翌日のHR、相澤から学級委員長を決めるように告げられた。
クラスのほぼ全員が率先して引き受けよう、というよりやりたがっていた。その中で三崎は一切やる気はなかった。
飯田の提案により投票で決めることになり、三崎は特に何も考えず飯田に投票した。
結果的には、緑谷三票の八百万二票で委員長と副委員長は決まった。飯田には一票しか入っていなかったため、他の誰かに入れたのだろう。やりたがっていたのに何を考えているのやらと内心思っただけで三崎は誰に言うこともなかった。
昼休み、クーンこと香住の姿を見つけた。向こうも気づいたのか、こちらに駆け寄ってきた。
「『G.U.』に入るんだってな。これからよろしく」
「ジーユー?」
「八咫から聞いてないのか? レイヴンは仮の名前で俺らは『G.U』って呼んでる」
「意味は?」
「何かのプロジェクト名だって聞いたけど」
「ふーん……それより、憑神について教えろよ」
「別に気にしちゃいないけど、先輩に中々すごい態度するね」
「敬語使った方がいいのか?」
「いや、全然気にしなくていいよ。俺もその方がやりやすい」
「三崎さーん! 香住さーん!」
日下も来たので、そこで昼食を取りながら話を聞くことになった。
曰く、憑神とは個性に非ざる個性。肉体よりも精神に結びついている力だと言う。
精神に結びついている力故に身体をいくら鍛えたところで開眼に至ることはない。
「それじゃあ、どうすんだよ」
「心で碑文使いのルールを理解するしかない」
クーンが自身の胸を親指で指差しながら言う。
「心で理解って……どうやって?」
「意識を研ぎ澄ますこと……一番手っ取り早いのは実戦なんだけど、対人でやるわけにもいかないからなかなか難しいんだよね」
「お前も確かな方法が分かっているわけじゃないのか」
「たはっ。痛いとこ突くね。俺やパイが碑文使いとして開眼したのも偶然の事故のようなものだった」
ウゥーーーー!!
警報が鳴り響いた。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』
「なんだ?」
「誰かが校内に侵入したみたいだね。落ち着いて行動しよう」
「でも、皆さん相当に焦って出口で混みあっちゃってますよ! 誰かがちゃんと誘導しないと!」
「ンなこと言っても、あの状態じゃ下手に動けねぇよ。ったく、何をそんなに慌ててるんだか」
ここは現役のヒーローたちが教師を務める高校である。ヴィランが攻め入って来たのだとしても相当に強力でない限り、優々と対処できるだろう。
「少なくとも俺はセキュリティ3が突破されるなんてのは初めて聞いたし、慌てるのも無理はないさ。ここにいる誰も彼もがヒーロー科と言うわけでもないしね」
その混乱の人混みの中、一人が浮き上がり出口の壁の所に激突した。そのポーズは非常口の看板の様になっていた。
「皆さん、大丈ー夫!! ただのマスコミです!」
そうやって飯田が混乱を収めていた。
「お、やるねぇ。彼」
「……麗日の個性でも借りたのか?」
飯田の個性だけでは不可能な動きであったこと。緑谷と麗日と飯田が一緒に行動しているのを見かけたことからの連想だった。
「おや、知り合いかい?」
「クラスメイトだ」
「へぇ。あれは仲良く……とまでは言わないけど、関係は作った方が良いと思うぞ」
「なんだ、急に」
「ただのお節介だよ。まぁ、彼に限ったことじゃないけど情報を集めるならもう少し気を使った方が良い」
「……気には留めておく」
香住の言うことも最もなことである。しかし、三崎の性には合わないことで、できそうもなさそうだし行動しようとも思わなさそうだと思っていた。
午後の委員決めで緑谷が飯田を学級委員長に推薦したために飯田が学級委員長となった。
特に気にしていたわけではないが、自分としては情報集めと自身の特訓に時間を費やしたいので、時間の無駄だと感じるのが否めなかった。
放課後は香住に憑神を使えるようにするための訓練を頼もうとしたのだが、予定があるとさっさと帰ってしまった。仕方ないので相澤に演習場を借りる許可をもらい、錬装士の訓練をすることにした。
個性自体を成長させることは一朝一夕には叶わないと感覚的に理解できていたので、扱い方を身体に馴染ませるのが今一番やるべきことだと判断した。
理由は判然としないが、逆手の二刀流が一番自分に合っている様に感じたためにその型を練習した。三爪痕も同様の型であったことを思い出したが、使えるものは何でも使うと心に決めていたため嫌悪感を押し殺した。
怒りと憎しみの全てを力に変えて、三爪痕を討つ。その一念で練習を続けた。
「さすがにそろそろ帰れ」
相澤に声をかけられて、日が沈み暗くなっていることに気付く。汗が大量に流れ、息も整わない。
「……状況が状況だけに焦るなとは言わん。だが、一度落ち着け」
「俺にはどうしても成し遂げたいことがある。落ち着いてなんていられない」
「三崎……お前、本当にヒーローになりたいのか?」
疲れもあってか、本当のことを言ってしまいそうになる。
「ヒーローには……ヒーローは俺にとっては手段です。目的のために必要な」
「そうか」
ヒーローになることはゴールではない。ヒーローになってから活躍できるかが問題だ。そのことは、教師も生徒も皆がわかっていることだろう。だが、目的となると一体それは何なのか。
「目的については、話してくれないのか」
「言えません」
相澤は三崎に尋ねてはいるが、本当はおおよその検討は付いていた。三爪痕が関連している可能性が高い。病院で口にしていた伝説のヴィランの名。蒼炎を纏った男。三爪痕に狙われた者は行方不明になる。三爪痕が訪れた場所には三角形の傷痕が残される。実在はするようだが、誰も見たことがない都市伝説の様な存在だ。それに三崎亮は会っている。しかも、恨みを抱いている様に見えることから被害者の中に家族か友人のどちらかがいるのだろう。
