サイドストーリー |
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プールを一通り満喫し、夕食も食べ、お風呂も皆と入って楽しいお話をした。
GV達は来客用のお部屋へと向かい、私達はいつもの
本来ならこの後エリーゼ達と色々とするのだけど、今日はお客様が来ているのでフェムト達はパジャマ姿のまま眠りについた。
私も、フェムトの背中を抱き枕にする様にしがみ付きながらベッドに入る。
…………
皆が寝静まったのを確認し、私はベッドから抜け出す。
音を立てない様にドアを開け、私の部屋へと向かう。
机に座り、明かりをつけ、私専用の端末を起動。
そこに書かれているのは、歌詞と思しき文字列。
その内容は、私がこれまで生を受けて感じた事と、フェムトへの感謝の気持ちを表した物。
それを少しづつ書き進めながら、私は改めてあの光景を思い浮かべる。
GVの覚醒した時の映像を。
(この力を再現出来ればフェムトを生き残らせる大きな力になる。道筋もアニムスの因子を取り込めたお陰で見えてる。……もう少し、頑張ろう)
それは
そこで、使い手の精神状態に働きかける事で第七波動もより強く力を引き出せる、というのが大体の原理。
後はそれを私がやりくり出来る範囲で再現出来ればよいのだが、これまでは机上の空論に過ぎなかった。
だけど、数日前にアニムスの因子を取り込む事で
大雑把に言うと生体ハッキングの応用によって精神面を補強し、生命力を扱う事で物理面を補強すると言った感じだ。
後は形に倣うと言う事でこうして歌を作成する事にしたのだが、これがまた難しい。
そんな風に悪戦苦闘していると、壁の向こう側からモルフォが透過する形で私の部屋に入り込んで来た。
『あらリトルったら。まだ起きてたんだ』
「それはこっちの台詞。こんな夜更けにどうしたの?」
『え? あ……いや、その……ね』
「……大方、私達の寝てる部屋を覗こうとしたんでしょ?」
『ギクッ……! そ、そんな事、無いわよぉ~』
明後日の方向を見ながら目線を逸らして誤魔化そうとしているモルフォだけど、その態度が答えを如実に表していた。
以前、モルフォはキス以上の事をしているのかとエリーゼに尋ねた事がある。
それに対してエリーゼが答える前に、私がおやつを食べきる形で答えを妨害してうやむやにした。
だけどモルフォはあの時のエリーゼの態度からキス以上の事をしていると判断した為、こうしてこっそり覗こうとしたのだろう。
……それはそうと、歌詞で悩んでる時に丁度いいタイミングで来てくれたモルフォに、私は相談を持ち掛けた。
『なるほどねぇ。……ねぇリトル。この歌は誰に対して歌いたいのかしら?』
「フェムトに対して歌いたい」
『なら、それが答えよ』
「……?」
『歌詞って言うのはね。全部が正解なのよ。伝わり難かったり、ちんぷんかんぷんだったり、小難しかったり……恥ずかしい物だってそうだし、さっき答えたリトルの言葉もまた正解なのよ』
「…………」
『多分だけど、リトルは歌うのを恥ずかしがっている、或いは怖がっているだけだと思うの。フェムトに笑われたり、場合によっては拒絶されたりするのを』
「……ん」
『でも、落ち着いて考えて見て? フェムトがリトルにそんな心無い事すると思う?』
「ありえない」
『でしょ? だから恐れる事何て何もないわ。貴女の心の思うままに歌えばいいの』
「ん! ありがとうモルフォ」
こうして私は答えを見つけ、まだ途中だった歌詞を書く作業へと戻った。
戻ったのだが……
今度はモルフォが私に質問を投げかけた。
その内容は、フェムトとエリーゼが付き合うまでの速さについての物だ。
この端末は思考操作によって書き込む物である為、思考を分裂させて話を聞く事にした。
『ずっと不思議に思ってたけど、どうしてフェムトとエリーゼってあんなに早く恋人同士になれたのかしら?』
「……私の推測混ざるけど、それでもいい?』
『勿論よ!』
