昼休憩、エンデヴァーとオールマイトが10年ぶりの再会をしているところ。1人の少年の様な男がそこに蜂合わせた。
「あっ! オールマイトだ! それに、エンデヴァーも!」
「君は……確か、欅……?」
二本の角を生やした少年の様な容姿をした男。容姿だけでなく振る舞いも子ども染みているがヒーローである。それも10位に入っているヒーローであった。
一切のヒーロー活動をしていないのにも関わらず10位という異様に高い順位に位置する特殊なヒーローである。
「はい、そうです! あなたのファンですよ!」
「はっはっはっは! それは嬉しいね!」
「ふん。話は済んだだろ。俺は行くぞ」
「あっ……! エンデヴァーさん、行っちゃうんですか?」
「便所に行こうとしていたところなんだよ!」
「……それはごめんなさい」
「ふんっ」
エンデヴァーはそのまま行ってしまった。
「まぁ、あまり人に聞かれたくない話をするつもりだったので丁度いいですけどね」
欅は、小声で呟く。オールマイトにははっきりと聞こえていたが、エンデヴァーには聞こえない程度だっただろう。
「それで、何か用かな欅」
「あなたの個性の話ですよ」
「! げほっ、げほっ。すまないね。ちょっとむせちゃって」
オールマイトは個性に関する話は、誤魔化してきたが嘘ははっきり言って苦手である。マスコミに対しては、白を切り続けることができたが、相手が恐らくは確実な証拠を掴みに来ている場合、オールマイトにはそれを誤魔化しきるのはなかなか難しい。
「隠す必要はありませんよ。あなたの残り時間が少ないことも承知済みです」
「……何が言いたいんだい?」
「僕の手術を受けませんか?」
「しゅ、手術?」
欅がその様なことをすることは聞いたことがなかった。そもそも欅は普段ヒーロー活動をしておらず、自身の擁立した月の樹と呼ばれるボランティア組織を運営しているという話しか聞かない。
「はい。手術というより改造ですけどね。僕、治療はできないので」
「か、改造ぅ!?」
「あ、心配しなくても大丈夫ですよ。別にサイボーグ化したりとか、非人間になったりだとか、そういうことになったりはしないので」
それは裏を返せば、そういうことが出来るということだろうか。
「以前、八咫さんから個性の結晶をもらったはずです」
「なんで、君がそのことを!?」
「ま、その辺は気にしないでください。それを使えば、あなたの傷を治すことこそ叶いませんが、活動の限界時間は伸びるはずです」
それは願ってもないことだった。緑谷に次の平和の象徴になるように託しているとはいえ、まだヒーローの卵だ。自分の支えは世間にとっても緑谷にとってもまだ必要になる。
「……色々と聞きたいことはあるけど、本当にそんなことができるならお願いしたい」
「はい。いいですよ。ただし、これは飽くまでもあなたの活動時間を延ばすだけです。体力や内臓機能が回復するわけではありません。もしかするとあなたの寿命を縮ませかねないです」
「……それは失敗することもあるということかい?」
オールマイトは心配を滲ませる。
「いえ、改造は100%成功します。僕の言う寿命というのは個性の出力が上がるためにかかる負荷が増える身体的なもの。そして、運命的な活動時間が増えたことによって生じる変化。何者かに殺されるかも……という危惧です」
「そうか……でも、何者かに殺されるかもしれないという話ならば、既に承知済みさ」
オールマイトは、自身のサイドキックであった彼のヒーローを思い出す。
「予知ですか?」
「君、ホントに何者だい? そんなことまで」
「それに関しては、サー・ナイトアイと組んでいたことを知っていれば予想が付きますよ。それと僕の正体に関してはまだ内緒です。それは次の機会にでも。それといつかはあなただけじゃなくて世界中に伝えようと思っています。けど、それがいつになるかはわかりません」
オールマイトには欅がまだ信頼に足る人物なのかは、判断しかねるところはあった。しかし、欅は明かせないまでも秘密を持っていることを明かした。その上、人々の支持のみで順位を上げた多くの信頼を得ているヒーローだ。悪意を持っているとは、考えたくはなかった。
「君ほど社会に信頼されているヒーローは数少ない。君を信じよう」
「ありがとうございます! それでは後日連絡させてもらいますね」
欅は子どもの様に手を振って去っていく。
そして、すぐそばの曲がり角で女性に鉢合わせになった。
「欅様! 今までどこに行っていたのですか!? 本当にいつもいつもあなたという人は……!」
「か、楓……何も、今ここで説教をしなくても……」
正に親に叱られる子どもの図であった。
楓は欅と同じく月の樹に属するヒーローである。月の樹に属すると言っても、欅とチームアップをしているわけでも、サイドキックの立場にいるわけでもなく、月の樹の幹部でヒーローというだけである。しかし、常に欅と共に居る人物であるためにそういう勘違いはよくされていた。
とは言っても、月の樹の幹部は欅を含めた7人の幹部の内6人がヒーローであり、共に行動することも多いため実質同じ事務所であるとも言えた。
楓はオールマイトの存在に気付き、頭を下げた。
「すみません。お見苦しいところを……うちの欅が迷惑をかけなかったでしょうか?」
「いえ……」
欅はオールマイトを見て、口元に指をあてて「しーっ」と声を出さずジェスチャーする。
さっきの話は黙っていろという意味合いだろう。
「それでは私共はこれで失礼します」
「オールマイト! またね!」
欅は手を振りながら楓と共に去って行った。
ほぼ同時刻、轟は緑谷にどうして宣戦布告したのかを説明した。
