ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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第三十六話 迫りくる死神の(ヤイバ) 響き渡る少女(リトル)の歌


サイドストーリー

 

 

 

 

 突然現れたビルの最上階へと辿り着いたオレ達の目に先ず飛び込んで来たのは二人の女の姿だった。

 

 一人はフェムトの報告で聞いていた黒いモルフォの姿をしたペスニアって言う姿を見ただけでヤベェって断言出来る女。

 

 もう一人はちょいと変わった薄緑色のボブの髪型をした見るからに「デキる女」みたいな雰囲気を持った女。

 

 フェムトからのまた聞きになっちまうが、確かコイツの名前はインテルスっつう名前だった筈だ。

 

 オレ達が来ている事なんて分かっているだろうに、変身現象(アームドフェノメン)もしていない状態でペスニアと何やらおかしな話をしている。

 

 

『ね? ね? 見てよここ♪ 「お嬢様を助ける為ならば、ワタシはこの様な苦痛、いくらでも耐えて見せましょう!」って部分! 愛されてるわねぇ~インテルスったら♪』

 

『……ペスニア、あまりふざけるのもいい加減にしとき。こないな事で、ウチの心が揺れると思わへんことや』

 

『ふぅん……そんな事言うんだ。でも体は正直よねぇ~。顔がニヤけてるの、隠せてないわよ。いい加減素直になったらいいのに。貴女はもうお嬢様でもガルガンチュアの敏腕女社長でも無くて、只の女なんだから……ね』

 

『…………』

 

『ここには貴女の思う信用ならない部下だって居ないのに、どうしてそんなに片意地張っちゃってるのかしら?』

 

『……アンタ、分かってて聞いとんなぁ?』

 

『フフ……♪ わたしは貴女を()()()()()()()()()()()なんだけどねぇ……そんなに怖いのかしら? ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 何て言うか、意地の悪い会話だぜ。

 

 オレ達の視界には()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()姿()()()()()()っつうのに。

 

 しかもご丁寧にインテルスからは完全に死角と来たもんだ。

 

 ひょっとしてペスニアのヤツ、恋のキューピットでも気取ってるつもりかよ?

 

 何が目的でこんな事してやがるんだよ全く。

 

 しっかしあのダイナインってやつ、さっきから顔が二転三転してて初々しいなオイ。

 

 フェムトが言うにはアイツ、三原則だかって言うのを突破してるって話だったな。

 

 ……コイツはある意味ヤベェ状況じゃねぇか。

 

 今迂闊に前に出たら、馬に蹴られてゴー・トゥ・ヘル案件になっちまう。

 

 っておい!

 

 

(イオタ! まだ前に出るんじゃねぇ!)

 

(何故だ? 仕掛けるなら今がチャンスだろう?)

 

 

 オレは前に出ようとしているイオタの肩に手を置いて必死になって止めに入る。

 

 イオタは婚約者居るんだからそんくらいわかりそうなもんなんだが……

 

 

(今は黙って見とけ! 下手に突っ込んだら地獄逝き待ったなしだぞ!)

 

(……ですね。それにインテルスとダイナインは兎も角、ペスニアはこちらに気が付いている様です。不意打ちは通用しないでしょう)

 

 

 フェムトは恋人が居るだけあって理解が早くて助かるぜ。

 

 しっかし、なんっつうか、焦らされてる気分だなこりゃあよぉ。

 

 

(なーなーデイトナ。何の話してんだ?)

 

(オトナの話だ。お前もその内関係して来るかもしれねぇから黙って見とけ)

 

(ふ~ん……)

 

 

 話を戻すが、ペスニアがこっちに気が付いてるのは確かであり、こちらの事を時折チラリと確認しているのだ。

 

 しかもその視線には「今前に出たらコロス」って意思をこれでもかと分かりやすく込めてやがる。

 

 いや、マジでイオタを止めて大正解じゃねぇか。

 

 こんなやっべぇ馬に蹴られるのはゴメンだぜ、全く。 

 

 

『…………そんなん! 恐ろしいに決まっとるやん! ダイナインに嫌われてもうたら、ウチはもう生きていけへん! ただでさえこんな意味分かれへん状況に巻き込まれとるって言うのに!』

 

わたしも好きで巻き込んでる訳じゃないんだけどねぇ……こんな意味分かんない状況だから素直になれって言ってんのよ。ダイナインはもう三原則を越えた存在よ。貴女の想い位、しっかりと受け止めてくれる筈なんだから』

 

『でも、ウチは……』

 

 

 くそ、焦れってェな。

 

 とりあえずあの女社長が素直じゃねェのは分かった。

 

 こういう場合、経験者であるフェムトだったらどうするんだろうな?

