サイドストーリー |
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最初にフェムトくんと出合ったのは倉庫として偽装されていた地下施設から外に出た時でした。
あの時わたしは、地下施設に居た研究員達によって作り出された私の別人格『エリーゼ2』と『エリーゼ3』と共に宝剣によって封印されていた力を開放し、流されるがまま能力を振るっていました。
……いいえ、流されるままにだなんて物はただの言い訳。
わたしの心の奥底に渦巻く本音は妬ましい気持ちで溢れていました。
わたしに対して痛くて苦しい事を沢山しながら悦に浸る
こんなにもわたしが苦しんでいるのに外でのうのうと生きている人々が妬ましい。
だから研究員達を『ゾンビ』へと生まれ変わらせた上で引き連れて、地上全ての人間をゾンビにしてやろうだなんて御大層な事を、その時は朧気ながらに考えていたのです。
そうしてエリーゼ2とエリーゼ3は意気揚々と、わたしはオドオドしつつも内心は少しだけ期待しながら外へと出ました。
そんな時でした。
皇神グループの最強の能力者である紫電さんと共に、ロボットに乗り込んでいたフェムトくんと遭遇したのです。
そこからは、ほとんど一方的でした。
フェムトくんはロボットを乗りこなし、紫電さんと共にゾンビ達を全滅させたのです。
その後、わたし達が直接相手をする事になったのですが、エリーゼ2とエリーゼ3は捕獲され、私は保護される形で決着がつきました。
これでわたしを取り巻く一連の出来事は終わりを迎え、全ては元通りに……なりませんでした。
『
そして先ず行われたのがわたしに植え付けられた疑似人格である二人の消去でした。
最初はそんな事が可能なのかと少し疑っていましたが、フェムトくんは特に苦も無く、二人を消去……いいえ、あるべき形へと戻してくれました。
そもそもフェムトくんが言うには、あの二人が誕生した切欠は外部から齎された疑似人格に加え、私の奥底にあった想いを核として生まれた存在なのだそうです。
だから、あの二人もわたしの一部である……そう、説明されたのです。
「これであの二人はエリーゼさんの中であるべき姿に戻りました」
「…………」
「……自分の中に、ああいった一面があった事にショックを受けているみたいですね」
わたしは黙って頷く事しか出来ませんでした。
わたしはこれからどうなるんだろう?
こんな醜いわたしを知ったフェムトくんや紫電さんに切り捨てられたら……そんな想いが浮かんでは消えていました。
またわたしは絶望の底に叩き落されてしまうのでは?
そもそもわたしはどうしてこんな思いをしなければならないの?
この時のわたしは、そんな負の無限ループによる思考で支配されそうになっていました。
「ではハッキリ言わせて頂きますが……エリーゼみたいな想いを抱いている人はそう珍しくは無いんです。紫電にも、私にも、ああいった思いが全く無いなんて事は無いんです」
「……え?」
「皆、多かれ少なかれ同じような想いを持っているんです。環境なんかによる外的要因に適応する為に脳内に存在する沢山の、私でも把握出来ない程の沢山の小さな人格達が切磋琢磨して私達の知る『人格』と呼ばれるモノが出来上がるんです」
「…………」
「そうだと分かれば、特にに気にする必要も感じなくなります」
「本当に、そうでしょうか?」
「……」
「本当に、わたしは大丈夫なんでしょうか? わたしは……わたしは!」
「……エリーゼは、希望を信じていますか?」
「そんなもの! 信じている訳……ないじゃないですか!! こうして保護されるまでこんな目にあわされて、そんな事、信じられる訳無いじゃない!! わたしは、あなたみたいに立派じゃないし、頭も良くないもの!!」
「……私も、自我と言う物を認識した時点では失敗作扱いされていました」
「……ぇ?」
「
「……どうして? どうしてあなたは、それでもわたしみたいになっていないの?」
「大勢の人達に手を差し伸べられました。ですが、それ以上に重要な事があります。エリーゼ、あなたは
その言葉を聞いた時、不思議と、ストンと私の心の中に納まりました。
この感覚は初めてのモノでした。
「ネガティブな考えを強要されるような環境だと、どうしてもそう言った絶望を信じてしまう。過信してしまうんです。だから言わせて貰います。エリーゼ、希望は信じなくても構いません。ですが