轟焦凍は、父――エンデヴァーが個性婚によってオールマイトを超えるヒーローにするべく作った子どもだ。その個性婚によって、結婚を強いられた母親にお前の左側が憎いと焦凍は煮え湯を浴びさせられていた。そして、轟はエンデヴァーを見返すために左側の個性を使わずに№1ヒーローになると決めた。
緑谷はオールマイトに気にかけられており、オールマイトに近しい何かを感じ取ったために超えるべき存在として宣戦布告した。ということだった。
緑谷はそれに対して自分だって負けられないと力強く答えていた。
轟と緑谷が別れたところで、そこには三崎が居た。
「よぉ」
「……聞いてたのか?」
「立ち聞きすんのも悪ぃかとは思ったんだがな。タイミング逃した」
「そうか」
轟は、盗み聞きされたことにあまり気にした様子はなかった。
「俺も人の事言えたもんじゃねぇけど、ひでぇ動機だな」
「……なんだと」
しかし、その言葉は聞き捨てならなかった。
「さっきのつまりは、俺は№1になるまで全力を出しませんって宣言した様なもんだろ」
「違う!」
「違わねぇだろ」
轟は意識していなかったが、それは手抜きに他ならなかった。使える力を半分しか使っていないのだから。
「俺は、母さんの力だけで……!」
「言っとくが、俺は別にお前の動機を否定しているわけゃねぇからな」
「は……?」
先ほどまで、侮辱するようなことを言っておきながら、三崎はそれを覆すような発言をした。
「さっきも言ったが、俺も人の事言えねぇぐらいひでぇ動機でヒーローを目指してる。目指してるってのもおかしいな。ヒーローになる過程を利用してる。お前に話しかけたのは俺以外にもマジだけど碌でもない動機を持っている奴がいる、ってのがわかって少しだけ安心したからってだけだ」
「……お前は何のためにヒーローに?」
「復讐だ」
そう端的に告げた。轟がそれに関して深く追及することはなかった。しかし、全力を出さない宣言をした、と言われたことに引っ掛かりを覚えていた。
昼食時 食堂は混みあっており、三崎はどこに座ったものかと……うろうろしていた。
「おーい! こっちだ! こっち!」
聞き覚えのある声、探してみれば、その声の主は香住であった。
「なんで、あんたがここに居るんだよ」
体育祭は学年ごとにステージが違うためにそれなりに距離が離れている。昼食時で自由な時間とは言え、短い休み時間で来るような距離ではない。
「まぁ、気にすんなよ。とりあえずは、予選突破おめでとさん!」
大袈裟な振る舞いに三崎は少しばかり面倒そうに
「あぁ」
とだけ応えた。
「反応薄いねぇ……別にいいけどさ。俺がここに来たのは、再度忠告しに来たってだけだよ」
「忠告?」
「八咫から聞いただろ。憑神は使うなって」
「そういや、そんなこと言ってたかもな」
本当はちゃんと覚えていた。覚えていないふりをして使う気満々であった。
「お前なぁ……!」
香住は、少しばかりの苛立ちを覚えたがすぐに抑えた。
「ただ、俺が憑神を使うなってのと、八咫が言う憑神が使うなってのは、同じ意味でも意図が違う」
「……? どういうことだ?」
「八咫は多分、憑神という能力の情報が漏れる可能性を危惧しているんだ。憑神は国家機密だからな。それが全国放送されているこの体育祭で披露されてしまえば、碑文使い以外には見えないとはいえ、解析される恐れがある」
「それで、お前は?」
「俺が憑神を使うなっていうのは、単純にこの力が危険だからだ。お前は手加減しているつもりでもあっさりと命を奪ってしまいかねない。命が失われないにしても相手が未帰還者になり得る可能性だってあるんだ」
「へぇ」
三崎の生返事に香住のこめかみが少し動く。
「……これがどれだけ危険なことかわかっているのか? この力はAIDAの様な異質な存在にのみ使われるべき力なんだ。決して、人間に向けていいものじゃない」
「あんたがそう思うってだけだろ。人に向けるのが危険って意味なら他の個性だって似たようなもんだ。何も憑神に限った話じゃねぇ」
「そういう問題じゃないんだよ! 憑神は……他の個性とはまるで違うんだ。この世の何物でもない力で、本来ここにあってはいけないそういう力なんだ」
「はぁ?」
言っている意味がまるでわからなかった。強い力であるなら三崎にとっては願ってもないことである。
「クーン。お前が何と言おうと俺は必要だと思った時に使う。相手が一般人だとかヴィランだとかAIDAだとか、関係ねぇ。俺は使いたいときに使いたいように使う」
「お前……! 何を言っているのかわかっているのか!? それはヴィランと何ら変わりないんだぞ!」
「ヴィランで結構。俺は復讐が果たせるなら、何だっていいんだよ。ヒーローだろうが、ヴィランだろうがな。たまたま、ヒーローの方が復讐を果たしやすいと思っただけだ」
「もういい……勝手にしろ!」
「あぁ、そうさせてもらうぜ」
これからどうなるかは、俺も知りません。ただ、次回でトーナメントまで書けないと思います。もしくは、初戦はダイジェストかなぁ……
三崎(ハセヲ)とくっつくヒロイン誰がいいですか?(なお下の選択肢ほどエタる確率が上がる。そして、アンケート通りにするとは言ってない)
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日下千草(アトリ)
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倉本智香(揺光)
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久保萌(タビー)
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拳藤一佳