 

 そんな風に思いながらダイナインの方へと視線を向け……()()()()()

 

 やべェと思ったのだが、ダイナインはこちらに対してインテルス達に知らせる様子はない。

 

 むしろ何て言うか、これは……助けを求めている?

 

 おいおいちょっと待て、オレは恋愛経験なんてゼロに等しいんだぞ。

 

 こういう時は経験者に頼るのがセオリーだから……

 

 

(フェムト、何かこう、何とかなんねェか?)

 

(……少なくともインテルスさん側に期待するのはダメですね。あの手のタイプは強引に告白に持ち込むのが正解でしょう)

 

(つまりダイナインに頑張ってもらうしかねェって事なのか?)

 

(ですね。こう言う場合男性側が覚悟を決める必要がありますので)

 

(なあフェムト。ソレをあそこに居るダイナインに伝えらんねぇか?)

 

(それをやってしまったら見つかっちゃいますって。……ひょっとして、もう見つかっていますか?)

 

(ああ。オマケに助けも求められてる。訳が分かんねぇ)

 

(えぇ……ですが、状況を動かすにはそれしかありませんね。このままでは千日手なのは確実です。……ここまで短距離なら指向性を持たせたEPレーダーを応用すれば……よし)

 

 

 フェムトが何とかダイナインに通信を送ったらしく、ヤツの表情が変化し、目を白黒させていた。

 

 その後、覚悟を決めた表情をしつつ、オレらの方へと身体を向け頭を下げた。

 

 ……なんっつうか、律儀なヤツだぜ。

 

 そして、意を決してヤツはインテルスの前へと躍り出る。

 

 

『え? ちょ、ちょっとダイナインったら、何で今出てきちゃうのよ!』

 

『な……! ダイナイン! まさか、今までのウチらの話を聞ぃとったんか!』

 

『はい。お嬢s……()()()()()

 

『な……ダイナインが、ウチを呼び捨てに……?』

 

『申し訳ありませんインテルス。ワタシが未だ感情を理解しきれていなかったせいで、貴女をここまで苦しめてしまいました』

 

『…………』

 

『正直に申し上げます。ワタシはインテルスの話を聞いて感情が高ぶりました。心地よい高揚感すら感じたのです。これは恐らく人間でいう所の恋、或いは愛と呼ばれる感情なのでしょう』

 

『ダ、ダイナイン……アンタ、まさか……』

 

 

 あの目茶苦茶お堅い女社長なインテルスがGVに熱視線を送っているシアンちゃんみてェな表情をしている。

 

 具体的に言うと、褐色の肌からでも分かる位熱に浮かされた様に顔を赤くさせて目を潤ませており、正に恋する乙女と言った風貌だ。

 

 女は化けるなんて聞いてはいたが、ここまで変わっちまうもんなのかよ。

 

 

『ワタシはインテルスを愛しています。例えワタシの事をどの様に思っていたとしても、ワタシのこの想いは決して変わる事は無い』

 

『……! ダイナイン!!!』

 

 

 溢れた感情が爆発してしまったのか、遂にインテルスはダイナインの元へと駆け寄り、彼の胸に縋りついた。

 

 そんな彼女をダイナインは優しく抱き止め、髪を撫でる。

 

 そんな状態でしばらくの時間が過ぎ……ダイナインの腕の中で、インテルスが独白する。

 

 

『なぁダイナイン……正直に言うけどウチ、ウチな……ウチの事で一生懸命だったアンタを見て、胸がときめいてたんや。必死にウチの為に頑張っとるアンタを見て、身体を熱くさせとったんや。最低やろ? こんなん、嫌われて当然や』

 

