サイドストーリー |
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【龍放射】。
それは
この放射線は浴びた他の第七波動能力者を暴龍に変えてしまう性質を持つ。
そして暴龍となった第七波動能力者は理性のタガが外れ、やがて人の姿を維持出来なくなり、本能のままに破壊と殺戮をもたらすバケモノと成り果てる。
まだ未熟な頃のオレは、
人類を滅ぼす害悪、人に仇成す悪鬼羅刹と罵り、父の仇であるという事、そして意思を継いだと言う
最初はこれで正しいのだと思っていた。
しかしある時を境に、この考えは思わぬ形で覆される事となる。
それはオレの妹であるミチルが能力者であると言う事実。
オレの世界で討滅したパンテーラから知らされた認めたくない、だが間違い無く事実であるこの情報は、オレをミチルから遠ざけた。
……いや、違うな。
ミチルが能力者であると言う事実から逃げた臆病者、それがオレなのだ。
そうして逃げ出してしまったから、オレはミチルを守ることが出来なかった。
脳を摘出され、機械に繋がれ、恒久平和維持装置等と言う悍ましい存在に成り果ててしまったのはオレの責任なのだ。
(……一人で居ると、余計な事ばかり考えてしまうな)
こんな事を考えているオレは今、紫電に頼んで用意してもらった前線基地に存在する防音室の中に居る。
この世界で父さんと共同研究をしていたと言う、ニコラと話をする為に。
……龍放射の件は、ロロには話していない。
何故ならば、
オレ達の使う第七波動は【疑似再現】と呼ばれる科学的手法で再現した、極めて安全性が高いとされている技術を用いている。
これまでの実戦も含めたデータを見る限り、
だが、それが何時までも続く保証等どこにも無いのだ。
事実、ロロの並行同位体である【マザー】は暴走してしまっている。
彼女が暴走した原因が龍放射であると確信は出来ないが、もしそうであったならば……
オレ自身、覚悟を決める必要がある。
「よう。待たせたな」
「………………来たか」
「おう。んじゃま、早速情報をすり合わせるぞ」
「ああ。……龍放射の件、何処まで知っている?」
「暴龍が放つ特殊な放射線で、能力者が浴び続けると同じように暴龍になっちまうシロモノって辺りだ」
「……大体オレと同じ範囲だな」
「んじゃあ、次はこっちから質問させて貰うぜ。【青龍計画】、【
「……? なんだそれは」
「知らねぇか。って事は、この辺りがお前の世界と俺の世界とで明確に差がある要素って事だな。んじゃま、説明させてもらうぜ」
「頼む」
オレの今の心境は、正に溺れる者は藁をも掴むと言った状態だ。
何故ならば、一人で居た事で目を背けていた事実と向き合わざるを得なかったからだ。
「まずは青龍計画についてだ。青龍って言えば春を司る存在であり、転じて生命力、或いは可能性をもたらす存在でもある。つまりこの計画にある青龍ってのは無限の出力と可能性を持つとされている
「…………」
「んで肝心の計画の内容なんだが……蒼き雷霆の因子から龍放射を何とかする可能性のある因子を取り出す、或いは作り出すってのがこの計画の趣旨だな。んで、龍放射を何とか出来そうな因子、コイツを宝玉因子と俺達は呼んでいた」
宝玉因子……その様な都合のいいシロモノが本当に存在するのか?
