第十三話 〇〇〇〇〇
サイドストーリー |
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いつかの未来、どこかの島国。
暴走した管理AIを打倒し、平和となった世界。
オレは【白き鋼鉄のイクス】、或いは英雄などと人々から呼ばれている。
そして、そんなオレとの永きパートナーで居てくれる希望の歌姫と人々から呼ばれ、愛されている【
オレ達は平和を掴み取ったその旅の過程で仲間となった少女【コハク】とその仲間達と共に、日々研究をしながら穏やかに過ごしていた。
その最中、突然現れた謎のライフル型情報端末であるキーライフルの導きによってオレ達は異世界へと飛ばされる事となる。
そこは【ワーカー】と呼ばれる機械生命体のロボット達が暮らす、砂漠の異世界。
一緒に飛ばされてしまったロロとコハク、そしてこの世界で出会った【使命】を持たないワーカーの少女【ヌル】と共に元の世界へと戻るべく、あらゆる知識が収められていると言う塔【グレイヴピラー】へと挑む事となる。
そこでは色々とあったが使命に縛られ暴走していたこの世界の管理AI【マザー】を開放し、魂だけの存在となったオレの並行同位体である【創造主】と共にこの世界から姿を消し、この世界は正しくワーカー達の物となった。
その後、同行していたヌルも含めた皆と共に帰還を果たす。
そうして再びオレは趣味である研究に打ち込む日々へと戻った。
「ふぅ……漸く【ブレイクシフト】の最適化に一段落ついたか」
『お疲れ様、【アキュラくん】。そういえばブレイクシフトの時のアキュラくん、最初の時動きづらそうだったよね。そのせいもあってグレイブピラーまで強行突破した時もかなり消耗しちゃってたし』
「あの時は直ぐにでも元の世界に戻らなければならなかったからな。最適化、実働テスト、各新機能の習熟を必要最低限で済ませていたのもあった」
『今まであった【
「そうだな。だがその最適化も少し前に一段落付いた。
『【アバランチソード】に【テイルバンカー】、【ラストドップラー】に【ミリオンイーター】……なんだか懐かしい感じがするよ。あ、そういえば
「アレ? あぁ、【グリードスナッチャー】の事か」
『そうそう! 昔のアキュラくんにとっては嫌な思い出のあるEXウェポンかもしれないけどね』
グリードスナッチャー。
【
「時間もあったからな。一応【ディバイド】で撃てるようにはしてある。製造コストも昔は高くついたが、異世界の技術に触れた今のオレならば、もうコストの問題も解決済みだ」
だが作られた当時は兎も角、今はもうあれから百年以上は経過している。
ならば当然今の時代、その対策も取られている。
「だが昔コイツで痛手を負ったアシモフ、いや【デマーゼル】によって対策装備が標準化している。今ではもう、過去の遺物の骨董品と言う側面しか持たない物に成り下がってしまった」
『う~ん。正しく、諸行無常だねぇ~』
「だが平和になった今ならば、それでいいのだろうとオレは思う」
昔はこんな事があったと、コイツが改めて装備されたディバイドを見て、ふと思い出して感傷に浸る。
それだけの使い道に成り下がってしまうと言うのも、悪い事では無いだろう。
それに今のオレの武装は【ブレイクホイール】。
ディバイドはもう予備兵装、或いはお守り代わりとして念のため装備する程度の重要度しかないが、同時に百年以上オレを支えてくれたモノでもある。
手放すには惜しいと思う感情も、今のオレにもまだ残っている。
「あ、いたいた! アキュラくん、ロロちゃん!」
「こんにちは、アキュラさん、ロロさん」
「あぁ、コハクにヌルか」
『そういえばアキュラくん、そろそろヌルちゃんのメンテナンスをする時間だったよね』
「そうだな。そろそろ始めるとしよう」
「はい。不束者ですが、よろしくお願いします」
『ヌルちゃん、それはちょっと言葉の意味が違うような……』
ロロよりもチェック箇所は多いが、ヌルのメンテナンスは向こうで既に何度も行っている為、その工程はスムーズに進める事が可能だ。
…………各部チェック再確認。
よし、こんなものだろう。
最後にロロから【ABドライブ】の電気を送れば終わりだ。
この工程は本当は必要無い物だが、ヌルはこの電気を気に入っているからな。
「はわわぁ~~♪ やっぱり、アキュラさんのメンテナンス後のロロさんの電気は格別ですね~♪」
「ロロちゃんの電気って、ヌルちゃんもそうだけど向こうのワーカーさん達にも評判良かったよね。なんでだろう?」
「ワーカーの嗜好について詳しい訳では無いからハッキリとは言えないが、恐らくABドライブで作られた電気だからだろうな」
『昔ではこの電気の事、EPなんて呼ばれてたよね』
「正式名称、【
「EPに蒼き雷霆……また私の知らないこの世界の単語が出てきました~」
「大丈夫だよヌルちゃん、あの時みたいにまた私と勉強しようね」
「はい! その時はよろしくお願いします~」
そんな風にオレたちが雑談をしていると、突然机の上に置いてあったブレイクホイールが輝きだした。
この光……いつぞやの異世界に飛ばされた時に近い感じの物……!
