ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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第四十一話 降臨する暴龍

 

 

 

 

 私達は相対する相手であるペスニアに戦慄していた。

 

 目の前の相手は本人の事を信じるならば能力者に対する天敵であり、完全な上位者と呼べる存在だからだ。

 

 少し前まであった士気は急速に落ち込んでいる気配を私でも感じ取れており、まだお互い何もしていないと言うのにこちらの敗色が濃厚になってしまっている。

 

 しかし、そんな私達に希望の光を与えてくれる存在が居た。

 

 

『いきなり諦めちゃダメだよみんな! ()()()()()()()()()()()()()()()んだから!』

 

『……へぇ。もし本当なら()()()()()()()()()なんだけど』

 

「ロロの言っている事は本当かい? アキュラ」

 

「ああ。暴龍や龍放射の事はこの戦いが終わった後で話す予定だった。最近解決策が用意出来た所だったからな」

 

「そいつは何より。それで、その解決策って?」

 

「今から見せる。……ロロ、モード・ヴァルキュリアを起動」

 

『了解! みんなには初のお披露目だね!!』

 

 

 元々ロロは人型の姿をしていたのだが、その姿形が更に変化を起こす。

 

 藍色の鎧のようなものを身に纏い、両足のふくらはぎに位置する部位からは蒼天の空を思わせる色をした光の翼を展開。

 

 その光の翼から、GVが能力を使う際の天使の羽を思わせるエフェクトがはらはらと多く舞い散る。

 

 その美しい光景は、さながら創作物にありそうな戦乙女の姿を彷彿とさせる。

 

 

『変身完了! これでもう龍放射は怖く無いよ! みんな、立ち上がって!』

 

「これが希望の歌姫……」

 

「すげぇ。力が溢れてくる!」

 

 

 ロロから流れる()()()()()()()()()()()()がTASを通じてこの場に居る全員に広がっていく。

 

 その力の広がりに比例して私達の士気も回復していくのを感じる。

 

 これで少なくとも龍放射を操ると言うペスニア相手に何も出来ずにやられるなどという事は無いだろう。

 

 そして、個人間のテレパス経由でアキュラから連絡が入る。

 

 

(フェムト、聞こえるか?)

 

(聞こえてますよ、アキュラ。凄いじゃ無いですか! こんな切り札があるなんて)

 

(流石にこの戦闘で使う事は想定していなかったがな。それよりも……フェムト。お前は何としてでも生き残れ)

 

(アキュラ?)

 

(今のロロの姿が切り札なのは事実だが、大局的に見れば見せ札でもある。……本当の意味で切り札になるのはフェムト、お前だ)

 

(え? それってどう言う事ですか?)

 

(ロロの力を分配しているTASを維持できるのはお前だけだからなのが一点。そして、今のロロの力はフェムト、お前の力を模倣した物なんだ)

 

(……!)

 

(お前は龍放射に対抗する力がある。今は詳しく語る事は出来ないが、それだけは間違いない。だから何としてでも生き残れ。お前がやられてしまったら、オレ達を除くここに居るほぼ全員がペスニアの手によって暴龍へと成り果てる。それだけは何としてでも防がねばならない)

 

(…………後で全部、話してくれますか?)

 

(勿論だ)

 

 

 ならば迷う必要はどこにも無い。

 

 私は鉄扇を取り出し、ペスニアと対峙する決意を改めて持ち直しながら彼女を見据える。

 

 周りを見て見れば、みんなもそれぞれの形で決意を固めてペスニアを見据えていた。

 

 

『うんうん。そうこなくっちゃ』

 

「……ねぇペスニア」

 

『あら? 何かしら』

 

「キミの目的は謡精暴龍とやらを倒す事が目的だと話していたね」

 

『ええ。そうね』

 

「ならば何故ボク達の国を滅ぼす必要がある? 普通に考えたらそんな事をする必要があるなんてとても思えないんだけど」

 

 

 紫電の言う事も最もだ。

 

 そもそも倒すべき相手が定まっていると言うのに、なぜそれを無視して私達を滅ぼす必要があるのだろうか?

 

 これまでの彼女の言動から考えるに、今までの行動には何か意味がある筈なので、無意味にこの様な事をする訳では無いと言うのは分かっている。

 

 ……彼女の能力は歌で龍放射を操ると言う物だ。

 

 そして、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力もこれまでの戦いから考えるに存在している事を確認済みだ。

 

 これらの事を総合して考えるに彼女は龍放射以外にも、暴龍そのものを意のままに操れる力を持つのでは無いか?

