ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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サイドストーリー





 ここは皇神ビルの副社長に与えられた一室。

 今回の事件において様々な可能性を予想していたケースの内の一つがほぼ確定である事が分かった為、事前に()()()()()()()()()()()()()を待つ序にここでその詳細をボクは把握していた。


(やっぱりか……皇神を成長させると言う点においては価値観を共有していると思っていたんだけどね。本当に、残念だよ)


 目の前に広がっている多くのホログラム画面に映し出されているのは、ボクがここまでの地位に至るまでに政争で争い合った人達による秘密裏の金の流れを纏めた物。

 この金の流れは途中でアナログな手法が使われているらしく、彼らならではの老功ぶりにボクは苦笑いを浮かべるしか無かった。

 何しろこのお陰で全容解明に時間が掛かってしまったのだから。


(フェムト達のミッションに事あるごとに現れていたテロリスト達。彼らの資金源がここからだったなんてね。全く、嫌になるよ)


 一体何が彼らをそうさせてしまったのか?

 ボクは彼らを追い落としはしたが、会社に居られなくなる程に追い詰めた訳でも無いし、ボクなりに慈悲を与えたつもりだったのだが。

 追い落としたボクが言うのはアレだけど、彼らはボクよりも長く生きているだけあって、馬鹿では無い。

 むしろ従順な振りをして、隙を見せたら再びボクを追い落とそうと機会を伺うタイプであり、直接テロリストを嗾けるような短絡的行動を取る人達では無いのだ。

 それに彼らの思惑は様々ではあったが、皇神グループを成長させる事に関しては共通していた。

 何しろ皇神グループは国内だけでは無く、海外の企業や国等にその技術を狙われている。

 そうなると当然上層部である彼らも狙われる為、思惑は違えど団結しなければ忍び寄る敵対者にやられるのは必然と言えた。

 中にはボクみたいにあえてスパイを泳がせたり協力すらする人達も居るが、それらは大抵何時でも根切り、或いはそれを逆手にとって利益にすらしてしまう為の布石だ。

 まあ、こんな連中だからこそボクはパンテーラの力がどうしても必要だったんだけどね。

 そんな風に彼女の事を考えたのが理由なのだろうか?

 ボクから少し離れた位置に紫色の縦に長い鏡が二枚現れ、くるくると横に回ると同時に二人の女性が姿を現した。

 一人はボクも良く知る皇神内での活動時の女性の姿をしたパンテーラ。

 今のボクに対して向ける不敵な笑みは相変わらずと言った感じであり、その様子にボクも思わず笑みを返す。

 そしてもう一人はボクの知らない女性だ。

 何とも不思議な雰囲気と美貌を持った女性であり、何処かの国の富裕層を思わせる気品さも併せ持っている。


「やあパンテーラ。()()()()()()()()嬉しいよ」

「フフ……ワタシもよ。紫電。この出会いに、愛を感じるわぁ」

「キミは相変わらずみたいで何よりだよ。……所でそこの女の人は、例の?」

「ええ」

「ワタシ、【ニケー】と申シます。アナタの事、パンテーラかラ良く聞いテいマス」

「よろしく、ニケー。もう知っていると思うけど、ボクは紫電。月読紫電。パンテーラの力を借りてここまで来た(皇神の副社長の座を得た)者さ。出来れば長くお付き合い出来ればボクも嬉しい。……ちなみにだけど、どんな風に聞いているか尋ねても?」

「エエ。パンテーラ、アナタのこトを良k……」

「ニケー? それはミステリアスに隠しておいて欲しいわぁ。……秘匿される愛もまた美しい。そうでしょう?」


 その先の言葉が気になるんだけどねぇ……先ずは要件を済ませるとしよう。

 パンテーラが連れて来た彼女はニケーと呼ばれる女性で、裏八雲の人達も用いていると言う【占星術】の使い手だ。

 本当は裏八雲側の方の力を借りたかったんだけど、流石にボク位の立場の人間が色々な手順をすっ飛ばして秘匿技術(オカルト)の恩恵に与るのは、最悪色々な意味で摩擦を生みかねない。

 なので、今回の黒幕の居所を探る為に彼女の力を借りようという訳だ。


「デは、早速……見えマす。隠された地下収容施設(カタコンベ)、かつテ命を司ル三匹ノ蛇を弄ビ、禁忌ヲ犯しテ滅ビた場所。そコの更ニ奥深クに彼らハ居ます」


 随分と抽象的だが、ニケーの言いたい事は何となく分かった。

 ボクは以前、フェムトと共に緊急ミッションで倉庫に偽装した研究施設が存在する地下施設に向かった事があった。

 そこは()()()()()()()で既に壊滅しており、ボク達が到着した頃にはゾンビが這い出て来るなんて言う創作の中でしか起こりえない出来事に遭遇。

 そこでボク達は事態の収拾を図り、結果として今はフェムトと同居しているエリーゼを保護するに至る。

 つまり、ニケーが言っているのはそこの事だろう。

 命を司る三匹の蛇に該当する存在は当時のエリーゼ達以外当てはまらないだろうから。

 そこまで分かればもう大丈夫だとボクはニケーにお礼を言おうとしたのだが……何やら様子がおかしい。

 先ほどまでは普通であった顔色が、一転して真っ青の状態になってしまっている。

 この事態に、流石のパンテーラも困惑を隠せない様だ。


「黒い……黒イ蝶ガ見えマス……黒い蝶がワタシ達を……! そ、そんナ、()()()()()()()……!?」

『あらあら? 覗き見するのはマナー違反よ? まだ準備中なんだから……ね?』

「……! これは驚いたわぁ。まさかニケーの愛を逆探知しちゃうなんて」


 占星術を始めてニケーの様子が変になった後、ボク達の目の前に彼女の言っていた黒い蝶……即ち、フェムトから報告を受けていた黒いモルフォ改め、ペスニアと呼ばれる存在が突然姿を現した。

