ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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サイドストーリー










BREAK OUT










 龍放射を計測するD(ドラゴニック)-カウンターの数値が危険域を優に超えた水準であるとロロを経由してオレに警告を発する。

 この龍放射の濃度は並大抵の第七波動能力者(セプティマホルダー)の精神を狂わせるのに十分な量であり、ロロのモード・ヴァルキュリアとTAS、そしてフェムトの存在が居なければ戦いにすらならなかっただろう。

 アイツは龍放射に対抗できる宝玉因子(スフィアファクター)である為、TASで接続していれば今のロロと同じように龍放射の影響を防ぎ切ることが出来る。

 オレとロロはともかく、他のメンバーはほぼ第七波動能力者で構成されている為、TASを維持するフェムトと言う存在が文字通りの命綱だ。

 この命綱が無ければ、彼らは暴龍に成す術が無い。

 故に、この戦いにおける勝利の鍵を握るのはフェムトの存在その物であると言える。




MISSION START







 右手にブレイクホイール、左手にエクスギアを携え身構える。

 目の前に存在する暴龍達に対して、オレの装備がどこまで通用するのかは未知数だ。

 しかもコイツらを仮に倒したとしても、謡精暴龍なる存在も後に控えている。

 この事から考えるに、ハッキリ言ってしまえばオレ達の勝率はあまり高くはないだろう。

 しかし、何もせずに終わるわけには行かない。

 オレにとっては暴龍と相対するという事は即ち、父さんから引き継いだ意思の決着を付けると言う意味もあるからだ。

 ……ふと、オレは相棒(ロロ)を見る。

 暴龍を前にしていると言うのに、コイツは相変わらず太々しい余裕な態度だ。

 
『アキュラくん。今回は何時もみたいにぼく達だけじゃない。こんなに沢山の人達が一緒に戦ってくれる。……凄く、心強いよね』

「ああ。……いいものだな。仲間が居ると言うのは」

『アキュラくんからそんな言葉が出るなんてねぇ~』

「いけないか?」

『ううん。全然。……それじゃあアキュラくん、行こう!』


 お前がそうして何時も通りだからこそ、オレはここまでやって来れた。

 だからこそ、今回で終わらせなければならない。


「ああ。龍放射に纏わる因縁、オレが討滅する!」


 龍に纏わる因縁を。




READY







 皆の先陣を切る形でオレはブリッツダッシュで先行する。

 それに合わせ、オレに対して迎撃の姿勢で突撃して来るのは暴龍と化したバクト。

 ヤツは螺旋を身に纏いながらこちらに対して突撃する。

 その巨体もあり、単純な突撃だけでも脅威に値する為即座に【スピンチョッパー】を用いて紙一重で突撃と身に纏う螺旋を回避。

 間髪入れずに今のロロの形態のお陰でチャージ時間を無視出来る様になった最大チャージ版の【プリズムブレイク】を叩き込む。

 このEPウェポンは射出速度は遅いが、その威力は折り紙付きである上に相手は巨体。

 それに加えて至近距離である事から例えロックオン無しの状態でも避けられる道理は存在せず、バクトの纏う螺旋を突き抜けて直撃する。


『グオォォォォ!!』

『この武器効いてるみたいだよ! さっすがアキュラくん!』

「実体の無い螺旋を突破するならば、超硬質の物体をぶつけるのが確実だからな。しかし……」

『グアァァァァ!!』

『向こうはまだまだ余裕あるみたい!』


 このプリズムブレイクは本来、この武器を弱点に持った能力者であるならば直撃すればただでは済まない筈の代物だ。

 さらに言えば、威力その物も今のロロの形態であるモード・ヴァルキュリアのお陰で跳ね上がっている状態。

 それなのにも関わらず、暴龍と化したバクトはまだまだ余裕のある様子をこちらに見せている。

 この事から、ペスニアの言う様にフィジカルの面では圧倒的であると言わざるを得ない。

 しかし、暴龍である故の弱点も存在する。

 それは理性が存在しないという事だ。

 本能のままに暴れると言うのはそれだけで脅威であると言うのは事実だが、それ故に大きく隙を作りやすく、場合によっては能力者で居た時よりも戦いやすい。

 TASのテレパス経由でも既にこの情報は共有されており、他の暴龍を相手にしている皆もこれらを踏まえて対処している様だ。


(兵長さん! カノン砲をお願いします!)

(要請、承った。カノン砲発射準備! フェムト殿からの初の要請だ! しくじるなよ!)

(了解! ロックオン確認! 【ブレイジングカノン】、発射準備よし!)

(カノン砲、発射する!)


