このすば短編集   作:さすめぐ

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銀髪盗賊団〜王都へ再び〜

 

今日は疲れた。最近妙におとなしかった三人が、ついに本能に回帰したのか、色々やらかした。アクアは何かムカつく事でも言われたのか、酒を水に変える嫌がらせをして警察に連れて行かれた。俺が迎えに行った。めぐみんは街中で誰かに喧嘩を売り、一方的にボコボコにして警察へ。俺が迎えに行った。ダクネスは学習能力がないのか、またもやスライムを持った行商人からスライムを奪い取った。俺が返しに行き、頭を下げた。どこか楽しく感じるのは、あいつらに毒されている証拠だと思う。

「助手君、いるー?久しぶりに遊びに来たよー!」

全く、どうしていつも俺はあいつらの保護者扱いされているのだろう。アクアは知らんが、他の二人にはちゃんとした保護者がいるだろうに。

「助手君ー?玄関に靴もあるし、居間にはいないし、ここにいるんだよね?まさかまだ寝てるの?開けるよー?」

そそもそもあいつらももういい歳なん……そういやアクアって本当にいくつなんだろう。見た目的には16〜18くらいに見えるが、本当は三桁とか四桁とかいってるのだろうか。今度エリス様に聞いてみるか。

「助手君ー?」

「なんですかさっきから。俺は今から寝るんです、神器回収なら12時間後くらいにお願いします」

「なんだ、起きてるじゃん。君の睡眠時間に関して女神として色々言いたいところだけど、それはひとまず置いておいて。今日は神器の話じゃなくて、普通に雑談というか近況報告を聞きに来たんだ。まぁ、本当は神器の話もあるけど…」

少し呆れた様子のクリスが、ドアを開けて入ってきた。

「そういうことなら起きま…最後なんか言いました?」

「言ってないよ。とりあえず、ここじゃなんだしいつもの喫茶店行こうよ」

「そうですね。じゃあ着替えた後あいつらに一言言ってから行くんで、店で待っててください」

「了解、じゃあまた後でね」

そう言って、クリスは部屋を出て行った。

────────────

ここは、いつもクリスと待ち合わせるときに来る喫茶店。いつもあまり人は多くなく、落ち着いた雰囲気の店内で俺は。

「それで、昨日は大変だったんですよ。もうほんと、エリス様のとこに家出したいくらいです」

酒を片手に、クリスに愚痴をこぼしていた。

「たまにちょっと来るくらいならまぁいいけど、何時間も居座るのはやめてね?一応あそこは仕事場だし、死者の人とか天使が来たらまずいよ?」

「冗談ですよ、流石に俺もその辺は分かってます。あと、前にも言いましたけど、最近うちの駄女神の様子がおかしいんですよ。他の2人も割とおかしいですけど。なんでだと思います?」

