サイドストーリー |
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ボクの顔の横を丸ノコ状の力場が通り過ぎる。
それを放つアキュラに対して返す刃で突進し、ロックオン。
そのまま
そして、そこを起点にアキュラの猛反撃が始まった。
こちらに
本来ならば回避しなければならないのだが、それは不可能であると即座に判断し、
ロックオンされる感覚を肌で感じる。
アキュラにロックオンされる時、ボクはいつも肝を冷やす。
「遅い」
「くっ!」
「以前に比べれば大分動きは良くなった。だがその程度ではミt……お前の大切な物を守る事は出来ん」
小型の丸ノコ状のエネルギー弾を何とか捌きつつ、丁度アキュラの死角となっている左手に
そのタイミングで後方にあったガトリングが火を噴くが、ボクの放った雷撃によって阻まれる。
そして、雷撃の輝きによって一時的に視界を封じ、ダートリーダーによるロックオンを試みた
これが功を奏し、炎を纏いながら球状の雷撃を突き抜け、ボクに対して
ボクの動きに誘導されたアキュラに対し、
「ちぃ!」
「アキュラの動きも大分慣れて来た。もう、見切れない程じゃない!」
「言ってくれる……だが、そう来なくてはな!」
そうして更に戦いが激しくなると思われていたのだが、それに待ったをかける存在がこの場に現れた。
そう、シアンとミチルの二人だ。
「アキュラくん。もうそろそろ戻ろう? 時間、大分立ってるよ。ロロが待ちくたびれちゃってるんだから」
「GVもだよ。そろそろ終わりにしないと」
「もう少し待てミチル。まだGVとの訓練が終わって……」
「それ、今日はもう何回も聞いたよ?」
「しかしだな……」
「アキュラくん?」
「……分かった」
流石のアキュラも妹であるミチルには弱いという事なのだろう。
とは言え、ボクとしては正直残念な気持ちもある。
何しろようやく身体が温まってきた所で止められてしまったのだから。
「GV?」
「……分かってるよ、シアン」
ボク達は皇神の特殊部隊で使われていた訓練所を借りてアキュラと本格的な訓練をしていた。
最初のアキュラとの訓練の時は装備の調整と称していた為ボクも少し困惑していたけど、いざ始まって見れば本当に大変な戦いとなったのだ。
その時は何とか引き分けに持ち込めたのだが、その後の訓練では勝った負けたが繰り返され、ガラにも無くボクは躍起になった。
これまで一対一でボクと互角以上に戦える存在とここまで訓練に打ち込んだことが無かったのもあり、今では訓練を始める直前になると不思議と高揚感を感じるようになっている。
そして、今ボク達が向かっているのは次のライブの最終確認の為の打ち合わせの為の会議室だ。
厳密に言うとボク達の身内限定の最終確認と言った感じで、仕事的な意味での最終確認は終わっている。
それなのにもかかわらず、やる必要がある理由がある。
それは今回のライブでアキュラの妹であるミチルが観客と言う形で初参加する事になったからだ。
『もう! アキュラくん達遅いよ! 何時まで訓練やってんのさ!』
「すまんなロロ」
「ゴメンねロロ」
『全くもう……シアンちゃんもといモルフォとのコラボライブ、ようやくもぎ取れたんだから。打ち合わせはしっかりしなきゃだよ。それに、ミチルちゃんの初めてのライブ参加でもあるんだからね!』
『ようやく実現したアタシ達のライブだもの。ミチルちゃんにはいい思い出を残してもらいたいわ』
「ありがとうモルフォ」
「…………」
「……? どうしたGV?」
「……何でもないよ」
何でも無いなんて言うのは嘘だ。
シアン、モルフォ、ミチルの三人がああして会話をしている光景を目の当たりにしていると、何故かボクは胸の奥が締め付けられる感覚に襲われる。
そして……ボクの第七波動である
ニコラに教えて貰った事なのだが、第七波動には意志が存在しているのだと言う。
それはフェムトがいつも連れ歩いているリトルを見れば一目瞭然だ。
しかし、ボクの蒼き雷霆はリトルの様に直接話しかける事は無い。
その代わり、何となくこうして欲しい、ああして欲しいみたい等の気持ちの気配を感じ取る事で、ボクと蒼き雷霆はコミュニケーションを取っている。
「ミチルちゃん。ライブに行くときはちゃんとライブ用の耳栓を用意しなきゃダメだよ。ものすっごい音が沢山溢れてるの。すごいんだよ?」
「ライブ用の耳栓……そんなものがあるんだね」
『ライブ会場全体に音を響かせる関係上、どうしても大音量になっちゃうのよねぇ』
だがそれを差し引いても、蒼き雷霆がどうしてあの三人に対して懐かしんでいるのかは分からない。
……青き雷霆は、世界で最初に発見された第七波動だと言われている。
では発見される前、彼は何処に居たのだろうか?
