リカバリーガールの保健室
爆豪が目を覚ました。一瞬、何故自分がベッドの上で眠っているのか理解できなかったが、持ち前の頭の回転の早さがすぐに結論を出す。
「俺は、負けたのか……」
受け入れ難い事実。しかも、何もわからないままにだ。
「目が覚めたみたいだね」
リカバリーガールとしては一安心していた。外傷はなく、これと言って何か身体に異常があるわけではないために対処に困っていた。ただ眠っているだけと結論付けても良かったのだが、ミッドナイトの眠り香で眠らされたのとは何かが違っていた。しかし、無事に起きたのであれば杞憂であったのだろう。
「リカバリーガール。あの時、何が起きた?」
「私が聞く限りじゃ、誰もわからなかったみたいだね」
普段ならあまりの不甲斐なさに自分に対してもキレていただろうが、そんな気力もなかった。
「かっちゃん!」
保健室に駆け込んできたのは、緑谷だった。
「……デク、何しに来た」
一番、来て欲しくない相手。昔から気味が悪い存在で、つい、何ヵ月前までは自分より間違いなく格下であったはずの幼馴染。
「よかった。無事だったんだね」
「てめぇに心配されるような覚えはねぇよ」
「でも、あんなすごい攻撃を受けてたら心配もするよ」
「だから、心配されるような……デク、てめぇ今なんて言った?」
「あんなすごい攻撃を受けてたら心配もするよ……?」
爆豪は緑谷の胸倉を掴んで詰め寄った。
「な、何!?」
「見えてたのか!?」
「み、見えてたって何が?!」
「俺が何をされたかだ!」
「何をされたって、あの大きい猫耳?の人形みたいなやつの爪で……雰囲気は三崎君の変身した奴に近かった様な……同種の個性?いや、でも三崎君のはちゃんと物理的な攻撃ができるみたいだったし……」
話していくうちに一ノ瀬の個性のことが気になってぶつぶつと思考モードに入る。
「勝手に考察してんじゃねぇぞ!! クソナード!!」
「はいぃぃ!!」
緑谷が言うには、人形の様なものに攻撃されて意識を失ったとのこと。何故、緑谷には見えて爆豪には見えなかったのか。それが一ノ瀬の言うところの『資格』であるのか。そうであるのだとしたら何故緑谷――デクなのか。それが爆豪には不満で不愉快で堪らなかった。
爆豪は緑谷を投げ捨てるように手を放し、保健室から出て行こうとする。
「どこに行くんだい!? まだ治療は終わってないよ!」
「もうどこも何ともねぇよ!!」
そう言い残して保健室を後にする。緑谷と同じく心配して見に来た切島、上鳴と合流し「大丈夫か?」と声をかけられるもそっけなく返していた。
後に、緑谷もリカバリーガールから他の人には一ノ瀬が爆豪に何をしたのかが見えていなかったことを知る。
リカバリーガールは、緑谷の話を聞き校長から話を聞いていた碑文使いの存在を思い出す。しかし、何故緑谷が憑神を視認することができるのかは、推察することもできなかった。
準決勝
『さぁ、いよいよ準決だ! これが雄英一年ベスト4!』
『轟 対 倉本!!』
ステージの上に両者が立つ。轟はいつものようでありながら、内心は未だに迷いで溢れている。倉本は、自信に満ち溢れ満面の笑みを以って轟と対している。
「アタシの見立てだと一年ヒーロー科の最強はアンタだとみてるけど、どうだい?」
「……俺が本当にそうかはわかんねぇよ」
「謙虚なのか、自信がないのか。ま、どっちでもいいけどね、本気を出さなきゃ絶対にアタシには勝てないよ」
『START!!』
轟は開始直後にいつもの氷結で倉本を捕まえようとした。倉本は、いつものように双剣を取り出し氷結された氷を切り裂きながら進んで見せた。
その光景に轟だけでなく観客の全員が驚かされた。氷の堅さは、温度にも左右されるが瞬間的な堅さであれば鋼と同等に達することもある。岩と行ってもいい大きさはあろうそれを全て一太刀で切り裂いているのである。
「そらぁ!!」
轟の懐まで辿り着いた倉本が思い切り振りかぶって、剣の腹で殴る。
「熱っ!?」
それは異様なまでの熱だった。明らかに熱せられた鉄の温度。
距離を取るためにも広範囲の氷結をもう一度だすが、倉本には容易く避けられた。
「アンタの個性、強力だけど、というか強力だからか。動きが雑だ」
剣の先を轟に向ける。
「何があったかは知らないけど、全力を出せないなら闘いの場に出てくるな」
倉本に言われたことは、緑谷に同じようなことを言われただけに申し訳ない気持ちになる。それでも迷いは未だに晴れない。
倉本の個性は、身体能力や操作技術に大きく左右される。才能の一言では片づけられない積み重ねてきたものを感じる。倉本はヒーローを目指してはいないが、その研鑽はヒーローを目指してきた者たちと何ら遜色はない。それどころか圧倒的に上回っているからこそ、この場に立っている。
轟も積み重ねてきた努力に引けは取らないとは思うが、ヒーローを目指すうえでの歪な想いがそこに陰りを落とした。ヒーローになりたかったくせに、ヒーローをちゃんと目指していなかった。
轟は、氷結による牽制で倉本を近づけないようにするが、驚異的な熱量を持つ短剣と飯田のレシプロバーストにさえ伍するその速さを前にしてはほぼ意味を為さなかった。
倉本が轟を自身の間合いに捉えた。倉本の一撃が目前に迫る中、炎を出そうとも考えたが、結局出すことはせずに倉本の短剣による一撃をくらって、場外へとたたき出された。
『勝者、倉本智香!!』
倉本は勝ったというのに不快そうな顔を浮かべた。こんな勝負はつまらない。最強の肩書を手に入れるための前座として、雄英体育祭を選んだというのに期待外れも甚だしい。これでは前座にもならない。せめて決勝ぐらいは良い相手ならばと思う。しかし、ここまで期待外れであったものの決勝の相手に関しては少しばかり期待しても良さそうだと思っていた。
倉本は三崎のことをよく知らないが、一ノ瀬に関しては何度か喧嘩を売っている。一ノ瀬がそれにまともに対応したことは一度もないが、軽い牽制とは言え攻撃が当たったことが一度もない。一ノ瀬が何を考えているかとか思っていることだとか一切わからないが、多分強い。一ノ瀬ならば相手にとって不足はないだろう。もしもその一ノ瀬に勝つような相手ならば、それも悪くない相手なのかもしれない。
三崎(ハセヲ)とくっつくヒロイン誰がいいですか?(なお下の選択肢ほどエタる確率が上がる。そして、アンケート通りにするとは言ってない)
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日下千草(アトリ)
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倉本智香(揺光)
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久保萌(タビー)
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芦戸三奈
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拳藤一佳