黒い衣装を身に纏ったモルフォの姿をしたペスニアと呼ばれる存在が立ち去った後、私達は前線基地へと帰還し、一息ついていた。
――人と言うのは無能になる瞬間が存在する。
それは多大なストレスを抱えてしまった時だ。
こうなってしまうと頭の回転が大幅に鈍り、直球に言うと「アホ」になってしまう。
この状態で出した考え事による結論は総じてろくでもない結末を迎える事が多い為、先ずは気持ちを落ち着かせるために一息入れるのは非情に重要な事なのである。
……という事を情報管理部に居るベテラン社員の人から聞いていた為、先のやり取りで多大なストレスを抱えたであろう
それにストラトスさんとライも、私とリトルもペスニアの放つプレッシャーに対して初見であった事もあり精神的負荷が非常に強く、疲弊してしまった事も当然ある。
その為、冷房の効いた休憩室で私達は気持ちを落ち着かせるホットミルクココアを飲んで一息入れた。
暑い時期で少し寒く感じる位冷房の効いた部屋で飲む温かな飲み物は、不思議と贅沢に感じてしまう物だ。
これは冬に暖房の効いた部屋で食べるアイスクリームみたいな物と一緒なのだろう。
こうした贅沢をしていると言う感覚も、ストレスの緩和に効果が高いと私は考えている。
そして、一息ついて落ち着いて安心したのが引き金で感情が一気に溢れてしまったのだろう。
ライはホットミルクココアを飲み終わって一息ついた後、目尻に涙を浮かべてストラトスさんに泣きついていた。
「ゔえ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ん! ごわ゙がっ゙だよ゙ぉ!」
「よしよし……怖かったな、ライ」
彼女は思いっきり感情を表に出す
リトルは体を持つのが早く、私と一緒に多くのミッションをこなした事もあり、ココアを飲んでホッと一息ついた状態だ。
但し、私にくっ付いた状態で傍を離れようとしない辺り、精神的な負担は相応にあったと見るべきだが。
私もココアを飲みながら、何処か気の抜けた状態で寄り添っているリトルの頭をそっと優しく、労るように撫でる。
「
「身体を持つと言うのは、
「……そう言う物なのかな?」
「そう言う物です」
この事を私は断言しているが、別に根拠があって言っている訳では無く、所謂「根拠のない自信」と言う物だ。
人は不安に晒されると、自信に満ち溢れた人から受ける言葉に対し、強く影響を受けやすくなる。
その自信に根拠があればなお良いのだが、逆に言ってしまえば根拠が無くても自信さえあれば大体何とかなってしまう。
この事にピンとくると言うのは難しいかもしれないが、この事の逆を文章にしてみると分かりやすい。
根拠はある、但し自信は無い。
次にこの文章の場面を頭の中で想像してみる。
間違い無く、その根拠に対して疑問を持つ筈だ。
故に、私はリトルから不安を取り除く意味でこの様な方法を取ったのだ。
……因みにだが、この方法はエリーゼと恋人関係になる為に使ったテクニックでもある。
モノにするのは大変だったし、今では逆に甘える機会も多かったので立ち振る舞いでボロが出ないか内心心配ではあったのだが、何とか上手く行ったので一安心と言った所だ。
「ん……落ち着く……」
「よしよし」
目をトロンとさせながら力の抜けた表情をして私により強く体を預けている様子から、完全にリトルはリラックスしている。
これで少し時間を置けば、ペスニアと相対した際の精神的負担も大きく和らぐ事だろう。
……何やら、視線を感じる。
リトルから目を離し、顔を上げた。
「おぉぉ~~……ねぇ? これが【オトナのカンケイ】ってヤツなのかな? ストラトスって確か恋人いたよね? ねぇねぇ、どうなの? わたしに教えてよ」
「さてな。……まあ、俺からはノーコメントとさせてもらおう」
『前から思ってたけどフェムト君ってば、女ったらしだよね。そう思わない? アキュラくん?』
「……良く、分からん」
『こ、こんなに分かりやすいのに…………アキュラくんに期待したぼくが馬鹿だったよ』
私達の一連の流れを見られていたらしい。
まあそれは別に構わないし、今更な話でもある。
それにロロはあんな風に残念がっているが、アキュラはロロに対して表情を見せていない。
