ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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サイドストーリー





「ふぅ……ここも随分寂しくなっちまったな」


 俺のつぶやきが部屋の中に木霊する。

 ここはフェザーの日本支部の本陣の隠蔽された施設の一角。

 あの日、爆風の衝撃で左手首を捥がれながらも気絶していた俺は、結果的にアシモフとの再会を果たす。

 中々長い時間眠ってしまっていたが、目を覚ました時に見たアシモフの顔には驚かされた物だった。

 アイツはまだ俺が神園博士と一緒に研究をしていた時に、外部から自力で能力を制御出来ない失敗作としてこの【皇神未来科学研究所】へと送られてきた少年だった。

 確か当時、皇神から与えられた【タケフツ】と言う仮初の名前(コードネーム)で呼ばれており、不法入国者同士の間に生まれた浮浪児でもあったらしい。

 どういった経緯で捕まったのかは不明だが、結果として無理矢理植え付けられた蒼き雷霆(アームドブルー)の移植に失敗し、常に能力が暴走すると言う危なっかしい状態になってしまった。

 それでまあ、研究するのは当時の俺達からすれば当たり前の事だが、その方法が俺の中では極めて重大な問題と言えたのだ。

 それは人道的等と言う言葉を投げ捨てた、今思い出しても非常に胸糞悪い研究方法。

 苦痛を伴う能力の引き出し何て当たり前で、当時のアシモフ相手に罵声をぶつける研究員も珍しく無かった。

 それに、神園博士本人は隠しているつもりみたいだったが、彼の中の能力者の扱いは正に害獣であり、バケモノ扱いしていた事も拍車を掛ける。

 こんな研究環境に対して、当時の俺は待ったを掛けた。

 第七波動は能力者の意思や精神状態によってその強さが変化すると言う極めて不安定な物。

 それなのにこんな環境、内容での研究が横行しているのだ。

 これではどう考えても必ず大事故につながる。

 取り返しのつかない事になると俺は神園博士達に訴えたのだが、当然の如く聞く耳は持たれなかった。
 
 ……正確に言えば、持つことが出来なかったと言うべきか。

 本当はこんな事をやりたく無いと思っている研究員の方が多い筈なのだが、それだけ第七波動の研究は重要であり、必要不可欠だと言われていたのだ。

 それに、当時の俺は研究員の中では若輩者であった事もあるが、それ以上に能力者に対する悪い意味での差別が世間で横行していたのもある。

 だからこそ、こんな閉鎖空間と呼べる皇神未来技術研究所内で非道な実験がエスカレートしていったのだろう。

 そんな空間だったからこそ、俺は連中の目を盗んではアシモフに対して色々と手を回したのだ。

 身体検査に引っかからない程度の嗜好品を用意したり、時には親身になって話を聞いたり、逆に俺の方が話をしたりなんかもした。

 あえて拘束具を外したりなんかもしたな。

 初回の時は思いっきりオレに対して襲い掛かって来たもんだから、思わず()()()を使って能力を抑制して黙らせたが。

 まあ、当時のアイツは常時暴走状態だったから仕方がないっちゃ仕方がないんだが……

 あの時のアシモフの表情は確か、あっけに取られていたっけな。

 そう言った積み重ねもあり、俺の前でだけだったがアイツは笑う事が増えたのだ。

 アシモフと言う名前も、本人がタケフツと言う名前が気に喰わなかったから俺が好きな古典SFの作家である【アイザック・アシモフ】の名前から拝借してみたらどうだと提案した事もあった。

 だが、結局連中の、本当は一部を除いてだれも望んでいない筈の非道な実験の積み重ねによってアシモフは俺の懸念通りに暴走し、結果研究所は機材も人材も含めて俺を除いて全焼。