 彼女はボクが使っている机に脚を組みながら座り、不敵で何処か壊れてしまったかのような笑みをこちらに向けている。

 正に彼女はフェムトの報告通り黒いモルフォと形容するべき外見をしているが、意外な事に服装はボク達の知るモルフォよりも逆に露出が少ない。

 本来のモルフォが肌を見せている上半身は、少しだけ肌がうっすら見える黒のインナーで、スカートからチラリと見える太もも部分も黒のストッキングによって隠されている。

 この事から何と言うか、ボクは彼女に対して意外にも【身持ちが堅い】印象を受けた。

 まあそれはさて置き、突然現れた彼女に対して反射的にボクとパンテーラはニケーを守る様に立ちふさがる。

 それと同時に光学迷彩で姿を隠していたシスをボクの傍らに出現させ、何時でも変身現象(アームドフェノメン)を起こせるように身構えた。

 立ち塞がる際に見たパンテーラは表情こそ何時もの物だったのだが、目だけが笑っていなかった為、彼女もまた警戒しているのが良く分かる。

 背中に流れる冷や汗と共に、彼女の存在はこれまでの人生で感じた事の無い危機感をこれでもかとボクの意識に訴えかけた。

 目の前の存在は危険であり、放置すれば間違い無く国を乱す。

 それ所か、下手をすれば海外の方にも飛び火する可能性は十分ある。

 こうして場の緊張感が高まり、戦いの始まりが秒読み段階にまで差し掛かろうとしていたのだが……


『あぁ、心配しないでいいわよ。今日は別に貴方達を襲おうって思ったわけじゃ無いから』

「何?」

『ただちょっと、()()()をする悪い子に釘を刺しに来たってだけよ』

「あ……アぁ……」

()()()()()()もそうだけど貴方達みたいなのって、こう言う安全な場所からコッチをのぞき見するの大好きよねぇ。全く、証拠隠滅(ネタバレ対策)するわたしの身にもなってみなさいな。……思わず、皆殺しにしたくなっちゃうじゃない』

「……ニケー、下がりなさい」

「パ、パンテーラ……! 申シ訳、あリませン……」


 ボクの聞きなれない口調でニケーを下がらせるパンテーラ。

 普段は人を喰ったかのような彼女だが、本来の彼女はこっちの方が本性なのかもしれない。

 ……さて、どうするか。

 下手に刺激をすれば何をしでかすか分からない相手である以上、迂闊な動きをする訳には行かない。

 そう思っていたら、ペスニアがボク達に、いや、正確にはニケーに対して歩いて近づき、恐怖で青ざめている彼女の顎に手を添える。

 まるでボク達の事を無視するかの如く。


『フフ♪ 随分と怯えちゃって、カワイイわねぇ♪ ……ねぇ。何か他に見えてたりしないかしら? 得意なんでしょう? 占星術って言うの』

「ア……あァ……」

「ニケー! ……身体が、動かない!?」

『大人しくしててね。()()()()()()。貴女に動かれると面倒だから。勿論、副社長さん達も同様に、ね。今、すっごく大事な所なんだから』

「…………」


 最強の能力者の一角だなんて言われているボク達が身動き一つ取れず、ペスニアに生殺与奪の権利を一方的に奪われてしまっている。

 これは第七波動であるシスも例外では無く、自身に何が起きているのか分からず困惑の表情を浮かべている有様。

 ……状況は最悪一歩手前と言った所で、ペスニアの機嫌一つでいかようにも変化する絶望的状況と言った所だ。


『ほら、早く言いなさいな。わたしもあまり暇じゃ無いんだから。……あぁ、大丈夫よ。別に殺しはしないわ。今回は……ね』

「……すこシ、集中すル時間ヲ下さイ」

『ええ。いいわよ』

「………………………………」


 辛うじて落ち着きを取り戻したニケーが目を瞑り、集中している。

 それに合わせ、何やら淡く薄い黄色の輝きが彼女を包み込む。

 これが恐らく、彼女が全力で術を行使した場合の状態だ。

 ――これはボク達だけの命運では無く、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな直感を、ボクは半ば確信したように感じ取った。

 そんなボク達の運命は……


「見エましタ。……小さク淡い青色ノ星が、多クの星々を束ネ、混沌を照ラスでしョう。そしテ、あナタの野望ハ潰えマす。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『………………へぇ』


 どうやら、ニケーはボク達にとって悪くない未来が見えたらしい。

 ボクとパンテーラはペスニアによる何かしらの干渉によって、ニケーの様子を見る事は出来ない状態だ。

 なので声音で判断するしかないのだが、少し気になる事がある。

 声音が妙に高揚している風に聞こえるのだ。

 いや、別にこの絶望的状況でより良い未来が見えたのなら多少そうなると言うのは何となく分かるのだが、何と例えればよいのだろうか?

 そう、例えるならば……信者が覚醒してしまった(お目覚めしてしまった)時の声に近い。


「アナたは滅びルのでス。小さき救世主(メシア)の手にヨって」

『ふぅん……そっか。そうなんだ。……ふふ。ふふふ♪ アハハハハハハハハハハ♪ そう! そうなのね! やっぱりあの子は、わたしを終わらせてくれるのね! すっごくイイコト聞いちゃった♪ もう最高の気分だから貴方達の事、見逃してあげる♪』


