ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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第五話 宇宙の灯台が照らす光

 

 

 

 

【宝剣】。

 

 端的に言えば、体外に摘出した能力者の力の源である能力因子を隔離管理する為の器。

 

 第七波動(セブンス)を制御する為に必要な触媒。

 

 そして、皇神に所属している能力者の社会的地位を保証する為の存在でもある。

 

 これを作る為にはその名の由来となった実在の刀や皇神が保有する()()()()によるアーティファクトを組み合わせ、今の技術で加工する必要がある。

 

 それ以外にも最近では更なる能力封印を施す為の【サブ宝剣】と呼ばれる物も開発されている。

 

 これの利点はアーティファクト等の独自技術が不要な完全人工宝剣であるという事。

 

 つまり量産がしやすいと言う所だ。

 

 そんな宝剣であるのだが、私の知る限りでは紫電、イオタ、メラク、デイトナは既にこの宝剣の処置が施されている。

 

 何故ならば彼らは強い力を持った能力者達だからだ。

 

 だけどそうなると今度は別の問題が発生する。

 

 それは私も含めた彼らは能力者としての力を利用した防衛部隊である以上、能力を封印されるという事は有事の際の任務を全うする事ができない。

 

 そういう訳なので任務の際は皇神の管理機関の承認を経た上で宝剣内に移植された能力因子を開放し、その宝剣と一緒に能力因子と融合する事で能力が再使用できると言う。

 

 なお宝剣と一緒に取り込む事で、一部副作用が存在している。

 

 その副作用と言うのは、より能力を使用するのに適する身体に姿を変えてしまう【変身現象(アームドフェノメン)】を引き起こす事。

 

 これについては寧ろ利点と言え、普通に能力を使うよりもずっと強力に運用することが出来る。

 

 だけどもう一つの副作用がよろしくない。

 

 話を変えるが、第七波動とは意思の力の強弱でその出力も上下する。

 

 これは一部薬物によっての強化でも可能である事から確認された事だった。

 

 その事を踏まえ変身現象を引き起こし、能力に適する体へと作り変えられるという事を考えると当然、意志を引き出しやすい体になるという事でもあるのだ。

 

 つまりエゴが増大しやすく、自己中心的な考えを持ちやすくなり制御が効きにくくなると言う、場合によっては致命的な副作用が発生してしまうのだ。

 

 しかもそうして大部分の能力を封印しても、紫電やメラクを始めとした強力な能力者は従来の出力は発揮できないけど宝剣無しでも能力を行使することが出来てしまう。

 

 だから安全なのかと言われると疑問の声が出てくるが、そこは皇神グループの中でも公然の秘密と言う扱いになっている。

 

 だからこそサブ宝剣と呼ばれる物が開発される流れが出来るのは必然であり、他にも様々な宝剣が生み出される下地にもなっていた。

 

 そんな宝剣なのであるが、この性質に興味を持った私は、宝剣を開発している部署へと紫電の持つコネを利用してとある交渉を持ち掛けた。

 

 その内容は私が持つ()()()()を何も知らない他者に対して証明する為に必要な宝剣の作成の依頼。

 

 最初は私の仮説に対して開発部署は懐疑的であった。

 

 だけどそれを私が独自に立証したデータに加え、それを用いて宝剣の性質である変身現象の原理を説明した事で、そんな宝剣の作成許可が下りたのだ。

 

 まあ、それだけの理由で宝剣の作成を依頼した訳では無いのだが。

 

 私はこれまで自身のなけなしの能力をフルに行使して紫電達に貢献してきた。

 

 だけど、最近では能力の強い能力者以外にも宝剣をと言う風潮が皇神グループに広がりつつある。

 

 私の場合は紫電の部隊が私の能力有りきでの運用で成り立っているので、あえて封印せずにそのままの方が皇神グループ全体の利益を考えると有用と判断された為、これまでは暗黙の了解と言う形で見逃されてきた。

 

 今も尚その暗黙の了解は続いているが、今はまだこの国の情勢が比較的安定しているからであり、何時私も宝剣所持の義務を背負う事になっても不思議では無い。

 