他の2人は多分ただのアプローチみたいなのだと思うが、アクアは本当に分からない。一瞬アクアも俺に惚れたのかと思ったが、2秒でその考えは消えた。だってアクアだし。

「うんうん。それは何か隠してるんじゃなくて、助手くんが理由だと思うよ」

言いながら、ニヤニヤするクリス。

「俺が理由?もっと詳しく教えてほしいんですけど…そういえば、ダクネスがお頭のことめっちゃ気にしてましたよ。あれ、正体気付かれたんじゃないですか?」

クリスはいつかちゃんと正体を伝えたいみたいなこと言ってたけど、あれはもう手遅れだと思う。

「あー…どうしようね…次会った時色々言われそうで怖いなぁ…」

困ったように頬を掻くクリス。俺も聞かれても答えにくいから、正直少し怖い。

「もうそろそろ言った方がいいと思いますよ。あ、そういえば神器回収の話があるとか言ってましたね。今回はなんですか?」

正直めんどくさいが、魔王討伐時の恩もあるしちょっとくらいなら手伝うのもやぶさかではない。そこそこ楽しいし。

「あ、そうそう、今回はね、また王城に」

「行きます」

「いや、アイリス王女には会わないからね?宝物庫からちょっと拝借するだけだよ?」

それは残念だが、まぁ見つかったら色々面倒だしいいか。

「今回の神器はね、相手と能力を入れ替えることができる物で、いつもと同じく危険だから回収して封印しようかなと。手伝ってくれるよね?」

「なんか以前のとえらく似てますね。いいですよ、魔王討伐時にも色々お世話になりましたし。それに、ちょっと面白いことを思いついたので、それを試してみたくて」

クリスは不思議そうに首を傾げているが、俺はもう勝利を確信していた。

────────────

「ただいまー」

「ああ、おかえり。昼は外で食べてくると言っていたが、どこに行っていたんだ?」

「クリスと喫茶店で世間話してたんだよ。あとは、バニルにちょっと相談をな」

「………そうか」

やっぱこいつ気付いてるのか?めっちゃ考えてる顔してるんだけど。

「あ、カズマおかえりー!今日は一体どこに行ってたの?私一人であちこち謝りにいって大変だっ…………」

………今なんか聞こえたな。

「おい、今なんつったこの駄女神。怒るから全部話してみろ」

「えっいや、な、なんでもな…ごめんなさい、謝るので私の部屋に向かうのはやめてください、あ、ちょっとまっ…」

問答無用だ。このあと、ベッドの下に転がっていた酒を2本奪いダクネスと飲んだ。美味しかった。

────────────

草木も眠る丑三つ時。俺とクリスは、以前と同じように王城の城壁からロープ付きの矢を使って侵入し、懐かしの城内を歩いていた。

「魔王が討伐されて平和になったおかげか、兵士が全然いませんね。まぁ仮にたくさんいても、俺にかかれば余裕ですけど」

「魔王を倒したのは君だけどね。というか、随分と余裕綽々だね助手君」

「あの時より使えるスキルが増えてますし、レベルももう70くらいですから」

そう、実は魔王を討伐したときダンジョンの半分くらいが崩れてしまって、そのとき一緒にたくさんの高レベルモンスターも倒していたようなのだ。おかげで魔法の威力もだいぶ強くなっているし、魔力量も多くなっている。

「それに、今日は念のためマナタイトも持ってきたんです。ちょっと逃げるときに策があるので」

「それは楽しみだね。ところで、どんなスキルを覚えたの?」

「中級魔法や自動回避、回復魔法、テレポートとかは、アクアを追いかけたときに覚えましたけど、今回は追加で芸達者になる魔法と各支援魔法を覚えてきましたね」

「芸達者になる魔法って、声真似のやつだよね。先輩に教えてもらったの?」

「そうですそうです。最初は悩んでましたけど、酒を見せたら即決でしたね。でも、なんでかよくわかんないですけどすごい喜んでました。頼られたのが嬉しかったんですかねぇ」

「君はもっと先輩に優しくするべきだと思うよ、うん。褒めて伸ばすってやつだよ」

たまには褒めたいのも山々だが、あいつらは褒めたら調子に乗るからなぁ…。

そんなことを思いながら歩いていたら、宝物庫に着いてしまった。そういえば、前はこの辺で見回りの兵士に会ったが今回はいないな。

「今回も結界殺しがあるし、前みたいに助手君がやらかさなければ上手くいきそうだね。よし、行こうか!」

「でも、確か宝を持ち出したら警報が鳴る罠があるのでは?」

「あ、それも罠解除があるから大丈夫だよ。まぁ、一応警戒はするけど」

そういえばそんなスキルもあったな。普段使わないから忘れてた。

「これだね、この光ってるブレスレット。『罠解除』っと。よし、あとはこれを持ち帰るだけ…………どうしたの助手君?」

「………お頭。ちょっと楽しいこと…しませんか?」

このタイミングで楽しいことと言えば、アレしかないだろう。

「いいね。あたしもあれは楽しいし、君とあたしならきっと大丈夫だよ」

言いながら、朗らかに笑うクリス。

「それじゃあ、行ってみようか!」

そう、アレとは…

────────────

「賊がでたぞー!!あの恐ろしい賊がまたきたぞー!!」

「相手は最上階のアイリス様の部屋まで突破した経験があるとんでもない凄腕だ!総員厳重に警戒しろ!」

そう、強行突破だ。しかし、随分と怖がられているな。

「『クリエイトウォーター』!『フリーズ』!『スティール』!『バインド』!『クリエイトアース』!『ウインドブレス』!『スリープ』!『ウインドカーテン』!『フラッシュ』!」

「『ワイヤートラップ』!『ワイヤートラップ』!『ワイヤートラップ』!」

クリスと共に、容赦なく様々な魔法をくらわせていく。ある者は足を氷漬けにされ、またある者は足を滑らせて転倒、他にも剣を奪われ攻撃手段を失ったり、縛られたり、目を眩されたり、眠らされたり、風で吹き飛ばされたり、ドレインタッチで魔力を俺に吸われたり…。なにこれ、超楽しい!