『大丈夫ですよ。その様な事で、ワタシはインテルスを嫌いになるはずが無い。……今にして思えば、インテルスはこれまでの業務上その様な事が許される立場ではありませんでした。だからこそワタシは思うのです。もっと、素直になられても良いのだと』

 

『ダイナイン……』

 

『先のペスニアの言葉の通り、今のインテルスはガルガンチュアの代表取締役社長でも、お嬢様でも無く、只の女性なのです。……ではインテルス、貴女の答えを聞かせて下さい』

 

『ウチは……ウチも、ダイナインの事、好きや! 大好きなんや! 誰にも渡さへん! ダイナインはウチのなんや!!』

 

『ええ。ワタシのこの身はインテルスの為に存在しているのです』

 

『もうウチから離れたらアカン。ずっと一緒や、ダイナイン……』

 

 

 ……すげぇもん見ちまったぜ。

 

 しっかしまあ、人とヒューマノイドとの恋、か。

 

 正直ちょいとしんみりしちまいそうだが、そうもいかねぇ。

 

 一先ずこの二人はいいとして、肝心のペスニアは……こっち見てんなぁ……

 

 具体的に言うと、フェムトの方を見てサムズアップしてやがる。

 

 しっかし、何だってペスニアはこの二人をくっ付けようとしたんだ?

 

 それにさっきっから敵であるオレ達に対して好意的に振舞うその意図は何なんだ?

 

 

『全く、最初っから素直になりなさいよね』

 

『……何の事だか』

 

『ま、いいでしょ。……出て来ていいわよ。アンタ達』

 

 

 やっと許可が降りたと思いつつオレ達はヤツらの前に姿を現す。

 

 しっかし、すっかりやり難くなったな。

 

 

『……! 侵入者が来とったんか』

 

「まーな。一先ずはおめっとさんと言わせてもらうぜ。本当は不意打ちでもかますのが正解なんだろうが……馬に蹴られてゴー・トゥ・ヘルはゴメンなんでな」

 

「そう言う事です」

 

『ふむ……フェムト殿、感謝いたします。アナタのお陰で、ワタシはインテルスと想いを添い遂げることが出来ました』

 

「いえ、ありふれたアドバイスを送っただけで、実行したのはダイナインです」

 

『ありがとうございます……それ故に、本当に残念で仕方がありません。貴方達と戦わなければならない事が』

 

「ええ。こちらもです。……今からでも遅くはありません。剣を引く事は出来ないのですか?」

 

『それが出来れば苦労はあれへん。()()()()()()()()()()()()。ここにおるペスニアのお陰で縛りは緩んどるが、大本が大本だけに根本的にどないもならへんわ』

 

「大本だと……」

 

 

 ただでさえコイツの時点でヤベェってのに、まだ背後に何かいるってのか。

 

 ……いや、そもそもペスニアはシアンちゃんでいう所のモルフォと似たような存在だ。

 

 だったらペスニアを操る大本の存在が居ても不思議じゃねぇのか。

 

 

『ペスニアは第七波動(セプティマ)や。つまり、それを操っとる第七波動能力者(セプティマホルダー)が大本ってことなんや』

 

『ペスニアの大本の第七波動能力者、その名称は■■■■■■■■■■と呼ばれております』

 

「あん? なんだって?」

 

『……やはり、検閲されていますか』

 

『……っ! ちょっとダイナイン! あんまし()()を刺激するの、やめて頂戴な。抑えるの大変なんだから。もし仮に龍放射が洩れたらわたし達もタダじゃすまないわよ』

 

(今、変なノイズみたいなのが……どういう事だ?)

 

『申し訳ありません』

 

「……一つ、いいですか?」

 

 

 フェムトがペスニアに向かって質問を投げかける。

 

 何やら気になる事があるらしい。

 

 

『あら? 何かしら? 今は気分がとってもイイから、ある程度なら答えるわよ』

 

「貴女が翼戦士を嗾けていると聞いていたのに、貴女はまるで彼らを助けようとすらしている。この矛盾、どう言う事なんですか?」

 

『フフ……「わたし」と「わたしを操る能力者」って、貴方達が知っている概念で例えるなら電子の謡精(サイバーディーヴァ)みたいな感じなのよね。そう、互いに同一人物って認識しているみたいにね』

 

「…………」

 

『嗾けてるのは本当よ。「わたしの本体」がそうしてるんだもの。色々と準備をしているのも企んでいるのも本当。それは「わたし」がしている事だから』

 

 

 なんだか話がややこしくなって来たぞオイ。

 

 なんっつうか、ペスニアと本体は互いに思惑が違うってのか?