「だが、そもそもの話になるがこの計画の成功率は限り無く0に近かった。何せこの計画は
「ああ。それはもう嫌になる位にな」
「そんなんだったからこそ、見つけた時は目ん玉ひっくり返る位驚いたんだぜ? いやぁ~アレは神園博士の機転が無かったら見つかんなかったぜ。
「……良く父さんがソレを実行したな」
「俺に
「(……この男、父さんが認めるだけの事はある)それともう一つ質問がある。……
「……お前、分かってて聞いてるだろ? ノーコメントだ。それについては俺の口からも話す訳にはいかん。ただ言える事があるとすれば……それだけ俺も神園博士も必死だったって事さ」
「どれだけ危ない橋を渡っているか、理解しているのか?」
「しているさ。だが結局の所、何もしなければ結末は同じさ。……そのセリフも、神園博士から言われたなぁ」
それは禁忌の中の禁忌。
決して起こしてはならない忌むべき赤子。
その名はメビウス。
恐らくだが、ニコラは恐れ多くも禁忌の赤子から龍放射を採取したのだろう。
「話を戻すぞ。まあそんな訳で宝玉因子を見つける事は出来た。だがな。問題はここからさ」
「……因子に適合する人物が居なかった。そう言う事だろう?」
「ああ。そりゃあもうダメダメだったさ。この頃はもう神園博士もお前の知る出来事で亡くなっちまったし、実質俺一人の作業だったからな。辛うじて
「ならば、適合者は見つからなかったのか?」
「見つけたさ。いや、正確に言えば創り出したと言った方が正しいか。それもあって半ば強引でヤケクソな方法ではあったがな。簡単に言うとだな、知り合いの【天使の因子】を用いて拒絶反応を無力化したのさ」
「……? 今、何と言った?」
「あ~……いきなり【天使】なんて言われてもピンと来ねぇよなぁ……まあ、アレだ。オレは科学者ではあるが、それ以上にオカルト知識の方が豊富なのさ。それが理由で未来研究所で神園博士と知り合えたってのもあるが。因みにだが、【悪魔】なんてのも存在するぞ」
「……あまり関係の無い事を話されても困るのだが」
「んなこたぁねぇだろうよ。何しろお前の……おっと、何でもない」
いや待て、何でそこで止める。
それでは仮にも退魔の一族である俺の家系に悪魔が入り込んでいると暗に言っているのと同じでは無いか。
「まあいいじゃねぇか。少なくとも害はねぇんだからよ。……また脱線しちまったな。まあそんな訳で、めでたく適合者は現れた。ソイツの名前はフェムト。俺もお前も良く知るアイツだ」
「……! フェムトだと!?」
「おう。……本当に、奇跡に奇跡が重なったと言っても過言じゃねぇ経緯でアイツは生まれた。よって、これで俺の世界は救われ、末永く人の世は続くのでありました。めでたしめでたし……という訳にはいかなかった。ま、当たり前の話だが。まだ問題点は残ってんだ。それはな、
そうか。
オレが諦めていた龍放射への対処の鍵は、フェムトだったのか。
ならばオレは、
「ニコラ」
「あん?」
「オレは以前、フェムトと紫電を相手に戦った事がある」
「おう。それは知ってるぜ。お前とある程度渡り合えるなんてフェムトのヤツも随分成長したもんだと思ったもんだが」
ガラにも無く、オレの無い筈の胸の鼓動が高鳴っているのを感じている。
父さんが本当の意味で求めていた人類を真に救済する手段。
それをオレはもう所有している事になるのだから、高鳴るなと言うのも無理があるだろう。
「オレは戦った第七波動能力者の力を再現する、疑似再現と呼ばれる技術を持っている。当然、
「……マジか」
「元々蒼き雷霆を疑似再現した動力炉であるABドライブと、フェムトの第七波動が共鳴した事に興味を持ったのが理由で作成してみたのだが……」
「待て待て待て! 一度にヤベェ情報を雪崩のように出すんじゃねぇ! 何しれっとプロジェクト・ガンヴォルトの悲願を出してやがる! それに、共鳴したってどういう事だ!? 俺はそんなん知らんぞ!」