 

 そう考えれば彼女がこの国を滅ぼす動機が浮かび上がって来る。

 

 

『わたしの操る暴龍を確保をする必要があるからよ。この世界に来る前のわたしの元に居た暴龍達は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しちゃったから。だ・か・ら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って訳。それで結果的にこの国が滅んじゃうって事なのよ』

 

 

 やはり私の予想通り、操る為の暴龍の確保が目的だった。

 

 しかし、元々彼女はどれだけの暴龍を従えていたのかは不明だが、この国の人口の七割分の暴龍が必要であると彼女は判断している辺り、その数は相当な物なのだろう。

 

 一応、この国の人口は約一億辺りをうろついていると近年のデータから判明している。

 

 なので、ペスニアは最低でも七千万体もの暴龍を従えようと企んでいると考えていいだろう。

 

 ……暴龍が一匹につきどれ程の戦力になるのかは定かでは無いが、それでも謡精暴龍に対抗する為に最低でも七千万体等と言う途方もない数が必要だと彼女が考える辺り、その脅威はとんでもない物なのだろう。

 

 それを知ってか知らずか、紫電は彼女に対して交渉を試みる事にしたらしい。

 

 

「……つまり、謡精暴龍とやらを倒せる戦力があればそんな事をする必要は無いと言う考えであってるかな?」

 

『そうよ』

 

「だったら……」

 

『でもダメ。だって貴方達弱いもの』

 

「んな……! オレ達が弱ええだと!?」

 

『そんなにムキにならないで頂戴な。そうねぇ……()()()()()()()()()()()()()貴方達は上位に位置する位強いと思うわ。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ。純粋なフィジカル的に考えてもね。そんな弱い相手と組む利点、わたしにあると思うのかしら?』

 

 

 確かにペスニア視点で考えればそうなるのはもっともの話だ。

 

 古来より力を持たない相手との交渉と言うのは無視して跳ねのけるのが定石だ。

 

 良くネットでは「争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない」等と煽り目的で言われる事が多々あるのだが、逆に言えば「レベルに差があると争いが発生しない」という事でもある。

 

 まあ、これが平和的な意味で使われるのなら問題は無かったのかもしれないが、露悪的な意味で使われる場合は別の話。

 

 一方的な蹂躙と言うのもまた、争いとは呼ばれない。

 

 そして、蹂躙が通用する相手に一々交渉等する必要が無い。

 

 アリの巣に水を流し込む遊びの様に、虫を捕まえ手足を捥ぐと言う遊びをする様に。

 

 

「……なるほど。キミの視点から見て、そもそも話し合いの場に立てる程のレベルにボク達は達していないって事か」

 

『そういうことよ』

 

 

 つまり私達はペスニア相手に単純に力が足りていない。

 

 故に相手が交渉の席に立つ事も無い。

 

 むしろ、こちらの話を聞いてくれるだけマシまである。

 

 まあだからと言ってこちらには何もせずに諦めると言う選択肢は存在しないのだが。

 

 

『……まあでも、チャンスを与えないとは言っていないわ』

 

 

 そう言いながらペスニアは()()()()()()()()()()()()を取り出す。

 

 アレは確か……そう、頭領さんがヒスイさんと一緒に戦っていた時の相手である少女が持っていた物と同じ形の錫杖だ。

 

 

『わたしの居た世界には無かった娯楽や興味のある事が沢山あるこの国を無くすのはわたし自身も嫌なのよ。だから……わたしを納得させてみなさい! 参ったと、わたしの口から言わせてみなさいな!』

 

 

 ペスニアは本音を言えばこの国を滅ぼしたいとは思っては居ないのだろう。

 

 昨日のライブを楽しんでいた様子は紛れも無く本物であったし、VRゲーム内で探検していた好奇心もまた本物だった。

 

 だけど、楽しんでいたそれら全てを投げ捨ててでも謡精暴龍を倒さなければならない理由がペスニアにはあるのだろう。

 

 しかしだからと言って、私達も黙って滅ぼされるままに終わるわけには行かない。

 

 そんな気持ちを示すかのように、この場に居る私達は覚悟を決める。

 

 

「……総員、ボクに命を預けて欲しい。この一戦、何としてでも勝つ」

 