 ペスニアの許しと同時に、ボク達は体の制御権を取り戻した。

 なので、真っ先にニケーの方へと顔を向ける。

 彼女は先ほどと打って変わり、とても穏やかな表情でペスニアを見据えており、顔を青くしていた時とはまるで別人と言っても良い。

 そして、肝心のペスニアはそんなニケーに対して狂ったように笑い続けている。


「……あんまりその姿でそんな笑い方、しないで欲しいな。モルフォのブランドイメージが崩壊しちゃうじゃないか」

『いいじゃない。別に。この部屋は防音なんだし、漏れやしないわよ。それに……知っているかしら? 希望が光輝いている程、闇は暗い影を落とすってコトを』

「何が言いたい?」

『簡単に言うと……闇落ちモルフォって、意外と需要が高いのよ? わたしのこの姿が生まれた経緯ってそんな感じだったし』

「そんな話、聞いた事が無いけど」

『そりゃあそうよ。このせk……っと、しゃべり過ぎるのも良く無いわね。フフ♪ 機嫌が良いと口が軽くなっちゃうから、そろそろお暇させて貰うわ。チャオ!』


 ペスニアはそのままビルの窓の壁をすり抜けながらこの場から飛び立ち、姿を消した。

 それによって緊張感が切れ、ボクは思わずシスに寄りかかってしまう。


「紫電、大丈夫?」

「大丈夫……とは、あまり言えないかな。正直寿命が縮まるかと思ったよ。まあでも、生き残れたから勝ちは勝ちさ。そう思わない? パンテーラ」

「……紫電」

「何かな?」


 ボクの返事に対して、パンテーラは少女の姿(本来の姿)に戻る形で答える。

 ボク所か、下手をすればシアンよりも幼い姿の彼女。

 不思議の国のアリスと、年不相応の大人びたその瞳によるミステリアスなアンバランスさが、彼女の持つ妖しい魅力を引き立てている。

 しかし間違い無く彼女は多国籍能力者連合エデンを束ねる巫女であり、頂点に君臨する存在だ。

 そんな彼女がこの場で、あの大人びた姿からこの姿になったのは大きな意味を持つ。


「これよりエデンは、皇神と一時休戦する事を提案します。全てはあの黒き蝶から、皆の愛を守る為に」

「その提案、歓迎するよ。今はどんな形であれ戦力は欲しいからね。アレは危険だ。ボク達が文字通り手も足も出なかったんだから」


 こうしてボク達は一時的であるとは言え、エデンとの休戦と共闘をする盟約を交わす事になるのであった。






第三十五話 暗躍する黒蝶 現れる皇神第拾参ビル

 

 

 

 

 最近、睡眠欲と言う物が少なくなったように感じる。

 

 何と言えばよいのか……そう、敢えて言うなら身体が常に活力がみなぎっている状態と言えば適切だろうか?

 

 この事をエリーゼに話して見た所、彼女はもうずいぶん前からその様な状態が続いていたのだと言う。

 

 具体的に言うと研究施設で仮想人格を植え付けられた時からであり、その際に生じた副作用とも言うべき能力の高まりが原因だと彼女は話した。

 

 私が関わり始めた初期のエリーゼは目に隈が出来ていたのを覚えているが、文字通り眠れなかったのが原因だった。

 

 思えば肌も荒れ、抜け毛も枝毛も多く、いつもお腹が痛かったのも眠れなかった事にプラスしてむごい仕打ちを受けていた時の多大なストレスが理由だと今では分かる。

 

 そうなると、一つ疑問が出て来くる。

 

 何故眠れていないのにこれらの症状が治まり、逆に健康になったのか?

 

 その理由は私にあるのだと言う。

 

 色々な人を紹介し、コミュニケーションできるようになった事。

 

 困った事があったら何処からともなく現れて助けてくれる事。

 

 勇気の無かった彼女の手を無理矢理取り、彼女がイメージしていた檻から連れ出してくれた事。

 

 その他さまざまな要因によってエリーゼの精神状態が改善され、生命輪廻(アンリミテッドアニムス)に向き合う勇気を持つ事が出来た。

 

 お陰で自然と生命力の扱いが習熟し、このリソースがエリーゼの健康面を維持する事に貢献しているのだ。

 

 そして、身体が完全に健康になった時を境に、エリーゼから睡眠欲と言う物が完全に消し飛んでしまった。

 

 以前の状態だったならそれは更なる絶望へと叩き込む事実だったのだが、この頃はもう私と恋人となっていた為、逆にエリーゼにとっては祝福と呼べる物になる。

 

 彼女はこれまでの絶望的環境下では無気力で、何かを取り組もうと言う気持ちが存在せず、何も出来ずにいた。

 

 その時間を取り戻すと言う意味で、文字通り眠らずに様々な事に取り組んだ。

 

 お菓子作りや料理、裁縫等の家事なんかもその一環であり、最近では自身の戦い方への幅を広げる意味も兼ねて踊りなんかも始めている。

 

 そういう訳で、私が眠れなくなったのはアニムスの因子を取り込んだ事で生命力(ライフエナジー)を扱うようになった事だった。

 

 

「あれ? でもエリーゼって、私と一緒の時は眠っていたような……」

 

「ごめんね。ずっと寝たふりをしてたんだ」

 

「……エリーゼには悪い事をしたのかもしれませんね。私が眠るまで寝たふりをしなきゃいけなかったんですから」

 

「ううん。そんな事ない。だって目を瞑ってから眠るまでの時間なんてすぐだったし、眠っているフェムトくん、すっごくカワイイんだもん。ずっと見ていられるくらいに。それにね。フェムトくんから貰ったネグリジェ、着心地すっごくいいし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()♪」

 

「えぇ……それ、初耳ですよ?」

 

「フェムトくんって、リトルちゃんを使う関係で脳をよく使うでしょ? だから、一度眠ると朝まで何をしても絶対に起きないの。……色々とやりたい放題出来て、楽しかったなぁ」 

 

 

 エリーゼはこう言うが、今まで眠っていた時は疲れはちゃんと取れてたし、むしろ朝目覚めた時はものすごく快調なのが普通だった為、イマイチイタズラされたと言う実感がない。

 

 その理由も、エリーゼから語られる事になった。

 

 

「わたしの余剰の生命力をフェムトくんに流し込んでたから色々と元気だったんだよ」

 

「あぁ……いつも気分よく目を覚ませてたのはそれが理由だったんですね」

 

「うん。それに……その頃は色々と試行錯誤もしてた時でもあるから。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() もう魂にヒビがあちこちに入ってたから、生命力を流し込んでも駄々洩れ状態で……フェムトくんと訓練してライフリカバリーが使えるようになってなきゃ、どうなってたか……」

 

「……私の知らない所で、試行錯誤してくれていたのですね」

 

「そうだよ。だから……ちゃんと責任取ってね? わたしを置いて逝っちゃダメだからね?」

 