ここに居るアキュラが別の世界線から来た存在であるように、
「GV? 大丈夫? 考え事をしてるみたいだけど」
「……アキュラとの訓練で少し疲れただけだよ。シアン」
「なら、いいんだけど……」
『GVもしっかりしてよね! アナタはシアンを守る天使様なんだから!』
「天使様って……それはちょっとオーバーな表現だと思うよ」
「……天使、か」
『アキュラくん?』
「いや、天使と聞いて母さんから聞かされていた話を思い出しただけだ」
――いや、こんな事を考えても仕方が無いだろう。
ボクがこれからもシアンを守ると言う
トークルーム |
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背中に感じる体温と女性特有の柔らかさを感じる。
それと一緒にゆらゆらと揺れる感覚が私の心を癒し、解きほぐす。
「フェムトくんを抱っこするの、すっごく落ち着く……」
今私は真夜中のVR空間のマイホームにある規則的に緑生い茂る庭で、
隠すべき場所以外はシースルーなVRゲームでないと存在すら難しい色々な意味でカスタマイズされたシルクのローブを彼女は着ている事もあり、彼女の体温と共にシルク特有の人肌に近い感触も私に伝わっている。
どうしてこのような事になっているかと言えば、前線基地に一時的であるとは言え引っ越しをした事で、エリーゼの生活環境が一変した事によるストレスが原因だ。
慣れない仕事に加え、多くの知らない人達との交流は彼女の負担を増大させた。
一応それ相応の成果もちゃんと出しており、医務室での仕事の評判は上々だし、以前とは違って人見知りが激しかった点が大幅に改善されている為、基地内でのエリーゼの評判はかなり良い。
それ故に、エリーゼは良くも悪くも注目を集めてしまう。
ただでさえエリーゼ本人だけでも魅力的なのだが、彼女の第七波動であるアニムスも人手として認知されているのが注目を集める事に拍車を掛けている。
その原因はハッキリと言ってしまえば、二人共物凄く綺麗な点にある。
それも、女性すら惹きつけてしまう程に。
これは恐らくだが、まあ、その……私達がいつも体を重ね合わせているのが原因なのだろう。
私達がそう言った行為をする際、大抵二人一組で
なのでそれが理由だと思われるのだが、どうにもリトルも含めたエリーゼ達は同性を惹きつける気配を出している……らしい。
この情報は私が廊下で聞こえた噂話によって小耳にはさんだ話である為、イマイチ信憑性に欠けている。
だけど、エリーゼと一緒に働いている女性医師の見る目がちょっと怪しい感じがする時があるので、恐らく本当の事なのだろう。
慣れない環境に加え、好意的であるとは言え多くの視線に晒されれば必然的にストレスは溜まる。
そんな訳で、真夜中でのVRベルレコは貴重なストレス発散の機会という訳なのだ。
因みにアニムスも同様である為、今彼女はリトルと一緒にVRベルレコで冒険を堪能している。
魔法が得意なエルフでの広域殲滅がお気に入りらしく、前衛を務めている
ただこのやり方は通常マップではMPK案件になりかねない為、PT単位で生成されるインスタンスダンジョンを始めとしたMAP、及びマイホームの機能であるダンジョン作成機能で生成した【プライベードダンジョン】でのみ推奨される。
……話が逸れたが、そんな訳で私はエリーゼのストレス発散に付き合っているという訳であり、私もそれに合わせて副次的に幸せのおすそ分けを受けている状態だ。
「ごめんねフェムトくん。わたしの都合に着き合わせちゃって」
「そんな事無いですよ。寧ろ私の方が得しているまであります」
「そうかな?」