 

 

『そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()。あるのはもう、只の防衛本能と呼べる物だけ。嗾けているのは結果であり、実態はただの暴走。……ホントにホントの大サービスよ? これ以上はその時に、然るべき舞台で、ね?』

 

「……ありがとうございます。では……」

 

『ええ。始めましょうか。……これもまた大サービスってヤツよ。未来の変身現象(アームドフェノメン)がどんなモノなのかを見せてあげるんだから。二人共、よろしくね』

 

『任しとき』

 

『分かりました』

 

 

 っと、来やがるか。

 

 ……色々とごちゃごちゃとしてきたが、それを考えんのは後回しだ。

 

 今は集中しねぇとな。

 

 ダイナインは胸元の内ポケットから、インテルスは着崩した制服の襟から【羽ペン】のような物を取り出し、切っ先をこちらに向けると同時に幾何学模様の魔法陣らしきものが展開される。

 

 

『『コントラクト!』』

 

 

 それらが二人の身体を通過すると同時に一瞬光ったその間に変身を終える。

 

 ダイナインはさしずめ騎士と闘牛士を混ぜたような風貌をしており、光の剣を片手にオレ達と対峙している。

 

 インテルスは独自の姿をしており、足の部分が一つに繋がって大型の剣のような下半身をしており、両肩に重量がありそうな円月輪を携えた状態で宙に浮いている。

 

 

『更にここから追加よ! 響きなさい! わたしの歌よ!』

 

 

 

 

 

 

 

我が歌うは嘆きの歌

 

誰も守れず悲嘆に暮れ

 

瓦礫の山にて虚しく響く

 

 

SONG OF TITANIA(ソングオブティターニア)

 

 

 

 

 

 

 

空が落ちて 騒ぎ出した 世界の片隅で

 

 

 

静かに藍を織りなす糸 生命縫い止めて

 

 

 

いまこうして 生まれ変わる ふたりの運命は

 

 

 

朽ち果て消えゆくその日まで

 

 

 

たとえ苦しんでも 今は見えなくても

 

 

 

 

 この歌はまだオレ達の世界では発表してねぇモルフォの歌である【藍の運命】。

 

 それをこうしてペスニアが歌っているって事は、やはりコイツは電子の謡精のなれの果てなのだと言う事実をオレ達に突きつける。

 

 この歌と共に、ダイナインとインテルスに蒼黒い雷が纏わりついた。

 

 本来ならばこの時点で二人は暴走するはずなのだが、二人の表情に暴走したと言う痕跡は無い。

 

 コイツの歌で纏う蒼黒い雷は、どうやら暴走を引き起こさないシロモノらしい。

 

 そうなるとフェムトが目撃していた暴走を引き起こしていたのは、コイツの本体の仕業と考えるべきなのだろう。

 

 

『ほな、始めよか。……頼りにしとるで、ダイナイン』

 

『お任せを。インテルス』

 

 

 フェムトからすれば相手が今まで暴走してたから何とかなっていたのだろうが、今回の相手は違う。

 

 強化された力を暴走無しに、存分に振るってくる相手だ。

 

 フェムトは兎も角、オレ達は初見。

 

 TAS(タクティカルエアレイドシステム)が強化されたとは言え、油断をすれば一気に押し負けてしまうだろう。

 

 この手の歌による強化の恐ろしさを、オレとイオタは身をもって知っているのだから。

 

 

「オレ達も気張っていくぞ! お互い望まねぇ戦いだが、向こうは容赦しちゃくれねぇからな!」

 

「ええ!」

 

「うむ。我が国を守護せんが為……この戦、必ず勝たせてもらう!」

 

『望んでいないのは本当で、わたし達も同じだけど、勝負とあらば勝たせて貰うわよ。もう既に布石は撒いてあるんだから』

 

「布石だぁ?」

 

『そもそもの話だけど、第七波動は精神がモノを言うわ』

 

 