「ええ。置いて逝きません。絶対に」

 

 

 改めてエリーゼと共に生きる決意を固めたので話を戻すが、私もこのまま因子を取りこんで習熟すれば、エリーゼと同じように眠らない状態で健康を維持する事も出来る様になる。

 

 だけど、その間に関しては少々問題になりそうだ。

 

 つまり、今の私は色々と中途半端な状態なので眠らなくても良くなったが、眠気が無くなる訳では無く、中途半端な覚醒を維持する状態になってしまう。

 

 一応リトルを使えば問題は解決できるが、それによって割かれるリソースによって作業効率が落ちてしまうのだ。

 

 

「それなら解決する方法は簡単だよ」

 

「エリーゼ?」

 

 

 エリーゼは私を抱きしめると、何やら温かなモノがエリーゼから流れ込んで来る。

 

 その温かな物は、心地よさと共に私の身体に更なる活力を与えた。

 

 

「フェムトくんが習熟するまでの暫くの間は、私の生命力を使ってね」

 

「ありがとうエリーゼ。……最近私はエリーゼから貰ってばっかりですね」

 

「ううん。わたしがフェムトくんから貰った沢山のモノに比べれば全然。だから、わたしに出来る事限定でだけど……もっと頼っていいんだからね?」

 

 

 そうは言うが、エリーゼは私の命の恩人でもある為、何かお返しがしたいと言うのは事実だ。

 

 なので、どうして欲しいか尋ねた所……

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()な。ワガママで、無理なお願いなのは分かってるけど……」

 

 

 確かに、この願いは普通に考えたら無理な事だが……

 

 可能性が無いわけでは無い。

 

 考えてみれば、()()()()()()を長期間同じ相手と繋いだ場合のデータと言うモノが無かった。

 

 なので、ここはひとつ提案をしてみる事にした。

 

 

「エリーゼ、その願い、叶えてあげられるかもしれません」

 

「え?」

 

「ですが、これをする事で行動制限がきつくなる可能性が大きいですし、多大なリスクを抱える可能性もあります」

 

 

 順を追って説明すると、あのシステムと言うのはTAS(タクティカルエアレイドシステム)の事だ。

 

 そもそもの話になるが、TASで長時間接続した際の挙動のデータを取っていなかった。

 

 ミッションが日を跨ぐ位長期化する可能性を考慮すると、こう言ったデータ取りも必要になって来る。

 

 エリーゼのお願いのお陰で、その事に気が付けた。

 

 それにペスニアの存在も、エリーゼと常時繋がっていたい事の理由でもある。

 

 彼女の存在が一緒に暮らしているエリーゼ達に多大なリスクを与えてしまっているのだ。

 

 あれ程強大な力を持った存在である為、一時はエリーゼと離れる事も視野に入れた事もあったが、エリーゼも私も今更離れ離れで生活するなんて考えられないのだ。

 

 それならいっそ、多少のリスクを抱えてでも……TAS経由でエリーゼの存在が露呈してしまってもいいと割り切った方がマシだと私は考えている。

 

 彼女がその気になれば私の居所など即座に把握するだろうし、今の生活を続けていればそれによって芋づる式にエリーゼの存在も露見するのだから、気にしても仕方がない。

 

 ……ペスニアの事について、エリーゼには既に話している。

 

 その上で、彼女はノータイムでそれでも一緒に居る事を選択してくれたのだ。

 

 ――私達はもう、運命共同体。

 

 私が死んでも、エリーゼが生き返してくれるだろう。

 

 だけど、逆に私を置いてエリーゼが逝ってしまったら……その時私が彼女と同じように生き返す手段があるなら、私は迷わずその手段を取る。

 

 だけど、その手段が無かったら……私はエリーゼの元に向かう(エリーゼと心中する)

 

 これはもう決定事項だ。

 

 誰にも覆させやしない。

 

 その時私を止める相手が紫電やGVであろうとも。

 

 

「「(わたし)達は何時いかなる時も皆を想い合い、支え、共に歩む事を、ここに誓います」」

 

「「(わたくし)達は何時いかなる時も皆を想い合い、支え、共に歩む事を、ここに誓う(誓いますわ)」」

 

 

 私達の話を黙って聞いていたリトルとアニムスと共に、私達は【誓いの言葉】と共にTASで接続する。

 

 健やかな時も、病める時も、何時いかなる時も繋がり続ける事を誓いながら。

 

 

「凄い……前よりもずっと強く繋がってる感覚がする」

 

「これが完成されたTASです。何気にエリーゼ達が一番乗りですよ。接続したのは」

 

「えへへ、嬉しいなぁ♪ これでわたしも、フェムトくんのミッションに参加出来るかな?」

 

「まだダメです。もうバレるのは時間の問題ですが、それでもエリーゼの事は可能な限り伏せておきたい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()筈だったのですから。……今後しばらくの間、私とエリーゼは前線基地で生活、及び待機する形になるでしょう。前線基地にリスクを晒してしまいますが、元より基地と言うのはそう言う物ですし、エリーゼの力による怪我の治療なんかも考えると合理的です」

 

「わたしの方も学校の方は夏休みに入ってるし、宿題も全部終わってる。だから暫くの間はそう言った行動制限をされても大丈夫。それにいざとなったらやめる事だって考えてるんだから」

 

「エリーゼ……でも、それだと」

 

「大丈夫。わたしには時間が無限にある。だから何度でもやり直せばいい。そうでしょう?」

 

 

 こうして私達の意見がまとまった為、この案を紫電に相談して見た所、OKを貰えた。

 

 なんでも紫電の所にもペスニアが現れたらしく、その脅威を実感出来たのが理由なのだと言う。

 

 そういう訳で私達は暫くの間、我が家を留守にする事になるのであった。

 

 なお、飼い猫であるみーちゃんは私達と離れるのが嫌であるらしい為ついて行く事となり、その愛らしさで前線基地でも人気猫となるのは、また別の話だ。

 

 

 

 


ミッションセレクト

 

 

 

 