「今の恰好、エリーゼに包まれてる感じがして凄く心地良いんです。後頭部の柔らかい感触で幸せですし、こうやってユラユラ揺れている感覚もいいんです。愛し合っている時とはまた違う良さが……ね」
「えへへ♪ ありがと。……やっぱりフェムトくんの髪はサラサラだなぁ。それにいい匂い。フェムトくん成分が沢山取れて幸せ……」
私の髪は普段蓄電機能等を高める為にポニーテールに三つ編みを合わせたような髪型をしているのだが、今はそれをエリーゼが解いている状態だ。
その状態だと髪が地面を引きずる状態となってしまい汚れてしまう為、普段は寝るとき以外滅多に解くという事は無い。
する時はそれこそ
そして今の私の服装は彼女と同じ物で、所謂ペアルック。
……エリーゼが私の後頭部に顔を埋め、匂いを嗅ぎながら抱きしめている手で器用に私の髪を指でこすり合わせながらその感触を楽しんでいる。
ならば私も負けじと脇の下から腕を通して抱きしめている関係上フリーである両手でエリーゼのツヤツヤな銀髪の感触を堪能。
その影響で互いの髪が絡み合い、その様子はまるで髪で出来た金と銀の織物の様に見える。
髪と髪で互いが繋がっている視覚的情報と感覚は、私達の心を大いに癒す。
「フェムトくん。わたしね、思えばすっごく遠い所に来たなって思ってるの。閉じこもりで全然ダメダメだったわたしがお仕事をしたり、色んな人と話せるようになって……こんな風に、
「…………」
「フェムトくんに連れ出されて、わたしは沢山救われた。お友達も出来たし、お料理や裁縫とか、出来る事もたくさん増えた。だから、改めて言わせてもらうね。……わたしをここまで引っ張ってくれて、本当にありがとう」
「ふふ。どういたしまして。でも私だってそんなエリーゼに沢山助けられました。文字通り命を救われた事だってありました。だから私も改めてお礼を言います。……ありがとう。私の手を拒まないでくれて。私の事を信じてくれて。私を、好きになってくれて」
「えへへ……♪ どういたしまして」
その後私達はお互い沈黙し、VRによって作られた心地よい環境音に身を任せた。
頭上にある木々から溢れる人工的な木漏れ日は、私達を優しく照らし出す。
時々流れる風が奏でる森の音色が、私達の耳を楽しませる。
……この静かな光景は、さながら嵐の前の静けさその物だろう。
ペスニアが私に「ちょっと戦力の補充をしないといけないから」と言って姿を消した後、私達の情報網に彼女が引っ掛かる事は無かった。
そして、エデン穏健派も我が国内に拠点を構え一息ついている。
あれから四日程経過していた。
この国を滅ぼしかねない嵐が巻き起こるのは、そう遠くないだろう。
そんな風に考えていたら、私の髪を弄っていたエリーゼの手が私の頬に触れ、顔と顔を向かい合わせる様に促した。
私はそれに応じて体の向きを変え、エリーゼと至近距離で目を合わせる。
宝石のように綺麗なエリーゼの目の瞳孔にハートマークが付いている錯覚をこの時感じた私は、きっと間違ってはいないだろう。
この時のエリーゼは熱い吐息を漏らしながら私を見つめていたのだから。
――緑あふれる庭先で、私達の影は完全に重なる。
後に訪れる、破滅的な嵐を乗り切る為の力を互いに共有するかのように。
エリーゼとの心の繋がりを感じた
エリーゼと訓練 |
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私とエリーゼは互いに向かい合う。
ここは私達の自宅にあるトレーニングルームとは違う、前線基地にある訓練場。
私はリトルを、エリーゼはアニムスを呼び出し、互いの
緊張感のある空間を見守る隊員達に見守られながら、私達は
リトルが天使の姿になった影響なのか、変身現象を終えた私の身体を青白い膜の様な物が覆っている。