 ペスニアはそう言いながら二対の【翠の鎌】と形容すべき武器を出現させ、連結させた状態で構える。

 

 その姿は黒いモルフォの姿もあり、まるで【死神】を連想させるもので、本気でこちらの命を刈り取ろうと言う意思をありありと見せつけた。

 

 

『貴方達はダイナインとインテルスと話をし、少なからず共感してしまうだけじゃ無く、二人の問題を解決すらしてしまった。そんな二人を相手にするのは心苦しいのでは無くて?』

 

「ハッ! オレ達がそんなタマに見えんのか! 舐めんじゃねぇぞ!」

 

「公私混同など、我等にあるまじきことだ」

 

『流石、七宝剣の能力者っちゅうだけあるな。……せやけど、()()()()()()()()()()()?』

 

「……!」

 

『フェムト様は見た限り、お優しい方なのは間違い無いでしょう。ですが……』

 

『それはこの戦いにおいては致命的なのよねぇ~。……動きが鈍ってるわよ! それじゃあこの先の戦いを生き残れないわ! 前に言ったわよね? 次に会ったら身も心もわたしのモノにするって。……本当に、そうなっちゃうわよ?』

 

 

 ちょっと待て、コイツらまさか、最初からフェムトの事を……!

 

 いけねぇ、立て直すまでフォローに回らねぇと!

 

 

『ダイナインはデイトナの足止め! インテルスは()()()()よろしく!』

 

『畏まりました』

 

()()()()()人使いの荒いやっちゃな。全く。ほな、見せたるわ!』

 

 

 インテルスの両肩の大型の円月輪が宙に浮き、ある程度距離を離したと同時に指向性の重力波が地面に放たれ、フェムトは身動きを取れなくなってしまう。

 

 アレは初見で躱すのは困難であり、オレでもある程度喰らわないと見切るのは難しい。

 

 その指向性の重力波が発射されたと同時にイオタがインテルスにビットによる攻撃でこれ以上手を出させないようにしているが、正直かなりヤバい。

 

 実際オレもダイナインに足止めされてしまっており、フェムトの救援に向かうことが出来ない状態なのだ。

 

 

『んふふふ。つ・か・ま・え・た♪ ……フェムト、貴方はもう助からない。これで人生ゲームオーバーよ。それで、次の転生先は……わたしのコ・マ・よ♪』

 

「ぐ……」

 

『さあ、先ずは刈り取る為の前準備! 行きなさい!』

 

 

 ペスニアから本人と同じ姿の黒いモルフォが無数にフェムトにゆっくりと向かっていく。

 

 向かって来た黒いモルフォが触れると同時に、フェムトの頭上に()()()()()()()()()()()が四つ現れ、その一つが消失した。

 

 アレが何を意味しているのかは分かんねぇが、全部消失しちまったら碌な事にならないと言うのは確信できる。

 

 それだけに、もう間に合わないのが確定してしまっているのが歯がゆくてしょうがない。

 

 

「退きやがれ! 今はテメェに構ってる暇はねェんだよ!」

 

『残念ですが、それは出来ません。……それにもう手遅れです。ああなってしまってはもう助かりはしません』

 

『ま、ウチらからすれば()()()()()()()()()()()や。ウチとダイナインに良くしてもろた礼もある。少なくとも、悪いようにはしぃひん。……と。今のウチはこんな事も出来るんや。あんたんのお得意のレーザー、通用せぇへんよ』

 

「ぐ……」

 

 

 インテルスは自身に放たれたレーザーを屈折させ、直撃を避ける。

 

 そういえばフォトンのヤツが重力は光に干渉出来るって言ってたっけな。

 

 って言うか、そんな事はどうでもいい!