「じゃあ先ずは結論から言うね」
『ドキドキ……』
「フェムトのアプローチが凄かったのと、それに答える形でこっそり出されたエリーゼのアプローチをしっかり拾ってたのが理由」
『エリーゼもアプローチしてたの!? そういう所、アタシ見た事無かったんだけど』
「本当にさり気無くだし、本人も自覚してるかどうか怪しい。例えば身に付けている小物が見慣れない物だったり、髪型が若干変化してたりする小さな、それでいてよくありそうな物だったから。エリーゼの場合は無自覚な方だと思う。そう言うのを隠すの、エリーゼは苦手だし」
『無自覚アプローチ、そう言うのもあるのね……』
「ん。フェムトのアプローチが凄かったのはね、そう言った細かい所を私を使ってでも全部拾って主軸にした事。自分が好きな人の為にした事を本人に褒められるのが凄く嬉しい気持ち、モルフォも分かると思う」
『ええ。それはもう』
「当時の拾いっぷりは色々な意味で凄かったよ。多分その様子を見たらドン引きしちゃうと思う。フェムトもその辺り自覚してたし」
『そ、そんなに凄かったんだ……』
エリーゼの無自覚アプローチを見つけては頭の中で狂喜乱舞するフェムトの図はドン引きさせるのに十分な破壊力がある。
だけど、その事をエリーゼに話したら顔を赤くして物凄く喜んでいた。
人の事は言えないけど、恋は盲目とは良く言った物だと私は思う。
……こうして情報を並べて見ると、また別の答えが浮き彫りになる。
「とりあえず、男の人側が相手を恋愛的な意味で好きであると自覚してくれないとダメって事なんだと思う」
『そうなると、今のGVじゃあ……』
「多分ダメだと思う。GVはシアンの事は好きだとは思うけど、その好きは恋愛的な意味じゃないだろうし。もしちゃんと恋愛的な意味で好きになってたらGVの場合は挙動が変化すると思う」
『そっかぁ……』
「GVに好きになって欲しかったら、諦めないで色々やってみる事が大事だと思う。今日みたいに私に相談するのもいいし、いっその事正面から告白するのもアリだと思う」
『分かったわ。……でも、正面から告白するのはちょっと恥ずかしい……』
「そんな調子だからシアンにヘタレ
『んな!? あ、アタシはヘタレ謡精なんかじゃないわよ!』
こんな風に私がモルフォとお話しするのはそう珍しい事では無い。
何故ならば、第七波動の中で私が一番最初にモルフォの話相手となり、今みたいな友達になれたからだ。
そう考えると、モルフォとの付き合いも随分と長いなと私は思った。
……折角だから、ずっとモルフォにお願いしたかった事があるのを話そう。
「ねぇモルフォ」
『なぁにリトル?』
「一度モルフォとTASで接続してもいい?」
『TASって……あぁ、フェムトがミッションで使ってるシステムの事よね? アレってフェムトが居ないとダメなんじゃないの?』
「ううん。TASのシステムが格納されてるのは私の中。だから私だけでも最低限の起動はできる」
『なるほどねぇ……で、どうしてアタシと接続したいのかしら?』
「モルフォの使う
『ふふ♪ しょうがないなぁ。リトルがそこまで言うなら接続してもいいわよ。それに、フェムトにはアタシ達の歌関係で散々お世話になりっぱなしだったし』
「ん! ありがとモルフォ! ……それじゃあ接続するね」
私はTASをセミアクイティブで起動。
この状態はアビリティの恩恵は殆ど受けられず、主に接続テストをする時に使う物だ。
このTASと言うシステムは一度繋いだ第七波動達のデータも収集する機能が存在する。
これはTASを完成させる為のデータ収集が目的であり、接続する前に事前に説明する必要のある項目だ。
これを利用し、電子の謡精のデータを収拾しようという訳だ。
「接続完了。……どう? 何か違和感とかある?」
『ううん。特に何も。強いて言うならちょっと不思議な感覚がするわね』
「その位なら許容範囲内って感じだね。……ん。終わったよ。接続を解除するね」
『あら? もういいの?』
