この素晴らしい小説に続編を!   作:Nail Clipper

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6部6話

ああ、平和だ。

 

なんて平和な日々なんだ…俺はもう何もする必要がない。屋敷もある。お金もある。平和もある。美女が3人も一つ屋根の下で暮らしている。俺はこの世界に来て本当に良かった…

 

 

 そう思いたかった

 

あのロリガキは馬鹿なのか?本当に何考えてるんだ?

 

めぐみんが爆裂散歩から帰ってこない。早朝に出かけてからもう半日は経った。もうすでに太陽は西に傾いている。

 

俺の予想はこうだ。めぐみんはレベルが上がって爆裂魔法の威力が上がった事に気付いていない。そんなめぐみんが魔力を使い果たして動けないのだ。

 

今は俺達3人で捜索隊を要請し、めぐみんがいそうなところをくまなく捜索しているところだ。俺達は岩場を回ったり、草っ原を回ったり、ベルディアのいた城を回ったりした。

 

「あいつ。マジでふざけんな!!馬鹿だあいつ!!なんでそんな事にも気づかない?あいつは欲に忠実な思春期の男か?マジでふざけんな!!」

 俺は怒りと焦りが限界に達している。アクアとダクネスは飛び上がる。

 

「お、おい。そんなに叫ぶな。気持ちはわかるがそんなに怒るな。」

 ダクネスも少しうんざりしているのがわかる。

 

「あのやろう!!見つけたら剥いてやる!なんであいつのためにここまでしなきゃいけないんだ!!」

 温厚な俺でも今回はイライラが募る。少なくとも行くなら場所くらい伝えとけっつんだ。あいつは欲に忠実なただの馬鹿だ。

 

「まぁ、気持ちはわからんでもない…私だって今日は暇じゃないんだ」

 

「まぁ今は見つけてあげるのが優先よね?早く見つけてから怒りましょう?」

 今日のアクアは少し女神らしい。そんなアクアを見て一旦は冷静さを取り戻し、捜索を続ける。

 だか100人規模の捜索を行なってもめぐみんはなかなか見つからない。どうしたのだろう?もっと遠くに撃ちに行ったのか?俺達はもう少し歩き、少し離れた場所に岩場を見つけたので、そこを探してみる事にした。また俺の怒りメーターはぐんぐんと上がってくる。

 

「あぁぁぁぁ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 だんだん怒りが漏れてくる俺を気遣う二人のためにも怒りは抑えるべきなのだろうが…少し落ち着こう。二人と話して気を紛らわせるか。いつもなら話していてストレスが溜まる奴らだが、今は二人が精神の支えのようなものだ。

 

「なぁダクネス」

 

「は、はひっ………!」

ダクネスはビクッとして変な声を出した。

 

「まぁ落ち着け、今の俺は全然怒ってない。ただ落ち着くために話しかけただけだ」

ああ、だめだ。顔の筋肉の緊張が解けない。どうしよう…

 

「わ、わかった…」

 

「今日したかった事って何?」

 俺は普通に聞いたつもりだった。しかしダクネスはかなり驚いた様子で、俺の事をちらちら見ながら、

「そ、それは…プライバシーだ」

と言った。アクアも睨んでくるし、今は聞かない方がいいのだろう。

 

 結局この岩場にもめぐみんの姿はなかった。

 

俺達はさらに奥に進む、もう三時は回っているだろう。あいつお腹空いてるだろうな…朝ご飯の前に出て行ったし、今日は何も食べていないはずだ。少しだけ心配にもなってくる。

 

「なぁ、アクア。今日はお前は暇なのか?」

 

「そうね…今日やるべき事は朝のうちに済ませて来たし…特にないわね…」

 アクアは朝にゼル帝をバニルの店に迎えに行ったくらいしかやってないな。そもそもこいつに予定なんてあるわけないか。

 

 

 

またしばらく歩く。

 

途中でダクネスの顔色が悪くなってきた。

「どうしたダクネス、トイレならあっちの草むらでしてこいよ」

 

「違う!!少し嫌な想像をしてしまってな…」

 

「嫌な想像って何よ?」

 

「あのな?めぐみんはモンスターに向かって魔法を撃つのが好きだろう?そしたら、撃ち漏らしたモンスターの群れに喰われて…」

 

「「あああああああああああああ……!!」」

 

「変な想像をさせた悪かった。あくまで最悪の場合だ。多分そんな事はない…たぶん…」

俺もアクアもダクネスのように青白い顔になってしまった…本当にどうしよう…もしあいつが喰われていたら…想像したくない!!エリス様…俺とめぐみんに幸福を…吐き気がしてきた。それはアクアも同じらしい。

 

「どうしよう…本当にめぐみんが喰われていたら…アクアも喰われてたら蘇生できないだろう?」

 

「多分無理よ………まぁ体の大部分が残ってたらできるだろうけど、……」

 