「お頭、今回は上に用はないですし外に行きましょうか」

「そうだね!ところで助手君、ちょっとやりすぎじゃないかな?!もう数人しか追いかけてきてないじゃん!」

おお、本当だ。って、あれは…?なんか見覚えがあるな。

「カ…そこの義賊の方!私たちは貴方達を捕まえるつもりはない!どうか止まってくれ!」

そこには、アイリスのお付きの白スーツ、クレアがいた。隣にはレインもいる。

「お頭、どうします?止まりますか?」

「うーん…。まぁ、止まってもいいんじゃない?仮に捕まったりしても、あたしたちなら逃げられると思うし」

正直あいつと話すのは面倒だが、まぁいいか。しかし、二人はなぜ震えているのだろう。俺の報復を恐れているのだろうか?もうあの時のことはあまり気にしていないのだが。ていうか、レインは俺の正体を知っているのか。

「と、止まっていただきありがとうございます!捕まえるつもりはないので、ひ、ひとつだけ質問してもよろしいでしょうかか?」

「なんだ?そういうことなら、ある程度の事は話してやるぞ」

見れば、周りの騎士たちも少し怯えた表情をしている。一体どれだけ俺は怖がられているのか。

「そ、その、今回この城にきた目的とかって…教えていただけますか?」

それか。俺は話してもいいが、一応クリスに目配せをし、可否を聞く。頷いているので、多分いいんだろう。

「宝物庫にある危険な神器の回収だ。あれを回収し天界…女神に返却する。それ以外はないぞ?あと、敬語が気持ち悪いからいつもの口調に戻してくれ」

「わ、わかった…。本来こういうことはダメなのだが、そういうことなら逃してやる。というか、何をやっても貴方方を捕まえられる気がしない」

「ほう、それはありがたいな。じゃあ、堂々と帰らせてもらうよ。どうも、また来るぞ」

最後の言葉にヒッ…と悲鳴をあげるクレアとレイン。また来るというのは報復ではなく、アイリスに会う時という意味なのだが…まぁいいか。

「お頭、ちょっと待っててください。やりたいことがあるんで」

せっかく持ってきたので、やってみたいのだ。まず持ってきた、人が二人くらい座れそうな大きさの絨毯を広げ、宙に投げる。

「『ウィンドブレス』!」

両手から風の魔法を出し、絨毯を空中で浮遊させる。

「お頭、この上に乗ってください。これで帰ります」

「「「えっ?!」」」

まぁ、驚くのも無理はないか。

「助手君、本気?これ仮に乗って飛べたとしても、そんなに長く飛べないと思うんだけど…」

「そのためにマナタイトもいくつか持ってきた。これで…まぁ、頑張れば半日で帰れるだろ。無理でも途中でテレポートすればいい。ほら、早く乗った乗った」

「「「な、なるほど…」」」

俺は、クリスが不安そうにしながらも絨毯の上に乗ったのを確認し。

「…う、魔法出し続けてんの、意外と疲れるな。なんか無理そうな気がしてきたが…。まぁ、街からある程度離れたら降りてテレポートすればいいか…じゃあな、二人とも!アイリスによろしく!」

クリスが絨毯の上に乗ったのを見て呆気に取られている二人に別れを告げ。俺も絨毯に乗り、真夜中の王都の空へと飛び立った──。

 

 

 

 

なんてことはなく、30秒で落ちて、骨折寸前の大怪我をし、ダクネスに折檻を受けました。

 




カズマさんのかっこいい所とクリスとのお喋りが書きたかっただけだったのに、何故かアクアの要素が多くなってしまいました。ごめんなさい。あと、なんか展開が薄いような気も…()
余談ですが皆様、原作8巻は絶対に読まない方がいいです。色々な尊い要素が多すぎて、読むともれなく口が裂けたり、鼻血が出たりします。危険です。
さて、そんな変な布教は置いておいてエリス様の話はどう書こうか…

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