このすば短編集   作:さすめぐ

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アイリスの来訪

 

「カズマさーん、なんか手紙が届いてるわよー?」

 

ある日の昼。散歩帰りにドアポストを見てきたらしいアクアが声をかけてきた。

 

「俺に手紙?」

 

珍しいなと思いながら差出人を見ると。

 

「おお、アイリスからじゃないか」

 

手紙には、見覚えのある紋章とアイリスの名前が書かれていた。

向こうで何か話していた3人は、アイリスという単語に反応しこちらへ駆け寄ってきた。

 

「アイリスからとなると、内容は魔王討伐のことでしょうかね?」

「そうだな、そういえばアイリス様からはまだ何も来ていなかった。討伐報酬のことも書かれているかもしれないな」

「いったいジョセフさんのお酒何本分のお金が貰えるのかしらね!」

「いや誰だよジョセフ」

 

金と酒のことしか考えていない駄女神を尻目に、俺は少しドキドキしながら手紙を開いた──

 

『拝啓、お兄様へ。先日、ついにお兄様が魔王を討伐されたと聞きました。心よりお祝いと感謝を申し上げます。つきましては、3日後に魔王討伐記念パーティーと表彰式を王城にて開きたいと思いますので、是非討伐時のパーティーの皆さんとお越しください。本当は今にもお城を抜け出して会いに行きたいくらいなのですが──』

 

 

そこまで読んだとき、玄関から控えめにドアをノックする音が聞こえてきた。

 

 

「……まさか違うよな?」

「き、きっとゆんゆんですよ、ノックが控えめでしたし……」

「いや、バニルが『残念、我輩でした!』と言って出てくる可能性も……」

 

どれも有り得そうに思いながら玄関のドアを開けると、そこには……!

 

 

愛しの我が妹、アイリスがいた。

 

アイリスは俺の顔を上目遣いでこちらを見つめてきて──

 

 

「お兄様ー!!」

 

「「「「ちょっ?!」」」」

 

 

いきなり抱きついてきた。

 

「ア、アア、アイリス?!いきなり抱きついてきてどうした?!」

 

嬉しいことは嬉しいんだけど、後ろにすごく怖い目をした人たちがいるからちょっと今は離れてほしい!どうしよう、特に赤いやつがすごく怖い!

 

「お兄様、魔王討伐おめでとうございます!私はきっと、お兄様が魔王を倒してくれると信じていましたよ……!」

 

とても嬉しそうな顔で微笑むアイリス。

 

「それはいいんだけど、どうやってここに来たんだ……?」

「それは、王族しか知らない秘密の……」

「いやですよね!後が怖いからそれ以上は言わなくていい!ま、まぁ、とりあえず、クレアかレインが来るまでなんかして遊ぶか。そうだ、魔王を討伐したときの話でもしよう」

 

後ろでダクネスが頭を抱えていたりめぐみんが不満そうな顔をしたりしているが、気にしない方針で行こう。

──────────────────

「そういえば、アイリスがこの屋敷に来るのって初めてじゃないか?よく場所が分かったな」

「ああ、それはですね。私が街を歩いていたらゆんゆんさんに偶然会ったので、場所を聞いたんです」

「そういえばなんか盗賊団みたいなの組んでたんだったな。めぐみん、最近活動してんの?」

「そうですね……。最後に活動したのは、あのクリスタルライガーのときですかね」

 

ほとんどしてないじゃねーか。

まあ、あれからしばらく魔王軍の事で忙しかったしな。ていうか、アイリスは銀髪盗賊団についてどう思っているんだろう。流石にバレていてもいきなり捕まえてくることはしないと思うが……。

 

「なぁところでアイリス、銀髪盗賊団って知ってるよな?あれどう思う?」

「ど、どう思う、ですか……。そうですね……世のため人のために人知れず影で働く素晴らしい人たちだと思います」

「そ、そうか」

 