「いいだろう」

 

『頑張ろうね! みんな!』

 

「ったく、しゃーねぇーなぁ!」

 

「この命、護国の為に」

 

「天よ! 小生に与えたまえ!! この荒神をねじ伏せる力を!!」

 

「やれやれ……ダルいけど、今回は真面目にやらないともっとメンドい事になりそう……」

 

「行くぞライ。お前の力、頼りにしている」

 

「ワタシ達の愛の障害を取り除く為に……」

 

「キタキタキターーー!!! 取れ高満載な予感がビンビン来てるんデスケドwww」

 

「星ノ導キよ……小さキ救世主(メシア)ヨ……どうかワタシ達を導いテ下さイ」

 

「フェムトくん」

 

「エリーゼ」

 

「必ず生き残ろうね」

 

「ええ。勿論」

 

 

 戦いが始まる。

 

 この国の未来を賭けた運命の一戦が。

 

 そして、私達の長い一日が始まる。

 

 長く、激動と呼ぶに相応しい一日が。

 

 

『さあ、先ずは小手調べからよ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……【麒麟(きりん)デバイス】起動! それと同時に【モード・イマージュパルス】発動! さあ、現れなさい。わたしの僕達よ!』

 

 

 ペスニアが両手で掲げた錫杖が黄色く光り輝き、現れ出でるは私達が翼戦士と相対する道中でこれまでに戦った相手。

 

 テロリスト連中を始め、紫電の能力を使う量産型の能力者まで、そしてアキュラと初めて遭遇した時に出て来た戦車(ジャイアントロロ)も含めて目白押しだ。

 

 その数はこの場をほぼ埋め尽くすほどの物で、こちらに対して数の暴力をしようと言う魂胆が透けて見える。

 

 恐らく、これまで私達が目撃したホログラム技術に関わる全てをあの錫杖が関わっていたのだと推察できる。

 

 さらに言えば、あの錫杖へとデマーゼル由来と思われる膨大なEPエネルギーが流れ込んできている為、エネルギー切れを期待するのは無理だろう。

 

 

「……! 実体を持ったホログラムか」

 

『そうよ。コレの名前は【イマージュパルス】。わたしの記憶を元に謡精暴龍に取り込まれたデマーゼルの力で具現化した物を、この麒麟デバイスで固着させる事で可能となった技術。このイマージュパルスってのは【鎖環(ギブス)】って言う第七波動(セプティマ)を持った人を()()()()()()アイツ(デマーゼル)の都合のいいように組み変えて出来たこの錫杖型のデバイスでコントロールする曰く付きの代物よ。ま、言うなればバタフライエフェクトの親戚みたいな物ね』

 

『デマーゼルのヤツ、ミチルちゃんだけじゃ飽き足らず、こんな事まで……!』

 

『以前のわたし(ミチル)の時と同じ様に、不確定要素を嫌ったんでしょうね。それじゃあ早速……』

 

 

 始めましょうとペスニアが言おうとしたその時、紫電はメラクと共に動き出していた。

 

 それを私も把握していた為、即座にEPレーダーを使用してこの場に居る膨大な敵対者を全員纏めてロックオンする事でお膳立てを済ませる。

 

 後はもう、二人の独壇場だ。

 

 

「メラク、頼むよ」

 

「もう、しょうがないなー」

 

 

 

 

 

 

 

天より現れ出でたるは

 

星の光の万華鏡

 

天より現る縦横無尽な煌めき、瞬き、輝きの三重奏

 

 

スプライトフォール デストロイ

 

 

 

 

 

 

 特攻衛星“星辰”から放たれる数多の光の柱がメラクの亜空孔(ワームホール)を経由し、亜空孔の出口を増やす事で星辰の光の柱を同時に増やして殲滅力を更に高めた二人のSPスキル【スプライトフォール デストロイ】。

 

 その無慈悲な光の嵐がロックオン誘導に導かれ、ペスニアが呼び出した敵全てを薙ぎ払う。

 

 お前達に用は無いと暗に告げるが如く。

 

 辺り一面を土埃が舞う最中、まるで当然であるかのようにペスニアの声が響き渡る。

 

 一応彼女にもロックオンを施した為、紫電達のSPスキルによる攻撃を受けている筈なのだが。

 

 

『へぇ~……一瞬で全滅させちゃうなんてやるじゃない。まあでも、この位出来て貰わないとわたしも困るんだけど』

 