「データ取りだけなら直ぐだよ。……でも、解析するのは時間かかりそう。パッと見た感じ、モルフォを構成する第七波動、すっごく複雑だから」
『ふふん♪ 伊達に電子の謡精なんて言われて無いわよ』
とりあえず目的のデータは収集出来た為、歌詞が出来たら解析しよう。
そんな風に思いながらモルフォとの会話を続けて行くと、モルフォから少し前にフェムトとエリーゼの恋愛事情を話した後に盛り上がった話題に切り替わった。
それは、生身の身体の事についてだ。
『ねぇリトル』
「ん?」
『あの時は軽く聞く程度で済ませちゃったから改めてちゃんと聞くけど……生身の身体を持つってどんな感じなのかしら?』
「一言で答えるのは難しい。……ちょっと長くなる。それでもいい?」
『ええ』
私はモルフォに今の身体が起動してからの事を話した。
起動して生まれたままの姿の時の肌寒さや心細さを。
服を渡され、身に付けた時の温かさを。
歩いた時の重心の移動、小指がカドにぶつかってしまった時の初めての痛さ、その時の、初めて目から流れる涙。
これら全てが当時の私にとって新鮮だった。
特に印象深く、私の中で鮮烈に残ったのはフェムトに綺麗だよって言われた時。
あの時私は何でもない様に会話してたけど、内心では不思議な感覚に戸惑っていた。
温かく、胸が高鳴る不思議な感覚。
今にして思えば、それはきっと好きだと言う感情だったんだと思う。
初めて髪を撫でて貰った時も思考の六割ほど真っ白になっちゃったし、抱っこしてもらった時は得も言われぬ高揚感を得た。
そして、肌と肌を重ねた時は……
『……ゴクリ』
「……色々と凄かったよ。何しろ科学的にも肌と肌の触れ合いによる幸福感って実証されてるから。モルフォも一度味わったら病みつきになると思う」
『へ、へぇ~……』
「……? どうしたの?」
『な、何でもないわ! まさかリトルがオトナの階段を上ってたなんて……アタシ、思いっきり出遅れてる……!』
「……じゃあ続けるね。それでね、フェムトとするのも凄いんだけど、エリーゼとするのも凄いんだよ」
『え?』
「エリーゼの肌ってすっごくスベスベで温かいんだ。触ってるとクセになっちゃうくらい」
『え?』
「モルフォも生身の身体を得たら色々と触って見るといいよ。例えばオウk……」
『それじゃあアタシはシアンの居る部屋に戻るから歌詞を書くの頑張ってね!』
顔を真っ赤に凄い勢いでモルフォは立ち去った。
……この位軽く受け流せないからシアンにヘタレ謡精なんて言われちゃうんだよ?
まあでも、これが切欠で恋愛的な意味で進展があるといいんだけど。
そう思いながら私は再び歌詞作りに全意識を集中するのであった。
フェムトを死なせない為に。
そして、私のありったけの気持ちを伝える為に。
ミッションセレクト |
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朝食を取り終え、今日のミッションにおける最終確認をする。
装備の手入れ……OK。
体調……OK。
リトルマンティスの要請……OK。
TASの動作チェック……OK。
EP残量……全快。
その他諸々の項目の確認も済ませ、私はリトルと
そこではエリーゼとアニムスが洗濯物を干しており、そんな二人を朝日が優しく照らし出す。
そんな二人の元へと足を運び、行ってきますの挨拶を済ませる。
同時に今日のミッションも無事に終わらせ、必ず帰ってくる事の約束もした。
「必ず帰って来てね。エリーゼを悲しませたらダメよ?」
「ええ。今日も必ず生きて戻ってきます。絶対に」
そう言って私はそのまま出発しようとしたのだが、それを引き留めるかのようにエリーゼは私を背後から抱きしめる。
後頭部にエリーゼの柔らかなモノが当たっており、夏場なのにも関わらず心地よい体温が私を包み込む。
「エリーゼ?」
「……ごめんね。ちょっとの間だけ、こうさせて」
今日のエリーゼは朝からあまり調子が良く無さそうだなと思っていたのだが、案の定であった。
