《【フェムト】さん! 発進準備、出来てますか?》
通信経由で私の名前が今いるコックピットの中に響き渡る。
私の名前はフェムト。
とある事情で皇神グループに所属している電流を操る能力者。
今は新型戦車の試運転を行おうとOS起動等の準備に追われていた。
この戦車は私専用の物で、私の足りない能力を補う為に創られた専用の有人戦車。
この話を開発部署に持ち掛けて提案した際「昔とは違い、AI制御の無人戦車が主流な今の世の中では、珍しい試みだ」と言う理由で、この戦車は生まれる事となった。
「もう少し待ってください!
《了解です! 上手く完全起動させてくださいよ! そうじゃなきゃ俺達の苦労が台無しになってしまいますからね!》
管制官と通信による連絡をしつつ、全システムがオールグリーンである事を確認した私はこの戦車を能力の支配下に置くと言う最後の工程に取り掛かり、能力を用いて……いや、
この戦車に流れる電流を経由し、動力源を始めとした戦車を構成する全てを掌握していく。
優しく繊細に、そして全てを包み込む様に。
そして無事に私の自慢の
「能力による掌握、完了しました。これより、本格的な試験運用に入ります!」
《了解です。では、今から指定した動きをお願いします》
私はこの戦車を能力を用いて操縦する。
その動きは私と管制官の考えうる想定通りの予定調和な動きであった。
そして次に、私の能力を用いて動力源の出力を引き上げ更なる機動を試みる。
その動きは私も含め、この場に居る全ての人達も驚くくらい凄まじい物であった。
少なくとも現時点の主力無人戦車【マンティス】では到底出来ない動きだ。
その後も順調に試運転は進んで終わりに差し掛かろうとした時、
私と同じ施設で生まれ、私以上の能力を持った人物がテロリストとして表れたと言う連絡を。
第一話
話はまだ私がとある研究施設に居た頃まで遡る。
この施設では何やら怪しげな実験が現在進行形で行われていた。
そこで私に関わる研究の担当している研究員はその研究における計画の名前を何処か忌々しそうに口から
その計画の名前は【プロジェクト・ガンヴォルト】。
私の前に居る研究員が言う事を要約すると人間発電機を作る計画なのだと言う。
何故そんな計画が立ち上がったのかは分からない。
ただ分かるのは私がこの計画の失敗作である事と、本計画の別の可能性を模索せよと言う名目で追い出された研究員が目の前に居る事だけ。
彼は追い出された事を酷く悔しがっており、今もこの専用の個室に響き渡るように怒鳴り声をあげていた。
「糞! あいつらめ! 適当な理由を吹っかけて俺の事を計画から外しやがって! ふざけるな! 俺がどれだけ、この計画に力を注ぎ込んだと思ってやがる!!」
普通ならこの怒りの矛先が私に向かうと想像するだろう。
だが、この研究員は私を責める事はしなかった。
元々彼は私を含めこの計画の被検体達を大切に扱おうと主張していた人物だ。
既に記録が抹消されている事実なのだが、過去にとある非道な実験をその被検体に施し続けた結果、その被検体が持つ能力が暴走し、研究施設ごと消滅したと言う
研究員はどういう訳かこの事実を知っていた。
だから被検体達のメンタルケアは最重要であり、大切にするべきだと主張していたのだ。
しかし、そんな彼に対して不満を持つ者も多かった。
何故ならば、それが理由で研究が予定よりも大幅に遅れていたからだ。
だからそんな事等考えず、被検体達をもっと酷使するべきだと考えていた研究員達から彼は爪弾きにされた。
皮肉にも、彼が主導で行われた能力の移植実験の被検体であった私を押し付けると言う形で。
そんな研究員である彼に、私は恐る恐る声をかけた。
「あ、あの……」
「……ああ、騒がしくしてしまって済まねぇな、フェムト。これは元々、俺があいつらと気が合わなかった事が原因だからな。お前が気にする事じゃあないさ」
彼は私の青がかったブロンドの長髪に、指を絡めるように撫でながら答えた。
フェムト。
彼が付けてくれた私の名前。
この名前の由来は彼は私を初めて見た時、その余りの背丈の小ささに驚いてこの名前を付けたのだと言う。
小さな背丈にブロンドの長髪。
私自身が言うのもアレなのだが、見事に外見だけならば幼女と称されてもおかしくは無かった。