 だからこそ、自分からこうして宝剣作成の依頼をする形で皇神グループに心象を良くしてもらおうと言う魂胆もあるのだ。

 

 それに私の仮説を前提とした宝剣によって、私が考える第七波動とは何なのかと言う答えが判明すれば今は無理だろうけど、きっと将来能力者の見方も変わると信じている。

 

 まあ、焦る必要は無い。

 

 既に賽は投げられたのだ。

 

 それに、もし仮説が間違ってたとしても普通に宝剣処理を受ければいいだけで、仕事内容は何も変わらない。

 

 まあエゴが増大すると言う点には、意識して注意する必要はあると思うが。

 

 だけど、の欠点も私の仮説が正しければ、解消できる可能性もある。

 

 

「ふぅん……キミもいよいよ宝剣持ちになるんだね、フェムト」

 

「ええ、今はまだ何も言われてませんけど、こう言うのはこちらから動いた方が向こう(皇神グループ)への心象は良いでしょうし」

 

「まあ、確かにそうだけど。……所で、君は自分の能力の名前を考えたかい?」

 

「私の能力の名前、ですか?」

 

「そうだよ。君は仕事漬けで最近の情報に疎いから伝えておくけど、最近フェザーによるテロ行為の実行犯に、蒼き雷霆(アームドブルー)と思しき能力者が居る疑惑があるんだ」

 

「……っ! 紫電、それ本当ですか!?」

 

「ああ、本当だよ。まだ憶測の域は出て無いけど、ハッキングの形跡が君の仕事のそれにそっくりだったから、そういう疑惑が浮上したんだ」

 

「…………」

 

 

 この話を聞いて私は彼が無事であった事に安堵すると同時に、憤りを強く感じた。

 

 何故ならばあの施設で散々苦しみ抜いてきたはずの彼が、テロ行為と言う戦場の最前線へと姿を現したからだ。

 

 戦場は様々な人達の思惑や願いが複雑に入り混じって衝突し、多くの人達が傷つく場所。

 

 それは当然能力者の特殊部隊で最前線で戦っているデイトナやイオタ達も例外では無く、時に大怪我を受け、私も生体電流マッサージをさらに発展させた応急処置による治療に駆り出される事もあった。

 

 勿論そう言った事が今後も起こらないように、デイトナ達は厳しい訓練も欠かさず行っている。

 

 そう、そんな辛く苦しい訓練を日々熟しているデイトナ達ですらそう言った事があるのだ。

 

 つまり彼も当然、そう言った辛い訓練を熟しているはず。

 

 ……この世界は残酷だ。

 

 彼はあれだけ苦しんで来たのに、それでも尚苦しみを与えようとしている。

 

 私が見たあの実験の様子を考えれば、彼自身がそれを望んだ可能性も高いのは事実だ。

 

 だけど、環境が違えばそう言いった事を望む事なんて無かったのかもしれないのにと、思わずにはいられない。

 

 だから、私は願う。

 

 紫電の言っている事が何かの間違いであって、彼は戦う事は無く、安全な場所でその傷を癒しているのだと言う事を。

 

 そして、もしそうじゃ無かったら……。

 

 早く彼がテロ行為から足を洗う事を、私は願う。

 

 

「こんな事を伝えた後で済まないけど、続けるよ。そう、つまりはそう言う事なんだ。君の能力を蒼き雷霆としてしまうと、皇神グループ内でも君の立場が悪くなってしまう可能性があるんだ。テロリストが使う能力と同じ力を持つ人物って言う風にね」

 

「そうですか。それに関して言えば私は失敗作ですから、名前を変える事に抵抗はありませんが」

 

「君は、自分を失敗作だと思っているのかい?」

 

「能力因子に適応出来た何て言っても、私はほんの少しだけ能力因子を受け入れられただけの存在です。恐らく、蒼き雷霆を名乗る彼と同じ量の能力因子を移植されていたら、私は下手をすればこの世には居なかったでしょう」

 

「……フェムト、少しボクの話を聞いて欲しい」

 

「紫電……?」

 

