.hack//G.U. THE HERO   作:天城恭助

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過去回想というか、過去話というか。無印の.hackやってないし、ダイジェストというか、序盤だけ。コンパクトにまとめたかったので一話で強引に終わらせにいきました。


11年前の真実

 雄英高校がヴィラン連合に襲われた翌日、雄英高校は臨時休校となった。その日、八咫はオールマイトの下に訪れていた。

 

「まずは、昨日の件を謝罪しておこう」

「それは、何についてだい」

「あなたの秘密が一部とはいえ三崎亮にばれてしまったことだ」

「……そこはまぁ、仕方のないことだ。それより、私は君が三崎少年をあの場に差し向けたことに対して怒っているよ」

「ヒーローとして、間違っているのは理解している。だが、いつかは必要になることだった。それがあの時だっただけだ」

「君は……!! まぁ、もう何も言うまいよ。それで、謝罪だけじゃないんだろう?」

「その通り。まずはこれを見てもらおう」

 

 八咫は、透明なビニールに包まれた何かを取り出しテーブルの上に置いた。光っていること以外には何もわからない。

 

「これは、一体?」

「三崎亮があの事態を解決した後に手に持っていたものだ。この物質についてはきちんと調べたわけではないが、おそらく緑谷出久がの持つ個性が可視化されたもの。その欠片だと思われる」

「そ、それでは緑谷少年は!?」

「安心したまえ。彼から個性が失われたということはない。だが、しかるべき知識と施設を持つモノならばこれを複製し、利用することも可能……かもしれないな」

「それで、君はこれをどうするつもりなんだ?」

「あなたに差し上げよう」

「ど、どうして?」

「お詫びの品といったところだ。それに私にとっては無価値だ。それにこの存在が割れれば狙われる要因にもなり得る」

「君は……君は変わらんなぁ」

 

 今、利用価値がないと言えば、確かにないかもしれない。しかし、平和の象徴が持つ個性を利用できるかもしれない物質が存在するとして、それが如何ほどの価値になるのか想像もつかない。

 

「そうでもない。そして、お詫びにしたいことはまだある」

「まだ、何かあるのかい?」

「11年前の事件。何故、起きたのか知りたくはないかね?」

「……聞かせてもらうよ」

 

 

そして、八咫は一から語り始めた。

 

 

 

 かつて一部地域に壊滅的な打撃を与えた事件。無事に解決できていなければ、日本にとどまらず世界にも大きな被害をもたらしたともいわれるほどの事件。8人のヴィランが暴れた、その事件。

 そのヴィランは、人ではなかった。人ではなく、ある存在を産み出すために造られた人造生命。俗に言うならばホムンクルス。そのホムンクルスの名をモルガナといった。

 そして、モルガナによって造り出そうとした存在。それは神であった。より正確に言うのであれば、この個性社会において神にも等しい能力を持ったシステム。そういう個性を持った人間だった。その個性とは、全ての人間の個性の制御を可能とする個性である。他者の個性を封じることはもちろん、それを解除したり、暴走する個性を抑制する。あるいは、強制的に発動させることも可能とするものだった。

 それを望んだ男は、世界を平和にしたい一心で行っていた。研究を行った者の名はハロルド・ヒューイック。その男に出資した者の名を番匠谷淳。

 

 当時、既にオールマイトがトップヒーローになっており、犯罪率が低下していっている最中であった。平和の象徴、既にそう称える者もいた。しかし、番匠谷はオールマイトも人であると断じていた。いつかは限界が来ると考えていた。人である以上、病気に合うかもしれない。事故に遭うかもしれない。どちらもなくずっとヒーローを続けたとしてもいつかは引退する。そして、その後を背負うものは、存在するのか。いたとしても、さらにその先はどうなるのか。

 

 いくら法を整備したところで個性の使用など心ひとつだ。ヒーローは個性を用いて個性を悪用するものたちを捕らえる。しかし、結局のところはそれでは根本的解決になりえない。そのためのシステムが必要だった。

 それを可能としうる人物がハロルドだった。不世出の天才。彼が何故に日本に渡って来たのかはわからなかったが、彼は個性研究をしてきた人だった。有名な論文の一つも書いていない彼であったが、彼は人工的に個性を産み出すことに単独で成功していた。何故か彼は、それをどこにも発表もせず、またどこの研究所にも所属しておらず、たまたま番匠谷と出会った。番匠谷はハロルドという天才が居るという情報だけは知っており、声をかけていた。

 そして、番匠谷は今の世の中に対する悩みをハロルドに打ち明けた。ハロルドはその悩みに対し環境とお金さえあればその悩みを解決できると力説した。番匠谷はその言葉を信じ、お金をかき集めた。当時、まだまだ広まっていないクラウドファンディングから、銀行からの融資、知人からもお金を借りた。研究施設も何とか借りることができた。