また別の世界に飛ばされてしまうのかとオレ達は身構えていたが、光は徐々に落ち着きを取り戻し、光輝いた以外特に何かしらの現象を起こす事無く収まった。
「……ヌル、コハク。オレは今から何が起きてもいい様に準備を整えてからブレイクホイールを調べる。その間はこの部屋からは離れていてくれ」
「またあの時みたいに異世界に飛ばされちゃうかも……って事?」
「そう言う事だ。ロロはオレから離れるなよ。調べている最中にロロが居ない状態で飛ばされたらオレが出来る事は相当限られてしまうからな」
『了解。アキュラくんはぼくが居ないとダメな体になっちゃってるもんねぇ~♪』
「はわわ……これが噂に聞く、比翼連理と言うモノなのですね……!」
「……ヌル、そんな言葉を何所で覚えた」
コハクとヌルはオレの居る部屋からは離れて貰い、準備を整えてから作業に取り掛かった。
このブレイクホイール、当たり前の様に武器として使っているが一部では今のオレでも解析できないブラックボックスが存在している。
なので慎重に調べを進める。
そうして調べている内に、オレが把握出来ている記憶領域になにやら座標らしき数字を発見することが出来た。
その数字の桁が余りにも多い事から、これは別の異世界の座標を指していると予測。
だが、この数字の最後の部分に妙な引っ掛かりを感じた。
俺は作業の手を止め、その理由を考える。
(この数字は……どこか
結局この座標を示した数字以外、変化した所は発見する事は出来なかった。
作業場でブレイクホイールを動作させてみても異常は無かった。
……この数字の意味を調べるのならば、もう残された手段は一つしか無いだろう。
その手段とは、この座標にブレイクホイールの力で飛ぶ事。
異世界へと飛ぶ機能は今でも健在で一度異世界から帰還した後、再度向こうの異世界へと足を運ぶ事が実証実験も兼ねて何度かあった。
よって、飛ぶ事その物と帰りの足は問題無い。
それに今回は前回の時とは違って事前準備も整えて、しかもオレが制御した状態での転移だ。
仮に敵対する何かと出合っても、最悪この世界へ撤退する事も出来る。
なのでオレはこの座標に示された世界へと向かう事を決定。
そしてコハクとヌル、そしてコハクの姉に事情を説明し、挨拶を済ませる。
BREAK OUT
「アキュラくん、ロロちゃん……」
『心配しないでよコハクちゃん。前の時とは全然状況が違うからね』
「何かあったら、直ぐに戻ってきてくださいね」
「ああ」
「そして、何か助けが必要になったら私達に頼ってくれ、イクス。お前達が飛ばされた時、私は何も出来なかったからな」
「……そうだな。その時が来たら【ブレイド】として頼りにさせてもらおう」
『じゃあ皆! ぼく達そろそろ行くから離れてて!』
「コハク、ヌル、ブレイド……いってくる」
「うん! いってらっしゃい! アキュラくん! ロロちゃん!」
「いってらっしゃいませ。アキュラさん、ロロさん」
「イクス、ロロ。コハク達の為にも必ず戻ってこい」
皆と挨拶を済ませ姿が消えたのを確認し、オレはブレイクホイールの転移機能を起動。
オレは目の前に出現した光のゲートへと足を踏み入れた。
異なる空間を移動する独特の感覚に身を任せつつたどり着いたその先は……
幻夜
真夜中の歓楽街に踊る愛欲の蠍
『
転移したその先は何処か見覚えのある街並み。
そこは煌びやかな真夜中の歓楽街の一角。
この場所を見た瞬間、オレはここが何所なのかを鮮明に思い出すことが出来た。
ここは確か当時ガンヴォルトを相手にしていたパンテーラに対して不意打ちを行う為の待機場所だった筈。
あの時は相手が相手だったが為に幾重にも前準備を重ね、専用の弾丸、専用の使い捨て兵装等を用意。