対するエリーゼも同様に、歌によってリトルに大きく力を流した影響なのか、その出力が更に引き上がっていた。
お互いの変身現象を終え、私達は武器を取り出し、構える。
私は鉄扇の二刀流、エリーゼは右手に小太刀、左手に苦無を手に取りながら。
変身現象によって更に魅力が引き立った姿で威風堂々と構えるエリーゼの姿がこうして多くの人達の前に晒されるのは初めての事。
なので、始める前はそんな視線に委縮してしまうのでは無いかと心配した事もあったが、そんな心配は必要無かった様だ。
目の前のエリーゼは委縮する所か、凛と構えた鋭い視線を私に向けている。
しばらくの間、互いの隙を伺う。
動きは全くないが、それでも何かが蓄積するような感覚は気のせいでは無い筈だ。
それは焦燥感か、或いは緊張感か。
言葉に出来ない感覚が頂点に達した時、私達は同時に動き出した。
お互いの蹴り出した地面が砕け、蒼白い残像を伴いながら私達は衝撃波を周りに散らしながら衝突する。
今回はこれまでと違い、互いにこれまで習得したアビリティを全乗せしている状態、即ち完全な実践を想定しており、互いに致命傷を負う事も想定に入れての訓練だ。
これは互いに回復する手段があるから実現可能な事なのだが、こう言った訓練をする際は特別な許可が必要な為、滅多に出来る事では無い。
こんな実戦形式が認められた背景には、ペスニアがエリーゼを狙っている事が私達の中で共有されたからだ。
なので早急に実戦に近い戦闘をエリーゼに経験してもらう必要があった。
因みにだが、私との戦いが終わった後は他の能力者達とも実戦形式で戦う予定となっている。
「はぁぁぁぁ……せいや!!」
「まだまだ!! ハァ!!」
リトルの開いた鉄扇を防御に回し、返す刃に収束させた
それを苦無で受け流しつつ、まるでダンスを踊っているかの如く小太刀との連撃を返される。
それはさながら
これによって優勢だった私は防御に専念する事となる。
時には受け止め、受け流すが、それでもエリーゼは止まらない。
何しろエリーゼの身体は常に
従来の訓練とは違って本格的に第七波動も交えた訓練である為、こう言った芸当も可能なのである。
「どうしたのフェムトくん! 防戦一方だよ!!」
「……っぅ」
ここでエリーゼに乗ってペースを上げて反撃するのは悪手であり、仮に乗ったとしたら私はたちまちスタミナ切れで詰みとなってしまうだろう。
なので、ここはあえて我慢をする場面だ。
リトルにデータ取りをお願いしつつ心を落ち着かせ、冷静に動きを見極める。
これだけ激しい動きなのだ。
間違い無くエリーゼ特有の型が存在する、即ち何かしらの法則性がある筈。
そうしてしばらく防戦一方で受けている内に、私はリトルに頼んでいたパターン検出を完了させる。
よって、勝負は――
「(タイミングはもう少し……よし、今だ!)……! そこぉ!!」
「弾かれた!? あ……」
――これにて終幕。
私は適切なタイミングでエリーゼの力も利用する形でリトルの鉄扇を用い、苦無を叩き落す。
そして、収束させた防御結界の切っ先をエリーゼの首元に突きつける。
勝負の結果は、一目瞭然だろう。
「まさかあそこから逆転されちゃうなんて。能力込みだから今回は勝てるかもって思ってたんだけどなぁ……」
「能力が込みなら戦闘中にパターン検出なんて出来ますからね。そうして動きを読んだんですよ」
「あ、リトルちゃんを頼ったんだね」
「そういうことです」
エリーゼは実戦を経験していないにも関わらずここまで動けるのは良い誤算であった。
今の段階でも最低限の自衛が出来る筈だろうから、後は経験だけと言えるだろう。
……そう言えば、辺りが静まり返っているのはどうしてだろうか?
