刀使ノ巫女RTA 綾小路武芸学舎フリーエディットAny% 作:滑落車博士
折神家の庭に設置された試合会場と観客席。
そこは、いよいよ始まろうとしている決勝戦への期待で、静かな熱気に包まれていました。
「ーーーとうとう決勝戦だねぇ、舞衣ちゃん」
「あ、紅葉さん…!」
決勝戦が始まろうとする時刻。その直前になって、本多紅葉さんがやってきました。
「……準決勝、惜しかったねぇ」
「いえ…。可奈美ちゃんは強いですから」
苦笑しながら伝えると、紅葉さんはふにゃりと笑いました。彼女も初戦を突破したものの、私と同じく可奈美ちゃんに敗れています。…わざわざ他校の観戦席にまで様子を見にきたのは、その所為でしょうか?
「いやぁ、まさか舞衣ちゃんがここ一番で居合を見せるなんて思わなかったからねぇ。面白いものを見せてもらったなぁ、って」
「負けちゃいましたけど、ね」
「舞衣ちゃんはじゅーぶん強いんだからさぁ、もっと自信を持ったほうが良いよ? 相手が…衛藤可奈美ちゃん、だっけ? その子が強すぎただけだよぅ」
それは慰めなのか、純粋な評価なのか。
紅葉さんの眼は、正面の決勝戦の舞台に向けられています。
ーーー可奈美ちゃんの強さは、とても判りにくい強さです。美濃関の刀使でも、その強さが圧倒的である、ということを確信している子は少ない筈です。でも、紅葉さんは一度対戦しただけで、随分と深い所まで理解しているようでした。
「・・・いやはや、紅葉がこんなに他人を評価するなんて、ちょっと予想外でしたね。少し妬けてしまうかもしれません」
「貴女は…綾小路の?」
ひょこり、と紅葉さんの背後から、一人の女の子が顔を出します。たしか、第一試合に出場していた子です。
「あぁ、紹介が遅れちゃったねぇ。こちらは鈴本葉菜さん、あたしと同じ綾小路の代表で、クラスメイトだねぇ。そして、こちらが柳瀬舞衣さん。美濃関の代表さんだねぇ」
ぺこり、と挨拶をしたのは紅葉さんと同じ制服を着た女の子でした。サイドテールが印象的な、真面目そうな印象の子です。
「ーーー柳瀬さん、と言ったね。ひょっとして、あの柳瀬グループの?」
「舞衣ちゃんはねっ、すっごいお嬢さまなんだよっ」
「い、いえ。確かにお父様は柳瀬の総帥ですが……その、お嬢様と言われるのは、」
面と向かって「お嬢様」だなんて言われてしまうと、苦笑することしかできません。
柳瀬の家は、たしかに政財界にも影響力がありますし、十二分に裕福なのは理解していますが…だからといって知人からあからさまにお嬢様扱いをされても、どう反応していいか困ってしまいます。
「だってぇ、お家に執事さんとかいるんだよー。あたし、執事さんって舞衣ちゃんのとこで初めて見たもん」
……紅葉さんは、私のお父様の会社…柳瀬グループの関係で、幼いころからお付き合いのある本多家の娘です。傘下の企業の関係者、と聞かされています。
社交界というのでしょうか、そういった世界のパーティや会合でも何度か話したことがありました。
同じくらいの年齢で刀使になって伍箇伝に入る子も少ないので、パーティーの会場で出会うたびに共通の話題に花を咲かせたのを覚えています。
「…でも、そういう所に出入りするってことは、紅葉もそれなりのお嬢様なんだね」
「うんにゃ? お父さんの会社の色々で、無理矢理引っ張り出されるだけだよ? 似合わないドレスを着させられて、知らない人に挨拶したりされたりするだけだもん。別に楽しくもなんとも無いからねぇ」
「いえ、普段の様子からは全然そんな風には見えなかったもので。意外だな、というのが正直な感想です」
「むぅ…。そりゃ、あたしはお嬢様って柄じゃないけどさぁ…」
鈴本さんのどこか揶揄うような口調に、紅葉さんはむくれて目を逸してしまいます。クラスメイトとおっしゃってましたし、きっと気のおけない間柄なのでしょう。
「ほ、ほらっ! そろそろ試合も始まるみたいだよっ!」
露骨に話題を逸らすような紅葉さんに、私と鈴本さんは顔を見合わせてクスクスと笑いました。
彼女の言葉の通り、決勝戦に進んだ可奈美ちゃんと、対戦相手である平城学館の十条さんが会場中央に歩みを進めます。
私は、その姿を見て、胸の中で応援します。
(可奈美ちゃん、頑張って…っ!)