 

 土煙が晴れ、電子障壁(サイバーフィールド)を展開していたペスニアが姿を現す。

 

 モルフォのソレとは出力が桁違いな事もあり、紫電達の放つ光の柱も難なく防がれている。

 

 

「……これでそのまま倒れてくれれば御の字だったんだけどね。そこまで都合よくはいかないか」

 

「うわぁ……すっごいキラキラした目でこっち見てるよ。面倒事は勘弁して欲しいってのに」

 

『フフ♪ またイイモノを見ちゃったわ♪ 本当に、この国は面白いモノが沢山あるのねぇ♪』

 

 

 作戦の予定通りに地表部分は消し飛ばされた為、部隊展開をする為のスペースの確保に成功する。

 

 そして、即座に事前に打ち合わせをした通りのフォーメーションを組み、改めてペスニアと対峙する。

 

 さて、彼女はここからどう出るのだろうか?

 

 

『この様子だと今更翼戦士を強化した状態で六人全員出した所でたかが知れてそうよねぇ。……予定よりも少し早いけど、暴龍を出しちゃおうかしら。丁度スペースも広がった事だし』

 

「来るか……!」

 

 

 ペスニアはいよいよ暴龍を繰り出すつもりらしく、彼女の周辺を極大規模の電子障壁が展開される。

 

 これは私達の妨害を防ぐ事が目的なのだろう。

 

 その電子障壁内で、六人の人物が()()()()()()()()()浮遊した状態でペスニアの前に姿を現す。

 

 何やら話を始める雰囲気があるので、私は聴覚を強化して会話を盗み聞く事を試みた。

 

 距離が離れているが故に声は小さいが、聞き取る事は辛うじて出来る。

 

 

『さて……分かってるわよね?』

 

『うん。勿論』

 

『これから更に派手にアーティスティックな爆発を楽しめる身体になるのだろう? ならば僕は大歓迎さ!』

 

『ワシは何時でも構わん』

 

『インテルスと結ばれた今、ワタシに悔いはありません』

 

『ウチも同じや。ダイナインが傍におれば、それでええ』

 

『……本音を言えば、もっとアイドルとしての研鑽を積みたかったかな』

 

『アンタはそういう所ブレないわよねぇ。……ま、そこは相手側が奇跡を起こす事を期待しなさいな。イソラ以外の皆もそうだけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。わたしの目的はあくまで謡精暴龍を倒す事。倒す相手がわたしだろうとそうじゃなかろうと、最終的に謡精暴龍が倒れてくれればそれでいいのだから』

 

『本当に、ペスニアはそれでいいの?』

 

『何言ってるの。わたしがあいつらに負けるとでも?』

 

『……そうやって、また自分の本当の気持ちを押し殺すのね』

 

『……過ぎた話よ。それに、わたしの本当の気持ちをさらけ出したい()()()はもう、居ないのよ』

 

『…………』

 

『わたしの大切な()()()()を奪ったアイツを滅ぼす事が、今のわたしがこうしている理由。わたしはわたしの都合で皆をこきつかってるんだから、貴女もこれくらい割り切ればいいのよ』

 

『……分かった。わたしも覚悟は出来たよ』

 

『それじゃあイソラも覚悟が出来たという事で……さあ、始めましょう』

 

 

 電子障壁内で、等間隔に距離を離して宙に浮いた六人が立ち並ぶ。

 

 この距離感から考えるに、暴龍としての大きさは下手をすると小さなビル相当の建物規模になると推察できる。

 

 ペスニアが謡精暴龍を倒そうとしているのは、彼女が大切に思っていた人を奪われたからだと言う。

 

 あの六人に対して裏切っても構わないなんて言い切っている辺り、その信念と呼べる物は本物なのだろう。

 

 ……ああそうか、だから彼女は本当は滅ぼしたいとは思っていないこの国を、それ所か自分自身すら平気で犠牲に出来るのか。

 

 謡精暴龍を倒すと言うのは、言わばペスニア自身を殺す事と何ら変わりがない。

 

 第七波動とその使い手の関係とは、その様な物なのだ。

 

 つまり彼女の本当の目的は()()()()()()

 

 いや、彼女が幽霊である事を考えるに、()()()()()()()の方が正しいのかもしれない。

 

 ペスニアの大切な人を奪った謡精暴龍の存在が、皮肉にも彼女が存在する為の(未練)となっている。

 