ニコラは青龍計画と宝玉因子の事に関して話をしている時、妙に得意げな顔をしていたのだが、その理由が今のオレには良く分かる。
恐らく今のオレの表情は、さっきまでのニコラと似たような得意げな顔をしているのだろうな。
「共鳴した理由については俺も同じように分かっていない。だが、お前から聞いた経緯を考えれば想像は出来る。言わば蒼き雷霆と
「当り前だ! んなもん表に出しちまったら戦争だぞ! 冗談抜きで! ……ったく、こう言う事をシレっとする所、神園博士そっくりだぜ」
「父さんに?」
「ああ。神園博士は俺達の基準ではぶっ飛んだ事を、今のお前の様にさも当然の事みたいに話すもんだからなぁ……ま、それは置いておくとしてだ。フェムトの疑似再現したブツはこの場にあるのか?」
「あぁ。オレが使用している装備の予備動力源として運用している」
「なら早速研究するぞ! 龍放射が浄化される原理が分かればこっちのもんだからな!」
「……研究するならば、一度戻って未来にあるオレの研究施設を使うのが良いだろう」
「あん? ひょっとして連れてってくれるのか?」
「ああ。お前は龍放射に関して情報を共有できる貴重な相手だからな。それに、向こうで研究する場合はこちらでの時間の事を気にする必要は無いからな」
こうして龍放射に関して互いに情報を交わし、オレ達はそれぞれ準備をする為に部屋を後にした。
オレは足早にロロの元へと急ぐ。
恐らくだが先の話を聞いた限り、ロロが暴龍と化す可能性はもう無いだろう。
『あ、アキュラくん。終わったの?』
「ああ。……ロロ、早速で悪いが一度元の世界へ戻る。あの男を連れてな」
『えぇ!? それって大丈夫なの!?』
「ああ。ニコラはオレ達、いや……人類存続の為の研究に必要なんだ。それに、GVから得られたデータを元に装備の最終調整もする必要がある」
『向こうなら時間を気にする必要無いもんねぇ。……アキュラくん、なんだかスッキリしたような顔してる。何かいい事でもあった?』
……ロロはオレの事を良く見てくれている。
そう思いながら、徐にロロの小さなボディを抱き寄せ、顔を合わせる。
『わわっ! どうしたのアキュラくん? らしく無い事しちゃってさ。……ひょっとして、今更ぼくの魅力に気が付いちゃったり、なんて』
「大事な話がある。お前の事に関わる、とても大事な話だ」
オレはロロに龍放射の事を打ち明ける。
そして、ロロが暴龍になってしまうのではと言う疑念の事も。
『……そっか、ぼくはそんな風になっちゃう可能性、あったんだ』
「ああ」
『でもさ、それはもう大丈夫なんだよね?』
「ああ、フェムトの第七波動のお陰でな」
『そっか……因みにさ、もしぼくがそうなっちゃったら、アキュラくんはどうしてた?』
「…………生きるも死ぬも、お前と一緒だ。オレが言えるのは、これで精一杯だ」
『……ならいいや♪ それじゃあもう辛気臭い話はおしまい! 早く戻って研究しよう!』
その言葉とオレがロロの事を手放したタイミングでモード・ディーヴァへと姿を変え、オレに向かって笑顔を見せた。
こうしてオレ達は龍放射に対する希望を知り、一度未来へと帰還するのであった。
『あぁそうそう、このビルはもう消しちゃうから、脱出頑張ってね~♪』
壁を透過し、去っていくペスニアが最後に私達に告げた言葉は、ダイナインの居た施設から脱出した時と同じ状況になるという事を端的に表していた。
現に辺りを見回してみればホログラム状に分解され始めている。
しかし、今回は前回と違って状況が少し違う。
前回の時は初見なのに加え、地下であった事から脱出を急ぐ必要があった。
しかし、こうなると分かっているのならば話は別だ。
私はTASを予め待機していたメラクへと遠距離接続し、連絡を入れる。
(メラク!)
(思ったよりも早く終わったみたいだね。もっとゆっくりしてくれても良かったのに。んじゃま、
(ありがとう!)