「…………」
「じゃあそうなって来ると、何を信じればいいのかって話になると思いますが……敢えて言うなら、あなたに手を伸ばしている人の事を信じて欲しい。ただ、『救い』とは簒奪性を孕むものでもあります。救われると言うのは、自分の支配権を相手に委ねる側面もあります」
……本当に、不思議な感覚でした。
まるでわたしが持つ漠然とした不安の正体を、フェムトくんが暴いてくれているのだと言う感じがしたのです。
そう思っている内に、フェムトくんはわたしに手を差し出しました。
「……この手を取る行為は、エリーゼにとっては物凄く勇気の要る行為だと理解はしています。「この人に自分をまかせて大丈夫なのか?」「信じていいのか?」「また裏切られるのでは?」……そんな思いで一杯だと、私は認識しています。だから、私はこうします」
そう言って、フェムトくんは
「……ぇ? ……ぁ、ぇ?」
当然わたしの頭は混乱の渦中へと飲み込まれます。
男の人とこうやって手を繋いだのは初めてだったから。
「私も最初はこうやってニコラに……私の恩人に無理矢理引っ張り出されてポジティブな環境で居られる場所へと連れて行かれました。だから、私もそうさせてもらいます」
「え……? ちょっと? フェムトくん?」
「さあ、行きましょう。早速私の友達にエリーゼの事を紹介させて貰いますね」
「わ……わたし、そう言うの、したことが無くて……!」
「やらない理由を探すより、まずはやってみましょう。失敗しても恥をかいても、一度やってしまえばもう経験者です。そして次に同じ事をやった時、一回目よりもうまく出来る自分に気が付く筈です」
その後もう、あれよあれよとわたしを取り巻く環境が目まぐるしく変化していきました。
友達も増え、今までやろうともしなかった料理なんかの家事も出来る様になりました。
フェムトくんが言う様に絶望を信じなくなったあの日から、わたしは自分を受け入れ、確かに変わることが出来たのです。
わたしのその歩みはきっと、一人ではあまり早いものでは無いでしょう。
ですが、わたしの手を取ってくれる人達が力を貸してくれます。
だからこそわたしは、わたしの思い描くわたしへと変わることが出来る。
そう、信じる事が出来る様になったんです。
あんなに可愛らしい外見や仕草とは裏腹に物凄く積極性のあるフェムトくんの意外な一面。
そんなフェムトくんに惹かれている事をわたしが自覚するのは、もう少し先のお話となります。
第十五話 初ミッション後の一休み
本当の意味での初陣が終わったその翌日。
私は先日のミッションをレポートに纏め、イオタにそれを提出していた。
「ふむ……突発的な状況に対して上手く分析し、立ち回る事が出来たみたいだな」
「そうでしょうか?」
「ああ。まず当たり前の事ではあるのだが、ミッション開始前の情報そのものが当てになるのは場所位な物だ。敵戦力は勿論の事、相手次第では地形すら当たり前の様に変化するし、何よりも少しの情報すら無い事もある」
今回のミッションではテロリスト達が大型デパートを占領した事と、具体的な人数辺りが正確な情報だった。
「実際、情報に無い相手と戦った事もあっただろう」
「ええ。皇神のチェーンソーを持ったロボットとの戦闘がありましたね」
「そうだろう。まず大抵の者は情報と違う、或いは突発的な出来事と遭遇するとまともに実力を発揮できないことが多いものだ」
「私の場合は実戦ではありませんが、仕事をする時も突発的な事は良くありましたので、それである意味慣れていた、と言うのもあると思います」
「……あぁ、そう言えばメラクからの突然の無茶振りなんかに振り回される事が多かったな。フェムトは」
実際、私の仕事が組んだ予定通りに終わった試しはあんまり無かった。
それにメラクだけでは無く、紫電やデイトナ達からも突然のお願いをされる事が多々あった為、予定が未定なのは私の中では当たり前の事だったのだ。
「ええ。ですが今後の事を考えると、そう言った経験もしておいて良かったと思っています。精神的に大分余裕が持てたので」
「うむ。この調子で頑張って欲しい。……フェムト、今日は帰ったら直ぐに休むといい」
「……? 昨日のミッションの疲れはもう抜けてますよ」
「いや、そうでは無い。ミッションは突発的な物だ。いつどこで何が起こるのかすら分からんのだ。だから普段からなるべく体調を整え、出来るだけ万全の状態で挑む必要がある」
「休む事も仕事の内、という事ですか」