その上で奴がガンヴォルトに気を取られている所を不意打ちとありったけの武装を叩き込み、辛うじて勝利をもぎ取った。
……今にして思えば、万が一しくじった場合の逃亡手段も用意していたとは言えアレはかなり無謀だった。
何しろあのパンテーラは本体では無く幻影であり、その上で本体も控えていたのだから。
そんな事を思い出しつつ、周りを油断無く軽快しながら自身の状態のチェックを行う。
「……各部システム正常。ロロの方はどうだ?」
『こっちも大丈夫。全EXウェポン、【アビリティ】、【ヒーリング】、【クロスシュトローム】、全部使用可能だよ!』
「少なくとも、
『あの時は大変だったよねぇ。アビリティもヒーリングも使えなくなっちゃってたし』
「だが結果的に現兵装の限界スペックを引き出せた。そのお陰で有用なデータも多く揃える事が出来たと考えれば、悪くないだろう」
『だね。それにしても、ここってどこだろう? 怪しげな看板が多いみたいだけど』
「ここはとある町の繁華街だな」
『アキュラくん、知ってるの?』
「ああ。ついさっき思い出したところだ。ここは昔、オレがパンテーラを待ち伏せした時の待機場所だ。ロロはまだバトルポッドとしては未完成で連れて行かなかったからな。お前が知らなくて当然だろう」
『そうなんだ……ってアレ? となると、ここって』
「まだ確定はしていないが、少なくとも百年以上時を遡っている。どうやら座標さえ把握出来ればブレイクホイールは世界だけでは無く、時間も超える事が出来る様だ」
『あの世界、時間を操るワーカーもいたんだから時間移動も当然出来るんだね』
「そう言う事だな。……念のため、用意していたコレが役に立ちそうだ」
そう言って取り出したのは顔面を覆う仮面。
【イプシロン】と呼ばれるワーカーの付けていたモノとカラーリング以外はほぼ同じ物だ。
顔を完全に覆うこの仮面ならば、オレの特徴を把握している存在以外に対しては少なくとも簡単に見破られる事は無いだろう。
そんな仮面をオレは装備する。
「……視界良好。ボイスチェンジャーも無事機能しているみたいだな」
『うわぁ……』
「どうした、ロロ」
『ゴメンねアキュラくん。なんか、痛い人に見えちゃって』
「……仕方あるまい。今居るこの世界でもオレの並行同位体と出合わない保証が無い上に、ソイツがどんな立場なのかも分からないのだからな。用心するに越した事は無いだろう」
『でもそうなると、ぼくの場合は……あぁ、だからアキュラくん、背中にぼくがドッキングできるハードポイントを増設してたんだね』
「そう言う事だ」
『背中からドッキングするから表面を見られるって事も無さそうだし、最悪ぼくの並行同位体と接触しても大丈夫そうだね』
会話もドッキングした状態ならば思考でする事が可能である為、情報のやり取りもよりスムーズに行える。
それにドッキングすればロロのABドライブのパワーの恩恵をよりダイレクトに受ける事が可能だ。
モードディーヴァを始めとした各種形態も、
『じ……じゃあ、合体するね』
「……何を躊躇っている。早くドッキングを始めてくれ」
『もう! アキュラくんってば、ほんっとうにデリカシーが無いんだから!』
「……??」
ロロは何処か緊張した様子でドッキングを開始する。
そういえば、テストでのドッキングの際も今回以上に躊躇っていたな。
その時も似たような事を言われたが。
……よし、問題無く機能しているな。
ドッキングが終わったと同時に、脳内にロロの声が木霊する。
(あ~、あ~、ただいまマイクのテスト中、マイクのテスト中。どうアキュラくん? ぼくの声、聞こえる?)