 ハロルドは、場所を整えてから1週間もかからずにモルガナを創り出していた。モルガナには、様々な能力があり、そのうちの一つデータドレインは、個性を封じる個性であり、番匠谷はそれに希望を見出した。ハロルドはまだまだこれは序の口であるという。このモルガナから産みだされる存在こそ、まさしくこの世の神となり得るもの、救世主であると語った。

 

 ほどなくして、モルガナから女児が誕生した。女児と言っても、生まれたばかりの段階で既に身長は150センチほどあり、銀の長髪で、言葉も交わすことができた。女児にはアウラと名付けられた。

 アウラが産まれたその日、ハロルドは姿を消した。そして、モルガナが暴走した。モルガナは、自身の娘とも呼べるアウラを殺そうと動いたのである。アウラは、事前に気付いていたらしく、既に逃走していた。モルガナは一つの肉体であったはずのモルガナは8つに分かれ、それぞれ形を変えた。その姿は、ハロルドが肌身離さずに持ち歩いていた叙事詩に登場する8つの禍々しき波と呼ばれる存在に酷似していた。

 

 8つに分かれたモルガナ。通称八相は、それぞれがアウラの捜索を始めた。アウラを探すためなら街を破壊し、道行く人々を攻撃することもためらいがなかった。

 その様な存在にヒーローが黙っているはずもなく、すぐに多くのヒーローが駆け付けたが、モルガナは異常なまでに強かった。既に№1ヒーローとなったオールマイトでさえ、単独では倒すことが叶わなかった。

 ありとあらゆる攻撃が効かず、モルガナの攻撃の全てが一撃で人の命を屠る威力を持っていた。モルガナは、積極的に人を攻撃するわけではなかったので近づかないことが対抗策だった。

 アウラは、8相の一つ死の恐怖「スケィス」に見つかり、追いかけられていた。そして、その場に居合わせたモノが居た。ヒーローライセンスを取得したばかりのヒーローオルカと当時中学生で一般人であったカイトと言う少年だった。

 オルカはアウラを助けるべく、スケィスに挑む。アウラは、その隙を見てカイトに一冊の本を託した。アウラはこの本を指してこう言った。

 

『強い力……使う人の気持ちひとつで救い。滅び。どちらにでもなる』

 

 オルカは、スケィスに戦いを挑んだもののデータドレインをくらい、カイトに「逃げろ」とだけ残し、遺体も残らず消え去った。

 スケィスは、カイトにもデータドレインを撃とうとしたが……

 

「私が来た!!」

 

 オールマイトが、スケィスの攻撃を拳による風圧で阻止した。普通のヴィランであれば、その一撃で瀕死もしくは、それなりの怪我を負うだろうが、スケィスは多少仰け反った程度だった。

 

「少年!! 早く逃げたまえ!!」

「でも、そいつは!」

「大丈夫! 何故って? 私だからだ!」」

 

 オールマイトは、スケィスと善戦できていた。それはオールマイトの規格外の強さ故であったが、それは同時に他のヒーローでは戦いにもならない差だということだった。八相の共通の特徴として、攻撃の一切が効かない。衝撃によるノックバックこそ発生するが、まるでダメージも痛みを感じている様子もないのである。それはオールマイトの100%の一撃をくらって、ようやく動きの鈍りを少しだけ見せる程度であった。

 オールマイトと言えど内心で「SHIT」と叫ばずにはいられなかった。

 オールマイトができることは、周りの人間が全員避難するのを待って自身も全力で離脱することである。他のヒーロー達では時間稼ぎをするどころか、一瞬で命を奪われかねないため中々前線にでることはできなかった。TOP10入りしているヒーローでやっと足止めが可能ぐらいである。たった一体でそれなのだから8体が全国に散っている状況で避難誘導に大半の人員がそちらに割かれていた。

 不幸中の幸いというべきか、八相は人間に興味を示すことはほとんどない。邪魔をする相手には全く容赦はないが、邪魔した相手であっても積極的に追いかけることはない。と言っても、その前に大半の人間は死んでしまう。

 

 カイトはその場から逃げたかったが、同時にオルカの仇を取りたかった。そして、アウラから渡された一冊の本。少女はいつの間にか姿を消していたが、カイトの頭の中で声が響く。

 

『本を開いて』

 

 カイトは言われた通りに本を開くと、本から何かが流れ込んでくる様な感覚を覚えた。耐え切れず本を投げ捨てるが、まだ何かが流れ込んでくる。

 そして、右腕には幾何学模様で半透明の腕輪が付けられていた。それは、八相がデータドレインを放つ際に生じる、物体によく似ていた。

 

「うわあああああ!!」

 

 そして、右腕はスケィスに向けられ、データドレインが放たれた。データドレインはスケィスに直撃した。スケィスは、今までの攻撃をくらった時と違い、全身の一部が欠けていた。十字架の杖も消え去り、明らかに弱体化している。