その上で私からは辛うじて見えていた為分かったのだが、アキュラは少し恥ずかしそうな表情をしていた。
多分、分かっていないのは本当の事なのだろうが私から見るに、これはアキュラの中では物凄く重要な第一歩であると直感的に感じたのだ。
……そろそろ、少しペスニアについて考察してみるのもいいかもしれない。
私は彼女についての考察を、この場に居る皆と共に行う事とした。
幸い、あの時の会話のデータはロロが保存していた為、こうして落ち着いた状態で改めて聞くことが出来るのは本当に有り難い事だ。
あの時は皆冷静ではいられなかったが、今ならば落ち着いて考えをある程度纏める事も可能だろう。
「う~ん……わたしには良く分からないや」
「そうだな。憶測ならばいくらでも出来るだろうが……」
「では、分かっている事だけを纏めましょう」
一つ目、彼女はデマーゼルでは無い事。
二つ目、彼女はアキュラ達に強い恨みを持っている事。
三つ目、ペスニアがミチルを自認していたのは、彼女視点で考えると昔の話である事。
四つ目、デマーゼルの代わりに
五つ目、彼女の名前に【
他にも私が
「奴がデマーゼルで無いのは間違い無いだろう。これまでの妨害の手緩さを考えるとな」
『そうだね。あいつ、話し方はともかく、何だかんだで「遊び」は入れないヤツだったからね』
「そしてアキュラ達を恨んでおり、かつ彼女視点では昔の話である事を考えると……」
「ペスニアは多分、
「オレ達が敗北した世界……か」
『あまりそう言うの、考えた事なんて無かったな』
「私から見ればこの辺りは納得出来ますね。私視点の話になりますが、
「そう考えると、自然と守護者を名乗っていた理由も朧気ながら浮かんで来るな」
「力関係が何かしらの理由で逆転を起こしたのだろう。……ヤツがそんなヘマをするとは思えんが」
「ねぇねぇストラトス、この五つ目の黒死蝶って何?」
「ライ。それはな、かつて大昔に存在した伝染病である【
「あるいは大昔の探偵物の創作物で登場した事件の名前でもありますが、これは関係無いでしょうね」
『……前から思ってたけどさ、フェムト君ってどうやってそんな情報を持ってきてるの?』
「ネットサーフィンを私の能力を用いてするとこう言った雑学知識が入って来るんですよ。まあ、詰め込むだけ詰め込んでしまう関係上、思い出せる時と出せない時がありますが……」
さて、黒死病と言えば世界で猛威を振るい、億人単位で当時の人々を死亡させた恐るべき病気の名前だ。
これを切欠に世界は経済面、環境面、宗教面等において凄まじい変化をもたらしたと言う。
それでも今ではもう大した事の無い病気であるのは確かだが、ペスニアが自身の名前にコレの意味を含ませると言うのは、何か重要な意味合いがある筈。
「黒死病と言えば伝染病において極めて重要な意味合いを持つ病気の名前。彼女は恐らく、それに関わる何らかの要素を持っていると見ていい」
『うーん、ペスニアは何かを伝染させる要素があるって事? リトルちゃん。まあ確かに
「でもそうなると、守護者を名乗れた時期が短かった理由が分かりません」
『だよねぇ……アキュラくんはどう思う?』
「………………」
アキュラは難しい表情をしながら考え込んでいる。
そして、何かに気が付いたような表情をして……
「……すまないが、今日の所はここまでにして欲しい」
『アキュラくん……?』
「どうしたのですか? 何かに気が付いたみたいですが」
「急用が出来た。ロロ、紫電の所に行くぞ。
『あの男って……って、ちょっと待ってよアキュラくん!』
その言葉を最後に、アキュラとロロは足早にこの部屋から立ち去ってしまった。
アキュラの何かに気が付いた後の様子は何処か焦りが見え隠れしており、いつも冷静でいる彼らしく無い態度に、私は疑問を覚える。
しかしもう本人は立ち去ってしまった為、これ以上話をするのは無理だろうと判断。
私達はストラトスさん達と解散し、変身現象を行いつつスピードヴォルトを再使用してこのまま我が家へと帰還する事になった。
(どうしてアキュラは紫電の所へ行ってしまったのだろう? ロロはあの様子から見て何も知らないみたいだし……それにあの男って誰の事なんだろう?)