どうしよう、思わず聞いてしまったが反応しづらいな。やっぱり銀髪盗賊団の話はあまり触れない方がいいだろうかと色々考えていると、アイリスが恐る恐ると言った感じで、話しかけてくる。

 

「あの、お兄様。」

「は、はい」

 

おっと、思わず敬語になってしまった。

 

「王城でペンダントを盗まれた時から思っていたのですが……。もしかして、銀髪盗賊団の仮面の方は……」

 

………………。

 

「そこまでですよアイリス!カズマもいつまでもデレデレしてないでこっちに来てください!今日の昼ご飯はカズマの担当でしょう!」

 

た、助かった!ナイスだめぐみん、今日は俺の担当ではないが都合がいい、やってやろう。

 

「め、めぐみんさん酷いです!今すごく大事なところだったのに!」

「と、とりあえず昼飯にして、また後で話そうか」

「そうですね、わかりました。ところでお兄様、料理は何を作るのですか?」

「そうだなぁ……。今日はアイリスもいるし、たまには和食にでもするか」

「和食……?日本というところの料理のことですか?」

「そうだ。今日は……そうだな、カツ丼を作ろう」

「カツ丼……ですか?カツ丼とは一体どんなものなのですか?」

「ご飯の上にとんかつを乗っけるものだ。大抵の場合卵も乗せるな」

 

アイリスの様々な質問に答えながら、俺はキッチンに向かうと。

 

「あらカズマ、どうしたの?手伝いにきたの?」

 

アクアが既に何かを作っていた。

 

「いや、今日はアイリスもいるしカツ丼でも作ろうかと思ったんだが……」

 

そういえば今日の昼飯はアクアが担当だったような気がする。いや、昨日もアクアが作っていなかったか?

 

「あら、でももう作っちゃったわよ。代わりに後でデザートでも作れば?」

 

「まぁ、それでいいか。で、何作ったんだ?液体系はやめてくれよ、高確率で味しないから」

 

 

「グラタンよ」

 

 

液体とも固体とも言い難い予想の斜め上が来た。

──────────────────

「これがグラタンというのですか。すごく美味しいですね!」

 

アイリスは初めて食べたみたいだが、グラタンってそんなに庶民的な料理だっけ。

 

「カズマカズマ、今日の爆裂散歩はどうしますか?アイリスも連れていきますか?」

「そりゃそうだろ。いつ来るか分からない脅威から遠ざける為だ」

「おいカズマ、その脅威とはもしかしなくてもクレア殿のことではないだろうな」

 

ダクネスの言葉を無視して、俺は…って待て。

 

「ダクネス、お前いたのか。気付かなかったぞ」

「いや、私は先程からずっといたのだが……」

 

やはり私は影が薄いのだろうかなどと言いながら、ダクネスは落ち込み始めた。こいつ、未だに安楽王女に言われたこと引きずってるのか。

 

「ねぇカズマ、これどう?美味しい?私何気に初めて作ったんですけど」

「そうだな、まぁ美味いんじゃないか?というか、お前昨日も昼飯作ってた気がするんだけど。なんで今日も作ったんだ?」

「カズマさん、小さい頃グラタン好きだったから喜ぶかなーって」

「おい、勝手に俺の過去を捏造するな。お前は一体俺のなんなんだ」

 

するとアクアは、少し考え込み。

 

「………………保護者?」

 

「それはどっちかっていうと俺の方だろうが。いや、それも違うんだけど。お前はアレだな、優先席に座ってたら怒ってくるようなタイプのおばさんみたいだな」

 

掴みかかってくるアクアを華麗に避けつつ、食事を進めていく。

 

「おいアクア、食事中に暴れるのはやめてくれ。食べ物が飛んだら…」

 

どうするんだと言いかけたところで、アクアの手は見事にグラタンの入った食器をひっくり返し。

 

「あっちゃあああああああ!!!!」

「きゃあああああ!!」

 

俺とアイリスにそれなりの量の熱々グラタンがかかった。

 

「『セイクリッド・ハイネス・ヒール』!『ピュリフィケーション』!ごごご、ごめんね、カズマ、アイリス!今のは流石に私が悪かったわ!」

 

そんなことを言いながら、アクアが謝り……?!