 俺自身は()()()()()()()()()()()()から平気だったが、肝心のアシモフ本人は俺の前から姿を消してしまった。

 まあ、そうして外に出たアイツが「アシモフ」を名乗っていたのは俺としては嬉しい事だったのだが。


「フェムトのヤツ、今頃どうしてるかねぇ……」


 そんな風にアシモフの事を回想しつつフェムトの事を考えていたら、俺の視界に()使()()()が舞い散る。

 フェムトの様子を見終わったんだなと思いつつ、視界を上に向ける。

 頭にはピンク色の輪っか。

 背中に同じ色の小さな羽。

 それとは対称的なターコイズブルーの髪をツインテールに纏めた少女が姿を現す。


ホウダイ様! ただいま戻りました!」

「その名前をここで出すのは勘弁してくれ。今の俺は「ニコラ」だぜ? えころ。んで、どうだったよ? フェムトの様子は」

「フェムトくん、魂が修復されて元気になってました。一時期はもう手の施しようもない位酷い有様でしたのに……」

「そうか……そいつは良かった。折角彼女も出来て幸せの絶頂期だって言うのにそんな事で死んじまったら悲し過ぎるからな」

「はい! 何しろわたしとホウダイ様との()()()()()()()()()()ですから」

「あのなぁ……まあ、いいか。今は二人きりだしな。……実際、()()()()()が無かったらフェムトはとっくに死んじまってた。それに元々あいつは生まれが生まれだからか魂の強度が脆かったからな」

「はい。それなのに本人は何も知らずに無茶ばかり……全く、誰に似たんでしょうかね?」

「さてな……」


 えころの持つ天使の因子と俺の遺伝子を組み合わせた因子適合用の実験体クローン【デザイナーチャイルド】、それがフェムトだ。

 元々は俺の遺伝子だけを使ったデザイナーチャイルドだったんだが、ただでさえ未知の蒼き雷霆(アームドブルー)の因子を弄ったモノと適合させるだなんて無茶振りをさせられた結果、案の定拒絶反応を起こした。

 そう、本来フェムトは死ぬ定めにあり、助かる筈の無い、記録にも残らない非検体の一人となる筈だったのだ。

 そんなタイミングで()()()()以降も俺と定期的に会ってくれているえころが現れ、ダメ元でコイツの舞い散る羽の一部を拝借して因子として組み込んだ結果、拒絶反応は収まった。

 よって、結果的にフェムトは俺とえころとの間の、大切な息子みたいな感じになっている。


「んで、今アイツは何処に居るんだ?」

「今はミチルちゃんの居る療養施設に居ますね」

「おいおい、確かあそこにはミチルちゃんの面倒を見てるくろなが居るはずだよな? あいつとフェムトを会わせて大丈夫か?」

「うーん。どうでしょうか? 昔と違って大分マシにはなってますから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()暴走するなんて事はまず無いと思いますけど」