「それじゃあデイトナ、イオタ、TASの接続テスト、始めるよ」

 

「おぅ。頼むぜフェムト」

 

「完成したTASがどのような物か、見せて貰おう」

 

「それじゃあリトル。接続を」

 

(ん。接続を開始するよ)

 

 

 ここは前線基地にある訓練所。

 

 今回はデイトナとイオタに新しくなったTASによる接続テストの協力を依頼しており、問題が無ければこのまま今回のミッションに向かう流れになっている。

 

 このテストを始める前の段階でバグ取りは可能な限りしたが、実際の運用データはどうしても欲しい。

 

 ここで手を抜いてミッション中に何かあったら、取り返しがつかないからだ。

 

 

「接続完了。どう? 二人共? 何か違和感とかある?」

 

「問題ねぇよ。って言うか、前よりもすっげェ力がみなぎるぜ。完成したって言うのは伊達じゃねぇな」

 

「イオタの方はどうですか? 何かおかしなところがあったら言ってくださいね」

 

「うむ。……少し動いてもいいだろうか?」

 

「ええ。お願いします」

 

「お、ならオレも付き合うぜ。()()()も早く動けってせっついてるしな」

 

 

 私がお願いしたと同時にイオタが訓練所を縦横無尽に飛び回り、デイトナが背中のバックパックを変形させて四つ足形態となり、炎を纏いながら駆け抜ける。

 

 ここの訓練所は空中機動の訓練が出来る位広めに作られている為、イオタが飛ぶ分にも、デイトナが走る分にも困らない。

 

 ある程度動き回ったイオタは、そのまま自身を光に変えての移動も行う。

 

 ……以前見た時よりも光子から肉体に戻った際のスキが少なくなっている。

 

 これはアビリティの恩恵もあるだろうが、イオタ本人の努力と宝剣を人型に変えた事も大きい。

 

 それにデイトナの方も、足裏から小規模に指向性を持たせた爆発を利用する事で加速力をが増している。

 

 あの扱い方は敵を踏み台にする時もダメージを与えると言う点でも有利な為、機動性と攻撃を兼ね備えた一手と言えるだろう。

 

 

「うむ。体感してみて良く分かった。このシステムは将来この国を守る為の大きな力となるという事がな。良く完成させてくれた。フェムト」

 

「ありがとうございます。ですが、本当の意味で量産化させるのはまだまだ先の話になりそうです。ここから無駄を削ぎ落して皇神兵達にも扱えるように調整する必要がありますから」

 

「オレ達だけが強くなってもこの国全体が守れるって訳じゃあねェからな。こう言った底上げもしとかねぇとオレ達も無駄に苦労しちまう。持ちつ持たれつってヤツだな」

 

「それじゃあこれらのデータを一旦纏めてTASに反映させますので、一旦接続を解除します。その間、二人は変身現象を解いて休んでいてください」

 

「おう。【エクス】。変身現象を解除。休憩すっぞ」

 

 

 デイトナの返事と共に彼の変身現象が解除され、現れたのはデイトナを一回り小さくしたかのような男の子の姿。

 

 爆炎(エクスプロージョン)の第七波動である彼の名前はエクス。

 

 かなり強気で好戦的な性格をしているが、その野性味あふれる見た目からは想像が出来ない位教育が行き届いており、意外と常識的な一面も存在する第七波動()だ。

 

 何処か野生的でギラギラした瞳をしており、人の形を取った途端デイトナに対して拳を突きだし、デイトナも突きだされた拳に自身の拳を軽く当て、笑顔で軽く言葉を交わしていた。

 

 

「へへ♪ どうよ? オレ様も随分と様になっただろ?」

 

「へっ! 良く言うぜ。……ま、及第点ってトコだ。もっと精進しとけよ。エクス」

 

「ムカッ! もう少し位褒めてくれてもいいじゃんか!」

 

「褒めたら調子に乗りまくる癖が直ったらちゃんと褒めてやるよ」

 

「ぐぬぬ……」

 

「相変わらず猪突猛進ですねぇエクスは。もう少し我を見習って落ち着きを持ったらよかろうに」

 

 

 そう言いながら姿を現したのは残光の第七波動である【フォトン】。

 

 緑と赤のオッドアイを持つ緑がかった長い銀髪の軍服姿の、女性タイプのヒューマノイド宝剣だ。

 

 性格はイオタに似ていかにも軍人と言った感じだが、彼女はイオタ以上に【言葉遊び】を好む所がある。

 

 

「あんだと? やんのかコラ!」

 

「フッ。貴様では光そのものである我を捉える事等出来ぬさ」

 

「とか言いながら、オレ様に一発喰らったのはどこの誰だったかねぇ? あん時のなっさけねぇ姿はケッサクだったぜ!」

 

「あれはエクスが音速(おそ)すぎたから花を持たせただけにすぎぬ。そんな事も分からぬか」

 

「それがめっちゃ床をゴロゴロして痛がってたヤツが言うセリフかよ! なっさけねぇの! なにが光速(はや)いだ! ちょいと手や足を置けば勝手に自爆するだけじゃねェか! それに、言葉遊び(中二病ゴッコ)もたいがいにしろよな! 恥ずかしくねぇのかよ!?」

 

「お、おのれ……! 言わせておけば!」

 

 

 初対面のデイトナとイオタを彷彿とさせるやり取りに、私は懐かしい気持ちになった。

 

 きっとこの二人(エクスとフォトン)は、今の二人(デイトナとイオタ)と同じように仲良く……いや、もうなっているのだろう。

 

 彼らは長くデイトナとイオタを経由して互いを知っているのだから。

 

 ……よし、TASの更新は問題無し。

 

 バグも多少は見つかりましたがすべて修正済みだ。

 

 後は細かい所を調整して……

 

 

「しっかしよぉ、今日はやけに怪我人多くねぇか? 医務室前に列が出来ちまってるじゃねぇか」

 

「今日からこの基地に臨時に配属された()()の能力を測る為のテストの一環だ。治療が出来る第七波動能力者は私達の様な戦闘者よりも貴重な存在。今はまだ落ち着いている故、治療に手の回る限界を測りたいのだろう」