こういう時のエリーゼは大抵嫌な夢を見て感情がグチャグチャになっている事が多い為、心の拠り所と言える私やリトル、最近ではアニムスにこうして身を任せて不安を取り除こうとする。
それもあり、私はミッションを始めとした重要な物事を始める際は、時間に余裕を持って何か不測の事態がある程度起きても間に合うように調節している。
(最近は落ち着いていたと思ってたんだけど……久しぶりだな。エリーゼがこうなるのは)
私と出合う前の学校内での陰湿ないじめだったり、苦痛を伴う人体実験に晒されている時等の夢をエリーゼはどうしても見てしまう。
心の傷の問題を解消することが出来ても、心の傷その物が無くなる事は無い。
こう言う場合、先ずは話を聞くのがセオリーだ。
「……夢を見たの」
「嫌な夢でも見たんですか?」
「うん。わたしが一番見たくない夢。……フェムトくんが、死体になって帰って来る夢」
「…………」
「それでね、夢の中のわたしはまだ諦めてなくって、フェムトくんの事を生き返らせようとしたの。アニムスと一緒になった上で。でも、フェムトくんはゾンビになっちゃった。フェムトくんだったモノに、変わり果てちゃったんだ。……その後のわたし、何をしたと思う?」
「……周りに当たり散らした、とか?」
「大体当たり。フェムトくんの居ない世界何て要らないって叫びながら
「…………」
「……それでね、気が付いたらわたし、
「エリーゼ……」
「嫌な夢だった。最悪な夢だった。そして何よりも……夢の中のわたしに共感しちゃうわたし自身も嫌だった。だってあの夢の内容、わたしは途中まで絶対に同じ事するって確信できちゃうんだもん……!」
私を抱きしめる力が強くなる。
本当に、嫌な夢だったんだろう。
(フェムト、どうしよう? こんな状態のエリーゼを放ってミッション何て行けないよ)
(私も同感です。……久しぶりにやりましょうか)
(ん。エリーゼの事、いっぱい優しくしよう)
人の肌の温もりと言うのは、感じた相手を安心させる力がある。
私とエリーゼはもう数えきれない程に肌を重ねているが、いたずらに性欲を発散させているだけでは無く不安を払拭させ、精神を安定させると言った理由でする事もあった。
……なんて理屈を色々と並べているが、まあ、そう言う事だ。
我が家に泊まっていたGV達は朝食を私達と取ってから既に帰宅している。
なので、色々と解禁しても大丈夫だろう。
私はエリーゼとアニムスを連れて
その部屋で変身現象を解き、彼女の不安を払拭する為に、皆で肌を重ね合わせた。
この時重要なのが、激しくすれば良い訳では無いと言う事だ。
この辺りは人それぞれらしいので断定は出来ないが、エリーゼの場合は優しい言葉と触れ合いが重要になる。
今回の場合は心を癒す事が主な目的なので、激しくするのはなるべく避けたい。
なので性的に気持ち良くするのでは無く、単純に肌と肌を重ねると言う行為がメインになる。
ただ触れ合うと言うだけの行為を勿体無く感じる人も居るかもしれないが、この単純な触れ合いが最もエリーゼの心を癒すのに効果があったのだ。
そうして、暫くの時間が過ぎた。
「皆ありがとう。わたしはもう大丈夫」
「ん。エリーゼの顔色良くなった」
「これで一安心ですわね」
「ですね。これで私も安心してミッションに……エリーゼ?」
「フェムトくん。時間、まだある?」
「……まだ一時間半位は余裕ありますよ」
「わたしね、今日のオンライン授業休みなんだ」
「…………」
「それに、宿題なんかの用事も全部終わってるの。だから……」
エリーゼの言葉を聞く前に、私は彼女の口を私の口で塞ぐ。
私を抱きしめるエリーゼの腕に力が籠った事を合図に、第二ラウンドが始まった。
その一時間後……
「エリーゼ、続きはミッション後に……ね?」
「ひゃ……ひゃい……」
「アニムス、私達が戻るまでエリーゼの事をよろしく」
「は……はひぃ……」
私がエリーゼを、リトルがアニムスを腰砕けにした後、改めて変身現象を行い我が家を飛び出し、第二データバンク施設建設予定地へと足を運んだ。