ーーーーー
急転直下のジェットコースターな展開が続くRTA、はっじまーるよーー!
さて、いよいよ序盤終了のお知らせ、折神紫暗札未遂事件の瞬間がやってまいりました! 今回でアニメ第一話の範囲が終了することになります……改めて、あの第一話は内容が山盛りの濃い三十分間だったんだなぁ…と思いますね。
キャラクターオリエンテッドな萌えアニメだと思っていた初見さんを若干ゃ置いてけぼりにする展開の速さなのですが、見返すと無駄なシーンが殆どないという第一話になっております。動画配信サイトでも第一話は無料配信されてますので、みんなも見よう、刀使ノ巫女!(ダイレクトマーケティング)
今回、姫和さんが三段階迅移による『一の太刀』で、折神家当主である折神紫を(正面から)暗札しかけるイベントが発生します。
ここで事件を手助けする方向で動いた場合、可奈美ちゃん姫和さんと共に逃亡することになり、鎌倉から東京のスカイツリー周辺へ、更にそこから原宿と明治神宮、立川駅を経て最終的に伊豆は石廊崎へとダイナミック逃避行することになります。シーン移動にかかる時間がもったいないので、お二人には自力で現場から脱出をしてもらいます。シーン数と長さの割に、プレイヤーにはあまり経験値が入らないのも美味しくありません。
ここでは、プレイヤーが積極的にテコ入れををしない限り、姫和さんが試合開始と同時に暗札を決行し、そして失敗するのが基本路線です。
このタイミングで折神紫もといタギツヒメ暗札を成功させることも可能だという噂もありますが…。…私では何度挑戦してもできなかったので、安定ルートを進みます。そちらのルート開拓は他の走者さんに託します。
決勝戦が始まる前に舞衣ちゃんの所に行き、会話進めつつ時間を潰します。なぜか葉菜ちゃんが同行してますが問題はないでしょう。複数人での会話イベントは一度の会話で双方の好感度が上昇するのでうま味です。ヤンデレや依存といった関係性を所持していない限り、基本的には一石二鳥です。
さて、舞衣さんの好感度を一定値以上稼いでおくと、このあとの捜索イベントに一緒に同行することができます。すると逃走中の二人を発見時に『折神紫=大荒魂』という情報が入手できますので、その後の舞草へ加入するための布石に繋がります。キャラクリ時の詳細設定により既に面識設定があるので、次のシーンで同行するのは問題なく行えるでしょう。
試合開始の合図と同時に、姫和さんが消えた(ように見える)瞬間から動き始めます。
ホモちゃんの立っている観客席側からでは、折神紫が虚空から二刀を取り出したところも、その背後に大荒魂が存在することも視認することは基本的に不可能です。
明眼スキルをレベル3まで上げておくか更に上位スキルの浄眼を所持していれば感知できるらしいですが、そこまでピーキーな尖らせ方をすると戦闘能力が不足し、たとえ感知できてもクソザコナメクジになって役に立たないので一連の凶行に関与できません。
なーのーでー、ホモちゃん自身は何も理解していないままですが、メタ知識を利用して後々への仕込みを行います。
「な、何? 消えた…?」
「可奈美ちゃん…?」
おっそうだな(適当)
ここでは誰かに話しかけることによりフラグが立ち、ホモちゃんは暗札未遂事件が発生したのだと気づくことができます。建物内での凶行は殆ど見えていない筈なのですが、これで会場警備が厳しくなる前に動き始めることが可能です。
ここで『迅移を使う』『御刀を抜く』『会場から出ようとする』等の行動を取ると、怪しい行動、不審な行動と見なされ、事件の共犯者と疑われてしまいます。アプリ版で警備隊に追いかけられた安桜美炎ちゃんと同じ状態ですね。タイムを縮めたいばかりに迅移で移動すると、不審者と間違われて斬られます。疑われるような行動は慎みましょう。(8敗)
さて、BGMが完全に切り替わったのを確認したら、脇目も振らずに走りだします。