 ならば私達に出来る事は――そんな風に考えていた時、ペスニア達の居る電子障壁の中心から()()()()()()()()()()()が流れ出した。

 

 

 

 

■■■■■■(空、茜差して) ■■■■■■■■(寄りそう影ふたつ)

 

 

 

■■■■■■■■■■(慈しみの灯がこぼれる)

 

 

 

■■■■■■■(いつもの帰り道)

 

 

 

■■■■■■■■■(ここにいてもいいと)

 

 

 

■■■■■■■■■(ここにいてほしいと)

 

 

 

■■■■■■■■■■■(望まれ生まれ生きてゆく)

 

 

 

■■■■■■■■(月に見放されても) ■■■■■■■■■(あの光が道を照らす)

 

 

 

■■■■■■■(帰るべき場所は) ■■■■■■■■(ほら、すぐそこに)

 

 

 

 

 ペスニアの透き通る声が辺りに響き渡る。

 

 私も知らない謎の言語による歌である為、内容が分からない。

 

 しかし内容は分からなくとも、それが綺麗な歌であるという事だけは、何となく分かる。

 

 そう思っていた矢先、ペスニアの丁度真下の位置から膨大な量の蒼黒い雷が出現する。

 

 その蒼黒い雷はやがて龍を思わせる姿に変化し、翼戦士達を飲み込んだ。

 

 きっと、これまで見て来たこの雷こそが龍放射だったのだろう。

 

 ……私達もこの一連の行動を黙って見ていた訳では無い。

 

 ペスニア達が話し合いをしていた段階で紫電はメラクの亜空孔やテセオのワールドハック等での転移による突破を試みていたが、どう言う原理なのか不明だが妨害されている。

 

 同じく障壁が張られた直後、アキュラもその手に持っていたブレイクホイールと呼ばれる武装によって電子障壁の突破を試みており、ロロの特性も合わさって一部破りかける事に成功しているが、恐らく間に合う事は無いだろう。

 

 そして、私も含めたそれ以外の皆も持てる武装とSPスキルを電子障壁に叩き込んでいる為、時間を掛ければ突破する事も出来るだろうが、こちらも間に合う事は無いのは明らかだ。

 

 故に私達は、抵抗を続けながらも実質見ている事しか出来ない。

 

 暴龍が誕生する、その瞬間を。

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■(ああなつかしの声に心が震え)

 

 

 

■■■■■(灯をともす)

 

 

 

■■■■■■■(迷わないように)

 

 

 

■■■■■■■■■(「おかえり」の狼煙) ■■■■■■(夜空にあげて)

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■(嵐の日も寒い夜も夢の中でも)

 

 

 

■■■■■■■■■■■■(あなたの帰りを待ち焦がれ)

 

 

 

■■■■■■■■(月に見放されても)

 

 

 

■■■■■■■■(この光を標にして)

 

 

 

■■■■■■■(帰るべき場所は)■■■■■■■■(ほら、ここにある)

 

 

 

 

 蒼黒い雷は加速度的に肥大化し、その大きさは私の見立てよりも少し大きなサイズにまで膨らんでいる。

 

 それはまるで、暴龍の卵を彷彿とさせた。

 

 そして、その卵と思しき力場に罅が入り――

 

 

『『『『『『ガアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』』』』』』

 

 

 ――この世界に、暴龍の降臨が果たされる。

 

 赤と黒のコントラストを兼ね備え、頭の部分に赤く巨大な天使の輪を彷彿とさせる赤い糸の塊を宙に浮かせた暴龍が。

 

 オレンジと黒のコントラストを兼ね備え、全身を甲殻類を彷彿とさせる鎧を身に纏ったかのような暴龍が。

 

 白、黒、緑で構成され、両肩の部分に超巨大な円月輪と思しき物体を背負った女性的なフォルムを持った暴龍が。

 

 黄色と黒のコントラストを兼ね備え、背中に超大型のマントと思われる物体を靡かせた暴龍が。

 

 白、黒、ピンクで構成され、結んだピンク色のリボンの様な羽が特徴的で、女性的なフォルムを持った暴龍が。

 

 青と黒のコントラストを兼ね備え、尻尾の部分を始めとしたあらゆる箇所からドリルを出現させている暴龍が。

 

 

「く……なんて威圧感だ」

 

「これが、暴龍ってヤツなのかよ」

 

