戻せないものに後ずさる!屈するわけにはぁー!!」
「いかないッ!!」
2振りの剣が舞い踊りウィズベインを競り勝って行く。
「蚊トンボを寄せ付けるなぁッ!」
ティキは響目掛けて拳を振るうが、響のブースターガントレットとぶつかり合った途端に手首まで粉砕される。
粉砕された手を治そうとするが神殺しによって復元されない。
『ディバインウェポン復元されず!』
『効いているわ…まさか本当に…』
『これが神殺しの哲学兵装…ッ!』
すると発令室に回復した切歌がやってくる。
『切ちゃんッ!』
『暁さんッ!』
『バルベルデから最後に飛び立った輸送機、その積み荷の中に大戦時の記録が残されてたんです』
もしあの時切歌たちが飛行機を護れなかったら、完全に『神殺し』の情報は今この場に無かっただろう。
始めから輸送機に資料があることなど知らない。彼女たちの優しさが今を創り出したのだ。
『あの時の無茶は…無駄ではなかったのデスね』
『教えてほしい。君の国が手に入れた機密情報をなぜ我々に…』
『歌が…聞こえたって』
『歌?』
『先輩が教えてくれたんです。あの時、燃え尽きそうな空に歌が聞こえたって、、、、、』
————そんなの…私も聞いてみたくなるじゃないですか!
抵抗とばかりに暴れ出すティキ。吹っ飛ばれる響を雅人を庇う。
「終わりだ…希望とともに折れてしまえぇッ!!」
「立花響ぃぃぃッ!」
「飛電雅人ぉぉぉッ!」
サンジェルマンとラセツの声で力を取り戻した2人は闘志を燃やしティキの前へ飛ぶ。
「神殺し止まれぇッ!止まりなさいぃぃッ!!」
「八方極遠達するはこの拳…!いかなる門も破砕は容易い!!」
【アルティメットストラシュッ!】
響のガントレットがドリルに展開するとともにプログライズホッパーブレードが大きな拳へと変形していく。
不味いと悟ったウィズベインはティキを回収しようと抱きしめる構えを取るが‥‥
「ハグだよティキッ!!さぁ!飛び込んでお出で!神の力を手放してッ!!」
なんとアダムがティキの元へ大きく叫んだのだ。
ティキのその声に引き寄せられるかのようにコアを射出させ飛び出す。
「アダム大好きー!」
軌道がウィズベインからアダムに逸れた隙を逃すはずもなく響のドリルがティキを捉え粉砕する。
ディバインウエポンの抜け殻も雅人が創り出した巨大な拳によって胴体を貫かれ粒子となって消えた。
『ここ一番でやっぱり…』
『バッチリ決めてくれるのデス!』
「パパ‥‥ママ‥‥ドコ…?ハナサナイデ…ダイスキ‥‥」
「ティキ!」
真っ二つに分かれたティキを迎えに来たアダムだがその前にウィズベインが現れる。
「クソガキが‥‥いちいち癇に障る。だが…」
ウィズベインはティキの身体からアークエンジェルプログライズキーを取り出すと遠くへ蹴り飛ばす。
「まぁいい。これにさえ付与できれば」
「私は真の神へと至るッ!理想郷が誕生するッ!
空へアークエンジェルプログライズキーを掲げるが光の粒子はウィズベインの元へ来ることはなかった。
「…なんだと?何故来ないッ!?」
ウィズベインが振り返ると光の粒子は立花響の元に集まっていた。
「何…これ…どうしたの?」
「ひ…響…?」
「――ウアアアアアアアアアッ!!」
全ての粒子が集まって響を包み込むと廃墟ビルとビルの間に巨大な繭を創り出す。
この様子にアダムも驚きを隠せないでいた。
「宿せないはず…穢れなき魂でなければ神の力を‥‥」
生まれながらに原罪を背負った人類に宿ることなど…」
ウィズベインから神の力を護ることはできた。しかし神殺しの力を持つ響が神の力に取りこまれてしまった。
繭から産まれるは、真の神なのか?それともあらたな災厄をもたらす破壊神か?
はたしてどうなる?
・設定
『ウィズベイン』
バリュエル光明結社を牛耳っていたイヴ・ヴァイスハウプトの身体を乗っ取っていた黒幕。
元は創造主カストディアンによって作り出された。先史時代より人間に生き抜くための知恵や知識を与えた。
本小説版LOST-SONG編、読んでみたい?*XV編後
-
勿論ッ!
-
う~ん・・・