ここでの移動で、前々回に取得しておいた技能『暗札剣』が活躍します。
この『暗札剣』という技能は斬撃速度上昇の他に、所持していると『非戦闘状態かつ正対していないキャラクターに対し、固有モーションで超短距離ダッシュする』というアクションを使うことができるようになります。油断してる相手に急接近して辻斬りをするようなイメージですね。これを括用して移動します。
この固有接近モーションは敏捷値ではなく攻勢値を参照しているので、攻勢をガン上げしているホモちゃんが使うと極めて極短距離ですが速度が出ます。移動スキルではなく攻撃スキル扱いなんですね。
迅移による高速移動が封じられた今回の状況だと『通常ダッシュ→適当な位置のモブに対して暗札モーションで接近→居合の構えキャンセル→ダッシュ再開→』…を繰り返すと通常ダッシュの約1.3倍ほどの速度で走れます。
うっかり移動モーションから派生斬りに繋げてしまうと現行犯タイーホされてしまいますので(18敗)、しっかり居合の構えをとって即キャンセルします。御刀は抜いていないので問題ありません。セウトです。『抜刀術』を取っておくと、この『居合構えキャンセル』で面白い動きがいくつか可能です。
閑話休題。ホモちゃんの全力ダッシュで移動しましょう(コッチジャッ!)(ユクゾッ!)
向かう先は平城学館の観客席、岩倉さんの所です。彼女は突然の事態に酷く混乱しているので、ここは会話することで落ち着かせましょう。
だいじょーぶ、だいじょーぶだよー…。落ち着いて……落ち着けッ!
なんで岩倉さんの所に移動したのかといいますと、彼女は姫和さんの若さ故の過ち()によって、このあと共犯者ではないかと疑われてしまうからです。親衛隊による取り調べ中は、接触が制限されてしまうので交流することができません。
ですが、ここでホモちゃんが最速で移動し会話することによって、事件直後に何も不審な行動をとっていない、というアリバイを立証できるため、推定無罪であるというケツ論が早期に出されて拘束から開放することができます。
……。
……? 岩倉さんが落ち着くまでに必要な会話数が、何故か通常よりも多かったですね…。
岩倉さんの表情グラが最後まで『不安』のままでしたし…ままええやろ。
ここまで進めると、時間経過で会場警備が次のフェーズに移行します。出入り口が完全封鎖され、駆け付けた隊員によって警備が厳重になります。
この段階になると、これ以上の自由行動ができなくなりますので、さっさとセーブして次に進みましょう。
短いですが、今回はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
ーーーーーーー
「ーーー柳瀬舞衣はおそらく何も知らないな」
「岩倉早苗も同じでしたわ」
折神屋敷の廊下、親衛隊の獅童真希と此花寿々花は、簡単な事情聴取を終えて嘆息していた。
十条姫和による突然の凶行と、衛藤可奈美による逃走幇助。
親衛隊として会場警備にあたっていた二人にとって、それを未然に防げず、あまつさえ逃走を許したのは大きな失態だった。
身の至らなさを悔やむ気持ちもある。だが、まずは反省よりも先に、打てる手を打つしかなかった。
「柳瀬舞衣は、衛藤可奈美と友人関係…だが、この襲撃が計画的なものであったとしても、関与している可能性は低い、か」
「岩倉早苗も、事件発生直後に身柄を確保されてから、不審な動きを見せてはいませんわね。今のところは、共犯者と疑うに足る証拠もありませんし…」
十条姫和による突然の凶行に際して、会場内で大きな動きが二つあった。一つは、一部の混乱した生徒による会場の脱走。こちらは警備隊及び親衛隊による追跡、捕縛が実施されている。事情聴取はこのあとにも行われることになるだろう。
そして、もう一つ。