 

「本当かよ? だったら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってのはその一環って事なのか?」

 

「……待て、デイトナ。それは確かか?」

 

「あぁ。……何て言うか並び直した奴等、すっげぇだらしねェツラしてやがる」

 

「ミッションが終わったら矯正する必要があるか」

 

「だな。……所でよォフェムト。アレ、放っておいて大丈夫か? あそこで頑張ってる彼女はお前の()()だろ?」

 

 

 そう言いながら、デイトナは()()()()()()()()私に話を振った。

 

 ……本音を言えば、今すぐあの列に居る人達全員吹っ飛ばしたい気持ちはある。

 

 だけどそれ以上に、私は彼女の――エリーゼの事を信じているのだ。

 

 

「大丈夫ですよ。信じてますから」

 

「ふむ。あの位では動じぬという訳か」

 

「なんっつうか、互いに通じ合ってる感すげぇよな。お前ら。……しっかし、まさかフェムトに先を越されちまうなんてなぁ」

 

「私の場合、この手のチャンスはどうしても少ないですからね。頑張りましたよ。本当に」

 

「あん時のお前、無茶苦茶必死だったもんなぁ。まるで別人みたいだったぜ。はぁ……何処かに良さそうな子、居ねぇかなぁ」

 

 

 こんな風にデイトナは言っているが、彼は皇神グループ内の女性陣からの人気がかなり高い。

 

 普段乱暴な所がある人が時折見せる優しさや、本人の外見からは想像できない位常識的な所を持つ点が魅力的なのだとか。

 

 本人には知られていないが、決着が付くのがしばらく先になりそうな位の争奪戦が繰り広げられており、何故か私も――と言うか、この外見のせいなのだろうけど――巻き込まれた事があったりする。

 

 だけど、私はそんな女性陣に対して思う事があった。

 

 そんな風に争っていると、横からサっと掻っ攫われるのではないのかと。

 

 デイトナは私から見ても良き友人であり、男なのだから。

 

 ちなみにだが、イオタは昔ながらのお見合いによって決まった婚約者が居るらしく、この手の悩みには無縁の存在だったりする。

 

 軍人の名家の生まれであるイオタには、今ではすっかり珍しくなったお見合いをする為の人脈があるのだろう。

 

 ……これでよし。

 

 細かい調整はここまでで大丈夫。

 

 後は調整後の確認も兼ねて、エリーゼにテレパスで様子見も合わせて連絡を取ってみる事にした。

 

 まあ、あの状態だからこちらに応答している暇は無いのかもしれないが。

 

 

(テスト。テスト。ただいまテレパスのテスト中。テレパスのテスト中)

 

(あ、フェムトくん。調整終わったの?)

 

(ええ。二人の協力のお陰でバッチリです。そちらの様子は大丈夫ですか? 何やら列が凄い事になってますが)

 

(全然平気。皆思ったよりも傷は浅いみたいだから。ただ、何度も並んでいる人もちらほら居るからちょっと心配な所もあるけど)

 

(それは多分、エリーゼの事が目当てで並んでるだけだと思う)

 

(そうかなリトルちゃん? わたしから見るとアニムスの事を目当てにしているように見えるのだけど)

 

(……アニムスが表に出ているんですか?)

 

(うん。人手が足りないからこう、生命輪廻の力で身体を構築して人手を増やすって感じ。ほら、前に仮想人格達(エリーゼ2とエリーゼ3)に身体を作った事あったでしょ? それと同じ感じかな。……う~ん、一人一人を治療してたらキリが無いなぁ)

 

(これはエリーゼに対する能力テストの一環も兼ねていますからね。音を上げるまでこのままな可能性があります。まあ、ここまで休みなく治療できれば十分合格だと思いますが)

 

(じゃあもうしばらく頑張るね。多分こう言った事って、最初が大切だと思うから)

 

 

 テレパスのテストを終え、TASの調整も完了した私達は早速今回のミッション先である皇神第拾参ビル建設予定地へと向かう。

 

 そこは本来、何もない真っ新な土地だけが存在する筈であった。

 

 しかし移動している最中、前回のミッションと同じ現象が起こる。

 

 そう、ホログラムで構成された建物が姿を現したのだ。

 

 その建物は、恐らく完成した皇神第拾参ビルそのもの。

 

 それだけならば、前回とあまり変わらないと判断することが出来たのだが、今回は更に輪をかけて異常事態が発生している。

 

 

(おいおいマジかよ。話には聞いてたけどよ)

 

(突然ビルが出現するとは面妖な。……それにこの()()()()、これまでの相手とは訳が違うらしい)

 

(アキュラが言うには今回の相手と想定されているインテルスと言う女性は、重力を操る第七波動能力者だと聞いています。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とも聞いています)

 

(そりゃあこんだけの事が出来るってんなら、最強なんて言われてもおかしくはねぇだろうな)

 

(へっ! 最強だろうが何だろうが、オレ様の爆炎で消し飛ばせば一緒だぜ!)

 

(おいエクス。重力は我が光に干渉出来る力でもある)

 

(だからなんだってんだよ?)

 

(油断をするなって事だよ! 別に、お前の事を心配してるわけでは無いからな! 本当なんだからな!)

 

(んなムキになんじゃねぇよ。……まあ、お前がそう言うのは珍しいからな。忠告はしっかり受け取っておくぜ)

 

(そ、それなら良いのだ! それなら)

 

 

 第七波動同士による微笑ましい青春にちょっと心を癒されつつ、私達は改めて少し離れた位置から出来たばかりのビルを眺める。

 

 入り口付近を見る限り、リトルマンティスを突入させるスペースは存在しないらしい。

 

 まあ前回のダメージと、これまでの戦闘データの蓄積を反映させる作業もあってどちらにしろ出撃は不可能であったのだが。

 

 とは言え……

 

 

(真正面から突入するのは避けた方がいいな)

 

(ですね。私でも見た事の無いパターンのセキュリティがあるみたいですし。解析する事も多分出来ますが……)

 

(余計な労力は使いたくねぇな。……そういえばよォ、アキュラから突入方法とかを何か聞いてねぇのか?)