「ボクはね、過去にとある能力の移植実験に挑み、失敗してこの能力、【念動力(サイコキネシス)】を得た経歴があるんだ」

 

「とある能力の移植実験?」

 

「そう、蒼き雷霆の移植実験の事さ」

 

 

 私は目を見開いて驚愕した。

 

 今の話を聞いたのが始めてだったのもある。

 

 だけど、それ以上に私は、私自身をぶん殴りたくなった。

 

 だって、蒼き雷霆と比べるのはおこがましい程に弱い私の能力とは言え、私はそんな彼の前で何も知らずにのうのうと能力を行使していたからだ。

 

 そう、私は紫電のコンプレックスをこれまでずっと刺激し続けてきたのだから。

 

 

「……紫電、私は」

 

「フェムト、キミは失敗作なんかじゃない。キミはこれまでボク達の事を後方からずっと支えてくれた。それに、少しだけとは言えボクとは違って、蒼き雷霆の能力因子に適合した貴重な存在なんだ。だから、もうそんな失敗作だなんて理由で逃げないで欲しい」

 

「…………」

 

「キミの能力は確かに出力は低い。だけどキミのソレは、多くの人達を間接的に救っているんだ。ボク達を支えると言う形でね。そして、新たに別の可能性を切り開こうとしている。ボクですら歌姫(ディーヴァ)プロジェクトと言う妥協案でしか、時間を稼ぐ事しか出来なかったと言うのに」

 

「……私の出したあの仮説によるアイディアは、そんな歌姫プロジェクトが前提に成り立っている付け足されただけの物だよ。計画の名前だって変化している訳でもない。だから、褒められたものじゃないんだ」

 

「いや、十分に褒められる事だよ? 君には言っておくけど、あのプロジェクトは以前のままでは急場凌ぎにはなるけど、あくまで一時的な話だ。時が来れば必ず崩壊し、後に待つのは混沌に満ちた世界だろう。ボクだけではそんな世界になるはずだったけど、キミの考えるあの仮説は、何も見えない闇を照らす灯台の光なんだよ、フェムト」

 

「紫電、まだあの仮説が正しいって決まった訳じゃ」

 

「正しいさ。ボクはその仮説を信じた結果、宝剣における副作用の一つであるエゴの増大による高揚感が消えている事が体感できている。デイトナもイオタも驚いていたよ? この事を知って体感した時にね」

 

「…………」

 

「さあフェムト、もうキミの周りには失敗作扱いする人間は居ないよ? いい加減自分を認めるんだ。そうで無いと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そう、私の考えているある仮説とは、【第七波動とは能力因子と言う形で存在する群体生物である】と言う物だ。

 

 そう考えると、色々と説明が付くのだ。

 

 ヒントは電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォの存在。

 

 意志を持つ第七波動と言う、世界で稀だと言われる第七波動の事だ。

 

 この存在を元に、私はこう考えた。

 

 意志を持つ第七波動とは稀にでは無く、それどころか全ての第七波動が意思を持っているのではと。

 

 そう考えると、所有者の意志によって力が増したり、能力に適応するしないの説明や、宝剣の挙動にも説明が付く。

 

 だから私は、この仮説を立証する為に紫電達にあるお願いをしていた。

 

 自身の持つ第七波動を生き物として、良き隣人として扱って見て欲しいと。

 

 私自身でそれを試した場合、私の持つ第七波動はこれまでの倍以上力を引き出せるようになった。

 

 だけど、これは私だけの話なのかもしれない。

 

 それを立証する為に紫電達にお願いをしていたのだけれど、その返事を今まで聞く機会が無かった。

 

 よって、紫電のこの言葉には私も驚き、それと同時に私の仮説が正しかったと認めることが出来た。

 

 そして、そんな私の喜びに呼応するように、私が持つ第七波動は活性化している。

 

 

「……そうだね、紫電は私に辛い過去を話してまで励まそうとしてくれた。そして、私の中の第七波動も、同じように励ましてくれている。それに、これ以上駄々をこねてたら、向こう側に居るニコラに怒られそうだ。……ありがとう、紫電。お陰で私は立ち直る事が出来そうだよ」

 

