トリケラオヤジ   作:トリケラオヤジ

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2999年夏、ニューヨークから仕事で来たという男たちが、モンタナ州イカラカ近郊のバッドランドの白亜紀の地層中で発見された巨大な円盤を調査しに来ます。

 

円盤の中で、まるでまだ生きて眠っているだけのように見える恐竜が、ケージの中で発見されました。目の上の角が一本欠けていることを除いて皮膚まで完全に保存された巨大なトリケラトプスでした。

 

***

 

悲鳴を撒き散らすように激しく揺れる機体。レイモンドの目から見える景色は眩い光に包まれ、温度感覚が悲鳴をあげます。弾丸に似た機体は徐々に前後に伸びて行き、稲妻のような光線に変わったかと思うとその場から消え去りました。

 

光線は時間の壁を突破。地球誕生より遥か以前の宇宙を突き進んでいきます。

 

レイモンド・ハッチャーはアメリカ空軍の除隊後、2001年から民間企業でタイムマシンの試験運転パイロットとして働いていました。

 

テスト中のタイムマシンはコントロールを失ったまま時間移動を続け、ビッグバン以前の世界、「前世界」へ飛び出します。

 

そこで「ある事」を感じ取りました。

 

レイモンドは必死の努力で帰還することが出来ましたが、操縦技術の未熟さから懲戒解雇を言い渡されます。

 

どこか自暴自棄なレイモンドに、開発チームは掛ける声もありませんでした。

 

レイモンドには、妻、息子、娘の家族がいました。5歳の娘のケルシーは重病と闘っており、薬事療法に苦しんでいました。

 

レイモンドはアメリカ国防高等技術計画局のマーヴェン計画のテストパイロットに応募しました。

 

4名の面接官が見守る前でレイモンドは持論を淡々と披露し、一同を唸らせます。レイモンドが「ほかに質問は?」と面接官に確認すると、計画の責任者オズボーンが「娘さんのことは気の毒だ」と声をかけました。レイモンドは黙ったままオズボーンを見つめ、「質問は何ですか?」と一言。面接官が「そのことが影響を与えると思いますか?」と聞き直すと、レイモンドは「影響を与えないと考えるのは難しいでしょう」と答えました。パイロットになる素質として申し分ない優秀な見解や考え方を持つ一方で、一人の父親として娘の死についても言葉を濁さず正直に答えたのです。

 

レイモンドは合格印が押されます。

 

しかし小さい体で懸命に治療を受けるケルシーの姿に胸を痛めるレイモンドは仕事に集中できず、計画への参加を途中で辞退します。

 

間も無く、家族の願いも空しく、ケルシーは亡くなってしまいます。

 

やり場のない悲しみに暮れるレイモンドは、仕事へと逃げ込むように、計画へ復帰しました。

 

背中を押す妻アガサもまた、拭えない死の匂いに怯えていました。

 

1999年の「ウェルズ計画」で有人時間移動に成功した大統領は、10年以内に人間を中生代へ送るという「マーヴェン計画」を掲げます。

 

タイムマシンを超光速で飛ばすために、機体をプラズマに変換して過去や未来へ送り、行先で再構築させるという手法が用いられました。

 

タイムマシン・パイロットとして、過酷な訓練に耐える日々。身体能力はもちろん、専門的な知識、忍耐力や順応性、そしてコミュニケーション能力、パイロットは多くのスキルを求められます。

 

マーヴェン計画の合格者になるべく、ジョン・ダコタの元で他のパイロットと共に訓練を受けます。

 

レイモンドが候補者であることについて、ジョンがオズボーンに不満を漏らします。

 

しかしオズボーンのテストに対し優れた決断力と行動力を見せ付けたレイモンドは、ほとんどの関係者から認められました。

 

近所に住む同じパイロット、クリフ・レインとは家族ぐるみの付き合いです。家族や仲間たちと過ごす穏やかな時間は、かけがえのないものでした。

 

2004年、レイモンドはいつものように仲間たちとクリフの家で過ごしていました。そこにロシアのタイムマシンのニュースが飛び込んできます。

 

ロシアのマレーエフ号が、始新生での船外活動を成功させたというニュースでした。

 

アメリカとロシアは、国のプライドをかけタイムマシン開発で競い合っており、レイモンドにとっても悔しい知らせとなりました。

 

そんな政治的な力も加わり、レイモンドたちパイロットの負担は相当なものでした。まったなしで進められる計画にプレッシャーの日々。

 

事態は悲劇へと向かっていました。

レイモンドとは同じ民間人からのパイロットとして仲良くしていたジョー・ディオが、アンドリュース7号の爆発事故で亡くなります。

 

常に死と隣り合わせの仕事。家族も仲間も覚悟はしているつもりです。しかし現実は耐えられない悲しみが襲うばかりです。

 

ジョーの葬儀の日。亡くなった娘ケルシーの姿がレイモンドの脳裏を過ぎります。この世とあの世の境目が曖昧になる恐怖にかられます。

 

計画は多くの犠牲を払い進んで行きます。

 

レイモンドは、アンドリュース8号のキャプテンに任命されました。

 

いよいよ発射の日。コックピットはまるで死刑台のよう。閉じ込められた窓から見える空に、鳥が1羽横切ります。カウントダウンです。

 

ギシギシ機体が音を上げ、激しい揺れと轟音が響きます。アンドリュース8号は無事光線として発射され、時間を遡り始めました。

 

光線は後期白亜紀に到着。一瞬成功したかに見えたタイムスリップでしたが、再構築がうまくいきません。レイモンドたちは消滅寸前に陥ります。

 

しかし何とか「冷静な対処」で帰還することが出来ました。

 

しかし、度重なる失敗に国家は人命を危険にさらし多大な税金を無駄にしている、と世間の批判が強まります。命は助かったものの意気消沈するレイモンドに、妻アガサは懸命に寄り添います。

 

アンドリュース8号の帰還はマーヴェン計画の大きな前進に繋がりました。そして記念すべき「マーヴェン1号」の船長にクリフが選ばれました。レイモンドも心から祝福します。

 

恐竜との遭遇に近づくに連れ、マーヴェン計画最大の悲劇が迫っていました。

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