 

(そう言えば……資材搬入用の移動中の輸送列車に取り付いて突入したって話を聞いた事があります)

 

(って事はだ。どっかにそれに該当する横穴みてぇなのがあるんじゃねぇか?)

 

(一度周りを良く探索してみるのも手だという事か)

 

 

 ただ、どう言ったルートを進んだとしても私達が来ている事がバレているのは間違いない。

 

 そうで無ければ私達が来たと同時にビルが出現するなんてありえないのだから。

 

 まあどちらにしろ、周りを一度探索する必要はあるだろう。

 

 

 

 


 

STRIK

 


 

 

 

 

 私達から見て丁度死角の位置に、資材搬入用の列車が入り込む横穴であろう箇所を発見。

 

 そこも案の定守りを固めている様子が見て取れたが、それ以上に目立つ存在があった。

 

 あれは入り口付近にも居た見た事の無い無人自立型戦闘機らしきモノだ。

 

 確か、アレについてアキュラからデータを受け取っていた筈だ。

 

 

(型式番号BSM-02【ガランド】。向こうの世界でも最新鋭の戦闘機ですか)

 

(おぉ! 未来の技術なだけあって、カッコイイではないか! なあなあフェムト、あの長い砲身、名前がついていたりしないのか!?)

 

(えっと……高出力エネルギー砲【アクセルブラスト】と呼ばれるモノみたいですね)

 

(おぉ! 良い。良い響きじゃないか!)

 

(まぁーた始まりやがったよ。コイツの悪い癖が。……んで、アレに弱点見てぇなのは無いのか?)

 

(爆発物に弱いみたいですね。なので、ここはデイトナの攻撃を主軸にして、私達は周りのメカ達を相手にするのがいいかと)

 

 

 本来ならば私自身が直接取り付いてハッキングから無力化と言う手もあるのだが、前回みたいに建物が崩壊するような事を考えると、完全に破壊する方がリスクは少ない。

 

 それにTASの運用データ取りも兼ねている為、なるべく戦闘データは多めに確保しておきたい思惑もある。

 

 

(んじゃ、その手筈で行こうぜ。他に入り口らしきはねェし、ビルの正面にはコイツが三体居るしな)

 

(では、EPレーダー発動と同時に仕掛けて下さい。デイトナ、頼りにしています)

 

(こっちもお前らの事、頼りにしてるぜ。……この場の軽くなれる性質、利用させて貰うとするか)

 

(周りの相手は私達に任せて貰おう)

 

 

 作戦開始の合図にEPレーダーを発動。

 

 ガランドには【赤いロックオンマーカー】が、その他のメカには【緑のロックオンマーカー】が付与される。

 

 これを合図にデイトナがボルケーノアックスによる炎を纏ったカカトオトシの強襲を叩き込み、間髪入れずに至近距離で爆炎の力による炸裂弾であるアングリーボムを叩き込んだ事で一気に半壊。

 

 それと同時に周りのメカはロックオンする前に展開していたビットからのレーザーによる攻撃である降リ注グ光ノ御柱(ルミナスレイン)によって撃破。

 

 残った相手も縦横無尽にレーザーをばら撒く煌ク断罪ノ滅光(ジャッジメントレイ)によって壊滅。

 

 それでも半壊したガランドは辛うじて無事だった砲身にエネルギーを収束させ始めたのだが、全ては遅すぎた。

 

 

「これで仕舞いだ! デヤーッ!」

 

(あぁ! 折角のカッコイイ戦闘機がぁ……)

 

(フォトン、お前それでいいのかよ……)

 

 

 空間を蹴ると同時に小型エネルギー弾をばら撒く【フェイントアサルト】を離脱と同時にデイトナが放った事がトドメとなり、ガランドを撃破。

 

 私達は無傷での突破に成功する。

 

 まあ、この位出来なければ話にならないだろう。

 

 こうしてこの場に居る敵を全滅させ、私達は先を進む。

 

 そして、私達の視界がゲートモノリスの姿を捉えた。

 

 

「お、ゲートモノリスじゃねぇか。未来でも現役なんだなぁ。コイツはよ」

 

「我らの時代よりも未来でも、変わらぬものもあるという訳か。……フェムト、頼む」

 

「ええ」

 

 

 ゲートモノリスを解除し、私達はビル内部へと突入。

 

 内部は外よりもずっと重力異常がヒドイ有様で、周りに存在するゴミらしき存在が漂うような形で宙に浮いている。

 

 その中には汚れたモルフォ人形なんて物もあり、未来でのモルフォは過去の存在なのだと私達に物悲し気に伝えられた気がした。

 

 そんな中、私達の前に見慣れぬ皇神兵らしき存在が()()()()()()()()複数現れる。

 

 これまでにない相手が現れた事で様子見していると、彼らは()()()()()()()()()()()()()による攻撃を行った。

 

 ……間違いない。

 

 これは紫電も使っている念動波(サイコキネシス)の波動だ。

 

 念動波は移植する際に適応できる人達が多い能力であると聞いている為、珍しい事では無いのだが、それでも一般兵にも能力を使わせることが出来る時点で十分脅威だと言える。

 

 しかし、私達にとってその行為は神経を逆なでするのに等しい行為でもある為、彼らの末路は例外無く消滅すると言う結末である事は確定事項であった。

 

 

「ハッ! 温過ぎんだよ! アイツ(紫電)はこんな生温いナメた攻撃なんざしねぇ!」

 

「紫電様を模倣するのは良い着眼点であるとは思うが……いささか使い方が甘いと言わざるを得ん! ビット達よ、かの者達を断罪せよ!」

 

 

 デイトナとイオタは紫電との付き合いが長い。

 

 なので、この様な事をされたら二人の逆鱗を逆なでする事と同意義であると言えるのだ。

 

 そして、憤っているのは二人だけではない。

 

 私自身、例外では無いのだから。

 