 この言葉を聞き、俺は何処か引っ掛かりを覚えた。

 何かを忘れている気がすると。


「ふふ……」

「どうしたえころ? そんな嬉しそうに」

「だってフェムトくん、()()()()()()()()をちゃんと使ってくれてたのが嬉しくて」

「あぁ、アレはお前の持ってた銃をモデルにしたモノだからな。嬉しいと思うのは分かるが……ちょっと待て」

「どうかしましたか? ホウダイ様?」

「あの銃、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よな?」

「はい! それはもう、これでもかと念入りに」

……強く生きろフェムト。今のお前なら生き残る事だけなら何とかなる筈だ

「??? どうかしましたか?」

「いや、何でもねぇ」


 そう言いつつ、俺は立ち上がり、えころの頬をそっと優しく触れる。

 それに反応し、えころは顔を赤く染める。


ホウダイ様……ダメです。こんな所で」

()()()()()なら別にいいだろうが。俺とお前の仲だし、今更恥ずかしがるこたぁねぇだろうに」

「そんな事言って、()()だった試し何て無かったのですが……ぁ」


 俺はそのまま満更でも無いえころを抱き寄せ、そのまま勢いに任せて色々と致そうとした。

 ……したのだが、扉をノックする音と同時にこの部屋に入り込んだアシモフに阻まれる事となる。


「ニコラ、今空いているか(フリーでいるか)? ……フム。逢引(ランデブー)の最中であったか」

「ひゃあ!?」

「おま……この、アシモフてめぇ! なんてタイミングで出て来やがる!」

「フフ……あの時の仕返し(リベンジ)さ。ニコラ」

「しかもわざとかよ!」

「仕方あるまい。あの時お前は私とモニカとの逢引(ランデブー)を邪魔したのだからな。……仕返し(リベンジ)出来る内にするのは当然の事さ」

「モニカとイチャつこうとした時に部屋に入り込んだのをまだ気にしてんのか! 女々しいぞアシモフ!」

「フ……好きに吠えろ。幼い天使に固執する、情けない親友(フレンド)遺物(HENTAI)よ」

「こ……コノヤロウ……! 表に出ろアシモフ! ぶちのめしてやる!」

「ほ……ニコラ様、それはダメですよ!」

「止めんなえころ! って言うか、お前も邪魔されたんだから手伝え!」

「え?」


 俺がえころに協力要請を出すと同時に、アシモフはそれに合わせたかのように笑みを浮かべつつ、()()()()()()()()を口にしながら俺達と対峙する。


「やれやれ……どうやら我々は道を違えてしまったようだな……仕方あるまい……」

「え? ちょっと待って……」

「今のお前達は、我々の前に立ちはだかる――敵だッ!」


 そう言いながらアシモフは自身の秘めたる蒼き雷霆(アームドブルー)を開放する。

 普段のコイツならこんな軽率な行動に出る事は無いのだが、今のフェザー本部に居る人員は俺達とチームシープスの面々に加え、アシモフの秘密を知る一部の信頼できるフェザー隊員のみの状態だ。

 残りの面子はアシモフがテロ行為を辞めさせるために立ち上げた真っ当な警備会社の方に移っている。

 俺達がこうして残っているのはフェザーを畳む為の、言わば後片付けが理由なのだ。


「訓練所に行くぞ、ニコラ」

「へっ! 上等!」


 そう言いながらオレもフェムトに渡したモノとはまた別の、言わば()()()()()()()()()()()()()を両手にそれぞれ持ち、訓練所へと向かう。

 この鉄扇は()()()()()()()の後も俺は()()()()()()()()()()()()()()ので、自衛も兼ねてえころと一緒に作成した、言わば現存する【聖遺物】の様な物だ。