「星の光ヲ容易く曇らセル程の存在……何ト恐ろしイ姿なノでショウ」

 

 

 かくて、六体の暴龍は降臨した。

 

 それぞれの特徴は違うが、共通しているのはその巨体だ。

 

 そこからあふれ出る威圧感と迫力は、純粋なフィジカル的な強さも私達に伝えて来る。

 

 ペスニアは私達を弱いと称した。

 

 なる程確かに、この龍達を前にすれば納得せざるを得ない。

 

 

『ふふ♪ 久々だから張り切っちゃったわ。……暴龍達を始めて見た感想はどうかしら? 素敵でしょう?』

 

「これが……この様な存在が、()()()の愛する能力者達の末路だと言うのですか!!」

 

 

 パンテーラが余裕の無い声でペスニアに問いただす。

 

 確かに、この光景は穏健派になったとは言え、かつては能力者至上主義の過激派であった彼女からすれば納得出来ないだろう。

 

 

『そう。これが暴龍。一体でも野放しにすれば世界を滅ぼす可能性を持った存在。貴女達能力者の行きつく最果て……』

 

 

 その言葉と同時にペスニアの背中からモルフォの翼と重なるように、()()()()()()()()()()()()()が新たな両翼として姿を現す。

 

 それは例えるならば、【龍翼】と呼ばれても良い外見をしていた。

 

 新たな翼らしきものを出したペスニアから発する威圧感も周りの暴龍のそれと同等になった辺り、彼女もまた本気を出してきたと考えるべきなのだろう。

 

 そして、以前の戦闘で出した二振りの鎌も連結させた形で宙に浮いている。

 

 

『さあ、始めましょう。この国の命運をかけた一戦を』

 

 

 かくして私達の本当の戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 私達の国をベット(Bet)に賭けた、暴龍と言う未知なる敵との運命の一戦が。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





〇モード・ヴァルキュリアについて2
フェムトの能力を元に作成したLPCS(リトルパルサーコントロールシステム)との共鳴により、龍放射に対抗する事が可能となった。
更にTASと接続する事で、この機能を接続している仲間達と共有する事が可能。
話の中ではフェムトの本当の価値をペスニアから隠す為の見せ札としての役目も存在している。

〇麒麟デバイスについて
相手方のホログラム技術の根幹を担う特殊なデバイス。
イクス世界線に存在していた鎖環の第七波動能力者(セプティマホルダー)から作られた曰く付きの制御装置。
フロントミッション…カレンデバイス…うっ、頭が

〇イマージュパルスについて
イクスシリーズにおけるボスラッシュ及びアシモフ戦で登場した物とガンヴォルト鎖環で登場したイマージュパルスを関連付けた結果、本小説内ではこの様な感じの扱いになった。
ペスニアの記憶とデマーゼルから直接供給されるエネルギーを用いてイマージュパルスを運用している。
以前のイマージュパルスが未完成だったのはこのデバイスが破損していたのが理由で、修復をする為にお金を持ってそうな連中(皇神グループの上層部)を洗脳し、そいつら経由で得た人的リソースを獲得し、時間を掛けて修復していた。
その非道な作成方法から、本小説内ではある意味バタフライエフェクトの親戚扱いされている。

〇スプライトフォール デストロイについて
地球防衛軍シリーズに存在するスプライトフォールの強化版。
元ネタでは威力よりも主に手数が増えており、適正レベルでの運用をする場合、手数を利用したヒットストップによる拘束を範囲内にばら撒くと言う役割を持つ。
本小説内の代物はメラクがワームホールの出口を増やす事で手数を増やしている。

〇ペスニアの言う「あの人」及び「おじさま」について
第三十七話で説明した通り、Xの世界線で鎖環のキャラが登場する場合、年齢が原作よりも高くなると言う説明をしました。
そして、鎖環本編で能力が高まると年が取らなくなると言う要素とこれらを合わせた結果、【イケオジ鎌の人概念】、或いは【イケオジとペスニアが感じているだけの鎌の人マダオ概念】が爆誕する事となった。
どちらになるかは現時点では未知数だけど、一応どちらになってもいい様に話は組んでいます。

〇フェムトの知らない言語の歌について
この歌は【Dragon Marked For Death(ドラゴン・マークト・フォー・デス)】に登場する主題歌である【家路(ファラナジャ)】と呼ばれる歌。
歌そのものは【ドラゴン語】と呼ばれる架空言語で歌われており、本小説内で掲載しているのは翻訳された物。