 

 今はフェムトだ。

 

 アイツの頭上の霊魂らしき物はもう一つしか残っておらず、更に追加で黒いモルフォが接触しようとしていた。

 

 

『フフ……これで前準備はおしまい。B.B……わたしに力を貸して

 

 

 ペスニアは愛おしそうに連結した鎌を携え、口付けを落とすと同時に大型の緑色の刃を展開。

 

 対するフェムトには何やらドクロの様な物がロックオンされたかのように張り付いており、それはさしずめ死の宣告を告げているかのようだ。

 

 

『フェムト! 貴方はもう、死んでいるわ!!』

 

「かは……!」

 

 

 大型の死神の鎌がフェムトを捉え、その首と身体を分けた。

 

 それと同時にフェムトの身体は爆散し、辺り一面にアイツだったものの残滓が幻想的に青い輝きと共に舞い散る。

 

 

「フェムトォォォォォーーー!!!」

 

『アハハハハハハハ♪ これでもう貴方はわたしの……』

 

 

 

 

――――させない

 

 

 

 

『え?』

 

 

 

 

――――フェムトは、私が護る!

 

 

 

 

 

 

 

私の歌はただ一人の為の歌

 

貴方に捧げる魂の歌

 

そして、貴方を繋ぎ止める楔の歌

 

 

SONG OF PULSAR(ソングオブパルサー)

 

 

 

 

 

 

 

初めて貴方から離れた時 私は不安だった

 

 

 

一つで居るのが当たり前だったから

 

 

 

でも 私は知った

 

 

 

貴方の姿を 貴方の声を 貴方の温もりを

 

 

 

少し離れた景色が綺麗である様に

 

 

 

少し離れた貴方は 一つで居た時よりも綺麗だった

 

 

 

 

 フェムトが散った場所を中心に、リトルの歌が響き渡る。

 

 その歌はモルフォやペスニアの歌に比べれば拙く、お世辞にも上手とは言えない物だ。

 

 だけど彼女の心からの想いは伝わって来る。

 

 フェムトに対する感謝と愛情が。

 

 そして、散ったフェムトの残滓が再集束し、一人の少女の姿が顕現する。

 

 背中に小さな赤い羽根を、頭に赤い輪っかを携えながら。

 

 

『こんな所で終わっちゃダメ! 立ち上がって!』

 

 

 天使と見紛う姿をしたリトルが両手を掲げると、その手の先から爆散したはずのフェムトが肉体を再構成する形で復活を果たす。

 

 これはあの時の、まだ敵だった頃のGVを追いつめて仕留めたと思ったら復活を果たした時と同じ現象だ。

 

 そして、そんな復活をするという事は当然……

 

 

『何やて!? あの状況で復活!? イクスと同じ事するんかこのボウズは!?』

 

『フ……フフ……アハハハハハハハハハ♪ そうよ! そうよ! そうこなくっちゃ! そうじゃ無いと張り合いが……!? あうっ……!!』

 

『ペスニア!』

 

 

 当然、フェムトの第七波動(セブンス)も同様に力が開放されてるって事になる。

 

 今のフェムトは体全体から本人の長い金髪が大きく靡く程の蒼白い雷のオーラを身に纏っており、何て言うか、()()()()()()()()()()のだ。

 

 そんなフェムトは復活の直後、手をペスニアにかざすと同時にSPスキルである雷の聖域(パルスエクソシスム)をノータイムで発動。

 

 ペスニアを吹き飛ばすと同時にフェムト達はオレ達と合流する。

 

 

「ありがとうリトル。危うく彼女を一人にしてしまう所でした」

 

『ん。こんな時が何時か来るって思ってた。だから、色々と準備してた』

 

「「フェムト!」」

 

「デイトナ! イオタ! 心配をかけてゴメン」

 

「ゴメンじゃねぇよバカヤロウ! 後で色々文句言ってやるからな! もうくたばるなんて真似したらタダじゃおかねェぞ!」

 

「相手は体勢を崩している。フェムト、勢いのある今の内に、一気に畳みかけるぞ!」

 

「はい!」

 

 

 

 


 

STRIK

 


 

 

 

 

 フェムトが復活した影響なのか、TASを経由してオレ自身にも力がみなぎっている。

 

 これは恐らく今のフェムトからのおこぼれみたいなものだろう。

 

 今ならイオタと考案中だった合体SPスキルを扱う事だって出来るはずだ。

 

 

「合わせろイオタ! 例のアレをぶちかますぞ!!」

 

「奇遇だなデイトナ! 私もそう思っていた所だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

陽より来たれ核熱の龍

 

気高き憤怒の赤光よ

 

総て焼き切る終焉の刃となせ

 

 

プロミネンスブレイド

 

 

 

 

 

 

 

