クックヒーローランチラッシュが作る、食堂で昼食を取る。場所が広いこともあって、一人の席を見つけるのは思ったより簡単だった。亮は、あまり人と関わりを持ちたくない。志乃を失ってからは、余計にその思いが強くなっていた。
「あの、お一人ですか?」
「あぁ?」
苛立ちのまま振り返るとそこに立っていたのは以前、試験会場で見かけた志乃によく似た女だった。
「あ、あぁ……」
その顔を見て、声のトーンが小さくなった。
「前の席、失礼しますね」
前に座ると顔が余計によく見える。亮には、それが見たいが見たくないものだった。
「合格できてたんですね。よかったです。しばらく見かけなかったので心配していたんですよ。試験の時、すごかったので私が合格できていてあなたができていないなんてとても思えませんでしたから」
笑顔もよく似ている。志乃はもっと落ち着いた雰囲気ではあったが。
「そういえば、お互い名前も知りませんね。私は
「三崎亮だ」
「……何かありました?」
「そりゃ、何かはあるだろうよ」
「いえ、そうではなくてですね、話しかける前は元気なさそうに見えて、今は私から視線反らしてませんか?」
「……特に意味はない」
「そうですか……何か困ったことがあるなら私に何でも相談してくださいね!」
「あぁ」
煩わしいと思いつつもただ無下することはできなかった。志乃によく似ていたから。
午後の授業には、ヒーロー基礎学の授業が行われた。
オールマイトが教室に現れたときは、クラスメイトが色めき立っていたが亮は終始不機嫌そうな顔をしていた。
オールマイトから戦闘訓練を行うために、コスチュームに着替える様に言われた。
全員が入試にも使用された演習場に出た。
「始めようか有精卵共!! 戦闘訓練の時間だ!」
戦闘訓練は基礎を知るために屋内での戦闘演習をするとのことだった。
クラスメイトは同時に質問を投げかけるためにオールマイトは困っていたが、とりあえず状況設定が説明され、組み合わせはくじで行われることになった。
「オールマイト」
「なんだね。三崎少年。って、コスチュームに着替えていないのかい?」
「いえ、調子が悪いんで見学にさせてください」
「ふむ……しょうがない。けど、体調管理はしっかりね」
オールマイトは内心、一人余るのをどうしようかと悩んでいたので渡りに船だったりした。しかし、教師としてこういうのもしっかり対処できないとますいんだろうなぁと別な悩みも抱えていたりした。相澤と情報共有をして、現在亮が個性を使用できないことも聞いてはいたが、ここでデリケートな問題に突っ込むこともない。
亮はクラスメイトの戦いぶりをみながら、トライエッジ対策を考えていた。
緑谷と爆豪の闘いを通してみて、緑谷のパワーや爆豪のコスチュームによる爆破ならあるいはトライエッジの防御を崩せるかもしれない。だが、参考にはならないし同じことができたとしてとても倒せるとは思えなかった。
そして、その後のクラスメイトの戦いぶりをみて、いつも通り個性を使えたとして、勝つのが危ういと思うのは、轟ぐらいだろうか。だが、轟との戦ったとしてもトライエッジの対策にはならない。
しかし、その対策以前に自分の個性を取り戻さなくては雄英に居られるかも危うい。個性がなければヒーローという職業はほぼ成り立たない。
講評を聞きつつも、自身の心配事のためにほとんど聞き流す形になってしまった。
放課後、クラスメイト達が爆豪との戦闘演習で怪我をした緑谷を心配し、あるいは授業の感想を言いに行くなか、亮はまっすぐ家に帰ろうとしていた。
「三崎さーん!」
校門の直前で、日下に話しかけられた。
「途中まで一緒に帰りませんか?」
「……別にいい」
亮はそのまま歩き出す。
「それってどっちですか? あ、方向同じですね」
「勝手にしろ」
最寄り駅につき、さすがに改札まで付いてくることはないだろうと振り返ると日下は足を止めていた。
「三崎さん、変な音が聞こえませんか?」
「変な音って、人も結構いるし何の音かわかんねぇよ」
「一緒に見に行きましょう!」
「ひとりで行きゃいいだろ」
「ダメ……ですか?」
悲しそうな顔をされて、亮は志乃を悲しませた様な錯覚に陥った。
「わかったよ。行けばいいんだろ、行けば」
「ありがとうございます! こっちです」
日下の後を付いていくと、人の少ない裏路地へと進んでいった。そして、行き止まりのその場所には三角形の赤い傷が付いていた。
「トライエッジの
「トライエッジ? この傷痕はそう言うんですか?」
亮がトライエッジの傷痕に触ろうとすると、傷痕が光った。
「何だ?! 傷痕に吸寄せられてる!?」
「うわぁ!」「きゃあ!」
気づけば地底空洞の様な場所に居た。目の前には湖が広がっており、そこには大きな光る木があった。
「なんでしょう? 誰かの個性でしょうか?」
悪戯にしてはたちが悪い。あまり長居はしない方がよさそうである。
「三崎さん。あそに人が!」
そこには薄紫の長髪の青年がいた。木に腰をかけ、掌の上には黒い泡――穴のようなものがあり、それと戯れているように見えた。
「なんだろう? 綺麗……」
青年の容姿が美形だったこともあり、その光る木と併せて幻想的に見えた。しかし、その浮かぶ黒い泡からは不吉な印象を受けた。