〇ペスニアに新たに生えた緑色の龍の形をした翼について
ペスニアは上記の作品に存在する巫女とはイクス2で言う所の【並行同位体】と言う形で繋がりが存在している。
その為、このような龍翼を持っていたりしている。
電子の謡精はやろうと思えば電脳体である自身の姿を好きな姿に変える事が出来る。そして、この要素は黒死蝶の謡精女王となった今でも継承されている。つまり……

〇第八波動について
前回の話で登場した第七波動を越えた新たな領域に立つ能力を指す。
ガンヴォルト鎖環が初出で、メビウスの能力「無限の星読み(アストラルオーダー)」の能力がこの領域にあるとされている。
第八波動と書いてエースと読む。

〇無限の星読みについて
生まれながらの暴龍の王メビウスの持つ第八波動の領域に存在する未来を見通し選択する規格外の能力。
元が赤子だからなのか、目を覚ますと世界中に放たれた龍放射と共にこの能力で予測不可能な混沌をもたらすと言う極めて厄介なことが起こると言われている。

〇メビウスについて
ガンヴォルト鎖環ではGVという囮と封鍵による結界の裏に皇神が隠していた、生まれながらにして真の「暴龍の王」と言われている。
その姿は龍の赤子そのものであり、明らかな人外。
この子のSPスキルである【存在抹消(ダムナティオメモリアエ)】での詠唱におけるメビウス語を解読して見た限り、私の中での話になりますが、メビウスは悪者では無いのではと言う考えから本小説内では基本いい子な設定。
因みに解読された文章は「せかい ほふる あおき ちから わたし たおす」と言った感じになる。









サイドストーリー





「かは……!! き、貴様、何故生きて……」

「黙って眠っとけ」


 オレは手持ちの鉄扇で研究員の一人を気絶させる。

 ここは皇神未来技術研究所。

 かつて第七波動能力者を対象とした非倫理的な人体実験が繰り返されていた研究施設だ。

 今では紫電達の改革のお陰で名実ともに「新時代のエネルギーの研究」を名目とする事が出来る様になった場所でもある。

 今でこそ能力者相手に非合理な実験をする事が出来なくなっているが、中にはそう言った監視の目を欺いた一部の連中が非合理的な実験に手を染める事もまた存在する。

 丁度ここで倒れている研究員のように。

 こいつはフェムトの居た研究施設に着任した時からの俺との同期だが、そんな非合理的な実験が大好きなクソ野郎だ。

 ちゃっかり生き残ってここに舞い戻る辺り、悪運の強さと優秀さは一級品だと言えるだろう。


「ほ、ホウダイ(ニコラ)様、よろしいのでしょうか?」

「別に構いやしねぇ。今は緊急事態だし、裏八雲のお墨付きって奴さ。ついでに言うと、こいつ非合法な実験してた現行犯だしな」

「あ……あぁ……」

「おい、大丈夫か?」

「は、はい。お陰様で」

「ならお前は後から来るヤツの指示に従ってくれ。ソイツにお前の事情を話してあるから大丈夫な筈だ」

「分かりました! 本当に、ありがとうございます!」

「……一応言っておくが、俺の背中に居るコイツ(えころ)は見なかった事にしてくれ。イイネ?」

「アッハイ」


 名も無き能力者を助けた後、俺は先へと進む。

 こうして堂々と歩いていられるのは裏八雲経由での皇神に対する根回しが完了しているからだ。

 以前はここまで迅速に根回しする事は不可能だったのだが、紫電が副社長になった事でかなり融通が利くようになったと裏八雲の連中は話していた。

 そうしてたどり着いたのは暴龍の王が眠る封印の間。

 強固な封印で形成されているガラス越しに、その龍の赤子のメビウスが存在している。 


「ホウダイ様、本当に大丈夫なのでしょうか?」

「アキュラを信じろ。必ず上手く行く。……それに、コイツも俺達が来てから外に出たがってるみたいだしな」

「そうなのですか?」

「幼いながら、随分と賢い子じゃねえか。俺達が何を持ってきたのかも把握してるらしい。ま、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのを知ってればどうという事は無いさ、えころ」