 体勢を崩している三人に対し、畳みかける様にオレ達は兼ねてより構想を練っていただけの合体SPスキル【プロミネンスブレイド】を発動。

 

 本来ならば初期段階の攻撃部分は相手を追いつめる為の牽制目的で放たれる物なのだが、それをフェムトが覆す。

 

 これまでは攻撃した直後のタイミングでEPレーダーを発動しても初弾の攻撃の誘導は間に合わない筈なのだが、今の強化されたフェムトならば十分に間に合う。

 

 

「これがEPレーダー改め、【フラッシュダート】です! タイムラグなんて与えません! デイトナ達の連携攻撃の全て受けて貰います!!」

 

『アカン! こうなったら被害を抑える為に少しでも落とさんと……! ダイナインはフェムトの一撃で目ぇ回しとるペスニアをマントで守るんや!!』

 

『畏まりました』

 

 

 

 

 

 

 

夢破れた秩序なき墓

 

鋼の遺物たちが目を覚まし

 

踏み入るものを包み砕く

 

 

グラヴィトンスクラバイター

 

 

 

 

 

 

 

 オレ達の連携攻撃に対しダイナインはペスニアの護衛を、インテルスは迎撃を選択。

 

 彼女は巨大化させた円月輪を盾に、オレ達の攻撃を迎撃するつもりなのだろう。

 

 だが、今のフェムトのロックオン誘導は一味も二味も違う。

 

 俺達の攻撃は円月輪を透過し、真っ直ぐに三人目掛けて突っ込んでいき、弾幕を浴びせかけて動きを封じる。

 

 そして、イオタはトドメに終焉ノ光刃(ゼロブレイド)を放ち、オレは……()()()()()S()P()()()()()()()()

 

 それはGVの雷の聖剣を参考にした、オレの足に宿る焔の聖剣。

 

 

 

 

 

 

揺らめくは太陽宿りし聖剣

 

紅炎の暴虐よ 敵を貫け

 

 

プロミネンスキャリバー

 

 

 

 

 

 

 

 オレはイオタの終焉ノ光刃に合わせて最大戦速で突っ込み、右足に宿る焔の聖剣を前に出し、そのままの勢いで飛び蹴りをインテルスに叩き込む。

 

 

「オオオオオオオオオオオオッ!!! 貫けぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

『クッ……ダイ、ナイン……!』

 

『申し訳ありません、インテルス……!』

 

 

 終焉ノ光刃に飲まれる寸前だったダイナインはペスニアを影響範囲外から弾き飛ばす。

 

 それと同時に、自身は光が創り出した虚無に飲み込まれ、そのままホログラム状に姿を消した。

 

 インテルスもオレの蹴りがそのまま身体を貫通し、同じくホログラム状に姿を消す。

 

 これで勝負は決した。

 

 そう、オレ達の逆転勝利だ!

 

 

 

 


 

CLEAR

 


 

 

 

 

『……あ~ぁ、今回はわたしも参加したんだからイケると思ったんだけどなぁ』

 

「へっ! あんましオレ達を甘くみんなってんだ!」

 

『ま、いいわ。これで()()()()()()()()()()()()()()()わたしの最低限の目的は果たされたし』

 

「……なんだと?」

 

『フフ……策士って言うのはね、どんな状況になっても美味しくなるように仕込むモノなのよ? わたしはインテルスの開放が出来たし、貴方達の現状の力を見ることが出来た。フェムトに関してはもう少しだったんだけど……ま、これ以上はヤブヘビになりそうよね』

 

『…………』

 

『おお怖い怖い。そんなに睨まないで頂戴な。カワイイ顔が台無しじゃない』

 

『やだ。フェムトの事、取ろうとした。……私知ってる。貴女のような人の事、【泥棒猫】って言うんでしょ?』

 

『ちょ……! 違うわよ! フェムトはあくまでカワイイのとわたしの目的に必要なだけで、わたしの想い人は別に……! っと、危ない危ない。余計な事を口にする所だったわ。なんて恐ろしいのかしら、この子は。ま、これ以上ここに居てもしょうがないから、わたしはお暇させてもらうわね』

 

 

 そう言いながら、ペスニアはそのまま壁を透過し、去っていったのであった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