(分からない。でも、アキュラがそれだけ深刻に考えるって事は、私達に出来る事は無いんだと思う)
(……ですね。餅は餅屋とも言います。私達は邪魔をせず、必要になったら協力する形でアキュラ達に手を貸すようにしましょう。何も言わずに立ち去ったのも、理由があると思いますし)
彼は物事を一人で抱えるタイプだとロロから聞いた事があったが、今回の件では紫電を頼っている為、その辺りは改善されていると考えていいだろう。
なので私はそんなアキュラを信じて考えを切り上げ、我が家へと向かう足取りを早める。
気配を殺し、体捌きに気を使いつつ、最適な動きを意識して私は駆け抜けた。
そうして見え、たどり着いた我が家なのだが……何かを忘れている気がする。
一応今日は何だかんだでお昼を少し回った所で終わったので、帰ったら昼食を食べるつもりだったのだが。
その忘れている内容を思い出したのは、我が家に入ってから
そう言えば、
私はベッドが置いてあるだけの部屋の前で変身現象を解き、中へ入る。
そこで待っていたのは、互いに一糸まとわぬ姿で絡み合っている
二人は律義にあの時から
「あぅ……おかえりなさい、ふぇむとくん。みっしょん、おわったんだね」
「ただいま、エリーゼ。……待たせてゴメン。もう、我慢しなくていいからね」
エリーゼはもう呂律が回らない位出来上がってしまっており、正しくまな板の上のコイと言った様相を呈している。
わたしの事を好きにして欲しい――そんな気持ちが完全に筒抜けになってしまっている状態だ。
対するアニムスも同様、フラフラの状態でリトルの元へと向かい、留守にしている間に頑張っていた事を報告していた。
エリーゼと同じように、呂律が回っていない状態で。
「ん……りとるちゃん。やくそくどおりえりーぜのこと、
「ん。アニムスは約束を守った。だから
この時刻を境に、翌日の朝になるまで我が家から生活音は一切聞こえず、明かりも一部の部屋からカーテン越しに漏れ出ている光を覗いて真っ暗なままだった。
その中でナニが行われていたのかは、ここで語られる事は無い。
トークルーム |
|---|
最近、私自身ワクワクしている事がある。
「……リトル、どう?」
「ん。ちょっと待って……フェムト。うん。今日もほんの少し、そう、ほんの少しだけだけど、
この事実に、私は心の中でガッツポーズをした。
――話はエリーゼと同棲生活を始めて暫く経った後まで遡る。
私は身長に関してこの時点では諦めていた。
何しろこれまでの努力が逆効果で身長が伸びないと、頭領さんに宣告されてしまっていたからだ。
なので、宣告されるまでは毎日記録していた身長のデータをこの時まで測る事は無かった。
だけどエリーゼがお風呂場で私を後ろから抱きしめている時に、気が付いてくれたのだ。
身長が伸びている事に。
最初はエリーゼの気のせいなのではと思ったのだが、それで話を終わらせるのは彼女に対して良くない。
なので内心諦めてはいたものの、再び身長を測った事でこの事実が判明したのだ。
伸び率は私と同年代の人達と比べ、ぶっちぎりに悪い。
それこそ私の背が伸びた事を知っているのはエリーゼとアニムスしか居ない位だ。
だけどもう伸びないと思っていた身長が、実は伸びていたと言う事実は私の心に多大な希望を齎した。
私自身、身長が小さい事を気にしていたが故に。
「フェムトくん、どうだった?」
「ええ。ほんの少しだけですけど、また今日も身長が伸びています」
「ん。フェムトはまた伸びた。正直、ちょっと羨ましい」
「でも、リトルちゃんはその代わりスタイルが良くなってきてますわ」
リトルが成長していることが判明した後、私の身長が伸びる速度と同じペースで少しづつスタイルが良くなっている。
身体に艶やかな丸みが出来、胸も成長が発覚した時よりもほんの少しだけ大きくなっているし、お尻もまた同様だ。
他にも、初期の頃は心配になる位細かった太ももだったが、ほんの少しだけだが太くなってきているし、髪の長さも初期と比べれば目に見えて分かるようになった。
「私としては、体重が徐々に増えてる感じがしてちょっと複雑……」