(問題無い。ロロの方はどうだ?)
(こっちも問題無しだよ、アキュラくん)
(よし、ならば早速、行動を……!)
始めようとしたその時、少し離れた場所から爆発音が響き渡った。
……なにやら、嫌な予感がする。
確信めいた、とても嫌な予感が。
あの座標はキーライフルの導き、いや、オレの場合はブレイクホイールの導き……なのだろうか?
それを確かめる為に、オレは空を舞い、ブリッツダッシュを用いて現場に急行。
その場所で待っていたのは……
(え……嘘……アキュラ、くん? 【ノワ】?)
(……やはり、こういう事だったか)
【
失敗した場合の保険として待機していたノワの傷ついた姿。
そして、そんな二人に余裕の笑みを浮かべる
その姿を見た瞬間、ある可能性に行きついた。
ここで二人とも倒れてしまえば、誰が、
それに思い至った瞬間、身体は既に動き出していた。
(ロロ、【タイムフリーザー】を!)
(……っ! りょ、了解!!)
(あの二人の傷……時間が無い。ここは直ぐにでも始末をつける!)
タイムフリーザーの起動、そしてアビリティ【ウロボロスシステムX】の動作を確認後、オレは駆けだした。
それと同時にオレの士気のかつてない上昇を受け、ロロが【モード・ディーヴァ】へと変身し、持ち歌である【白金の
それと同時に普段は使っていないアビリティ【リミットブレイク】を起動。
これは一度でも被弾するとモード・ディーヴァが解けてしまう諸刃の剣だが、今回の様な超短期決戦においては極めて有用なアビリティだ。
進む時間の流れが遅い中パンテーラ達は気が付いたのかこちらに対してゆっくりと振り向こうとしている。
あのパンテーラ達……どちらかが幻影を維持する為の起点である筈。
ならばとオレはアンカーネクサスを起動。
赤い糸による絶対的な追尾性能によって起点を見破り、【ルシフェルメイス】によって強化された一撃を用いてパンテーラを吹き飛ばすと同時に【ロックオン】。
ダメ押しでブレイクホイールを抜き放ち、【
そしてタイムフリーザーの効果が切れると同時に、起点と思しきパンテーラを撃破。
ヤツはまるで鏡の様にその身が砕け散り、同時に居た女の幻影も姿を消した。
(……どうやら、何とかなった様だな)
(うん……それよりも、二人を早く何とかしなきゃ! ノワも倒れちゃったよ!)
恐らく
パンテーラが倒された瞬間安堵したのが引き金となってしまったのだろう。
先ずはロロにヒーリングを二人に使って応急処置を施し、オレはそんな二人と破損した盾と少し離れた場所に転がっていた【
(とりあえず何とかなったけど、これからどうするの?)
(……恐らくだが、この世界にも
その後、昔の記憶を頼りに秘密の研究施設へと到着し、二人を安静な状態にした後、目を覚ますのを待った。
(大丈夫かな、二人共)
(……少なくとも生体反応は安定している。直に目を覚ますだろう)
(だといいけど……)
「う……」
(あ! ノワが気が付いた!)
(この、
(それよりも、分かっているな?)
(うん。ぼくは大人しくしてるね。……アキュラくんも、分かってるよね?)