そう思いながら見回して見ると、彼らは何故か視線を合わせようとしてくれない。
その原因を教えてくれたのは、こちらに向かってくるデイトナであった。
「あんな派手にやりあってるトコ見せられたんだ。自分達じゃ相手になんねェって分かったんだろうさ」
「デイトナ」
「いや、オレも正直驚いたぜ。まさかエリーゼがここまで戦れるだなんてよォ。……次はオレが相手だ。フェムト程優しくは出来ねぇが、その分いい経験にはなる筈だ」
「は、はい! よろしくお願いします!」
「デイトナ、分かってるとは思うけど……」
「あん? 悪いが手加減何て器用な事は……」
「
「……へぇ。恋人相手に随分スパルタな事言うじゃねェかお前は」
「ペスニアが何時動き出すのか分かりません。ならば、可能な限り経験を積ませた方がいい。エリーゼが狙われているのは確かなのですから」
「ま、それもそうだな。……しっかし、女の肌を焼く事になるのはちいとばかし気が滅入るぜ」
「大丈夫です。エリーゼはそんな
「お前ら、想像以上にハードな事してんのな……」
「お互い回復手段がありますからね。私も当然エリーゼに深手を何度も受けています。お互い様ってヤツですよ」
「
「そういう事です」
その後、デイトナとエリーゼとの訓練は正に実戦さながらと言うか、凄まじく派手な戦いとなり、見物人と化した隊員達を大いに驚かせた。
そしてこの訓練後、他の隊員たちの私とエリーゼを見る目が良い意味で変化する。
具体的に言うと、舐められるという事が無くなった。
これまで続いていたワザと軽い怪我をしてエリーゼの治療を受けると言った事も無くなった為、医務室での仕事もようやく落ち着きを取り戻したのだ。
何と言うか、今回の出来事は力を持つだけでは無く、力を見せる事の重要性を学べたような気がする、そんな一幕なのであった。
情報解析 |
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「……ふぅ」
ダイナイン、インテルス、ペスニアの三人との戦いにより、無事解析が終了。
そのお陰で百年程あった技術格差をソフト面限定ではあるが如何にか埋め合わせる事が出来そうだ。
特にあの翼戦士の羽ペンによる変身現象を見れた事は大きい。
アレのお陰で宝剣開放時の基礎性能を大幅に引き上げる事が出来るアビリティの作成が可能になったからだ。
まあ逆に言うと、アビリティと言う形でしか間に合わせることが出来ないとも言うが……
こう言った基礎的な事はハード面が重要である為、強化幅はそれ相応の範囲に留まるだろうが、次世代以降の宝剣は間違い無く高性能になる事だろう。
特に、
今私達の使っている宝剣は能力摘出をすると言う工程を挟む関係上、どうしてもコストがかさんでしまう。
なのでコスト面から見てもお得な技術である為、量産する事も考えると本当に重要なのである。
それにこの戦闘では、あの蒼黒い雷が二種類存在する事も分かり、そのお陰でこれについても解析が進み、対抗する為のアビリティも作成出来た。
その対抗手段とは、奇しくも同じ戦闘で私が覚醒した時に発生した蒼白い雷にあった。
どうにも覚醒時の私が放つ蒼白い雷には蒼黒い雷を
これによって私達は大幅に力を増す事になるだろうが、油断するのはダメだろう。
何しろ、ペスニアの放ったあの死神の一撃とも言える攻撃はほぼ全アビリティを貫通したのだから。
(宝剣開放時の基礎性能を大幅に引き上げる【アウェイクニング】、二種類の蒼黒い雷に対抗する【ブルーチューニング】、拘束時、振りほどくのを早める【シーカーオフ】、覚醒する際に使うエネルギー効率を最適化する【オプティマイズ】、EPレーダー使用時のEP消費を半減させる【ハーフレーダー】……こんな所ですか)
以前作成したアビリティよりも数は少ないが、これは戦闘が直ぐに終わってしまった影響が大きい。
それでも最低限必要なアビリティに加え、さらに追加で三つも作成できたのは良い事だろう。
ともあれ、これで私が出来る範囲での話になるが、可能な限り技術格差を縮める事は出来ただろう。
だが、この技術格差について一つ疑問が浮かび上がって来る。
変身現象においては私達よりも百年は先を行っているにも関わらず。
それに、本人の証言を纏めると私の知るアキュラと時間軸に関して言えばほぼ同等、或いはそれ以上な可能性すらあるのにこの証言をすると言うのは技術的な意味であり得ないのだ。
一応アキュラにもVRゲームについて尋ねた事があるのだが、
この事から察するに、ペスニアが活動していた時代背景は所謂【ポスト・アポカリプス】、つまり
アキュラが敗北してしまった世界の未来なのだから、そう考えるのが自然であると言えるだろう。
……しかし仮にそうだとしたら、その様な世界からどうして彼女はこの世界へと足を運ぶ事になってしまったのだろうか?