連絡を終えた直後、メラクの展開したワームホールが出現。
私達は即座にワームホールへと飛び込み、無事脱出に成功する。
『ちょ……ちょっと貴方達! 折角脱出の為のシチュエーションを用意したのに!! いくら何でもそれはズルい……』
何か聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
そんな訳で私達は無事に前線基地へと帰還し、
それと同時に、私はその場に倒れこんでしまう。
この天井は訓練場の物であり、私が倒れこんでいるのは丁度中心と言った所だ。
私はそっと首に手を当て、繋がっている事を確認する。
……あの時の、首を斬られた感触がまだ残っている。
そんな風に思った時、私を見下ろす形で変身現象を解いたデイトナが話しかける。
「お疲れさんフェムト」
「デイトナ」
「今回は流石のオレも肝を冷やしたぜ。……その様子じゃあ随分と堪えているみたいだし、今回はこの位で勘弁してやる。歯ぁ食いしばりな!」
そう言いながら、私の頭に痛みを感じる程度のゲンコツが降り注いだ。
頭に響くこの痛みが、私はまだ生きている事を実感させてくれる。
今回は本当に私自身反省すべき所が余りにも多かった。
私自身が真っ先に狙われる可能性を考慮に入れなかった事を初め、相手に情けをかけた事による精神的な戦い難さを付けこまれる、敵地であるにも関わらず警戒が甘かった点等、挙げてしまえばキリが無い。
それに、心の何処かで私自身死ぬ事は無いと漠然と思っていた事も原因だろう。
「フェムト」
「イオタ……」
「お前は本来戦士では無い身でありながら、これまで本当に良く戦ってくれている。これは誇っていい事だ。……だが、戦いはこれから激化すると聞いている。ならばこそ、今回の戦いを糧にして再び立ち上がってくれる事を、私は信じている」
私はイオタの言葉を聞いた後、目を瞑る。
思い浮かぶのは、エリーゼの笑顔。
大丈夫。
私は立ち上がれる。
そう思いながら目を開けると、今度はリトルが私を見下ろしていた。
「フェムト」
「リトル。今日は本当に助かりました」
「ん。フェムトを守るのが私の役目」
そう言いながら、リトルは私に手を差し伸べる。
彼女の手を私は迷わず手に取り、力を借りて再び立ち上がった。
そして、改めてリトルの姿を見る。
私が蘇生した時と同じ様に、リトルの頭と背中に赤い輪っかと羽が生えており、その姿は正しく天使を連想させた。
私は徐に輪っかにそっと触れてみる。
リトルは顔を赤く染め、声を殺すような仕草をしながら身体を震わせた。
どうやらこの輪っかには感覚が存在する様だ。
リトルは頭の輪っかを手で隠すようにしながら私に話しかける。
「フェムト、輪っかに触るの禁止」
「ゴメンゴメン。見慣れない物だから、つい気になっちゃって。……その輪っかと羽、仕舞えないの?」
「ん。フェムトを蘇生させた時の影響なのか、ずっとこのまま」
「そうやって表に出されると、ついつい気になって触ってしまいそうになるよ」
「む~~……。触るのはお家でエリーゼとアニムスが一緒の時だけ。その時なら好きなだけ触っていいから」
リトルから許しを得た所で、私は一緒に自室へと向かう。
その帰りの最中、見かけた医務室は落ち着きを取り戻していたのでエリーゼの様子見と怪我人の有無の確認をする為に入室する。
私の場合、治療手段であるリカバリーヴォルトが使える為、フリーで入室する事が出来るのだ。
部屋の中では私もお世話になった事がある治癒の第七波動を扱える女性医師が居るのだが、今は留守にしている様で、代わりにエリーゼが部屋の中で待機していた。
ミッションに向かう前はあれだけ沢山居た怪我人もおらず、エリーゼは見事にさばき切ったのだろう。
「あ、フェムトくん!」
「戻ったよ、エリーゼ……!」
エリーゼは私とリトルの姿を見た途端、駆け寄って私達の身体を抱きしめた。
心なしか、いつもより強く抱きしめられているように感じる。
「良かった……良かったよぉ……」
「エリーゼ?」
「フェムトくんの
今の私とエリーゼはTASを通じて繋がっている。
なので、私が一度死んでしまった事を感知してしまったのだろう。
だけど、リトルの生命力が急激に失われたって……まさか!