 オールマイトは突然の事態に困惑したが、このチャンスを逃すまいと全力の一撃をスケィスの放った。

 

「UNITED STATES OF SMASH!!」

 

 スケィスは、粉々になって吹っ飛んでいった。

 

 それが、八相が初めて撃破された時の出来事である。この闘いに巻き込まれた人々も多くおり、その地域の病院がどこも満床になってしまうほどだった。その中には、三崎亮もいた。

 スケィスの残骸は密かに、ハロルドの研究について知っていた政府の人間に回収された。スケィスを基の状態に復元することは不可能とみると、一部だけでも生かしておきたかった政府は、人間に移植することを考えた。そして、たまたま選ばれたのが三崎亮だった。移植が必要となるほどの怪我を負っており、自然な形になるように取り計らわれた。

 

 

 

 そして、カイトは八相と闘っていくことになったのである。その道則は険しいものだった。八相が強力な敵であることもそうだが、一部ヒーローや一般人も時に辛辣であった。彼自身は無個性であったが、データドレインという異質な力を使っていたことには変わりなくヴィラン扱いするものが居た。また、データドレインは八相の使う特徴的な力でもあり、それも嫌悪に拍車をかけていた。助けられなかった人を指して、逆恨みする人も少なくはなかった。

 そんな困難な中でたくさんの犠牲(その犠牲の中にはアウラも居た)を払いながらも八相の全てを撃破し、無事事件は解決された。カイトは間違いなくその立役者であるが、本人は報道されることを拒んだ。犠牲者がでたことはもちろん無個性であったとはいえ、個性の様な力を使った。それは、この社会では立派な犯罪である。本人が望んだこともあり表立って、彼が賞賛されることはなかった。

 しかし、物理的に死んでしまった人たちは二度と返ってくることはなかったが、データドレインによって、影すらも失ってしまった人たちは帰って来たのである。それを大きく称える人もおり、ネットでカイトは伝説のヒーローとして名をはせた。

 こうして、大災害にも等しい事件は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 八咫は、三崎亮と日下千草がモルガナの臓器を移植され特別な個性が使えることを伝えた。同時にそれはワン・フォー・オールやオール・フォー・ワン以上に秘匿されなければならない個性であることも伝えた。

 

「それで? この話にも何か意図があるんだろう?」

「人聞きが悪いな。ただ、一つ伝えておきたかった。アウラを復活させようとする動きが政府にあるとね」

「何だって!?」

 

 モルガナの事件を引き起こした原因とも言えるためオールマイトも心中穏やかではいられない。

 

「一度は破棄された計画だが、モルガナの細胞はまだ碑文使いの中に生きている。と言っても、現状はAIDA対策のために碑文使いが集められているのだがね」

「つまり、君はその責任者か」

「その通り。これは政府の命令であり、根津校長にも話は入っている」

「それでか。三崎少年があの場にいたのは」

「番匠谷淳の懸念はただ一人のモノではないということだ。碑文使いは、平和の象徴に代わって平和のシステムを創り出す」

「なら、何故あそこで三崎少年を送り込んだ」

 

 下手をすれば、三崎亮は再起不能となっていたかもしれない。

 

「彼の覚醒を促すため。それと、オールマイトを失うことを避けたかった。オールマイトが敗れたとなれば社会の混乱を招く」

「……情けない話だ。平和をもたらす平和の象徴が、平和を保つために守られるなんて」

「これで話は終わりだ」

 

 八咫はその場を去ろうとしたが、扉に手をかけて動きを止めた。

 

「そういえば、聞いていなかったな。オールマイト、AIDAをどう思った?」

「どう思ったって……恐ろしい存在だと思ったよ。ただ……」

「ただ?」

「緑谷少年に感染したAIDAに閉じ込められてたわけだけど、閉じ込められたというよりは、何かから守ろうとしていた様な、そんな印象を受けたよ」

「……ふむ。参考にさせてもらおう。失礼」

 

 彼は思考を続ける。他のヒーローより圧倒的に様々な知を持つ彼は何を思うのか。彼自身の願いはどこにあるのか。オールマイトは八咫が悪だと思っていないが、どこか歪さを感じるのであった。




カイトは本名どうすっかなーと考えたけど何も思いつきませんでした。
でも、カイトはまた少し出す予定があります。そこに行くまでちゃんと書くかはわかりませんが。その前に手が止まってしまいそうな気もします。

三崎(ハセヲ)とくっつくヒロイン誰がいいですか?(なお下の選択肢ほどエタる確率が上がる。そして、アンケート通りにするとは言ってない)

  • 日下千草(アトリ)
  • 倉本智香(揺光)
  • 久保萌(タビー)
  • 芦戸三奈
  • 拳藤一佳
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