「わかった。言う気になったら聞かせてくれ」
校長、本当に三崎を雄英に置いたままで大丈夫なんでしょうか。
そう思わずにはいられなかった。
三崎が駅前を歩いていると香住を見つけた。
あいつ、こんな時間に何やってんだ?用事があるって言ってたけど……
「君たち、残念だけど今日はここまでだ」
「あぁん、クーン様ぁ。もう少し遊んで行きましょうよぉ」
「そうですよ。クーン様」
香住が2人組の女性と話し込んでいた。デートという奴だろうか。いや、おそらくナンパだろう。
「あぁ、そんな情熱的な視線を向けないでおくれ。君たちの視線にしば……」
香住が三崎の存在に気付いた。
「しばらくぶりだね。三崎君!」
「よぉ、クーン様。随分と楽しそうじゃねぇか」
「いや、これは、なんだ。パトロールと同時に情報収集をする大事な仕事でな。決してやましいことをしていたわけではないんだ」
「クーン様、この子誰?」
「こいつは俺の後輩で……あぁ、すまないけど今日は帰ってくれないかな。これ、俺の連絡先。それじゃ!」
香住は三崎を人気の少ないところに引っ張って行った。
「ナンパとはいいご身分だな」
「だから、さっきのはパトロールだって……」
「ほぉ……なら、パイに伝えてもいいんだな」
「待ってくれ。俺が悪かった。このことはパイには言わないでくれ」
「ったく、俺の頼みを断っておいてそれかよ。それにヒーローとしてどうなんだよ」
「いや、さっきの全部が全部嘘ってわけでもなくてだな。最近、怪しい動きをしている連中がいるんだ」
「……AIDA絡みか?」
「まだわからん。だが、可能性は高い。ヴィランがAIDAを利用するにせよ、自滅するにせよ危険なことには変わりない。早めに対処しなきゃならん」
「なら俺も……」
「ダメだ。お前はまだ仮免もなければ開眼もしていない。危険だし、規則違反だ」
「ちっ……」
三崎は無理やりにでも押し掛けようとも思ったが、三爪痕が係わっているかはわからない上に無暗に香住との関係を悪くするのも今後に差し障るかもしれなかったのでやめた。
「そう焦るな。一刻も早く三爪痕をなんとかしたい気持ちも察するけど、焦ったところでいいことなんかないよ」
てめぇに俺の気持ちがわかるか! と、言いたい気持ちを堪え「そうだな」と、応えた。
「気を付けて帰れよ」
「あぁ」
翌日の午後。
相澤から今回のヒーロー基礎学が救助訓練であることが伝えられた。コスチュームに着替え、バス移動となった。
三崎のコスチュームは至る所に黒い革のベルトを巻いたようなコスチュームで肩と腹が露出していた。
何かを指定した覚えはないので文句はなかった。ただ、少しばかり気恥ずかしくもあった。それでも、態度に出した方がより恥ずかしくなってしまうとも思ったのでいつも通りの態度でいた。
常闇が何故か「同志か……」と、妙な共感をしていたように見えた。恐らく、勘違いである。
飯田が張り切って、席順に並ばせたが、バスが観光バスのタイプでなく市営バスなどにあるタイプだったためにから回っていた。
バス内では個性の話、緑谷の個性がオールマイトに似ているということを蛙吹が指摘した。そのあとは、ヒーローと言う職業が人気商売みたいなところがあるという話から爆轟がいじられていた。
三崎はその話題に乗ることはなく、ただ傍観していた。志乃が生きていたらどうだったんだろうか。と、そんな感傷に浸っていた。
訓練場に到着し、その広大なドームに拡がる様々な施設にUSJかよと騒ぐ。
嘘の災害や事故ルームという名称で、本当にUSJだったとは誰の言か。割とこじつけにいっている様な気もする。
スペース13号というヒーローは災害救助で活躍するヒーローらしく今回の指導をするらしい。三崎は災害救助に全く持って興味がないために欠伸を噛み殺しつつ、13号の言う小言を聞いた。
要約すれば、個性という危険な力を持っているが、それを人助けに活かすことを学ぼうということらしい。ヒーローらしい考え方と言えばそうなのだろう。逆説的に復讐を志す自分はヴィランらしいのだろう。まして、ヒーローになる気があまりないので、さもありなんと言ったところか。
ふと、目を横にやると、黒い何かが見えた。そこからは人影がみえ、やがてそれらが正体を表していく。
「一かたまりになって動くな!! 13号、生徒を守れ!」
相澤がいち早く気づき、告げる。
「何だ? 入試時みたいにもう始まってんぞってパターン?」
「動くな! あれは、ヴィランだ!」
三崎は、自分の中で心臓ではない何がドクンッと鼓動をしたのを感じた。
多分、また長期間かかります。
なお、クオリティは保証しかねます。
三崎(ハセヲ)とくっつくヒロイン誰がいいですか?(なお下の選択肢ほどエタる確率が上がる。そして、アンケート通りにするとは言ってない)
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日下千草(アトリ)
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倉本智香(揺光)
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久保萌(タビー)
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芦戸三奈
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拳藤一佳