「リトルちゃんは細すぎですわ。もっとご飯を食べて成長して、わたくし達を安心させてくださいな」
「む~~~……でも、皆がいいなら私、頑張る」
「ええ! その意気ですわ! リトルちゃん!」
……話を戻すが、私自身身長を気にしている理由がある。
それはエリーゼを正面から抱きしめてあげられない事と、迷惑を掛ける事が多かったからだ。
これまでもそうだったのだが、私とエリーゼでは大人と子供と言っても良い位身長に差が存在していた。
外でデートをした時とか、私が小さいのに加えてエリーゼが綺麗になった事もあり、ナンパ目的で他の男から声を掛けられたり、姉弟であると間違われる事も多かったのだ。
なのでそれが何とかなる可能性が芽生えて、私としては本当に嬉しかった。
嬉しかったのだが……
この成長が何時まで続いてくれるのだろうかと言うのが、私にとっては気がかりだった。
それに私の身長の伸び率よりも、エリーゼとアニムスの身長の伸び率の方が高いのも気になる。
私と初対面の時ですらエリーゼは身長が約170cmあるのに今でも成長を続けており、今では172cm程にまで成長しているのだ。
それに対して私は132cmと、シアンよりも少し……いや、最近ではシアンも成長著しく、知らない間に私は身長を抜かれてしまっている。
……改めて考えて見ると、希望なんて無いのでは無いかと思ってしまう。
いや、なまじささやかな希望があるからこそ、絶望は……いや、私自身言っているじゃないか。
絶望を信じすぎるなと。
そんな風に考えていると、エリーゼから声を掛けられる。
「わたしとしては、フェムトくんが小さくてよかったなって思ってるよ?」
「……エリーゼ?」
「だって、こんな風に抱きしめてあげられるから」
そう言ってエリーゼは私を正面から抱きしめた。
私の正面の視界が、エリーゼの胸元でいっぱいだ。
ふわりと抱きしめられ、その温かく、柔らかで、いい匂いが私の脳髄を蕩けさせる。
「ねぇフェムトくん。知ってる? こうする事でしか摂取出来ない栄養素が存在するって事」
「……そんな物があるのですか?」
「うん♪ これが無いとわたし、とてもじゃ無いけど生きていける気がしないんだ。……フェムトくんがわたしの事、いい匂いがするとか、柔らかいとか、温かいって思ってくれてるけど、わたしも似たような事を感じているの」
「…………」
「例えば、フェムトくんの匂いだとか、温かさとか、見た目とは違う逞しさとか。後はサラサラの髪だったり、何処までも吸い込まれるような青色の瞳だったり……沢山の【フェムトくん成分】のお陰で、私はこうやって笑顔でいられるんだよ?」
「エリーゼ……」
「……それに私は多分、寿命じゃもう死ねない身体になってると思う」
「ぇ……」
「今はまだ成長してる途中だからフェムトくんは分からないと思うけど、わたし自身、何となく分かるの。でもね、これはフェムトくんが悪いって訳じゃ無い。この感覚はあの忌まわしい実験の時に疑似人格を植え付けられた時から感じていた事。だから、あの時点でわたしは手遅れだった」
私はとんでもない秘密を知ってしまったのかもしれない。
エリーゼの言っている事は、人類の夢とも言うべきモノ。
「きっとわたしは、成長しきったらずっとそのままなんだろうなって、思ってる」
それは肉体年齢のピーク時を維持した状態での不老。
それ所か、このままエリーゼを成長させ続ければ、今度は死ぬ事すら出来なくなってしまうかもしれない。
「だからね、わたしはフェムトくんの成長が物凄くゆっくりで、内心ほっとしちゃってるの。わたしは一秒でも長くフェムトくんと一緒に居たいから。でも……」
「でも?」
「それでもいつか、フェムトくんは居なくなっちゃう。遠い未来の話だけど、それでも、いつかフェムトくんは……フェムトくんは……!」
私を抱きしめる腕の力が強くなり、私の頭上から温かな液体が零れ落ちる。
絶対に離したく無いと強く、強く願っているからだ。
……確かに今のままでは、私はエリーゼを残して死んでしまう可能性が極めて高い。
この戦いが終わった後、また戦いが始まらない保証はどこにも無いし、そもそも私自身の寿命と言う問題もある。
――ならば私に出来る事はそう、