「聞こえる……音があの人の方から」
青年の肩には白い猫がおり「にゃあ」と鳴く。青年はその猫を気にかけながら、木の裏側へと行った。
「あいつ、なんなんだ?」
「聞いてみましょう」
日下は走って青年の後を追う。
「待ってくださーい!」
「危ないぞ!! 止まれ!!」
誰かがそう言った。
「え?」
日下と亮は振り返り声の主を探した。
その後ろでは、黒い泡が合わさり空間にできた巨大な穴と化した。
そこから3m以上はありそうなまるでミジンコのようなモノが出てきた。それには目も口もある様には見えず、中心部が淡く光っていた。頭頂部と思われる部分からは四本、触覚のようなものが生えていた。
それに気づいた日下と亮。
「何?!」
そして、亮たちをかばう様に一人の男が現れた。
「下がってろ」
黄色いコスチュームを着た、水色の長い髪をポニーテールの様に纏めている男だった。
「行っけぇ!! 俺の――メイガスッ!!」
その言葉と共に、男は変身した。頭は仮面の様なものを被っており、腕は細長く木の枝を思わせる。木の葉を思わせる緑色の楕円形のモノも付いている。下半身に足はなく、尻尾の様になっていた。その尾にも木の葉を思わせる物体が付いていた。その全体の大きさは、出てきた巨大なミジンコに劣らないものだった。
その姿は亮が使う個性に少し似ていた。だが、決定的に何かが違う。自身が使うものと形が違うだとか大きさが違うとかそんな些細なことではない。感覚的だが、何かが違っていた。
ミジンコの様なものは、レーザー光線を男に向けて放った。男はバリアを張って防ぎ、直後一気に距離を詰めてパンチで攻撃する。ミジンコの様なものにあった何かが壊れたように見えた。
そして、男は右手をミジンコに向ける。右腕は大砲の砲身の様になり、その周りからは木の葉の様なものが生えていた。そして、その砲身から光球が放たれた。ミジンコに当たると、爆発したように強く発光し、気付いた時には消え去っていた。そして、男は元の姿に戻っていた。
「無事かい? お二人さん」
「あの……助けてくれてありがとうございます」
日下がお礼を言う。しかし、亮は男を怪しく思っていた。
「いやいや、ヒーローとして当然のことをしたまでだ」
「ヒーローなんですか?」
「正確にはインターン生だけどね。それに君たちと同じ雄英生だ」
「先輩ですか!?」
「そう。三年の香住智成。ヒーロー名はクーンだ。よろしく!」
一見すると好青年に見えるが、そこはかとなく怪しい。
「あれは結局なんなんだ?」
「うーん……俺から詳しい説明はできないかな。知りたいなら俺のインターン先に来るといいよ。三崎君に日下さん」
「お前、どうして俺たちの名前を!?」
まだ、名前を言っていないのに名前を知っていた。自分たちは入学したばかりで有名人というわけでもない。
「あぁ、ごめんごめん。無駄な警戒をさせちゃったね。俺の個性もそうだけど君たちの個性もちょっと特殊なのはわかっているかな?」
日下も亮も他人に言ったことはなかったが、それには気付いていた。何せ最初から普通ではなかったから。日下も亮も互いにそれを知る由もないが。
「あれ、だんまり……? まぁ、簡単に説明しておくと俺のインターン先はそういうことがメインなのさ。三崎君、君の探しているトライエッジの情報も何かつかめるかもね」
「てめぇ……どうしてそのことまで……!」
「だからさ。そういうこともひっくるめてとにかくおいで」
亮は日下を見やる。日下はどうするのだろうか。こいつに付いていっても大丈夫なのだろうか。日下も一緒でいいのだろうか。様々な思いが入り混じっていた。
「どうしました?」
「……なんでもない」
「俺、なんか信用されてないみたいね……ヒーロー志望としてはなかなかショックかなぁ」
おどけているように見えなくもないが、本当にそう思っているようだ。
「それで、来る? そろそろ報告に戻らないといけないんだよね。時間に厳しい人がいてさ」
亮は迷ったが、トライエッジのこと、自身の個性のこと知りたいことは山ほどある。少しでも情報が得られるのであれば、付いていくほかにない。
「俺は行く」
「私も行かせてください。私もあの個性のことを私は知りたいです」
「そっか。それじゃ行こうか」
次回、説明回。話がほとんど進まないと思います。
三崎(ハセヲ)とくっつくヒロイン誰がいいですか?(なお下の選択肢ほどエタる確率が上がる。そして、アンケート通りにするとは言ってない)
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日下千草(アトリ)
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倉本智香(揺光)
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久保萌(タビー)
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芦戸三奈
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拳藤一佳