 私は残った相手に対してワイヤーガンを射出し、直撃させる。

 

 そのまま能力と動きを封じ込め、自由落下させる形でかの者に死を与え、ホログラム状へと崩壊させた。

 

 その後、私達は最上階へと続くであろうエレベーターを発見。

 

 電源は落とされておらず、このまま乗り込んで使う事も出来るだろう。

 

 ……念の為、エレベーターをコントロールする為の端末にハッキングを仕掛けて見る。

 

 

(これは……()()()()()()()()()()()みたいですが……ダメですね。下を見る限り、()()()()()()()()()()()()()みたいです)

 

 

 それでも万が一の可能性も考えて降りる事も試してみたのだが、途中まで降りる事は出来た。

 

 だが土の部分を突破するのは流石に無理だったらしく、戻れるギリギリの所で停止してしまう。

 

 なので結局、私達はインテルスが居ると思われる最上階へと向かうしか無かった。

 

 そちらに関しては幸い問題無く機能してくれて、私達は特に障害も無く最上階へと向かう事に成功する。

 

 そして、社長室と思われる場所に突入した私達を待っていたのは……

 

 

『ね? 凄かったでしょ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の必死っぷり♪』

 

 

 いきなりの大暴露をインテルスに叩き込んでいるペスニアの姿であった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




〇テロリスト達に資金提供をしている皇神上層部について
これまで登場していたテロリスト達は、彼らの資金援助によって活動していた。
何故彼らがこんな短絡的な行動に出たのかは不明だが、目撃者によると彼ら一人一人例外無く()()()()()()()()()()()()()()目が虚ろであったのだと言う。
そしてある日を境に姿をくらませてしまっており、その行方は不明とされている。

〇パンテーラについて
一部で話の矛盾(紫電が久しぶりに会えてと言った所)がありますが、これは勿論ブラフ。
今回は兼ねてより敵対者の正体を把握する為に、前から協力をこっそりと紫電が依頼していた事、即ちニケーの占星術で敵の正体と拠点を知る事を果たす為に戻って来たといった感じ。
本来は共闘する予定など無かったのだが、自身が文字通り手も足も出なかった事から皇神と()()()()共闘する事を提案するに至った。

〇ニケーについて
髪を操る第七波動【タングルヘア】の能力者。
オカルト技術筆頭の、鎖環における裏八雲でも使われている占星術を扱う事が出来る御方。
しかしこの強力な探知能力が今回逆にピンチを招く要因となってしまう。
が、メタ的に言うと最後のトゥルーエンド判定持ちであり、今回の事を口にした場合確定となり、エリーゼを次のミッションに連れて行くと言う選択肢が存在しなくなる。
逆に絶望的な内容を口にした場合は……残念ですが、次のフェムトくんに期待しましょう。
因みにだが、ニケー以外のオカルト探知能力持ちの海外のオカルト組織の人達はペスニアによる逆探知で全て捕捉されてしまっており、彼女は自身を偏在させつつ探りを入れた全組織に対して今回の様に釘を刺している。
そのお陰で副次的に海外ではカルト的な黒モルフォブームが到来するのだが、それはまた別の話。
なお、今回の裏八雲に紫電は話を回さなかった為、後から紫電が頭領さん経由で調べようとするとマズイ事を知らされる為セーフだったりする。

〇紫電達の身体が動かない事について
ある資格を持たない者がペスニアと対峙すると、彼女の許しが無い状態では問答無用で動けなくなってしまう。
本小説内で資格があるのはフェムト、GV、アキュラ、アシモフ、シアン、ミチル、ロロ、テセオさん、ブレイド辺りが該当します。
メタ的な話になりますが対策は勿論存在しており、実はもう現時点で既に対策済みだったりします。
逆に言うと、コレの対策が出来ていないとノーマルエンドが確定してしまう。

〇シスの光学迷彩について
シスは自身の能力を利用して姿を消しており、必要になるとその姿を現す。
理論上いかなる物理現象も引き起こせる念動波の応用の一つであり、本小説内のオリ要素。

〇フェムトとエリーゼが睡眠欲を感じなくなっていることについて
これは生命力が常に体を満たしている事で身体を維持するのに睡眠が不要になってしまったのが理由。
副次的に体の傷の治りが常人に比べてとても早くなっている。
それでも無理矢理眠る方法も当然ある。
それは何らかの形で意識を失う事。
……つまり、番外編案件です。
フェムトくんはエリーゼに対して色々とアレな事をしていますが、逆にエリーゼもフェムトくんに対して色々と致してしまっている。
生命力が体に満ち溢れているという事はつまり元気いっぱい(性欲を持て余している)という事でもある。
だから二人が事あるごとにイチャつく機会も必然的に多かった。

〇エクスについて
爆炎の第七波動がヒューマノイド型宝剣に換装した姿。
デイトナを小さくした感じの男の子であり、性格もそれに準ずる。
後に記載するフォトンとは文句を言い合いながらも、何だかんだでつるむのは悪く無いと思っている。

〇フォトンについて
残光の第七波動がヒューマノイド型宝剣に換装した姿。
思いっきりイオタの言葉遊び好きの影響を見た目も含めて受けている軍服姿の女の子。
エクスに対してツンデレめいた挙動をしているが、まだ互いに色々と自覚していない為喧嘩をする事が多い。

〇イオタの婚約者について
イオタは優秀な軍人を輩出している名家の生まれと言う設定が存在している為、そう言った名家ならお見合い位存在しているだろうと言う事で発生した設定。
これもストラトスの時と同様、名前を出さない予定。

〇デイトナの人気が高いことについて
宝剣による感情の高まりによってボロを出さなければ間違い無くいい人だと思うので生えた設定。
誰に掻っ攫われるのかはまだ未定。

〇ロックオンマーカーの色の違いについて
色に対応した能力者の攻撃が誘導する感じで、対象設定はフェムトが行う形となる。
ゲーム的な設定では、連れてきているメンバーの中で一番効果的な攻撃が可能な人達の色に自動で変化する。
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