〇ペスニアが二人をくっ付けようとしていることについて
これに関しては複数の理由が存在し、余りにもこの二人がじれったく見えてしまう事が一点。
互いがくっ付いた時に発生する精神的高揚による第七波動の強化(バフ)が一点。
フェムト達を巻き込み、二人に対して遠慮させる事による一時的な精神的弱体化(デバフ)が一点。
そして最後に、自身の時h……まだ、語る時ではない。

〇この二人をくっ付けずに不意打ちをした場合について
例えばまだこちらに気が付いていないダイナインに不意打ちをして退場させるとインテルスに怒りによる超強化が付与され、今回のお話以上に苦労する事になる。
と言うか、二人をくっ付けた方が結果的に強化幅を抑えることが出来る為、結局の所フェムト達は最適解を選んだと言う扱い。

〇ペスニアのSPスキルの詠唱について
彼女がこの世界に来る直前、どの様な境遇だったのかを端的に示した物。
彼女は自身を第七波動能力者(セプティマホルダー)の守護者と名乗っていた時期もあったと語っていたのだが……

〇二つの蒼黒い雷について
これまでのお話において、イソラと初回のダイナインが纏っていたモノはペスニアの本体からの物で、強い力を発揮することが出来るが強すぎる暴走の力のお陰で意識すら奪われかねないシロモノ(ベルセルクトリガー)
もう一つはペスニアによるSPスキル。
制御が出来る代わりに強化幅は大本に比べて低め。

〇翠の鎌について
イマージュパルス技術を応用したモノで、ペスニアがこの世界に来る前に組んでいた相方が使っていた得物。
彼女はこの鎌とかつての持ち主に対して並々ならぬ想いを秘めている。

〇フェムトの初死亡について
メタ的な話になりますが、今回の戦闘による死亡は所謂【ムービー銃】の様な物で、復活ソングのチュートリアルの為に死亡する、みたいな感じ。
なお、設定的な話をするとこれまではフェムトと組んでいた能力者も合わせて数の上で翼戦士側に対して優位に戦えていたのが、今回の戦闘では三対三である上に色々と仕込みによる敵側の精神的バフと味方側の精神的デバフも上乗せした結果初死亡、と言った感じになっている。
実際にプレイヤーに操作が委ねられるのは復活後で、そこから無双する流れでカタルシスを得ると言う設計。

〇覚醒時のリトルについて
天使の因子が活性化する事でえころと同じ羽と輪っかが顕現し、空を飛べるようになる。
ゲーム的な話になりますがそれだけでは無く、原作の歌姫(モルフォやロロ)みたいに背後でふよふよ佇んでくれる他、自動で回復やロックオンもしてくれる。

〇覚醒時のフェムトについて
青白い雷のスーパーナントカ人的なオーラを身に纏い、様々な能力が超強化されたフェムト。
この間EPとSPの制限が解除され、SPスキル等が撃ち放題となる。
勿論スキルそのものの性能も強化されており、EX凍結都市でのGVみたいにノータイムでSPスキルが使用可能となるだけでは無く、蒼黒い雷を纏った相手からによる攻撃を電磁結界(カゲロウ)で回避可能となる。
他にはTASで接続されている仲間の基本性能の底上げや一部特殊なSPスキルの解禁等、今回の話では説明できない要素も多数存在している。

〇フラッシュダートについて
EPレーダーを覚醒時に使用する際に強化された時の名称。
EPレーダーの着弾速度がノータイムとなり、画面全体に存在する敵全てを瞬時にロックオンする事が可能。
ガンヴォルト鎖環での暴走GVが使うフラッシュダートと効果は同じで、逆輸入した物。

〇プロミネンスブレイドについて
ガンヴォルト鎖環において、二人が使うSPスキルを逆輸入。
ロックオン要素も加わった事で全ての攻撃が必中である為、メタ的な話になりますが威力は上位に位置する。

〇プロミネンスキャリバーについて
デイトナがGVのスパークカリバーに対抗しようと編み出したSPスキル。
単独でも使えるが、プロミネンスブレイドの締めにも使う。
右足に焔の聖剣を纏わせた飛び蹴りによる一撃は本家の物(スパークカリバー)と遜色ないと言う設定。
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