『三崎 対 一ノ瀬! 決勝にコマを進めるのは一体どっちだ!? 一ノ瀬が勝ち上がれば前代未聞の普通科同士による決勝になる! そもそもここまで勝ち上がってくる普通科なんていなかったけどな!』
『どっちもヒーロー科に入らなかっただけという話であって、実力そのものはプロヒーローに比肩するレベルだからな。爆豪と轟もプロヒーローに引けを取らない強さを持っているが、あの2人はそれ以上だ。そういう意味で言えば、当然の結果だな』
三崎と一ノ瀬が舞台にて向き合う。
「てめぇは一体、何を考えていやがるんだ」
「何のことだい?」
「憑神がどんな影響を持っているのかわかってやっているのか!?」
「あぁ……キミはアレが見えるんだね。知らないよ……何も」
『START!!』
試合開始の合図が会場に鳴り渡る。
「さぁ、来なよ」
とりあえず、ここは戦うしかない。憑神抜きの素の実力の程がどれくらいかはわかっていないが、思いっきりやっても簡単に勝てる相手だとは思えない。避けに徹している時の回避能力はかなり高いのはわかっている。憑神のことを抜きにしてもそれだけの相手だとは思えない。
「まぁ、やるだけやってみるか」と小声で呟いて双剣を取り出して、一ノ瀬との距離を詰める。
それに対して、一ノ瀬は剣を取り出していた。今まで逃げに徹していた一ノ瀬が剣を抜いた。三崎や倉本と同質の個性。斬刀士。
しかし、三崎の攻撃を受けていなすために使えどもその剣を攻撃のために振るってはいなかった。攻撃というよりは牽制に近いことはしてはいたが。
回避する。この一点に関しては今までと何の変化もない。
そして、何合か打ち合ったかと思えば、一ノ瀬が距離を取った。
「足りない……全然足りないよ……こんなんじゃ、『彼女』が喜んでくれない。さぁ、もっと『彼女』を満たしてくれ!」
一ノ瀬の様子が変わる。
「はぁああああ!!」
そして、姿は巨大な人形の様な姿へと変じる。猫の様な頭を持ち、下半身が薔薇の花の様になっている姿に。
「てめぇが憑神を使うならこっちも使わせてもらうぜ!」
音叉の様に響くハ長調ラ音。
「スケェェィスっ!!」
三崎も人形の様な姿へと変じる。一ノ瀬のそれと比べれば小さくはあるが、それでも普通の人間と比べれば巨大な姿。手に持つ巨大な鎌は死神のそれを思わせる。オレンジ色の紋様を描きながら光るそれはいかなる物理法則で成り立っているのか。三崎にそれにさしたる興味はない。ただ、目の前の敵を蹴散らすのみだ。
「ここは……どこ? ここは……いやだ。だってここにはキミがいない。どうしてここにキミはいないの?」
一ノ瀬は何かに語り掛ける。まるで独り言の様に。
憑神へと変身する際、空間は別世界の様になる。碑文使い以外には認知できない。時間の流れさえも恐らくは普通の場所とは違う。三崎には、一ノ瀬の言う『キミ』は『彼女』を指すことは、推測が付いたがそもそも『彼女』が何物なのか全くわからない。
「ボクが弱いから……?だからなの……?」
「何言ってんだ……?」
一ノ瀬は普通科とは言え、弱いわけではないだろう。一年A組で一、二を争うであろう爆豪さえ容易に下してみせた。これで弱いのだと言うなら、他は一体どうなってしまう。
「ボクが強くなったら……ボクら、ずっと一緒にいられるのかなぁ……? だったらボクは強くなる……! キミを守れるほどに……!!」
一ノ瀬が戦闘態勢に入ったのが見て取れた。三崎は攻撃に備えて構えた。
一ノ瀬が巨大な爪を振るうとそこから円形の斬撃が飛ばされた。空を自在に飛び回れる今の状態では避けるのは容易だ。下手に受けて未知の効果を発揮されても困るので、避けに徹する。その隙を狙って一ノ瀬は直接爪による攻撃をしかけた。さすがにそれを避けられそうにもなく鎌で受け止める。弾き飛ばし、鎌で殴り飛ばす。吹き飛ばされはするが、あまりダメージらしいダメージを負った様子はなかった。
「キミは何故強くなろうとする?」
「俺は……」
志乃のことを思い浮かべる。言葉にはしなかった。
「ボクと同じ……? だったら、邪魔しないでよ」
「同じ……? お前も『彼女』を失ったのか?」
「1人はもうイヤだ……! もう失うのはイヤだ!!」
一ノ瀬から薔薇の花弁の様なものが4つ散らばり、それらはそれぞれ意思を持つように動き始めた。二枚合わせの花弁の中央からレーザーの様なものが放たれた。
三崎はその攻撃に対応してみせた。驚きはしたが、処理が難しいというほどではない。一ノ瀬の直接攻撃にも警戒しつつ、突進さえも仕掛けてくる花弁も鎌で斬り払った。
「キミがいなくなって、ボクはまた一人になった。『彼女』が現れるまでは……ねぇ、ボクは嬉しかったんだよ。トモダチはキミだけだから。欲しいのもキミだけだから。でも、いいんだ。世界の外側……『彼女』は戻ってきた」
「なんだ……? 何のことを言っているんだ……?」
「ボクはもう1人じゃない。姿は違っていたけど、ボクにはすぐにわかったんだ」
「お前の言っている『彼女』って、AIDAのことか?」
「『彼女』は『彼女』だ」
「お前はそんな得体のしれないものを受け入れているのか!? ふざけんな!」
三崎は、左手を一ノ瀬に向ける。そこから光球が発射された。何発も連射されたが、その悉くを一ノ瀬は爪で薙ぎ払った。
「ぐぁ!?」
一ノ瀬の身体を痺れが襲った。全く身動きが取れない程だった。三崎が放った光球には電気が付与されており、帯電していくうちに痺れて動けなくなるものだった。威力そのものは低いが、相手の動きを止める手段としてはかなり良い武器であった。
三崎はその隙に一ノ瀬に大鎌を振り下ろす。