疑問は尽きないが、前提の話すら仮定である以上、考察するのはここまでにした方がいいだろう。
とにかく今は、ペスニアを相手に生き残る事を考えるべきだ。
もう当分の間、
GET ABILITY アウェイクニング ブルーチューニング シーカーオフ オプティマイズ ハーフレーダー
出社 |
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この静寂な時が続いている内に、情報管理部の様子を見ようと紫電に申告した結果OKが出た。
なので、これまでよりも長く間を開けてしまったあの場所の様子を見に久しぶりの出社をする事となった。
いつもの我が家からなら徒歩で迎える距離なのだが、前線基地からだと車でも相応の時間が掛かる。
なので、出社をする際は変身現象を使用しなければならなかった。
(…………)
(リトル?)
(私ね、会社に向かう時の、ゆっくり歩きながら見る街並みが好きだったんだ。だから、少し寂しいなって思ったの)
我が家から出社しなくなった事で失われてしまった物はそれなりにある。
先ほどのリトルの事もそうだが、エリーゼから手渡される手作りのお土産を持ち出すことが出来ないし、魔法瓶にいつも詰めているコーヒーも同様だ。
一応老舗のお菓子屋さんでお土産も購入したし、コーヒーも私の行きつけの専門店で特別に淹れて貰った物も用意している。
しかし、当たり前に出来た事が出来なくなると言う寂しさが無くなる訳では無い。
我が家で皆が喜ぶ所を想像しながら淹れる香り立つコーヒーの匂い。
エリーゼが味見を私にお願いする事をひそかな楽しみにしていた事。
人によってはどうでも良い、何気ない日常の一コマと呼べる物なのかもしれない。
だけど、これ等は間違い無く私達の生活に彩を与えていたのだ。
なのでリトルが寂しさを感じている様に、私も同様に少しだけだが寂しさを感じていた。
大人になると言うのは、こう言った寂しさも受け入れる事なのかもしれないと私は思いつつ、情報管理部のあるビルへと向かう。
そうして進んで行く内に、やがて見慣れた景色へと変わる。
……今の時刻的に考えて、ここから変身現象を解いた状態の歩きでも十分時間に間に合う距離だ。
なので、私は死角となる場所へと飛び込むと同時に変身現象を解除する。
リトルの大好きな歩きながら見る街並みと言う日常を無くさない為に。
「ぁ……」
「行こうリトル。ゆっくりと街を見ながら」
「……っ! うん!」
いつも通りの道を歩く私達。
会社への道のりは私達にこれから始まるであろう一日を暗示させる。
時刻は前回の時よりもずっと早い、形式的に情報管理部の一日が始まる一時間前程の時間。
街を行き交う人々は、私達が解決の為に奔走している先の騒動等気にする事も無く、それぞれの日常を精一杯生きている。
そんな精一杯生きている人達によってこの街は、国は、世界は成り立っているのだ。
その事を改めて胸に刻みながら、私達は歩く。
そして、これまでの日常と同じように私達は会社へと到着し、受付のお姉さんに挨拶を済ませた。
「おはようございます」
「おはようございます!」
「おはようございます。フェムトさん、リトルちゃん。今日は早いわねぇ。……情報管理部の様子を見に来たの?」
「ええ。今少しの間だけですが落ち着いたので」
「フェムトが何とか予定をねじ込んだ。皆の様子、気になるから」
「フェムトさんの方は大変みたいだと聞いていたのに……きっとみんな、感謝すると思いますよ」
受付のお姉さんとの挨拶を済ませ、私達は情報管理部へと足を運ぶ。
そして、扉の前に立ったのだが……仕事をしている気配が感じられない。
気になって中を開けてみれば、ベテラン社員さんのみが机の上で缶コーヒーを飲んで一息入れていた。
「ん? おぉ、フェムトにリトルか」
「おはようございます」
「おはようございます!」
「ああ、二人共おはよう。随分と早く来たもんだな。まだ作業開始時刻まで十分に時間があると言うのに」
「え?」
「前来た時、お前が社員全員にアドバイスやレクチャーをしただろう? そのお陰で大分効率よく纏まって動けるようになってな。まあ残業その物はあるにはあるが、早出をする必要は無くなったのさ」
考えてみれば、当たり前の話であった。
この時間帯は本来、まだ誰も来ていない筈なのである。