「因みにですが、どうやってそれを?」

「根気良く話しかけたら返事してくれてな。その時に前居た世界線での出来事を聞かされたのさ。まあ暴龍の王何て言われちゃいるが、コイツはれっきとした赤子だぞ? 外で騒がしくすれば訳も分からずパニックになっちまうのは当然だろうに。コイツも気の毒なヤツだぜ。全く」

―――――――――(はやく そとに でたい)

「っとと、いけねぇ。早く外に出たいんだよな。ちょっと待ってろ……」

「え? 今の声は……」

「コイツの声を翻訳した物さ。コイツの言語が()()()()()()()()()()()グレイヴピラーに眠ってたから何とか翻訳機も用意出来たって訳よ。いやホント、グレイヴピラー様様ってヤツさ」


 そう言いながら、オレはアキュラの居た世界線で共同開発した蒼色の宝玉【龍宝玉(ドラゴン・スフィア)】を掲げる。

 龍宝玉は俺の手から離れ、一人でに宙に浮いた状態となった。

 この龍宝玉と呼ばれる代物は、俺の持つオカルト技術とアキュラの持つ科学技術、そしてグレイヴピラーで得た技術も合わさり完成した物。

 理論上、これでメビウスが目覚めると同時に無意識に放つ龍放射を無害な波動へと調律(チューニング)する形で無力化する事が可能となる。

 そして、無限の星読み(アストラルオーダー)の制御の補助すら可能な科学と神秘の合わさった神器と呼べる代物だ。

 この宙に浮いた龍宝玉を起点にメビウスは転移。

 それと同時に龍宝玉からメビウスを保護するような形で透き通った蒼色のバリアの様な物が形成される。

 ……龍放射を計測する【D(ドラゴニック)-カウンター】の値は基準値を維持している為、問題無く龍宝玉はその機能を発揮しているのを確認。

 これでメビウスは自由に外に出る事が出来る様になった。

 コイツも周りに迷惑を掛けずに外に出れたのは初めてだったらしく、嬉しそうな思念が翻訳機経由で俺とえころに流れ込んで来る。


――――――――(たのしい うれしい).――――――――(ありがとう にこら えころ)

「おう。……三文字以上の言葉も話せるようになったな。えらいぞ」

「本当に賢いですねぇ。メビウスちゃんは」

「んじゃま、早速で悪いがちと頼みがある。お前も分かってるとは思うが、この国にはやっべぇヤツがいる。分かるよな?」

――――――――――――――――(わかる せかい ほろぼす うたの ちから).――――――――(かなしい 【りゅうのみこ】)

「そいつを何とかするのに今からこの国の龍脈を抑える為に使われてたって言う【封鍵】を回収するのを手伝って欲しいのさ。まあ、四本ある内の三本はもう裏八雲最強のアイツがフェムト達に届けてる最中だから大丈夫だとは思うんだが……何だか胸騒ぎがしてな。オレの役目はお前を回収した後は基本後詰めだけだから本来は気楽でいられるはずなんだが、そんな時に限って嫌な予感ってのが当たっちまうものなのさ。ま、そういう訳だから力の使い方の練習がてら頼む」

―――――――――(わかった れんしゅう だいじ)

「おう。頼りにしてるぜ。場所は……ここだな」


 オレは立体型の地図を表示し場所を指し示す。

 そこは龍脈が近い影響で事故が多発しているコンビナート。

 今はエネルギー問題の影響もあり、こんな所でも採掘が行われている。

 豊富な化石燃料が取れる場所なのだが、有毒ガスもセットなのが問題点であると言える厄介な場所だ。

 勿論あの最強忍者ならここも攻略する事は出来るだろうが、先にも言った通り有毒ガスなんかの影響でどうしても慎重になる必要が出てくるため時間が足りないと言える。

 よって、本来はここの封鍵は回収する為のカウントには含まれていない。
 
 ただアイツから余裕があるなら回収して欲しいと頼まれていた為、回収に行こうという訳なのだ。

 ……オレの今までの経験上、こう言ったモノを逃すと大抵痛い目に合う。

 こう言ったオレの経験則は何度も死線を潜って得て培った物なので、胸騒ぎがする等の直感的な警告には素直に従うようにしている。
 
 しかも今回のこの警告はかなりドギツイ代物である事から、()()()()()()()()()()()()()()()()を開放する必要が出てくるのは確定だろう。

 正直、あんましコレに頼るのは個人的には嫌なんだが……贅沢は言えねぇよなぁ。



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