 ちなみにだが、フェムトに渡した物はこれのデータを元に改良を重ね、更にヒヒイロカネ片で強化した一品だったりする。


「あ、あの! 本当に戦るんですか!? 戦っちゃうんですか!?」

「当り前に決まってんだろ? ほら、とっとと行くぞえころ。背中は任せたからな」

「あぁもう! 男の人ってどうしていつもこうなんですかぁ!?」


 そんな風に文句を言いつつも、えころは両手に大型の拳銃【デザート・エンジェル】を装備している。

 以前の時は使いこなせなかった事もあり命中率0と言う情けない腕前であったが、今では年月を経た事もあり、大体の相手に必中させる腕前を持つまでに成長していた。

 そして、俺達は訓練所にたどり着き、互いに対面し……真っ向から衝突する。


「っつう!? ハッ! どうした!? そんなもんか!!」

「まさか。本番(プロダクション)はここからさ!」

「全くアシモフったら、こんなに楽しそうにして……少し、妬いちゃうわ」

「モニカさん、何時の間に! わわっ!」


 何時の間にか居たモニカがえころ相手に複数の戦闘用ドローンを飛ばして足止めしている。

 それをバックに俺達は何も考えずに、馬鹿みたいに互いに攻撃を打ち込み合う。


「オラァ!」

「チィッ! やはり電磁結界(カゲロウ)対策(メジャース)されるか!」

「俺を相手に電磁結界が通用すると思うなよ! ……グホッ!」

「フ……()()()()よりも鈍った(ダァルした)のではないか? ニコラ。……グァ!」

「へっ! 肉を切らせて何とやらってなぁ!!」


 こんな風に俺達はバカみたいな大騒ぎと言う名の鬱憤晴らしを楽しむ。

 そんな俺達を、呆れるような視線で見つめる少年が居た。


「全く、リーダーもニコラも仲がいいのは結構な事だけどよ。コレ片付けんのオレなんだぜ? 全く、もうちょっと加減と言う物をだな……っとあぶねぇ!」

「ジーノ! 手伝いなさい! 貴方もチームシープスなんだから!」

「……マジかよ。ってうおっ!」

「ならば、動き出す前に潰します!」

「か、勘弁してくれ……」

「ま、迂闊にここに入り込んじまった自分を恨むんだな」

「ジーノ……グッドラック!」

「グッドラックじゃねぇ! ……まあでも、あんなに笑うアシモフに付き合うのも悪く無いか。もうすぐフェザーも無くなっちまうしな


 ジーノも加わり、お祭り騒ぎ(どつきあい)も佳境に差し掛かる。

 よって、オレとアシモフは互いに大技を仕掛ける。


「決着を付けよう! ニコラ!」








滾る雷火は信念の導

轟く雷音は因果の証

裂く雷電こそは万象の理


ヴォルティックチェーン








 アシモフの放つ蒼き雷霆(アームドブルー)最強の必殺技(スペシャルスキル)【ヴォルティックチェーン】による鎖と雷撃が俺を襲う。

 本来ならば、第七波動を持たない相手に対して使っていい技では無い。

 だが、アシモフは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()放つ。

 ならばこそその信頼に応え、迎撃する。

 俺は自身に秘めたる【第五の力】と、二つの鉄扇に秘めたる【第六の力】を開放。

 その身に纏い、現れるは蒼き雷霆とは雰囲気の違う【豊穣の雷】。

 遥かなる大昔、【聖人】や【神獣】が大地を潤したとされる春雷(しゅんらい)


「ヘ! 上等だぜ!」








我が舞うは雷の舞

大地を潤す煌めく稲妻

春雷よ 冬を切り裂き春を告げろ


雷撃扇(らいげきせん) 冬裂春雷(とうれつしゅんらい)








 全身に春雷を纏い、この場に似つかわしくない舞を舞う。

 無軌道に飛んでくる鎖を舞特有の独自の動きを以て迎撃し、その軌跡に生じる雷は、アシモフの放つ雷を相殺する。

 そう、これがあの時引き起こされたアシモフの暴走から身を守った俺の大技(スペシャルスキル)

 えころと長く交わる事で副次的に習得した力と、あの事件以降も俺を巻き込んだ数々の事件が俺を鍛え上げ、知識を身に付けさせた。

 その結果として俺は博士号を習得し、様々な縁に導かれてプロジェクト・ガンヴォルトに参加する事になったのだ。


「ふぅ……ま、こんなもんだろ」

「そうだな。ここで終わり(エンド)としよう」

「おーいえころ! もう終わったから戻ってこい!」

「やっと終わりましたか……もう! 昔のニコラ様は優しかったのに、今はどうしてこうなってしまったのでしょうか……」

「散々お前がらみの事件に巻き込まれればこうもなるさ。それに、嫌じゃねぇんだろ?」

「それは……はい。嫌ではありませんが……」

「モニカ、ジーノ。訓練(レクリエーション)は終了した。今すぐ戦闘を終了せよ」

「ふぅ。お疲れ様、アシモフ、ジーノ」

「や、やっとかよ……全く、今日は厄日だぜ」

「んな事言うなよジーノ。折角ここを片付けた後、飯を奢ってやろうとしてたってのに」

「……ゴチになります!」

「変わり身早!! それでいいんですか、ジーノさん!?」


 こうして俺達は訓練所を片付けた後、お得意先の食事処へと足を運び、そこの料理に舌鼓を打つのだった。

 これからの俺達の事と、フェムトの事を考えながら。






第三十話 フェムトの出生の秘密 ミチルの初恋


緊急ミッション

 

 

 

 

 

「うわぁっ! とと、落ち着いて下さいノワさん!」

 

「縁起物……来るな……DEATH!」

 

「ノワ! 一体どうしちゃったの!?」

 

 

 私は今、ノワと呼ばれているメイドさんに先ほどの戦いの場で追われている。

 

 あの少女を撃破した後、コハクと一緒に居た女性剣士の【ヒスイ】さんと情報の共有をしていた時にいつの間にかノワさんは現れた。

 

 その姿は物語に出てきそうな隙の無いメイドと言った物で、頭領さんも警戒レベルを上げる程の人だ。

 