「はぁあああ!!」
痺れている状態の一ノ瀬が避けられるはずもなく、鎌は直撃する。
「ぐぁあああ!!」
しかし、一ノ瀬の憑神が両断されているということはなかった。ダメージがないわけではない。憑神同士の闘いは、通常の攻撃だけで決着がつくことはない。通常の攻撃で削れるのはデータドレインから身を守るプロテクトだけである。憑神同士の闘いにおいて完全に決着をつけるためにはデータドレインを決める他ない。
「早く終わらせないと……『彼女』がいなくなっちゃう……『彼女』は『人』との対話を好むんだ」
「『人』との、対話……?」
三崎は、一ノ瀬の言っている意味がよくわからず、オウム返ししてしまう。
「キミはどんな言葉を残すのかな……! 言葉にならない――想いを!」
下半身の部分を三崎に向けた。花の様になっているその中心部は、眼の様に見える。
「データドレインかっ!?」
三崎の憑神であるスケィスを呑み込む程の大きさのエネルギーの球体。不意を突かれた三崎はデータドレインをくらってしまった。
「ぐおぉおおおお!!」
データドレインは三崎の憑神を酸で蝕む様に削っていく。 だが、完全に憑神のプロテクトが壊されていたわけではない。
「はぁあああああ!!」
データドレイン自体もプロテクトを浸食していくが、弾き飛ばしてしまえばそれだけの攻撃だ。大鎌を振り回し球体を破壊した。
「これで終いだ!」
一ノ瀬との距離を一気に詰めて、大鎌で切り裂いていく。プロテクトが完全に剥がれたのを確認し、蹴り飛ばして距離を取る。大鎌を虚空へと仕舞い、右腕が砲身の様に変形していく。そして、その砲の先には眼。
三崎からデータドレインが放たれた。プロテクトが完全に剥がれた状態からのデータドレインに防ぐ手立ては存在しない。
データドレインは一ノ瀬に直撃し、データを吸収していく。そして、全てを吸い取ったかの様に放った球体も三崎の砲身へと戻って来た。
「がぁあああ!!」
一ノ瀬の憑神が崩れていくように、元の姿に戻っていく。三崎は決着が着いたので元の姿へと戻る。一ノ瀬はそのまま後ろに倒れていく。肩に乗っていた小さな白猫も落ちていく。一ノ瀬は猫が地面に直接落ちないように手を差し伸べた。
「ミ……ア……」
白猫は、叫ぶように鳴き声を挙げる。白猫から黒い泡が溢れかえる。
「いやだぁあああああ!!」
黒い泡が四方に飛び散っていく。最終的には、跡形もなく消え去ってしまった。
一ノ瀬はそのまま気絶した。
「なんだったんだ……今の」
ミッドナイトにより、一ノ瀬の状態確認が行われた。
「勝者、三崎君!!」
少しの休憩時間をおいて、決勝が行われる。三崎は控室へと向かった。その途中
「決勝進出おめでとう。亮」
「オーヴァン……! なんで、あんたがここにいんだよ」
「俺もプロヒーローだからな。別に居てもおかしくはないだろう」
「あんたは今までそういうことやってこなかっただろうが!」
「ふ……まぁ、お前がいるからこそっていうのはあるかな」
「それで、何の用だよ」
「AIDA」
三崎はその言葉に驚く。それは限られた人間しか知らないはずの単語であったからだ。
「どうして、あんたがそれを」
「一ノ瀬 薫の猫に擬態していたようだな」
「あれが……AIDA?」
確かに今までの様な黒い泡になったが、あれは猫にしか見えなかった。
「それと決勝はどうするんだ?」
「どうするって、何の話だ」
「憑神を使うのか、否か」
「そんなことまで知っているのか!?」
「わかっているだろうが、今のお前じゃほぼ100%、倉本には勝てない」
「やってみなくちゃわかんねぇだろうが」
「確実に勝てる保証はない。憑神を使えば、話は別だがな」
憑神を使えば確実に勝てる。言われるまでもない。憑神に勝てるのは同じ憑神か同質の力を持つAIDAだけ。しかし、一般人に使った場合に引き起こされる事象は、本当に安全だと言えるのか。
「ヒーローにとって敗北は、後ろにいる無辜なる人々の死を意味する。それがわからないお前じゃないはずだ」
オーヴァンは囁く。
「だけど、別に今回勝つ必要もないだろ……」
「今回は敗北しても構わないと……? なら、次はどうなる? その時、また大事な何かを失わないと言い切れるか?」
「そ、れは……」
惑う。迷う。
オーヴァンの言葉が、脳裏に刻まれる。
「負けてはいけない。また、三爪痕に奪われてしまうぞ」
「嫌だ……それは、絶対に……」
「それじゃあな。亮。決勝戦も楽しみにしている」
踵を返し、観客席へと戻るオーヴァン。三崎は、それをただ見つめていた。
「強くなれ。全ての悲しみと喜びを喰らい、踏み台にして」
オーヴァンの最後の小さな声が三崎に届くことはなかった。
三崎(ハセヲ)とくっつくヒロイン誰がいいですか?(なお下の選択肢ほどエタる確率が上がる。そして、アンケート通りにするとは言ってない)
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日下千草(アトリ)
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倉本智香(揺光)
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久保萌(タビー)
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芦戸三奈
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拳藤一佳