これが出来なければ、エリーゼの男であると堂々と名乗る事等不可能と言っても良い。
彼女と同じ時を歩めずして、何が将来の伴侶か。
それに、私自身もっと強くなる必要がある。
寿命を超越するという事は、同じ場所にずっとは居られなくなる可能性も出て来るし、今後の戦いに巻き込まれる事がほぼ確定したような物だからだ。
「エリーゼ」
「やだ……やだよぉ……」
「大丈夫。私は居なくならない。ずっと一緒にいる」
「そんな、そんな……出来もしない事を約束されたって、わたし……!」
「出来るよ。その方法はもう、私達は知っている」
「ぇ……」
「互いの持つ因子を取り込み合うんです。そのお陰で私は
「フェムト、くん……! でも、そうなったらフェムトくんまで……! そんなのダメだよ。そんな酷い事、わたし、出来ないよぉ!」
まるで駄々っ子の様に泣き叫ぶエリーゼに対し、私はこれまでの訓練で培われた体術を用いてエリーゼを床に組み伏せ、目を合わせる。
そんな突然の出来事に、エリーゼは目を丸くして驚いていた。
初対面の時は輝きすら失っていたエリーゼの暗い紫色の瞳。
それは今まで私と共に歩み続けた結果、瞳に光が宿り、より強く彼女の魅力を引き立てる様になった。
しかし、そんな綺麗な瞳に今、悲しみの涙が流れ続けている。
私は優しく手でそれを拭いながら、それ以上に優しい声でエリーゼを諭す。
これ以上、悲しみの涙を流してしまわない様に。
「私がそうしたいからそうするんです。エリーゼが私とずっと一緒に居たいように、私だってエリーゼとずっと一緒に居たいんです」
「……信じていいの?」
「ええ。勿論。私の事、信じられませんか?」
「ううん。そんな事ない。ぁ……」
エリーゼの返事を確認すると同時に、私はエリーゼの柔らかな唇に口付けを落とす。
エリーゼと同じ時を歩む、誓いの口付けを。
……何て言うか、ずっと生き続ける事が決まったら、私の身長の悩み何てどうでも良くなってしまった。
何故ならば、長い時を生きられるなら身長なんてどうとでもなるからだ。
私はそのままエリーゼを押し倒したままの状態で、この身をエリーゼに預ける。
互いの頬に手を当て、見つめ合う。
ふと、周りが静かな事に気が付き、私とエリーゼは同時に横を見る。
「ん。大丈夫。私達はずっと一緒。エリーゼも、フェムトも一緒。だから泣かないで、アニムス」
「リトルちゃん……わたくし、わたくし……!」
リトルとアニムスは、奇しくも私達と同じ構図で言い争っていた形跡があり、今しがた仲直りした所らしい。
この光景を見て私達はお互い笑い合い、改めて互いの将来の事を誓い合うのであった。
エリーゼとの心の繋がりを感じた
フェムトはエリーゼと決して離れぬ強固な決意を固めた
エリーゼと訓練 |
|---|
私は今、トレーニングルーム内で信じられ無い物を見てしまった。
そのあまりのとんでもなさに、私は思わず沈黙してしまう。
「どう? フェムトくん。何処かおかしな所は無いかな?」
「…………」
「……やっぱり、変?」
一体何がとんでもないのかと言うと、
エリーゼは私が身長の事を気にしているのを知っている。
だから生命輪廻の力を使ってこの様な事をしてくれたのは理解できるのだが……
いけない。
エリーゼが、可愛すぎる。
私の持つ語彙力が追い付かず、可愛いが私の頭の中を埋め尽くしてしまう程に。
「変じゃない。エリーゼは可愛い。すっごく可愛い」
「ぁ……」
私はそう言いながらエリーゼを正面から抱きしめる。
今のエリーゼは生命輪廻の力で私よりも小さな姿だ。
それに合わせ変身現象による衣装もダウンサイジングされており、ボディラインを強調させる点は変わらないが、意匠は可愛らしさ重点と言った感じになっており、美しさよりも可愛い点をより強調した物となっている。
「えへへ……なんだか不思議な感じ。こうしてフェムトくんに包まれるの、すっごく心地良くって幸せで……新しいフェムトくん成分を補充出来そう♪」
私の腕の中で
普段のエリーゼ以上に体温が高く、それでいて女の子特有の柔らかい感触を私に齎す。
しかし、エリーゼはどうやって小さくなったのだろうか?