「そう言う事だ。それが出来なければいざ本番と言う時に碌に力が発揮出来ん。……デイトナも初期の頃はこの辺りで苦労していたな」
デイトナは直情的な所があるから、休めと言われて「はいそうします」何て言うような人では無い。
初期の頃は苦労していたと言うのは、そう言う事なのだろう。
「分かりました。今日は直ぐに休むようにします」
そうして私はイオタにミッションにおけるアドバイスを貰った後、外で待っていたリトルと一緒に真っ直ぐに帰宅。
「ただいま~」
「ただいま、
「お帰りなさい、リトルちゃん。フェムトくん。ご飯、もう出来てるよ?」
第三者からみれば、この光景を不思議に思うだろう。
エリーゼが私の自宅に当たり前のように居ると言う事に。
「もぐもぐ……うん! 美味しい! エリーゼ、また料理がおいしくなってる!」
「本当? ありがとうリトルちゃん♪」
「うん。前回のモノよりずっと美味しくなってるよ」
「えへへ♪ フェムトくんのアドバイスのお陰だよ」
切欠はエリーゼが保護され、紫電名義で立場が保証されて暫く時間が経過した頃まで遡る。
それは休暇中の出来事で、シアン達とエリーゼは恋愛談義をしており、その際にエリーゼが私の事が好きになったという事が判明。
私自身エリーゼにそう想われていた事に満更でも無かったし、そもそも私の外見は女の子その物でもあった為、そう言った恋愛事は無縁だと内心諦めていたのもある。
それに、エリーゼも私も皇神においては重要人物扱いされている為、護衛の事を含めて考えてもメリットは大きい。
ただ、そう言うメリットデメリットを考える私自身が嫌になる時も当然あったけど、逆に言えばそう言う損得云々とエリーゼの好意を一緒くたにするのは嫌だと言う事に気が付いたりした為、私は私が想っている以上にエリーゼの事が好きなんだと自覚するに至った。
なので、この機を逃さずにその次の休暇の日に、私がエリーゼにデートをした上で告白をしたのだ。
こう言った告白は男性側からやるのがセオリーである、鉄は熱いうちに叩け等とニコラから聞いていた。
それが上手く行ったのかは分からないが、結果的に私の告白はエリーゼに受け入れられ、その日から同棲生活をするようになったのだ。
……このデートの時は本当に、ほんっっとうにニコラには心の底から感謝した。
まだ研究施設に居た時、意中の女の子と仲良くなる方法を実験が始まる際の暇つぶしに聞かされたりした事もあった。
当時の二コラの話を聞いていた私にはちんぷんかんぷんで良く分からなかった事も多かったのだが「とりあえず頭の片隅にでも仕舞っておけ。その内きっと役に立つ時が来るはずだ。何しろお前は外見にハンデ背負ってるからなぁ」等と言っていた為、この時が来るまでは本当に良く分からないまま頭の片隅に仕舞われた状態であった。
とは言え、流石の私もこのニコラからの情報だけを鵜呑みにするのは怖かったので、ネットでの情報収集、更に今までの実体験も含めてデートの仕方や告白等に関して総合的に調べたりする事となった。
今だからハッキリと言えるが、私はこの事に関しては仕事以上に能力を行使していた。
後から振り返れば何をやっているんだ私は……となる事請け合いの、実に頭の可笑しい行為。
良く巷では恋愛は人を狂わせるだの、おかしくするだの、キモくするだの言われていたが、それを私自身が体験する事となってしまったのだ。
正直こんな事に付き合わせてしまったリトルには申し訳ないと、今の私は思っている。
ただ幸いな事に、リトルはエリーゼと私がくっ付く事を歓迎している。
と言うより、リトルは第七波動と言う形で私の一部とも言える為、私の影響を当然のことながら受ける。
なので私がエリーゼの事が好きだと自覚してからはリトルもエリーゼがより一層好きになっている。
具体的に言うと、スキンシップが激しい。
「エリーゼ、また大きくなった?」
「ふぇ? だ、ダメだよリトルちゃん! 胸ばっかり触っちゃ……!」
「えへへ♪ エリーゼってすっごくふかふか~♪」
「……もう、しょうがないなぁ。抱っこしてあげるからおいで」
「うん!」
「……リトル、エリーゼに迷惑を掛けるのはほどほどにね」
「は~い♪」
後ろに居たリトルがエリーゼに抱っこされ、幸せそうに微笑んでいる。
何と言えばよいのか、見ているだけで微笑ましい光景だと私は思う。
これが巷で良く言われる、『尊い』と呼ばれるモノなのだろうか?