「どういたしましてと言いたい処だけど、そろそろ決めた方がいいんじゃない?」

 

「……?」

 

「君の能力の名前の事だよ。蒼き雷霆を名乗れない以上、君の持つ能力は名無しのままだ。それでは可哀そうじゃ無いか。いい加減決めてやりなよ」

 

「あぁ、そう言えばそうだった。……っと、ごめんごめん、忘れてたわけじゃ無いんだ。だからそう拗ねないでくれよ」

 

 

 私の中の第七波動が拗ねた様に活性を弱める。

 

 このままでは次の仕事に支障が出てしまうだろう。

 

 ……さて、私以上に駄々っ子な彼、或いは彼女に名前を付ける必要がある。

 

 とは言え、実は既に名前は私の中では決まっていた。

 

 それをこの子は一体化している故に把握しているのだけど、どうにも私の口からその名を呼んで欲しいと駄々をこねていた。

 

 その名前は様々な意味が込められている。

 

 理性、自由、知性を象徴する色。

 

 その名は青。

 

 人間と第七波動と言う異なる種族が入り混じる能力者としての在り方、そして一定の周期で流れの向きを変える電流でもある。

 

 その名は交流。

 

 その能力と精神は、小さく幼い。

 

 だけど、私の前に立ち塞がる無限の暗闇とも言える宇宙(先の見えない未来)を儚く照らす、宇宙の灯台(パルサー)でもある。

 

 そんな第七波動と言う種族の存在の証明は、そんな未来を照らす、希望の光。

 

 皮肉なことだが、嘗て侮蔑の意味で言われたあの名前がそのまま採用される形となった。

 

 これには私もこの存在も苦笑いだ。

 

 とは言え、こうして意味を込めて見れば、何ともいい名前ではないか。

 

 

「いいかい? 良く聞くんだ。君の名前は【青き交流(リトルパルサー)】だよ。昔言われた侮蔑の意味なんかじゃ決してない。僕が一生懸命考え、そして君が納得した名前だ。……それじゃあ改めて、青き交流。これからもよろしく頼むよ」

 

 

 今まで力を貸してくれた事に、そしてこれからも力を借りる感謝の気持ちを新たに、私の第七波動「青き交流」は、本当の意味で産声を上げたのであった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





〇この二次小説における第七波動について
この二次小説内におけるトンデモ模造設定。
第七波動には意志が存在しており、能力因子は群体生物と言う設定で存在し、「気に入った相手」に対して力を貸してくれる、新たな種族です。
逆に、これまでの能力に適合する、しないと言うのは能力因子側が拒んでいたからです。
つまり第一から第六階梯の波動と異なる波動が検知されるのは、つまり「第七波動と言う生物」が発していた波動だったからです。
だから適応者のクローンを沢山用意しても、気に入らないと拒まれるのは当然なのです。
では、宝剣はどの様な扱いになるのか?
封印しているのだから、さぞや恨んでいるのではないかと考えられますが、そうでもないのです。
理由は案外単純で、宝剣は能力因子たちにとっては安全な場所であると認識されているからです。
イメージはポケモンのモンスターボールな感じです。


〇第七波動【青き交流(リトルパルサー)】について
この二次小説における、フェムトに対するメインヒロイン。
大本は蒼き雷霆(アームドブルー)であった存在であったが、フェムトの在り方をずっと見てきた事で、その存在は大きく変質した第七波動。
こうして名前を与えられ、本格的に力を振るうことが出来る様になったけど、やはり青き雷霆と比べると出力差はどうしようも無い差がある。
そう、出力で敵わないと嘆き続け、そして可能性を追い求めたフェムトに応え、()()()そうあろうと努力した結果、もはや元の蒼き雷霆とは別の能力と化した。
例えば、他者の生体電流を操れる干渉能力であったり、様々な電気の規格に対応できる柔軟性であったり、水の中でも電気を拡散させない操縦性であったりと多種多様。
だけど、戦闘で真っ向から蒼き雷霆と衝突すると如何足掻いても勝てない。
声のイメージはグラブルのワムデュス(人型)、もしくはメイドラゴンのカンナ。
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