現段階でも30分ほど余裕があるので、遅刻する事無く目的地に到着。
現場では今回組む相手であるストラトスさんが現地入りする事になっている。
彼はかなり前から通院していた病院から無事退院し、宝剣を新調して現場へと復帰を果たしたのだ。
そんな彼を視界へと収めるが、その隣にリトルよりも小さな女の子の姿があった。
彼女はストラトスさんに懐いている為、必然的に正体は判明する。
「ストラトスさ~ん!」
「おぉ、フェムトか!」
「ええ。元気そうで何よりです。……その子が例の?」
「ええ。……【ライ】、挨拶を」
「は~い! わたしは
リトルよりも小さな女の子の姿をした第七波動のライ。
リトルとは違い元気が溢れて活発そうなブロンドのショートの髪型が特徴で、活発さを表すかのようにオーバーオールを着込んでいる。
今ではこんな可愛らしい外見をしているが、以前の翅蟲は暴走寸前の、極めて危険な状態だった。
それは以前の宝剣ですら抑えきれない程で、制御する為にストラトスさんが入院する元凶と言える薬物である【
だけど第七波動に意思がある事が判明し、直接翅蟲に語り掛ける事で暴走も衝動も収まった。
更にダメ押しとして新型宝剣に換装する事で、私達と同じ基準の安全性の確保に成功している。
「今日のミッション、よろしく頼む」
「ええ。こちらこそ」
「こちらこそ!」
「では、早速始めよう。……ライ、頼む」
「あいあいさー!
元気な掛け声と共に、ストラトスさんが変身現象を起こす。
その姿は黒と黄色のアーマーを身に纏った物だ。
しかし、この姿は安定度が高まったからこその姿。
以前の姿は身体その物がエネルギー体と呼んでも良い程に不安定な物だったらしく、今のこの姿は正しく奇跡だと一部の研究者は語っていた。
「その姿も大分様になりましたね」
「ええ。お陰様で。……では、接続を」
「分かりました。……リトル」
(ん。TASでの接続、開始するよ! それと同時にスピードヴォルトとシールドヴォルトも一緒に発動するよ!)
ストラトスさんとTASで接続し、私達はミッションを開始する……はずだった。
突然、第二データバンク施設建設予定地に見慣れぬ建築物が姿を現す。
その外観はパッと見た感じ、今の建築物よりも数段上の技術で作られた代物である事が分かる。
更にこの建築物からは例の反応が検知された。
そう、ホログラム能力者の反応だ。
(うわぁー! おっきぃー!)
(建築物まで出来る様になるなんて)
(……厄介な事になりそうだ)
(ですね。……正直な話、一度撤退しておきたい所ではあるのですが)
(俺も同意見だ。……だが、相手はそれを許してはくれないらしい)
STRIK
建物の中からワラワラと
私は即座に起動済みのリトルマンティスに乗り込み、全武装をアクティブにすると同時にEPレーダーを広域展開。
迫りくる脅威全てにロックオンが施され、私は両肩に存在するホーミングレーザーと手持ちの二丁のレールガンを斉射する。
だが当然撃ち漏らしは発生する為、そこはストラトスさんによる何でも食らい尽くす夥しい数の羽虫で攻撃する【ミリオンイーター】と呼ばれる攻撃で掩護してもらう。
これにより、第一波は完全に殲滅。
しかし、第二波が来る気配が無い。
恐らくだが、私達を待ち伏せするつもりなのだろう。
ならば、相手の思惑に乗らず突入せず撤退するのがいいと思うのだが、多分私達が引こうとするとまた同じように嗾けてくるとも考えられる。
そうなると、選択肢はもう一つしか無いだろう。
幸い入り口はリトルマンティスでも入れる位広い為、このまま潜入する事は出来る。
よって、私達は突然出現した謎の施設へと足を運ぶ事となった。
(見た所、ここはデータを扱う施設みたいですね)
(分かるのか?)
(ええ。私の扱っている分野その物ですから……いますね)
(そうだな。待ち伏せが多い)
(ん。頑張って蹴散らそうね)
(がんばろー!)