「リトル」
「…………」
「あの歌で沸き上がった力、アレは何処から調達した物ですか?」
「………………あの歌は、モルフォの
「だから自身の生命力を使ったと?」
「どの道フェムトが死んじゃったら私も一緒に死ぬしかない。なら、少しでも生き残る確率を考えたらこれしか無いって思った。それに……今の私はアニムスの因子を取り込んだお陰でEPエネルギーを生命力に変換する事が出来る。だから、フェムト達が考えているよりもずっとリスクは低い形で再現出来るの」
「それだったら問題は……」
「リトルちゃん。嘘はダメ。わたしの眼は誤魔化せないよ。原理そのものは嘘を付いているって訳じゃ無いと思うけど、リスクが少ないのは嘘。
「……ん」
「でもね、それでリトルちゃんを責めてる訳じゃ無いの。ただ、事前に教えて欲しかったんだ。今回はTASで繋がった状態だったから
今回の事を纏めると、リトルの歌によって消耗した生命力はTASを経由してエリーゼが補填したと言った感じだ。
リトルがギリギリまで消耗する程の力を送り込んでエリーゼは大丈夫なのかと思ったのだが、そこは生命輪廻の力のお陰か、余裕を持って賄えるのだと言う。
但し、
これは元々の
ここからは私、リトル、エリーゼの精神面、心の強さによって上手く行くか行かないかが決まるとの事。
「データがあれば確立を上げる事が出来るけど、そもそもそんな機会なんて無い方がいいし、これを理由にフェムトに危険を強要するのは本末転倒。だから二度目は未知数」
「一度目の時点で十分奇跡だと言っていい程に破格なんです。これ以上を求めたらバチが当たってしまいますよ」
「じゃあこれでこのお話は終わりでいいとして……リトルちゃん。さっきから気になってたんだけど、その輪っかと羽はどうしたの?」
エリーゼは私と同じようにリトルの輪っかと羽が気になる様だ。
これに関してはここまで来る間に他の人達からも注目されていたからしょうがないと言えばしょうがないのだが。
「フェムトを蘇生させてから、ずっとこうなの」
「そうなんだ……」
そう言いながら、エリーゼはリトルの羽に触れる。
手のひらより少し大きい位の羽なのだが、どう言う原理なのか物理法則を無視して飛ぶことが出来る摩訶不思議な代物だ。
そんな羽なのだが、エリーゼが触れた途端、私が輪っかに触った時の様な反応を見せる。
「エリーゼ、羽に触るのダメ!」
「羽、敏感なんだね」
「ん……ここは私達のお家じゃないから、触るのはダメ」
「羽も敏感なんですね」
リトルの羽も輪っかも非常に目立つ為、触ろうとする人が続出する事が考えられる。
そうなると、ここまでリトルが明確に反応する位敏感な箇所が露出してしまっている状況は何とかしなければならないだろう。
「どうしようフェムト、エリーゼ。この輪っかも羽も触られると大変だから何とかしたい」
「ん~……EPエネルギーでコーティングしてみるとかどうでしょう?」
「やってみる……ふぁ♡ い、EPエネルギーはダメみたい。流したら、もっと敏感になっちゃう」
「それじゃあ生命力の方はどうかな?」
「えっと……あ、こっちの方は大丈夫そう。フェムト、エリーゼ、触って見て」
私は輪っかを、エリーゼは羽の方を恐る恐る触れてみる。
が、リトルは先ほどの様に敏感に反応はしなかった為、生命力でのコーティングが正解で間違い無いだろう。
とりあえずリトルの問題が解決した為ホッと一息入れていると、医務室の奥から片付けを終えたアニムスが姿を現す。
やはりと言うか、リトルの今の姿を見た途端輪っかと羽を触りに行った為、敏感なままだったら大変な事になっていただろう。
その後、私達は女性医師が戻って来るまでの間にこの基地内での過ごし方や注意点等を話し合った。
ここは我が家とは違って大っぴらに
しかも私達は生命力が溢れている関係上眠れない状態にある。
おまけに、ここでの私達はそれぞれ別々の部屋であると言う有様だ。
一応夜勤なんかもあるにはあるが、周りに休んではいけないのではと言う空気を作り出してしまう為、私達が一日中動き回っているのは宜しく無い。
まあ流石に我が家でならばともかく、基地内で風紀が乱れる問題はトラブルを考えると避けるべきだろう。
が、実は抜け道もまた存在する。
一応各部屋の備品なんかは比較的自由である為、ゲーム機なんかの持ち込みも認められている。
それはVRなんかも含まれており、これが抜け道だ。