(ああ)
流石にオレも素直に名乗りを上げる訳にはいかない為、この世界ではイクスを名乗ろうと思っている。
これは元の世界でコハク達からオレがそう呼ばれていた為だ。
(コハク達には、感謝しないとな)
(そうだね。……じゃあ、ぼくは黙ってるから)
「ここは……アキュラ様の……」
「気が付いたか」
「貴方は……どうやら、私達は助けられたようですね」
一先ず、ここまでの経緯を矛盾無く説明しようと先ずはイクスと名乗ろうとしたのだが……
「助かりました、
「…………はぁ。何時から気が付いていた?」
「目を覚まし、声を掛けられた時からです」
何となくだが、ノワには正体を見破られる予感があったのだ。
だからこそ顔を見られない様にしたり声を変えたりと様々な対策を施したのだがな。
まさかこんな短期間に、しかも目を覚ました瞬間に把握されるとは思わなかった。
「何故オレに気が付いたのかは、この際聞かん。どうせ適当にはぐらかすだろうからな」
「気が付きますとも。そもそもこの研究施設はアキュラ様と私以外知らない場所です。それにここに入る為にはパスワードも必要ですからね。ならば、そう考えるのもおかしくは無いかと。……ロロも、背中に隠れているみたいですし」
『えぇ! なんでバレたの!? ……ぁ』
「そう言う所です。まだまだ精進が足りませんね、ロロ。……折角なので、顔を見せて貰っても?」
「
「それは残念です。……では、ここでは何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「イクスだ。向こうでオレは白き鋼鉄のイクスと呼ばれている。身内には、名前で呼ばれているがな」
「…………」
「どうした、ノワ?」
「アキュラ様に身内が出来ているとは驚きました」
「……どういう意味だ、ノワ」
久しぶりに……本当に久しぶりのノワとの会話は、まるで昔に戻ったと錯覚してしまう程、言葉には出さなかったが……嬉しかった。
正直、これだけでもうこの世界に来た意味があったと、オレは思う。
後は、
そう思っていたのだが、
それが影響しているのが理由なのか、
おまけにこの世界のロロは時期が重なってしまったのが理由なのか、メンテナンス中で意識が落とされている状態だ。
……この時期のロロはミチルの話相手になっていた。
それにこの世界のロロが今の
創造主を失い、暴走したマザーの姿を見る限り、間違い無く碌な事にならないだろう。
……方法は、無いわけでは無い。
だが、ソレは許される事なのか?
必要であった事とは言えミチルを、妹をこの手にかけたオレに……厳密には別人ではあるのだが、だとしても、この世界のミチルと会う資格があるのだろうか?
脳裏に浮かぶは悪魔のマシンと成り果て、自身の死を懇願する妹の姿。
(ミチル……オレは、どうすればいい?)
『アキュラくんちょっといい?』
「どうした、ロロ」
『この世界の事、ちょっと調べてみたんだけど……』
ノワが目覚めるまでの間、ロロはネットで情報を収集していた。
まずガンヴォルト、紫電、そして宝剣持ちの能力者達全員が未だ健在である事。
次に
そのお陰で今は仮初ではあるがこの国は平穏を取り戻しつつある事。
それが影響しているのか、フェザーが解散の危機に追いやられている事。
……これらの出来事は、オレの居た世界とは大きく流れが変化している。
ならばノワには
「アキュラ様。……ミチル様には、お会いにならないのですか?」
「…………だめだ」
「何故ですか?」
「……妹を、ミチルを、オレはこの手にかけたからだ」
「……っ!」
ノワの目が見開かれた。
普段は完璧なメイドとして振舞いどんな時でも冷静でいる彼女が、揺らいだ。
『……ぼく達の世界では、ミチルちゃんはスメラギに攫われて……そこで、目茶苦茶にされて……!』
「平和と言う名のディストピアを支える、【恒久平和維持装置】と成り果てていた。……言えるのは、ここまでだ」
「……そんな事が、あったのですか」
『いくらノワでも、これ以上は話せない。……ただ言えるのは、ぼく達は、「それ」を乗り越えた上でここにいるんだ』
流石に、これ以上の事は言う必要は無い。
そう思いオレ達は陰で見守る事を提案しようとしたのだが、ノワからある提案と賭け事を挑まれた。
まず提案と言うのは、一度ミチルとノワの知り合いと言う形で会ってみると言う物。
そして賭け事とは、
それに対しオレ達は……内容を理解した上で一度だけ、そう、一度だけならばとその提案を受ける。
その後、ヒーリングで対処したとはいえノワも消耗が激しかった為この場は解散。
再びオレ達二人だけとなった。
『ねぇ、アキュラくん……本当に、良かったの?』
「問題無い。街に紛れ込めるよう、私服姿にもなれるからな」
『そう言う事じゃ無くて!』
「分かっている。……大丈夫な筈だ。今のオレは
だからこそ、ミチルがオレの事を見破れるかどうか等と言う賭け事が成立するはずが無いのだ。
成立する筈が無い……無い筈なのだ。
なのに、何故だ……
「……おかえりなさい、アキュラくん」
「そのお面どうしたの? また新しい発明品?」
何故オレの事が分かる?