そんな私だが、ある特徴を持っている。
成功例である被検体を参考にこの計画の要とも言える電子を操る能力、【
これを誰でも扱えるようにゲノム編集を行うが如く弄り回した数多くのモノの一つを移植し、奇跡の様な確率で成功した存在……それが私だった。
しかし、能力因子を弄り回したのが理由なのか、能力の持続力は成功例の被検体の物と変わらなかったが、致命的に出力が足りなかった。
具体的に言うと、無から雷撃を生成する量が圧倒的に足りなかったのだ。
どの位その差があるのかは不明だが、圧倒的等と表現されている以上、その差は絶対と呼べるほどの物なのだろう。
そんな私に対して、彼以外の研究員達が
出来損ないの【リトルパルサー】と。
だからこの能力移植の失敗例を理由に彼は、本研究であるプロジェクト・ガンヴォルトから外されたのだ。
「でも、私のせいで【ニコラ】は研究から外されて……」
ニコラは私の目の前に居る研究員の名前。
見た目は細身で、黒色の短髪。
研究員である事から、白衣を身に纏っている。
どこか大雑把な性格をしているが、私を始めとした被検体達を大切にしようと考えている所から、何所か優しい部分もあるのは間違いない。
そんな彼が、私のせいでこんな事になってしまったのだ。
私は、そんな彼の事を気に病んでいた。
「ふぅ……。フェムト、俺は気にするなと言ったぞ。それにな、もうここまで来ちまったら俺一人じゃどうしようもねぇ。それよりも、もっと建設的な事を考えるべきだ」
「建設的?」
「ああ、そうだ。奴らも言っていただろう? 本計画の別の可能性を模索せよってな。……なあフェムト。前まで俺も研究していた蒼き雷霆は、無限の可能性があるなんて言われてるんだ。電子を操る能力。それが理由でな。だから、俺はお前を通じてその可能性を模索しようと思っている」
「可能性? 失敗作って言われた私に、その様な物があるのですか?」
私は失敗作だ。
私が成功していれば、ニコラは計画から外される事は無かった。
だから私に可能性があるなんて、とても思えない。
そんな心の中を見透かすかのように、ニコラは私に話しかける。
「あるに決まってんだろ。
「……」
あの移植実験が終わってから、妙に頭がすっきりしていた事に私は気が付いた。
これまで良く分かっていなかった言葉の内容や意味が、まるで手を取るように把握出来たのだ。
これまで失敗作と呼ばれ続けていた事が理由で、私はこの事を把握出来ていなかった。
「ほら、そうやって押し黙る所とか、まんま大人だろうが。普通なら「そんな事ないもん!」だなんてダダをこねるのが子供の相場なんだぜ? それに、何であれ能力移植その物は成功したんだ。もっと胸を張れよ。元々成功率が低いあの計画の移植実験の成功例はまだ三……いや、二人しかいないんだからよ」
「……はい! ありがとう、ニコラ!」
「どういたしましてだ。……ふぅ、やっと元気になったな。じゃあ早速だが始めるぞ」
「え? 始めるって、何をですか?」
私はニコラの突然の開始宣言に、オウム返しをするように尋ねる事しか出来なかった。
が、この後直ぐに、彼が何を始めるのかを把握する。
ニコラは研究員だ。
ならば、やる事は一つしか無い。
「決まってるだろ? 研究さ!」
そう、今はまだ被検体である私がこの世界に対して示せる可能性の研究が今、始まった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇現地オリ主であるフェムトについて
ガンヴォルトがOVAでも大人顔負けに冷静で知性的な理由の一つに蒼き雷霆の能力移植によって脳を流れる電気が活性化した事を理由にでっち上げ、それをフェムトにも適応させた結果冒頭から相応の知性を獲得させました。
名前の元ネタはナノやマイクロ等で使われる単位。
見た目は青がかった、腰の高さまで届く程の金色の長髪で、同年代と比べ身長が小さい。
性別は男。
じゃあ何故女と間違わせるような長髪設定にしたのかと言えば、オリ主は腐っても雷撃能力者である為、髪の性質もガンヴォルトと同じと設定しているからです。
後にテールプラグめいた、余剰電力の蓄積機能を持った髪留めも用意される予定です。
声のイメージは鋼の錬金術師に登場するアルフォンス・エルリック。