これまでは仕事の忙しさや慣れの問題もあったので早出が必要だったのだが、ベテラン社員さんが言うにはそれも改善しており、お陰で皆は少しだが余裕を持つ事が出来る様になったのだと言う。
「でも、それならどうして貴方はこんな時間に出社を?」
「……恥ずかしい話だが、習慣さ。必要無くなったとは言え、俺にとってはこれが
「日常、ですか」
「ああ。忙しい日々ではあったが、いざ無くなるとなると寂しさを覚えちまう。これは間違い無くいい事の筈なのにな。全く、何とも身勝手な考えだと思わないか?」
「そんな事、無い」
「リトル?」
「大変だった事を覚えてる人が居れば、また同じ事をやろうって人は居ないと思うから。だから、そんな事無い」
「これから新しく入る連中に警告を与える事が出来るって訳か。まあ、そう言う考えも悪かねぇな」
「……コーヒーとお土産、持ってきたんですよ。どうですか?」
「おう、ありがたく頂かせて貰うぜ。……いつもありがとうな、フェムト」
私達の取り巻く環境が変わるように、私が関わっていた情報管理部もまた、日々変化を遂げている。
私のアドバイスやレクチャーはこの部門の新たなマニュアルとして纏められ、将来ここに来るであろう人達の道標になると聞かされた。
それはとても、喜ばしい事の筈だ。
なのに、どうしてだろうか?
どこか寂しさを感じてしまう。
「そりゃあそうだろうなぁ。言わば手の掛かっていた子供が巣立ちの時を迎えるようなもんだ。寂しくなるって言う気持ちは分からん訳でもないさ」
「そう……なのでしょうか?」
「お前も恋人が居る身だ。やがて子供を持ち、育て、巣立つ所を見送る立場になるだろう。……こういう経験も悪かねぇはずだ」
ベテラン社員さんの表情は、どこか寂し気な物だった。
きっと今、私達の気持ちは一つになっているのだろう。
そう、
GET 100000MG
情報処理部門Lv4→Lv8up!(MAX)
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
今の章のインターミッション回はこれで最後になります。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇今のGVの出来る事について
無印、爪、鎖環の三要素のアクションやスキルが大体出来る感じ。
流石に無限エアダッシュや無限ジャンプなんかは装備や謡精の補助が無いと出来ない。
更に本小説では休暇編第七話にて、両手足に籠手とグリーブの実体化と言う要素が加わっている為、【ライトニングアサルト】及びジャンプ、ダッシュ系のアクションが強化されている。
その副次効果として雑魚敵限定ではあるが【ヴォルティックバスター】も使用可能。
〇
メタ的に言うと、本小説内のGVは原作と比較して圧倒的に実戦経験が不足してしまっている為、その埋め合わせと言った感じ。
お話し的にはお互い遠慮なくぶつかっていける事が何気に双方気に入っているらしく、ついつい熱中してしまう事もあると言った感じ。
それだけお互い心を許していると言う本小説なりの描写でもある。
〇ライブについて
第二十六話で話していたロロとのコラボライブが実現する事になった。
ロロが何だかんだで成果を出し続けたお陰で極めて短期間で実現にこぎつけた。
フェムト達のやっている事が噂になり出し、人々が不安を感じるようになって来たのを払拭する皇神側の狙いもある。
〇エリーゼ達が同性から変な目(意味深)で見られている事について
エリーゼ達が普段色々と致している影響なのか、身振り手振り、気配等が何所と無く同性を惹きつける魔性を帯びている。
なので意味深な視線を向けられてしまうと言った感じ。
〇お互いキズモノになっている事について
第二十二話で「実際に初期の頃は何度か私達の間で事故を起こした事もある」と軽く流していた物を少し詳しく語った物。
これもあり、エリーゼは何気に自身が受けた怪我に対する耐性も高い。
フェムトに対するマゾヒスト気質なのは内緒だぞ♪
〇イクス世界線のVRゲームについて
その為、アキュラが知っているのはネットを良く調べているロロから得た知識と言った感じ。
なので、ペスニア世界線でもフェムト視点で見るならば、存在している筈なのだが……
〇アビリティの作成が出来ない件について
メタ的に言うと全アビリティを習得しましたよと言うサイン。
お話し的にはこの後そんな暇が無くなる事を示唆している。