内部で待ち構える敵を蹴散らし先へと進むと、この世界でもおなじみの物が姿を現す。
そう、【ゲートモノリス】だ。
(やはりこの施設にも存在するのか)
(これ知ってる。わたしの居た病院にもあった!)
(空間を隔離するのに便利ですからね。ゲートモノリスは……ですが)
私はリトルマンティスの持つレールガンの先端をゲートモノリスに接触させ、そこを起点にハッキング。
物の数秒も待たずに解除する。
(私には無意味です)
(ん。私達にこの手の技術は通用しないよ)
この調子で私達はどんどん先へと突き進む。
……しかしこの施設、どうしても気になる事がある。
それは何かというと……
(どうしてこんなに針がびっしり敷き詰められているんだろう……セキュリティの一種だって考えるのも無理が出そうだし……)
(ふむ、何でだろうな?)
(それが分かれば苦労はないがな。ライ)
(一応針を隠す為の機構もあるからやっぱりセキュリティの一種でいいんじゃないかな、フェムト)
そういえば、アマテラスにも同じような機構が……この手の事は深く考えちゃいけないのかもしれない。
私は気が抜けてしまったと判断して頬を両手で叩きながら気合を入れ直し、先へと進む。
そして、遂に最深部と思しき場所へと辿り着く。
そこには……
(もう、形振り構わないという事ですか……!)
(あの黒い雷みたいなの、嫌な感じがする!)
(俺にも分かる。アレは危険だ)
あの時のイソラと同じように蒼黒い雷を身に纏うヒューマノイドの翼戦士の一人、ダイナインの姿があった。
《グゥ……ラ、来訪者、ですか》
「……! 意識が残ってるんですか!?」
《辛うじて……ですが。ワ……ワタシは、【ガルガンチュア】謹製、お嬢様付きの万能秘書、ヒューマノイド、ダイナイン。以後、お見知りおきを》
ダイナインはそう挨拶を済ませつつ、その手に光の剣と思しき物を手に取り、構える。
《申し訳、ありません。本来、ならば、この様な、無礼な事は、許されない、のですが……お嬢様を、人質に、取られている以上、こちらも、引くわけには……行かないのです!》
STRIK
「人質だって!?」
《お嬢様を助ける為ならば、ワタシはこの様な苦痛、いくらでも耐えて見せましょう!》
(詮索は後回しだフェムト。……向こうにも事情があるのは分かった。だが、それで躊躇すればやられるのはこちらだ)
「ッ! 分かりました!」
痛みを無視している為か、さっきまでとは打って変わって言葉を流暢に話すダイナイン。
そんな状態なのにも関わらず、彼の攻撃には理性が宿り、更には暴走の力をも利用すると言ういいとこ取りを意志の力で実現した。
……アキュラによると彼は心を理解し、三原則をも凌駕している可能性を持ったヒューマノイドと言われている。
それだけ彼は「お嬢様」に対して強い想いを秘めているのだろう。
現に私のリトルマンティスはマントを大型のバイソン型に変化させた攻撃によって中破し、私は下りて戦う事を余儀なくされているのだから。
この時、私は不意打ち気味に鉄扇を一閃したのだが、この動きは相手に見破られていた。
『来なさい……』
「マズ……!」
『甘いですね』
「……っと! まだまだ!」
マントを構えたダイナインに迂闊に鉄扇による攻撃してしまった私は、そのままベクトル操作の作用を持ったマントに弾き飛ばされる。
だが、ロックオンその物は出来てる為、そこを起点にストラトスさんがフォローするような形で攻撃を仕掛けた。
「行け! ミリオンイーター!」
『グッ……その攻撃は、
「お前の力は身に付けている布を起点としている! ならば、喰らってしまえばその力は発揮出来まい!」
ストラトスさんの羽虫による攻撃はあらゆる物を食べつくす性質がある。
よって、物質に依存する第七波動【
『ダメージレベル……危険域……確かにその通り……だが、それでも……ワタシは負ける訳には行かないのです! スキルスタンバイ……!』
悲劇の終わりの始まりに
深更の幕が下ろされて
全ては闇に染められる
ダイナインの生成する布が、羽虫によって食い荒らされるのもお構いなしにストラトスさんを捉える。