 

「おいアクア、お前本当にアクアか?いつものお前なら『私を馬鹿にするようなことを言ったカズマが悪いのよ!分かったら謝って!女神を馬鹿にしたことをほら早く謝って!』とか言うだろうが」

「あんた、私のことなんだと思ってるのよ」

「それよりもアクア様、すごいです!最上位の回復魔法が使えるなんて……!我が国でも数えるほどしか使える者はいないはずですよ!」

 

あまり熱がっている様子を見せず、アクアを褒め称えるアイリス。なんでそんなに平気そうなんだ。

 

「ねぇカズマ、それより私今すごく珍しく誰かに褒められてるんですけど。かなり嬉しいんですけど!」

 

アイリスの言葉に、アクアはとても嬉しそうな表情ではしゃぐ。……今後はもうちょっと優しくしてやるか。

──────────────────

その後、俺達は色々な話をして過ごした。何気に初めてめぐみんとダクネスにも魔王討伐時の話をしたら、爆裂魔法で相討ちしたと言うと何故か泣かれたり謝られたりお礼を言われたりした。自分は鈍感系主人公ではないと思っていたが、こればっかりはよく分からなかった。後でエリス様に正解を教えてもらおうと思う。

途中、エリス様にブレッシングを掛けてもらった辺りの話をしていたところ、本当にいつの間にか屋敷に入って来ていたクレアが「この男、本当に怖い…。人脈が広すぎる…」と言って震えていた。それは俺も少し思う。

そして、夕暮れ。

 

「お兄様、今日は本当にありがとうございました。ではまた、3日後に!」

 

満面の笑みでそう言って、アイリスはクレアと共に帰って行った。

 

「ねぇ二人とも、私やっぱりカズマさんってロリコンだと思うの。普段あんなにツンツンしてるのにアイリスにだけあんなデレデレして、あれでロリコンじゃない方がおかしいと思うんですけど」

「おい、聞こえてるぞ。俺はただ妹が好きなだけで、ロリコンなわけじゃない。それに本当に俺がロリコンなら、めぐみんに対しても似たような反応になるはずだ」

「おい、いい加減私をロリキャラ扱いするのはやめてもらおうか」

「なぁカズマ、ちなみに私は何キャラなんだ?以前聞いた時とは自分はだいぶ変わったと思うのだが」

 

そう言われて、俺はこれまでのダクネスとの数々の思い出を思い返す。…………。

 

「変態」

「くうっ……!」

「ねえねえカズマさん、私は私は?」

 

いつものようにくねくねと興奮しだすダクネスを尻目に、アクアも身を乗り出して同じことを聞いてくる。

俺は迷わず、一言。

 

「ペット」

「なんでよー!!」

 

掴みかかってくるアクアを避けつつ。このやり取りも何度目かと、俺はいつもと変わらない日常にどこか楽しさを覚えてしまうのだった──




ちょっと長めの後書きになります。
お久しぶりです。2年半ほど空いてしまいましたが、カズアイSSを書いてみました。カズアイというよりいつものカズマさんパーティーの話になってしまった気がしますが…w もし次に何か書くとしたら王城の魔王討伐記念パーティーの話になるかと思いますが、本格的なカズアイはそこでということで…()
ただ、そろそろ原作者の暁先生が後日談を出してきそうな気がしますね。もしそうなったら、私の方からは出さないでおこうと思います。高確率で内容が被るでしょうから…。その場合は、また別のものを書くと思います。後日談の内容を元にインスピ(とモチベ)が湧くと思いますので…。個人的には、当方受験生のため3月以降に出てくれると有難いんですが…w
では、長くなりましたがこれにて。またそのうち。
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