「ーーー寿々花は、随分と優秀な後輩を持ったものだね」
「本多さんのことですの? ーーーええ、まさか彼女が動くとは思いませんでしたけれど、お陰で平城学館の観客席から動いた生徒は居なかった、と伺ってますわ」
綾小路の代表選手であった本多紅葉による、平城学館の生徒への威圧行為である。
事件発生当時、真希と寿々花は折神紫の下に急行した。結果として下手人を取り逃がすことにはなったが、紫の安全を確保するのが最優先だった為だ。
しかし、会場内は一時騒然とした。
当主を狙った凶行などという前代未聞の事態が発生するなど、誰も想像していなかった。即座にそれが緊急事態だと判った人間など、警備にあたっていた隊員ですら半分もいなかったのである。時間にして一分ほどの間隙ではあるが、誰もが混乱し、その動きを止めていた。
だが、本多紅葉は走っていた。
警備隊員が体制を整えるよりも早く、場内アナウンスが流れるよりも早く。紅葉は単身で平城学館の観客席に乗り込み、そして最前列にいた岩倉早苗を確保したのである。
『ーーー動かないでね?』
『あの、大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて?』
『えっと、急いでるの、だから、言うことを聞いて』
『だから、落ち着いて……落ち着けッ!』
斬られるかと思った…とは、平城学館の複数の生徒の談である。御刀を鞘に納めてはいたが、それでも次の瞬間に斬られるのではないかと錯覚した、と。
突然、疾風のように走ってきて、岩倉さんはどこ!?と、鋭い剣幕で尋ね、彼女の姿を捉えるが早いか確保し、『ここから動かないで』『落ち着いて』と、据わった目で繰り返すばかりだったという。
曰くーーーまるで辻斬りのような恐ろしい剣気だった、と。
「ーーーただの学生としては越権行為なのしょうけれど、結果として平城学館の観客席からは誰一人として席を離れませんでしたし…。…それに、十条姫和の共犯者として最も疑わしいのは、同じ学校の代表選手であった岩倉早苗であることも事実ですわ」
「だが、反応がいくら何でも早すぎる。鎌府の警備隊員も事態を十全に掴めていなかったんだぞ? 彼女が…本多紅葉が共犯だという線は?」
真希の反駁に、寿々花はそうですわね、と髪の毛を手で玩びながら考える。
「この事件が何らかの集団による計画で…十条姫和と衛藤可奈美が実行犯だとして。計画の失敗を察した共犯者が取る行動は……二人の逃走の手助けをする、というのが一つ。あるいは、二人が逃げたのを確認した後、別口で暗殺を試みる可能性が一つ」
そして、
「ーーーもしくは、計画の失敗を悟って、保身の為に仲間を売る、という可能性もあるかもしれませんわね?」
「それで」
「可能性は低いと思いますわ」
寿々花は、もし彼女を擁護しているように聞こえたら御免なさいね? と断りを入れて。
「綾小路の後輩だから、と肩を持つ心算はありませんけれど、あの子の性格は悪巧みに全く向いていませんもの。良く言えば素直で真っ直ぐな一本気、悪く言えば思い込んだら頑固で不器用。ついでに言えば、嘘や腹芸も得意ではありませんわね」
「随分と詳しいね?」
「ーーー去年と一昨年、綾小路の代表選抜戦で腕を競った仲ですの。それ以上の説明が必要かしら」
「なるほど、可愛い後輩という訳か。寿々花の見立ては信用に値するけれど・・・無条件に信じる訳にはいかないからね。本多紅葉の事情聴取は、ボクがしよう。それでいいかい?」
「ええ、ではそのように」
二人は話を終えると、それぞれに歩みだす。
ここからは時間が勝負だ。
人の口に戸は立てられない。会場内に居た人間の出入りを禁止し、箝口令を敷き、情報を統制し…それも、確保できるのは、二三日といったところだろう。
一刻も早く、容疑者である二名を見つけ、捕まえなくてはいけない。折神家親衛隊の矜持をかけて、二人は動き出すのだった。