 その時はこの様な様子も無く、私達をこの療養施設に居るアキュラの妹であるミチルと呼ばれる人の元へと案内してもらう筈だった。

 

 とは言え、流石に武器を持ったまま彼女に会いに行くのはマズイという事で、私達は武器をノワさんに預ける事になったのだが、最初にワイヤーガンを渡そうとした瞬間、ノワさんが豹変。

 

 まるで暴走したかのようにいつの間にか持っていた()を片手に私に襲い掛かって来たのだ。

 

 

 

 


 

STRIK

 


 

 

 

 

 幸いターゲットは私のみであり、コハクとヒスイと頭領さんは狙われていないので何とか手持ちの鉄扇で対処する事となった。

 

 なお、ワイヤーガンはノワさんが暴走した元凶らしい為、頭領さんにノワさんから見えない様に忍の服の中に隠してもらっている。

 

 後は何とかノワさんの正気を取り戻せばよいのだが……

 

 

「DEATH! DEATH! DEATH!!」

 

「うわ! ととっ! ふっ!」

 

 

 今の私はシールドヴォルトとスピードヴォルトによって守りと速さが強化された状態だ。

 

 その上、アビリティもちゃんと機能している。

 

 それなのにこうやって捌き切るので手一杯な為、ノワさんは相当の手練れなのだと分かるのだ。

 

 しかも正気を失っている状態でコレなのだから、意識があったらどうなっていたか。

 

 ただ、今の所何とかなっているのでこのまま捌き切って体力を使い果たさせれば何とかなる。

 

 そう思っていたのだが……

 

 

 

 

「滅殺DEATH!」

 

「えぇ!?」

 

「うわぁ……槍からビーム出ちゃってる」

 

「…………」

 

「頭領殿、先ほどから黙っているみたいだが、何か分かったのか?」

 

「……いや、某には何も分からぬ。……神園家には我等裏八雲と話を付けた悪魔が仕えていると言う噂があったのだが、それは本当の事であったか

 

 

 

 槍から突然放ってきたソレからは、()()()()()()()()()()()

 

 これは所謂、オカルトに関わる物なのだろうか?

 

 そんな事を考えながら防御結界(パルスシールド)を展開しつつ受け流す。

 

 そうしている内に、事態はどんどん悪化の一途をたどっている。

 

 遂には空を飛び、魔法陣らしき物を出現させ、そこから私を狙う光弾を発射し始めた。

 

 

「DESTROY!」

 

「っつぅ」

 

(フェムト、大丈夫!?)

 

(平気です! ……暴走しているせいか、動きが目茶苦茶なお陰で何とかなってる感じですね)

 

(ん。でも、このままじゃ……)

 

(……一度SPスキルを使って仕切り直ししましょう。こちらも一度、体勢を立て直さないと!)

 

 

 

 

 

 

 

天体の如く揺蕩う雷

 

是に到る総てを祓い清めよ

 

 

パルスエクソシスム

 

 

 

 

 

 

 

 私を中心に雷の聖域が展開され、空中に居たノワさんは聖域を掠めたその衝撃によって、()()()()()()()()弾き飛ばされた。

 

 それを見た私は、思わず戦いの手を止めてしまう。

 

 

「……あれ?」

 

「うわぁ……凄いねフェムトくん! あんなことが出来たんだ!」

 

「ふむ、見事な()()ですな。……暴走していた力が収まっていく気配を感じる。もう、大丈夫であるな

 

 

 このSPスキルはダメージは無い筈なので、傷つく事は無いと思っていたのだが、思いの他吹き飛んだ為心配になってしまった。

 

 なので、私は吹き飛ばされたノワさんの元へと向かい、木に引っかかって目を回していた彼女を発見して介抱し、目を覚まさせた。

 

 

「……本当に、申し訳ありませんでした」

 

「私はこの通り大丈夫ですので、どうかお気になさらずに。ですが、どうしてあのような暴走を?」

 

「……申し訳ありませんが、黙秘させて下さいませ。ただ、あの銃を見せなければ大丈夫とだけは言わせて貰います」

 

「……何か事情があるみたいですけど、見せなければ大丈夫なんですね?」

 

「はい」

 

 

 あのワイヤーガンはニコラから譲り受けた物だ。

 

 それに反応していると言う事は、ノワさんはニコラと面識があるのだろうか?