昔ならばいざ知らず、今のVRは現実と見紛う程に進歩しており、専用の機器も小型化されている。
これはVR版ベルレコを始めとして他にも様々なゲーム、または医療や訓練なんかにも使われているのだ。
そう、このVRを使って夜間を乗り切ろうという訳なのだ。
お互い部屋が離れているが、VRならば一緒に居ることが出来る。
折角なので久しぶりにVRベルレコへとログインしようと約束し、私達はそれぞれ部屋へと戻った。
「ベルレコにログインするのも久しぶりですね」
「ん。フェムトがヒューマンで私が
「エリーゼがソーサラーで、アニムスがエルフだったかな」
私達は本当にやる事が無かった場合、こうしてVRベルレコを遊ぶ時がある。
私は開発者としてもベルレコに関わっている為、実際にプレイヤー視点での問題点の洗い出しをするのも兼ねており、実際に何度か修正をした経緯もあった。
そんな訳で早速ログインすると、私達は最後にログアウトしたマイホームへと降り立つ。
その広さはGM特権もあり我が家と同じくらいの広さがあり、間取りも大体同じ感じだ。
その少し後に、アニムスとエリーゼがログインし、この場で私達は全員集合する。
……実はこのVRベルレコ、【プライベート機能】なるものが存在しており、普段は制限されているアバターの五感のリミッターを外すことが出来る機能が存在する。
そして、マイホームは一種のプライベート空間である為、
プライベート機能はマイルーム限定でアバターも現実のものと差し替える事も出来るし、課金すれば成人指定な事も出来てしまう。
但し、審査を通過するのに相応の手間と時間を要する為、ベルレコでアレコレするよりも、私達の様な年齢制限の問題が無ければ最初からそう言う目的のVRアプリを使った方が良いのだが……
そういう訳なので、私達はナニをする準備をしようとしたのだが、ここに来て思わぬ邪魔者が姿を現した。
「えぇ……このタイミングで【TSOドラゴン】が現れるんですか」
「フェムト、GMの人達大丈夫かな?」
「【対TSOドラゴンテンプレ】を用意してありますから大丈夫だとは思いますけど……」
「何か気になるの? フェムトくん」
「ええ。このタイミングでTSOドラゴンが出るのは今までに無かったパターンなので、少し気になってしまって」
「フェムト。こういう時、大抵何かあったりする。調べた方がいいかもしれない」
リトルの進言通り、私はGM側に連絡を取って、今TSOドラゴンは何所で何をしているのかを確認する。
するとやはりと言うべきか、普段ならばプレイヤー達を煽りながら上空から攻撃をする筈が、今は何故か大人しい状態で降り立っているのだと言う。
但し、プレイヤーからの攻撃は一切通用しない状態になっており、まるで誰かを待ちわびているような感じなのだそうだ。
……あのドラゴンの中の人は、GMで活動していた私やメラクの事を把握していた。
ならば、待ち人と言うのは私かメラクのどちらかと言った所だろう。
メラクも本当は呼ぶべきだろうが、今の時間帯は真夜中である為、呼ぶのはマズイ。
よってメールだけ送り、私がGMアバターに変更した上で向かう事となった。
向かう先は、初心者が賑わう一番最初の平原MAP。
その中央に、TSOドラゴンは鎮座していた。
私は視界に入るように降り立ち、近づいていく。
そして、一定の距離に到達した時、向こうから話しかけられた。
『お、いつもテセオさんを追いかけてるGMの片割れじゃないっスか。こんな真夜中までわざわざ出勤乙w』
「珍しいですね。こうして何もせずに話しかけて来るなんて。それに……
何だかんだ、このハッカーとは長い付き合いをしている為、どうしても情が移ってしまう。
最初は迷惑行為でしか無かったのだが、TSOドラゴンが出現するとゲーム全体が盛り上がる。
よって、不思議と奇妙な仲間意識を持ってしまうのだ。
……ペスニアの件で敵対者に情を持つ事に懲りた筈なのだが、どうやら私はどうしても非情になりきれないらしい。
『……はぁ。いつもテセオさんに付き合ってくれるGMには誤魔化せないッスか』
「……何かあったんですか?」
『いやね、テセオさんはとある組織に所属してるんですケド、
やはりこのドラゴンの中の人は何かしらの組織に所属していたらしい。
私は珍しく気落ちしている
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇伏字が解かれた件について