「そうだ……ねぇアキュラくん、そろそろロロとまた会いたいな。一人じゃちょっと寂しいから」
「オレは、アキュラでは……」
「ううん、アキュラくんは、アキュラくんだよ。
「……っ! う……ぁぁ……」
俺を護る仮面が落ちる。
不要だと思いつつ、それでもどこか人間としてありたいと足掻いて付けた涙の機能が、初めて効果を発揮する。
「だって、わたしはアキュラくんの妹だから」
そう言いながらミチルはオレの元へとたどたどしく歩き出し、オレの事を抱きしめる。
「アキュラくんの泣いてる所、始めて見ちゃった。……わたしの知らない所で、一杯頑張ってたんだね」
「……あぁ。……あぁ。やれるだけの事は、やったんだ。だが、それでも、オレは、お前を、護れなくて……それ所か、オレは、お前を、この手で……!」
「きっと、あなたの知るわたしは、それでも幸せだったと思うよ」
「……っ! 幸せなものか! あいつは! オレの知るミチルは! 何十年も捕らわれ続けていたんだぞ!!」
止まらない涙を流しつつ、ノワにも伝えていなかった話を、こみ上げる感情を止めることが出来ないまま伝える。
「それでも、最期はアキュラくんに会えた。……違う?」
「それは……! 確かに会えはした! だが、だがオレは……!」
「だったらきっと、アキュラくんの知るわたしは、最期にこう言ってると思うな」
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇イクスさんについて
ハードモードクリア+DLCコンテンツ網羅を成し遂げたイクスさんなので、とっても強いです。
〇ヌルについて
イクス2のハードモードクリア時、ヌルがアキュラくんの居る世界へとついて行く描写があるのですが、それは確定した訳では無くぼかした表現になっています。
なので、この小説内ではアキュラくんについて行った事になっています。
〇ブレイクシフトの最適化について
この辺りの設定は殆ど模造です。
いきなり装備が変わって
実際、最初にグレイヴピラー付近まで接近する際にヒーリングのチュートリアルで流されていましたが、かなり消耗していたのはそう言った理由もあったのでは? と言う想像も含まれています。
〇ガンヴォルト爪に登場するEXウェポンが使える事について
イクス世界線ではアキュラくんはエデンと実際に戦ったのかは本編では不明です。
なので、この小説内ではなんやかんやあってエデンと戦い、勝利したと言う形を取っています。
〇グリードスナッチャーの陳腐化について
イクス世界線でもアシモフはグリスナの脅威を把握しています。
実際に倒れたGVとシアン、そして銃を構えたアシモフと言う回想シーンもあります。
なので対策するのも当然なのではと思ってこんな設定を生やしました。
アキュラくんがグリスナ持ってなかった理由付けにもなるだろうし、いいかなって……
〇『座標』について
申し訳ありませんが、現段階では最後の数字の部分が『パンテーラを撃破する日の決行日時である』という事しか語れません。
〇ドッキングについて
当たり前ですが、模造です。
ゲーム本編でそんな機能はありません。
なので、ドッキングを恥ずかしがるロロが見られるのはここだけ……だと思います。
〇本編第十話における皇神兵の報告と今回の結末の食い違いについて
これについても多くを語る事は出来ません。
ただ言えるのは、何者かの手により情報操作が行われている、位です。
〇ノワが初見で見破った件について
ノワだからなぁ……で説明が付くと思います!
〇この世界のアキュラについて
パンテーラに敗北した結果、ナニカサレタヨウダ……
残念ながら本格的な出番はしばらく後になります。
本当に申し訳ない。
〇この世界のロロについて
アキュラくんと同じく、本格的な出番はしばらく後になります。
本当に申し訳ない。
〇涙の機能について
当たり前ですが、模造です。
ただアキュラくんは意外とそう言う機能は不要だと断じながらも、どこか人間らしさを残したいと本能的に思いながら付けたと言う模造設定です。
この辺りは、ロックマンXの涙を流さないゼロと涙を流すエックスを意識していたりします。
〇ミチルちゃんが見破った事について
……これについては、語る必要は無いでしょう。
この小説を読んだ読者の皆様方の想像にお任せしたいと思います。