 

 

「あの、一ついいですか?」

 

「何なりと」

 

「ニコラと言う名前に、聞き覚えありませんか? その銃は彼から貰った物なんです」

 

「ニコラ……ですか。ええ。ええ。存じております。存じておりますとも」

 

 

 口調は静かな物だったが、ノワさんはニコラの事を知っており、それでいて明らかに怒っている様に見える。

 

 なので、これ以上ニコラの話をするのは危険と判断し、当初の目的であったミチルとの対面を果たす事を優先する為にここで話を切り上げた。

 

 

 

 


 

CLEAR

 


 

 

 

 

「では、紆余曲折ありましたがミチル様の元へ案内します。こちらへどうぞ」

 

 

 いつの間にか先の戦闘でボロボロだったメイド服は元のしっかりとした物に戻っていたノワさんに案内された先に居た部屋に彼女は居た。

 

 当時は体が弱かった為、あまりに強すぎた電子の謡精(サイバーディーヴァ)を神園博士に摘出された第七波動能力者。

 

 その子の名前は神園ミチル。

 

 あのアキュラの妹とされる人物だ。

 

 ……正確には、世界線の違いが存在するのだが、それは細かい事だろう。

 

 

フェムト様。先の戦いの件は、どうかご内密にお願いします。

 

心得ています。ミチルに心配をかけさせる訳にはいかないですし

 

「あ! ノワ! 凄い音がしたけど、大丈夫だった?」

 

「ええ。こちらにいらっしゃったフェムト様と頭領様のお陰で、大事無く終わらせました」

 

あ、お客様だ……おほん。ノワ達の事、助けてくれてありがとう。フェムトさん。頭領さん」

 

「たまたま通りかかっただけですよ」

 

「うむ」

 

 

 最初の挨拶はこんな感じで始まり、少しぎこちない感じで会話が進んだ。

 

 その後に、見た事の無い型のヒューマノイドの少女ヌルも会話に加わり、大いに盛り上がった。

 

 

「ちなみに私、こんな外見してますけど男なんですよ」

 

「えぇーー!! そんなにカワイイのに!? ……わたし、男の娘を見るの初めてだったけど、全然分かんなかったよ」

 

「わたしも最初はビックリしたよ。本当に男の娘っていたんだなぁって驚いちゃったもん。見た目がお姉ちゃんの小さい頃とそっくりだったのもあって」

 

「そうだな。確かにフェムトは幼い頃の私にそっくりだ」

 

「はわわ。ヒスイさんにもそんな小さかった頃があったんですね」

 

「……どういう意味だ、ヌル」

 

「私達ワーカーにはそう言った物理的な意味で幼い頃と言うのは存在しませんから」

 

 

 そうして話を進めて行く内に、今度は恋愛事情について話が移行した。

 

 私自身恋人が居る事もあり、この話も盛り上がりを見せる事になるが、そこからまた別の話題に話が切り替わる。

 

 そう、ミチルの初恋についての話に。

 

 

「ミチルちゃん、好きな人が居るって本当!? わたし初耳だよ!?」

 

「それはそうだよ。だって最近になって自覚した事なんだもん」

 

「それで、相手は誰だ? 流石にフェムトという訳ではあるまい」

 

「えっとね……ヌル。少し前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()が居たの、覚えてる?」

 

「はわ? 少し前ですか……あ! あの人ですね! ()()()()()()()()()()()()()()と一緒に居た!」

 

「うん」

 

 

 それはひょっとしてGVなのでは無いだろうか?