私が少し目を離している内にこの様な姿になってしまっていた為、詳細を聞かないと原因が分からないのだ。
「えっとね……最初に出会った時、
「ええ。あの時は本当に驚きましたよ」
「それでね、だったら私自身の体の大きさ位変化させる事が出来るんじゃないかなって思ったの。それでさっき試してみた結果がこの姿なんだ」
生命輪廻の力はここまで直接的に肉体の操作すら可能だという事に、私は驚いた。
……もしかしたら、私も上手く行けば
「多分出来ると思うよ。身長を縮めるよりも、伸ばす方が簡単な感じがするの。でも……」
「でも?」
「フェムトくんはまだ因子と練度が足りないと思う」
確かにその通りだ。
私が今生命輪廻の力で出来るのは、
だけどこれは大きな可能性を秘めている為、諦めると言う選択肢は私の中には存在しない。
「なら両方とも頑張らないと、ですね」
「うん! だから早速で悪いんだけど……お手合わせ、お願いしてもいい?」
「ええ、勿論」
私は両手にそれぞれ鉄扇を構え、エリーゼは大人の時と同様に小太刀と苦無の二刀流で私を迎え撃つ。
……リトル達はあの時と同様に静かになっている。
ならば私達は互いに打ち合い、因子をより強く馴染ませる為の手伝いをする必要があるのだ。
よって、互いが同時に飛び出すまでにかかった時間は余りにも短かった。
「はぁぁ! せい! やぁ! たぁ!」
「……っ!(思ったよりも攻撃が軽い! でも、その分踏み込む速度も速い! 甘く見ていると手数で押されてしまいそうになる!)」
――この行為は、互いを高める為の儀式。
それは鋼と鋼をぶつけて鍛え上げる鍛冶師が如く。
互いに重い感情をぶつけ合うようなライバル同士での戦いが如く。
恋人同士が互いに一つになるかの如く。
最初は私と同じくらい小さくなった影響で動きがぎこちなかったエリーゼだったが、あっという間にその体に合った動きに適応させ、私と互角に打ち合うようになった。
その動きは正しく鏡合わせ。
寸分も狂わぬ互いの攻め。
こうした得も言われぬ高揚感を持った、楽しい時間。
そんな時間が、もう終わろうとしていた。
リトルとアニムスが互いの因子をまたもう一段階強く結びつけることによって。
(フェムト。終わったよ)
このリトルの声を合図に、私の手が止まった。
同じようにエリーゼの手も止まる。
お互い動きを止めたまま見つめ合い、笑みをこぼす。
こうして私達はまた一つ、強くなる事が出来た。
但し、まだ身体を操作できる程因子が交わった訳では無い。
それが出来る様になるのは、もっとずっと未来の話になるだろう。
私達は訓練を終え、互いに変身現象を解除。
それと同時にリトルとアニムスが姿を現した。
現したのだが……アニムスも今のエリーゼと同様に小さくなっていた。
それも、リトルよりも小さな姿に。
「どうかしら? リトルちゃん。わたくし、おかしくないかしら?」
「フェムトの気持ち、良く分かった。すっごく可愛い。ん。どこもおかしくない」
リトルが感想を言い終わると同時に小さくなったアニムスが、彼女の胸元へと飛び込み、幸せそうで蕩けた表情をしていた。
そんなアニムスに、リトルは頭を優しく撫でる。
「おぉ……これは新感覚。まるで妹が出来たみたい」
「あぁ……
「…………ッ!!!! アニムス。今の言葉、もう一度言って」
「? お姉様?」
「……エリーゼの気持ち、良く分かった。フェムトからしか取れない栄養素があるって聞いた時は良く分からなかったけど、今のアニムスを見てるとそれが良く分かる。そう、今のアニムスからしか取れない栄養素がちゃんと認識出来る」
どうやらリトルは、所謂【アニムス成分】を見出したらしい。
今の姿のアニムスが放ったお姉様と言うセリフは、リトルには物凄く衝撃的だったのだろう。
……まあそれは置いておくとして。
「あぅぅ……服がブカブカになっちゃってるよぉ」
「……その姿で外に出る時専用の服を用意しないとダメですね」
「うん……」
変身現象を解いてもそのまま小さな姿を維持出来ているのは流石だと思ったけど、それが理由で元の姿の服が着られなくなってしまうのは当然の帰結。
なので一度服を全部脱いでもらい、この時の姿でも着られる服を後で購入する為に身長を始めとした体形のデータを取った後、私達は汗を流す為にお風呂場へと向かうのであった。
エリーゼを次のミッションから出撃メンバーとして選択する事が可能になりました
