少女さとり 〜 Another Story of the Depths. 作:冥界寺吹雪
▼Iiwake!! 気付いたらにじファンが無くなってました。音速が遅いですね。それで、せめて完結してるこの作品だけでも移転しようと考えました。ですが4年前の作品という事もあり、読み返すと若干の眩暈を覚えたので、いっそリメイクを!といった次第です。万が一にも原作の移転希望があれば、そちらの移転も一応考えてはいますが・・・多分ないでしょう。あとタグの付け方誰か教えて下さい。
雨が降りしきっていた。滝のような雨が、コンクリートの黒を更に深めようと打ちつける。
真冬の夜。身に染みるような寒さの中、一人の男が暗い夜道をひたすらに走っていた。傘も差さずに鞄を頭に抱え、厚手の黒いコートを靡かせている。
すでにずぶ濡れの様子だったが、それに追い打ちをかけるように雨は一段と激しさをましていく。
「つー、参ったな」
男は青年らしい、まだ若い声で誰に言うでなく呟いた。
チカチカと点灯する街灯が、淡くコンクリートを照らす。白い機械的な光からは、一切の温もりを感じる事が出来ない。
男は恨めしそうに街頭を一瞬見ると、また雨を避けるように頭を下げる。
一台車が通り過ぎると、氷の中を駆け巡ってきたような冷たい風が、既にかじかんだ手や頬に針で貫いたような一撃を与えていく。
息も荒れてきたようで、吐き出される白い息の間隔が短い。
「止めばいいんだが……」
男は言うと、脇道にひっそりと構えるバス停へ逃げるように走り込む。
木造の古い屋根は、それでもしっかりと雨を防いでくれるようなので男はホッと一息をついた。
腕時計を見ると、針は午後9時半を指している。続いて時刻表に目をやると、今から最も早いバスが10時過ぎとなっている。
まだまだ時間はある。男はゆったりと塀に寄り掛かると腕を組み、時が過ぎるのを待つことにした。
屋根があるとはいえ、風は容赦なく男の身を襲う。水が滴るコートが余計に体温を奪い、かといって脱いだら脱いだで寒い。
「あら、あの子なんか丁度いいかもしれないわね」
不意にした女性の声に思わず振り向くが、そこにはバスの時刻表が佇むのみ。慌てて裏を確認するが、人の気配はなかった。
男は突如、頭が重くなる程の眠気に襲われた。瞼がまるで自分の器官でないかのに重く、徐々視界が薄れていく。
睡眠薬を飲んだような、明らかに不自然な睡魔。しかし、何が原因かを考える余裕を与える間もなく、瞼が閉じてゆく。
もはや抵抗する余地もなく、男は塀に持たれかかると、そのまま意識を失った。