 

 それを確認する為に話に参加する。

 

 

「その人って、私みたいに金髪で、眼鏡をかけてて、長いおさげをしていませんでしたか?」

 

「そうだよ。フェムトくんも知ってるって事は友達だったりするの?」

 

「ええ。GVとは仲良くさせて貰ってます」

 

「あ、その愛称を知ってるって事はそうなんだね」

 

「ええ」

 

「じゃあ、今GVがフリーなのか分かったりする?」

 

「そうですね。今の所はフリーなのは確認してますが……」

 

「してますが?」

 

「……ライバルは多いですよ? GV、物凄くモテますので」

 

「……っ! そ、そうなんだ……」

 

 

 明らかにミチルは落ち込んでいるように見える。

 

 まあ、それはそうだろう。

 

 何しろ自分はかなり出遅れている事が分かってしまったのだから。

 

 だけど、まだミチルにも十分チャンスがある事は伝えたい。

 

 

「今から参戦してもまだ間に合いますよ。GVは自分の恋愛事に関しては鈍いので」

 

「……本当?」

 

「何しろGVに長くアプローチしている人が居るのですが、未だにそう言った事になっていませんので……」

 

「そっか、アキュラくんみたいに【にぶにぶさん】なんだ」

 

 

 アキュラ、キミも恋愛事に関しては……ってよく考えたらアキュラはサイボーグだって言ってたし、そう言った事には無縁だから仕方が無いのか。

 

 

「じゃあ、どんな人がライバルなのか、知ってる?」

 

「えっと……それは流石にプライベートの関係もありますし、簡単に話す訳にはいかないんです。すいません」

 

「そっか。……そうだよね。でもまあ、わたしにもチャンスがあるって分かっただけでも儲け物だよ」

 

「ミチルちゃん、何時になく燃えてるね……」

 

「うん。……わたしね、こんなにアキュラくん以外の人を想うなんて初めてなんだ。好きだって事を知って、言葉にして……改めてGVの事を考えたら、すっごく胸がドキドキしてるの。病気で苦しかったそれとは違う、苦しくない、温かくなるドキドキを感じるの。これって、とっても素敵な事だって思うんだ」

 

 

 そんな時、扉の前でガタンと大きな音が響いた。

 

 それに合わせ、間髪入れずにノワさんが扉を開けたのだが、そこには誰も居なかった。

 

 

逃げましたかアキュラ様……まあ、いいでしょう。……どうやら外に立てかけてあった教材が倒れただけの様です」

 

聞こえてますよ、ノワさん。……でも、黙っておきましょう。これに首を突っ込むと大変な事になりそうな予感がしますので……それならいいのですが」

 

 

 妹の初恋にどう思っているのかは分からないが、出来れば祝福してあげて欲しいと、私は願うのであった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





〇ニコラについて
ニコラの正体はえころルートトゥルーエンド時の久時 峰大その人。
あの頭のおかしい出来事を乗り越えた後も様々な事件に巻き込まれつつ、幼馴染の神園しのぶ経由でプロジェクト・ガンヴォルトに手を出す事になる。
本人がアシモフと戦えるぐらい強いのはえころと交わり続けて因子を取り込んだ事と、数々の語られていない事件を乗り越えて来た事で【第五階梯】に相当する力を獲得しているのと、フェムトに渡した鉄扇の、【第六階梯】に相当するえころとの合作聖遺物の鉄扇を二つ所持しているから。
そう言った経緯もあり、昔は優しかったニコラは今ではぶっきらぼうなわるわる男になってしまっている。
因みに世間で発売されている「頭の可笑しいゲーム」はニコラのその時の体験談をよりマイルドにした物と言う設定。
なお、イクス世界線の彼は神園真夜のルートを経由している為……

えころについて
くろなもといノワが居るなら彼女もいますよねと言う形で登場した天使
フェムトのSPスキルがどうして退魔に関わる名前なのかを示す根拠でもあり、因子的に母親に相当する。
ノワとは今でも付き合いがあり、時々ノワ単独では手に負えない出来事があった時は手を貸したりしている。
何気にニコラとの付き合いは紆余曲折あって天界公認をもぎ取っている為、比較的大っぴらにイチャイチャ出来る間柄になっている。
フェムトの事を自身の持つ権限ギリギリの範囲でデバg……温かく見守っている。
なお、イクス世界線の彼女はそもそも本人ルートをニコラが経由していない為、天界に帰還している。

〇フェムトについてその2
ニコラの遺伝子によって誕生したデザイナーチャイルドだったのだが、能力因子の適合に失敗し命を落としそうになっていた為、丁度良く現れたえころの因子を組み込んで生き永らえる事に成功した本小説の主人公。
そう言った経緯もあり、青き交流(リトルパルサー)には聖なる力が宿っており、悪魔を始めとした邪悪に対して強力な破邪の力を持つ。