ミッション出撃時にエリーゼの姿の設定が出来る様になりました
情報解析 |
|---|
ダイナインとの戦いでは思わぬ要素が目白押しだったお陰か、解析率は九割五分と言う後少し、本当に後少しと言う所まで迫った。
これはあのペスニアによって彼が蘇生した事で発生した特殊な戦闘によるものが大きい。
そう言った意味では大いに助かったと思っても良いのだが、死にかけた事を考えると複雑な気分であると言わざるを得ない。
リトルマンティスも今回の戦いであちこちにガタが来てしまい、最終的に一から作り直した方が早いとまで言われてしまう程だった。
まあ予備パーツは一機分余裕で賄える位にはある上に、どうやら私はこんな状態でも想定以上に消耗を抑えられていたらしいのだ。
むしろここで派手に壊れたお陰で、これまで蓄積されたデータを取り入れた新たなリトルマンティスを新造出来ると喜んですらいたのだから、整備班の人達は逞しいと思う。
……さて、アビリティ作りを始めよう。
ここまでデータが揃ったならば、いよいよTAS本来の想定である多人数接続に必要なアビリティの作成も可能だ。
これに関してはマイナーズリンクがいいデータを取ってくれていた。
これは人間やAIを始めとした意思を持つ存在と接続が可能となるアビリティで、コレのお陰で
初期のTASではこれが出来る前は第七波動のみと接続していたのが理由で繋がりが甘い所があり、ここがボトルネックとなって多人数接続を阻んでいた。
しかし、マイナーズリンクによって人ともリンクする事が可能になった為、人を経由して第七波動と接続する事でより強固な接続が出来る様になっており、接続維持に極めて高い安定度を叩き出した。
そのお陰でリトル以外の第七波動達の声もTASで拾う事が出来る様になったのだ。
さて、多人数接続が出来る様になるのだから
……のだが、今一名前にピンとこない為、先ずはダイナインから得られた戦闘データをアビリティにする作業を優先する。
(先ずは私達の精神状態で攻撃力が変化するハイプラウドを強化と最適化を施した【デタミネーション】、相手の攻撃に合わせてこちらの攻撃を当てた際の威力を上げる【カウンター】、TASに蓄積された第七波動のデータから相手の弱点を割り出す【オートアナライズ】、シャリーアライブの欠点である一度だけと言う制限をチェインスキルのデータを利用してある程度克服した【ガッツ】、
何と言えばよいのか、まだ本命を完成させて無いのにこれだけのアビリティが出来上がってしまった。
初期の頃は三つだけだったと言うのに。
まあ、解析面でも成長できたと喜ぶべきだろう。
しかしやはりと言うべきか、あの蒼黒い雷の解析は簡単には行かないらしい。
手応え的にはもう少しで解析は出来ると思うのだが。
……さて、実はもう多人数接続が可能になるアビリティは作成できており、後は名前だけと言う状況だ。
TASの頭文字である【Tag】とは、主に二人組で協力して事に当たることを意味する。
私としては略称を変えるのは嫌な気持ちもあるので、ここは戦術の意味合いを持つ単語に置き換えようと思う。
(正式名称は
勿論今の段階でもバグ取りは重点的に行うが、それでも実際に使ってみないと分からない事もある。
今の戦いを行いつつぶっつけ本番でテストを行うと言うのは自殺行為に他無いので、次のミッションは開始前により念入りに動作テストとバグ潰しを行う必要があるだろう。
私にとってこのシステムは生命線その物なのだから。
GET ABILITY デタミネーション カウンター オートアナライズ ガッツ インデュア スローイン SPフォーカス マルチプルコネクション
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇ストラトスに恋人が居る事について
オコワで実験体となる前は人望の厚い好青年であったと言う設定から、恋人の一人や二人は居るものと判断して出来たオリ設定。
ストラトスは望まぬ薬物漬けによってヒドイ事になっていたのでリハビリも大変である事が想定された為、支えになる人が必要なのではと吟味した結果でもある。
なお、恋人の名前は出さない予定。
〇フェムトのネットサーフィンについて
青き交流の力を用いてランダムに情報を収集し、記憶に蓄積させると言う物。