拘束されたストラトスさんに、凄まじい数の光の斬撃が襲い掛かろうとしていた。
アビリティ、シャリーアライブによって致命的な攻撃は一発は耐えられるが、これはデータによると複数回攻撃している為、当てには出来ない。
よって、私はイソラの時の様にダメージを与える事を密かに期待しつつ発動速度と防御性能の高い城塞の力を使う。
煌めくは雷纏いし城塞
守護の聖域よ 二重に重なり城塞と化せ
パルスサンクチュアリ
私の聖なる城塞がストラトスさんを守護しつつ、ダイナインが纏う青黒い雷を消し去っていく。
しかし、それでもダイナインは止まらない。
大切な人を人質に取られている彼には、止まると言う選択肢は無いのだ。
なので、その引導をストラトスさんが渡す事となる。
貪る翅蟲の羽音が響く
終わりなき飢餓の牙
全てを喰らい咀嚼せよ
デスティニーファング
新たな姿となった事によって名前は同じだが、その性質が変化したストラトスさんのSPスキル【デスティニーファング】。
以前の物は長くチャージを必要とする性質があったのだが、今回の物は攻撃範囲を片腕に狭めた事で発動速度を大幅に早めている。
その運命を喰らう牙の一撃を以て、漸くダイナインはホログラム状に姿を消すのであった。
CLEAR
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇リトルの歌について
所謂ソングオブディーヴァ枠。
今までは実用の目途が立たずに頓挫していたけど、アニムスの因子のお陰で突破口を開けた為、ようやく実用に向けて最終調整をする事に。
生命力を使う都合上、その代償はエリーゼが居ないと高くつく。
〇リトルとモルフォの関係について
余り描写はしませんでしたが、第七波動の中でモルフォと初めて友達になったのはリトルだったりする。
なので、モルフォも結構砕けた調子で話す位にはリトルとは仲が良い。
何気に付き合いの長さもそれなりにある。
〇エリーゼの夢について
前回のバッドエンドの大まかな内容が夢の正体。
フェムトが居ない状態で暴龍と化した彼女を止める術は存在しない。
再び絶望に叩き落された彼女の嘆きは世界をも滅ぼす。
愛しいあの人が居ない世界になぞ何も価値が無いと叫びながら。
原作のエリーゼは精神面がズタボロの状態でも相手をゾンビにしたり石化させたり出来る位には強い。
そこから立ち直らせて鍛え上げれば当然原作の時よりも強くなる訳で、そこから更に絶望に叩き落すとこうなると言った具合です。
可能性世界と言う設定があるからこそ出来る芸当です。
つまり、何処かの世界では実際に起こっているという訳で……
〇ライについて
リトルよりも小さな元気っ子な第七波動。
このような見た目なのは食べ物を食べる際、直ぐにお腹いっぱいになれるからと言うのがその理由。
物を食べる事が好きと言うよりも、お腹いっぱいな感覚が好きな為、好き嫌いは基本存在しない。
他には自身の能力を用いて分解して取り込む形で無機物も食べる事が出来る。
一時期は暴走寸前まで行った危険な状態だったが、様々な要因が重なった事でその問題は解決。
晴れてストラトスと共に現場に復帰する事になった。
〇見慣れぬ建築物について
イクスシリーズに存在する第二データ施設がイマージュパルスの技術派生によって試験的に構築された物。
相手側もこの技術を物にしつつある事を端的に表している。
〇ゲートモノリスについて
詳しい事が分からない為、この小説内では一定の空間を隔離する物と定義しています。
もし詳細の分かる人が居たら感想を書く序に指摘していただけたら幸いです。
メタ的にはコレが理由で描写はしていなかったのですが、本小説内の設定ではフェムトに対しての足止めには何の役にも立たないと言う理由もあって省略しています。
〇針について
ふむ、何でだろうな?
〇ダイナインについて
お嬢様に対する想いにより色々と限界突破しており、あのベルセルクトリガーをも意思の力でねじ伏せている。
ゲームシステム的には
〇デスティニーファングについて
暴走寸前の状態が収まった事で性質が変化したSPスキル。
発動速度が