「すいません。うちのリトルがいつもこんな調子で」
「いいんですよフェムトくん。わたしもリトルちゃんに懐かれるのは大歓迎ですから。それに、リトルちゃんがわたしにこんなに懐いているって事は、フェムトくんはそれだけわたしの事が……」
あぁ……私の気持ちがリトル経由でエリーゼに筒抜けになってしまっている。
これは、かなり恥ずかしい。
「むぅ……」
「ふふ……♪」
「エリーゼ?」
エリーゼが突然私の手を取り、歩き出した。
歩き出したその先はお風呂場だった。
「え、エリーゼ、さん?」
「『やらない理由を探すより、まずはやってみましょう。失敗しても恥をかいても、一度やってしまえばもう経験者です。そして次に同じ事をやった時、一回目よりもうまく出来る自分に気が付く筈です』……何時かの時のお返しです。覚悟して下さいね♪」
「やったぁ♪ フェムトとエリーゼと一緒にお風呂だぁ♪」
…………
この場面の事は、語るまい。
とまあ、後はもう眠るだけとなり私達は眠りにつこうとしたその時、大きな爆発音と共に私専用の通信機器からけたたましい音が鳴り響く。
緊急ミッション |
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『フェムト。応答してくれ』
「イオタ! 今の爆発音は?」
『あぁ、老朽化した化学工場が大爆発を起こしたのだ』
「老朽化した化学工場……! あそこは確か封鎖されていた筈です! ……まさか」
『そのまさかだ。これも断定は出来んが恐らくテロ行為だろう』
通信を聞きながら私はエリーゼに出かける事を告げる。
「気を付けてね、フェムトくん」
「行ってくるよ、エリーゼ」
「必ず戻って来るって、信じてるから」
「必ず戻りますよ。私はまだやらなきゃいけない事も、やりたい事も沢山ありますから。……リトル!」
「うん!」
エリーゼに見送られ、私は爆発音の鳴り響いた方向へと駆け出した。
『緊急ミッションだ、フェムト。今回の主な内容は人命救助だ。爆発の余波は住宅街にも広がっている。そこへと赴き、怪我人の応急処置と安全の確保を頼む』
「了解。……まさか昨日と合わせて今日もミッションを受ける事になるなんて」
『こういう事も我々からすれば別段珍しい事では無い。……体を休めておけと言った意味が良く分かっただろう?』
「ええ、全くもって!」
『今回のミッションは私も出撃する。恐らくまだ近くに首謀者が居ると踏んでいるからな。場合によっては私との共闘も視野に入れて欲しい。最悪、
「あのシステムを使うんですか!? 確かにVRを用いた訓練では成果は出せましたが、色々と問題も多いんですよ!」
『現状、自由に動けるのは私と私直属の数名の部下、そしてフェムトのみ。デイトナ達は
「……分かりました。私も腹を括ります。……リトル、『
(ん。まかせて、フェムト)
こうして私は静かな夜を引き裂いた大爆発で苦しんでいる人々を助ける為の緊急ミッションへと向かうのであった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
アンケートを始めました。
内容はちょっと
今の所今回の二次小説内では前回の物とは違って(私の中では)そう言った描写は抑える様にしているのですが、もう少し欲望に忠実でもいいのかなと言った意見を知りたいです。
アンケートの答えをクリックするかタップすればいいので、もし宜しければご協力をお願いします。
6/25追記
アンケートは第二十話の投稿が終わった時点で受付を終了しました。
その結果、番外編を書きつつ
私の考える倒錯ネタは駆け出し編辺りから反映される感じになっています。
それと番外編は話が一区切りついた所まで、或いは気が向いたら書く予定ですので投稿が始まったらその時は活動報告辺りで誘導を行いますのでよろしくお願いします。
倒錯した(エッチな)話についての需要について
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無いよ!
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あるよ!
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R-18描写に番外編で挑戦して欲しい!