その性質上、記憶の中に格納されている任意の情報を引き出すのにリトルの力を借りる必要があり、なかなか融通が利かない一面もある。
〇リトルとアニムスの関係について
リトルの今回の行いにより、アニムスはバイセクシャルに目覚めた。
元よりアニムスはリトルに対して好意的だった事もあり、今回の件が色々な意味でトドメとなった。
が、アニムスは小さくなる事で逆にリトルに対して新しい扉をこじ開けると言う快挙も成している。
因みにだが、リトルはエリーゼに対してもバイセクシャルの扉を既にこじ開けている為、アニムスがそうなってしまうのは必然であると言う側面も存在する。
〇フェムトの身長が伸びている件について
実は体を鍛えすぎている事が伸びない原因では無く、フェムトの中に存在する天使の因子が理由で成長が凄まじくゆっくりになっているのが原因。
なので相応の時間をかければエリーゼ以上に背が高くなる可能性が存在する。
だが、その為に必要な時間は到底普通の人間の寿命は過ぎてしまう為、何気にフェムトも寿命の長さで周りから取り残されるリスクがあった。
〇エリーゼの寿命について
ただでさえ原作で言う所の地下施設に運ばれるまでの怪事件によって能力が強化された状態だと言うのに、それに加えて仮想人格の植え付けをされた実験の副作用によって能力が高まった影響で寿命によって死ねなくなってしまった。
勿論オリ設定です。
今まではその事を自覚する事は無かったが、自身が成長するにつれて自覚するに至り、それに加えてフェムトが少しづつ成長していると言う事実がエリーゼを精神的に追いつめる引き金となった。
〇いつもとトークルームの締めが違うことについて
互いの好感度がMAXになった状態であり、エリーゼが参戦する為の条件の一つ。
勿論トゥルーエンドの条件であると同時に、フェムトがエリーゼと共に本当の意味で歩む事を決意する話でもある。
なので、ここからはエリーゼも何処か遠慮していた部分が完全に取っ払われ、
なお、メタ的に言うと死ねなくなったタイミングはもっと前の話なのは内緒だぞ♪
〇エリーゼとアニムスが小さくなれた事について
生命輪廻による肉体を無から生成する力を転用し、自身の身体を操作する事で出来る様になった高等技術。
何気にアニムスと離れた状態でも出来る様になっており、エリーゼ自身の成長と第七波動の力の増加を表す描写でもある。
そしてフェムトの
その為、本編でこの事を描写できるかは不透明。
〇エリーゼが選択可能になった事について
エリーゼと互いの好感度がMAXになった状態で規定回数エリーゼと訓練をこなすと解禁。
解禁出来るタイミングはここが最速である為、ミッションで連れて行ける頻度は少ない。
それと同時に小さくなる事も可能になった為、出撃時に体の大きさを選択する事が可能。
性能の違いは大人姿だと攻撃性能が高く、子供姿だと回復性能が高いと言った特徴を持つ。
メタ的な話になるが実は罠要素でもあり、次のミッションにエリーゼを連れて行くとトゥルーエンドフラグが折れ、ノーマルエンド確定の状態となってしまう。何故そうなるかと言えば、エリーゼは元々隠蔽されなければならない存在である為、早い段階で存在が露呈してしまうと色々とヤバイ事になってしまうから
〇TASについて2
正式名称
二人組と言う縛りが解除され、複数の能力者と組むことが出来る様になった。
それに加え、組んだ能力者をアビリティで強化する事で戦力増強も可能である為、ロックオンを主体とした戦いに参加しなくても十分な恩恵を得られる点もある。
メタ的に言うと沢山居る味方が一部のインフレに置いて行かれないようにする為のシステムでもあり、突然誰かがイベントによって仲間になって中途半端な性能で足並みが乱れる、と言った事を防ぐ狙いもある。
それと、フェムトの力の設定がGVを上回らない状態で強化をする為のギミックでもある為、この方式でならいくらでもフェムトを強化できると言う
〇
本編第三十二話で頑張っていたリトルが
フェムト死亡時に発動し、強化した状態で蘇生する。
ガンヴォルトシリーズで無くてはならないシステムの一つであり、今回の話でようやく実装されるに至った。
条件は翼戦士を五体撃破とTASの完成とエリーゼの参戦。
因みに魂の修復も条件の一つではあるのだが、これはエリーゼの参戦の条件を満たす事で自動的に達成する為省略している。
勿論トゥルーエンドに必要な条件でもある。