この話から龍放射や天使等の話が解禁されました。
但し、メビウスはまだです。
〇ロロが暴龍になる可能性について
これに関してはただのアキュラのネガティブな考えなだけであり、実際は暴龍になる可能性は無く、大丈夫であると言う設定。
一人で居る事もあり、普段ならばあり得ない事も考えてしまうと言う状態と、一緒に居るロロにどれだけ救われているのかを表している。
〇青龍計画について
龍放射を知ったニコラが神園博士を巻き込んでこっそり立ち上げた計画。
アイデア自体はニコラが出した物だが、実際に実現するには神園博士が居ないとどうしようもなかった。
そしてこの計画によって青き交流、もといリトルは誕生する事となった。
なお、龍放射を採取する際、ニコラは
〇宝玉因子について
青き交流の本来の名前。
龍が生み出すとされる宝玉に因んだ名前を持っており、その希少性と絶望的な発見率から半ば諦められていた因子。
龍放射を浄化し、暴龍を鎮める力を持つ。
リトルが持つ雷撃の力は蒼き雷霆から見つけた際のおこぼれ。
現段階でどの様に龍放射を浄化するのかのメカニズムは不明。
なお、この因子が発見された時、やはりニコラは
〇春雷について
神話から伝わる第六階梯規模の豊穣の雷。
浄化にも用いる事が可能だが、範囲は限定的で乱発は出来ず、科学的再現も不可能な神秘の雷。
ニコラ専用という訳では無く、素質のある者がオカルト的修練を積んで聖遺物を保持していれば他の人でも出来る可能性が存在する。
そして、第七波動を持っていると使えない、という事は無い。
〇メビウスについて
この赤子は持っている能力と無印の時点で登場している【リトライマーカー】の存在も踏まえて既にこの時点で居ると本小説内では設定している。
アキュラもニコラも神園博士も把握している。
なお、これ以上の情報に関しては現段階では語れない。
〇空気を読まないワームホールについて
実はTASによって追加された【エスケープ】機能のチュートリアル。
まあ一度あんな目に合ったんだからフェムト達ならば対策はするよね? と言う感じ。
〇リトルの輪っかと羽について
えころの弱点でもある為、リトルも同じように弱点。
その為、生命力によるコーティングで対策を取る事で対処している。
因みに輪っかはリトルが持つ第七波動を増幅し、羽は飛ぶ機能を持っている。
なお、EPエネルギーを流すと……
〇
リトルのありったけの力と生命力を合わせて謡精の歌を再現している。
その性質上、エリーゼがTASに接続していないと最悪リトルが消失する多大なリスクが存在する。
が、フェムトが死ねばリトルも
一度目の蘇生は確定成功で、二度目以降はトークルームで心を通わせた回数分成功確率が上昇する。
エリーゼがTASで接続している間は一度目の確定蘇生を消費する形で任意での発動も可能。
但し、蘇生回数が増えれば増える程成功確率は減少する。
一応EPエネルギーを確保出来ればエリーゼの代わりの代用が可能だが、その量はフェムトが蓄積できる量を優に超えている為現実的では無い。
〇時系列について
世界線を無視して考えると本小説内では以下の通りに設定しています。
無印→爪→鎖環→
なので、本小説内ではXの世界線で鎖環のキャラが登場する場合、年齢が原作よりも高くなります。
サイドストーリー |
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「ふぅ……龍放射のサンプルは、こんなもんでいいかなっと」
「全く、お前といると命がいくつあっても足りんよ。……しかし、いつ見ても不気味な赤子だ」
「そうかねぇ……意外と愛嬌があってカワイイもんだと思うけどな」
「……お前の感性は一体どうなっている?」
「コイツに愛嬌を感じるのはオカルト関連の事件にどっぷり浸かっちまってるのが原因なんだろうな。少なくとも【魔界植物くん】に比べれば雲泥の差だ」
「また良く分からん例え方をする。……しかしニコラよ。
「当然だ。もしやってもやらなくてもダメならやった方がマシだろうが。……お前もそうは思わねぇか? なあ……」
・・4・D@・D・・
・M・U・・Q・・・
・6・6・・0・・・
うじし
もなた
おおわ
読み方は・を消して逆方向に右下から左上へと縦にキーボード対応のカナ読みをする。@マークは濁点を表す。