「あああああああああ……!!言うな、想像もしたくない!!!!やめろ!! そうだ!俺も死んで先回りして待っていよう!エリス様に頼んで体を作り直してもらおう!!ダクネス!その剣で俺の首を跳ねろ!」

 

「そんな事はできるわけないだろ!私は嫌だ!!」

 

「つべこべ言うな!!早くしろ!!」

 

「お、落ち着いてカズマ!!それに体は作ってもらえないと思うわ。今までで体を作ってもらえたのはカズマだけよ?」

 

「じゃあ俺が天界にテレポートしてめぐみんをこの世に連れて帰ってくる!」

 

「そしたらめぐみんはアンデッドになっちゃうわよ?」

 

「めぐみんのアンデッドならいいだろ?人形にでも取り憑かせて…」

 

「だめよ?私たちの屋敷には結界が張ってあるから、霊は入れないわよ?」

 

「じゃあいっそ俺が魔王になってこの国を滅ぼして…」

 

「おい、落ち着けカズマ!言動がおかしいぞ?今はまずめぐみんを探すのが最善だろう?」

 それもそうだな…俺たちは必死になって探した。3人とも声が枯れるまで叫び、アクアに何度も喉にヒールをかけてもらった。

 

 

 

それでもめぐみんは見つからなかった。夕方になり、空も暗くなり始めた。全員の顔からも焦りが読み取れる。

 

「また明日にしよう、このままでは私たちまで遭難しかねない。」

 ダクネスの声が震えている。

「嫌だ、俺は見つけるまで帰らない、見つけ出してからなず文句を言ってやる…」

 

「気持ちはわかるけど、ミイラ取りがミイラになるって言うでしょ?また明日にしましょう?」

 

 散々言い争った挙句、俺が折れる形で捜索を切り上げた。捜索隊には夜の間も働いてもらう。今はお金なんてどうでもいい…

 

俺たちはとぼとぼと家に向かった。誰も一言も喋らない。ただ地面を見て歩いていた。

 長い、長い帰り道。屋敷が遠くに見える頃には、もう太陽はほとんど沈み、空はめぐみんの目のような深い赤に染まっていた。

 

 

俺たちは屋敷のドアを開けて中に入った。

 

 

 

「遅かったですね。どうしたんですか?」

 さっきの空の色のような目をしためぐみんが、エプロンを付けて玄関に顔を出した。

 

 

 

「「「めぐみんてめぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」

 俺たち3人は喉が枯れていることも忘れて叫んでしまった。

 

「うわぁ!いきなりどうしたんですか?」

 

「どうしたもこうしたも、お前が爆裂散歩から帰ってこなかったから心配で捜索隊も派遣して探しに行ってたんだよ!!なんでお前が家にいるんだよ!!ふざけんな!!どこに撃ちに行くかくらいは伝えとけっつうんだよ!!」

 

「そうよ!!私たちすっごく心配したんだから!!何時間歩いたと思ってるの?」

 

「私だって今日はやりたい事があったのに!!勝手な行動して、なんのつもりだ!!」

 

次々に不満をぶつけられためぐみんは、気まずそうな顔をしながら、

「あ、あの…私が何も言わないで出て行ったのは謝ります…」

と、申し訳なさそうに言った。でも俺の怒りは簡単には収まらない。

 

「じゃあ昼も帰ってこないで何やってだんだよ?少なくとも何時に帰るかくらいは置き手紙でもしとけってんだ!!」

 

「ごめんなさい…でも…今日はやりたい事が…」

 

「お前もダクネスもやりたい事ってなんなんだよ?」

 

「カズマ?今日が何日か知ってますか?」

今日は…2月14日か…まさか?

 

「この前カズマが教えてくれたじゃないですか。カズマ、バレンタインチョコですよ…」

めぐみんは、少し赤くなり、目を逸らしながら、俺に箱を渡してきた。俺の怒りメーターがスーっと下がってくるのを感じる。

「あ、ありがとう」

 

「まぁ義理チョコ以上本命未満ってとこですかね、でも手作りなので味は期待しないでください」

 俺の背後でダクネスとアクアも少し赤くなっていた。すると、アクアはいきなり階段を上り、しばらくして箱を持ってきながら降りてきた。

「実は私も作ってのよ?まぁこれはいつものお礼というか、友チョコみたいな感じかしらね」

 アクアが喜々として俺の胸に箱を押しつけてきた。

「ありがとう」

俺はニコッと二人に笑ったが、一人少ない。ダクネスが背後で小さくなりながら言った。

「わ、私は今日の昼に作る予定だったのに…」

泣きそうになりながらダクネスが言った。

 

「みんなありがとな」

 

 

俺はこの世界にこれて本当に良かった。

 

 

 

後日、ダクネスは大きめのチョコレートを渡してくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すいません、私情で1ヶ月ほど休ませてください。





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