〇ワイヤーガンについて
えころの持っている銃をモデルに作られた特注品。
ノワが思わず暴走してしまう程の目茶苦茶な祝福が施されており、実はこの銃も凄まじい退魔の力を有する。
何気にワイヤー部分がアシモフのヴォルティックチェーンを意識した作りになっている。

〇鉄扇についてその2
数々の事件の過程でえころと共に作り上げられた、ニコラの持つ第五階梯の力を第六階梯相当に増幅させる人造聖遺物。
豊穣を約束する春雷を操る力を有しており、これが防御結界の元の力となっている。
後にフェムト用に作られたソレは、コレにヒヒイロカネ片を加えて強化した物。

〇アシモフについて
ニコラと関わってしまった為、元々愉快だった人が更に愉快な事になり、目茶苦茶憎悪が漂白された。
……逆に言うとニコラと合流するまでの間は原作以上に色々とヤバかった。
現段階のニコラとはこんな冗談も言えたり殴り合い出来る間柄であり、精神状態も極めて良好。
しれっとモニカを恋人にしている。
そして、何気にニコラがフェムトのデータを流用してアシモフの暴走問題を解消している為、第二の人生に対して極めて前向きな姿勢でいる。

〇ノワについて
そういう訳で、くろな本人と言う設定になっている。
攻撃方法は白き鋼鉄のX2の彼女を参考にしている。
今回の戦闘では彼女は気が動転した暴走状態であった為、本来の力が微塵も発揮されていない。
因みに銃がダメで鉄扇が平気なのは鉄扇の持つ暗器と言う性質が神聖さと相殺しているのが理由。
そう考えると銃もまた同じような理由で大丈夫そうなのだが、「えころの持っている銃」と言うのが神聖さを増幅させている為、ノワは耐えられなかった。
ちなみにイクス世界線の彼女は、ミチルを人質に取られてしまった事が引き金で……

〇ヒスイについて
ブレイドの本名と言う形で採用したオリ設定。
DLCでの暴走状態の雷の色がこの色に近かった為採用しました。

〇ぼやけた文字について
メタ的に言うとプレイヤーの想像を掻き立てる為の演出。
今回の場合、ぎゃる☆がん だぶるぴーすで検索すると幸せになれます






サイドストーリー











BREAK OUT










『ねぇ、本当にやるの?』

「当然だ」


 世の中の兄と言う存在は、妹の初恋に対してこの様な感情を抱いていたのだろうか?


『ミチルちゃんの初恋だよ? 応援しないの?』

「本来ならば、喜ぶべき事なのだろう。だが……」


 ミチルはオレの恋愛事情の事に関して祝福してくれていた事を考えれば、今から行う行為は実に浅ましく、改めてミチルの懐の深さを思い知る思いだった。

 そんな事も露知らず、ガンヴォルト(ミチルの心を奪った男)が姿を現す。




MISSION START







「アキュラ、用事があるって聞いたから来たんだけど……なんだか、物々しい雰囲気だね」

「態々来てもらって済まないな、ガンヴォルト。……早速だが、オレの開発した新兵器のテストに付き合って欲しい」

「……いきなりだね。アキュラ。ボクは何かキミの恨みを買うような事をしたかい?」

『ゴメンねGV。アキュラくん、初めての感情に戸惑っちゃってるんだ。ボクとしては本当に申し訳ないって思ってるんだけど……付き合ってあげて欲しいな』

「……なんだか良く分からないけど、ボクで良ければ付き合うよ」




READY







 このガンヴォルトの良く分かっていない態度が、オレの感情を更に逆なでする。

 ――今のオレの顔は、どんな表情をしているのだろうな。

 そう思いながら、オレは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う、所謂【最終決戦仕様】の装備を身に纏い、この収まらぬ気持ちをガンヴォルトにぶつけるのだった。

 ……この事が切欠でオレもヤツの事を「ガンヴォルト」から「GV」と呼ぶことになるのは予想外だったが。



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