 ブレイジングカノンの着弾音が俺の耳を揺さぶる。

 この兵装は爆炎(エクスプロージョン)の第七波動に加え、皇神の持つ宝剣技術を用いた物だと聞いている。

 オレのEXウェポンである【ブレイジングバリスタ】とは違い、着弾時にルミナリーマイン位の規模を持った爆発が発生するようになっているようだ。

 ……さて、こちらも新たな新機能を試させてもらうとしよう。

 それはGVとの訓練の際、ヤツが見せた電光石火の強襲(ライトニングアサルト)をオレなりに再現した物だ。

 その名は【ブリッツアサルト】。

 アンカーネクサスによる追尾するブリッツダッシュと同時にタイムフリーザーを瞬間的に発動させる事で成し得る新たなる機能。

 これによってオレは敵の攻撃を掻い潜りながらのロックオンが可能となる。


「ハァ!!」

『うわっとと。慣れないとちょっと酔いそうになっちゃうね』

「だが、有用であるのは事実だ」


 オレ達から見れば普通にブリッツダッシュをしただけの感覚だが、相手からすればまさに電光石火の強襲に映る。

 時間操作とブリッツダッシュの合わせ技は、この様な芸当も可能なのだ。

 これによって暴龍と化したバクトの顔面にロックオンし、同じようにプリズムブレイクを、そしてロックオンホイール(ホーミングショット)を叩き込む。

 しかし相手も負けておらず、こちらの攻撃を何度も受けつつも自身の周辺に大規模な螺旋の竜巻を発生させ、周囲を飛んでいるオレを吹き飛ばそうとする。

 今は高機動形態のブリッツシフトである為、回避する事は容易だ。

 ロックオンもされている以上この螺旋の竜巻も無視した攻撃も出来る為、遠距離戦になるのは寧ろ望む所。

 土埃も上がっている為、向こうの視界も塞がっている。

 今が決め時であると言えるだろう。


「ロロ! ()()をやる! ドッキングを!」

『了解! ……よっし、本体の接続完了!』

「ディバイド……またお前の力を借りる事になるとはな」


 オレはエクスギアにマウントしていた嘗ての愛銃ディバイドを取り出し、構える。

 その後、銃の周囲にロロのビットが集結し、円陣を組むと同時に俺から見て時計回りで回転を始めた。


『ABドライヴ出力最大! フォトンエネルギー増幅率、500%オーバー! 危険域(エマージェンシー)! アキュラくん!!』

「行くぞ!」


 それは嘗てまだオレが未熟だった時の未完成だった兵装。

 ABドライヴに過負荷をかけると言う都合上、機能だけを残して使われる事は無かった。

 その兵装の名は――
 
 






集う、集う、光が集う

屠龍を成す為の輝きが集う

雷霆の心臓より供給される殲滅の閃光 今ここに


ハートブレイザー








 ディバイドから放たれるフォトンエネルギーをビットを用いて増幅して解き放つ殲滅攻撃、その名は【H(ハート)ーブレイザー】。

 オレの居た世界線において対エデンを相手に一度だけ使用した兵装だ。

 この兵装は当時、ABドライヴに大きな負荷をかけるが為にその時以降使われる事は無かった。

 しかし、LPCS(リトルパルサーコントロールシステム)のお陰で出力最大の状態を極めて高水準に安定させる事が出来る様になったお陰で、この機能を本格的に復活させる事が出来た。

 その性質から、暴龍のような大型の相手に対して高い効果を発揮する。


『グギャァァアァァ!!!!』


 殲滅の閃光を顔面に受け、暴龍バクトは崩れ落ちる。

 倒れた衝撃によって土煙が上がり、そのままヤツの肉体が崩壊していく。

 これで暴龍であるバクトの撃破を成したと考えてよいだろう。




CLEAR







『やったぁ! 暴龍何て言っても大した事無かったね、アキュラくん!』

「頑丈さと能力の規模だけは目を見張るものはあったがな。しかし、戦いにおいて重要な理性が無い以上、この結末は当然と言えるだろう」


 辺りを見て見れば、フェムトはペスニアに切り込んでおり、上手く彼女を抑えることが出来ている。

 他の暴龍も、オレが撃破したのとほぼ同じタイミングで撃破されており、ついさっき最後の暴龍であるイソラもまた倒れ伏した。

 これでもう、残るはペスニアだけだ。

 それを確認したのか、ペスニアはフェムトをその手に持つ大きな鎌で弾き飛ばした後、こちらに対して顔を向けた。


『あらら。もう皆倒されちゃったの? ふぅん……わたしの思った以上に出来るのねぇ』

「ハッ! こんなモンでオレ達を止められると思うんじゃねェ!」

「小生には良き相手であったぞ」

「確かに暴龍は世間一般から考えれば十分脅威だと言えるけど、相手が悪かったね」


 今や残るはペスニア一人。

 勝負あったとこの場に居る殆どの者が確信している。

 しかしオレの中の経験から来る直感は、それを否定していた。

 ペスニアは確かに驚いてはいるが、その態度にはまだ余裕が残っている。

 それ所か消耗している様子さえ見せていない。

 間違い無く、まだ何かある筈だ。


『そっか、そっか、そうなんだ♪ ()()()()()()()()()()()()()()()()♪』


 ペスニアのその言葉と同時に先程倒し、消滅したはずの暴龍が翠色のオーラと共に再び姿を現した。

 ……一度目は遠くからであったが故に分からなかったが、あの翠色のオーラ……間違いない。

 アレは【翡翠の死神】、或いは【死と踊る霊翼(オージーオブザデッド)】の異名を持つ【B.B(ブラックバッジ)】の第七波動(セプティマ)の波動だ。

 オレは一度だけだがヤツとの遭遇戦をした記憶がある。

 まだバタフライエフェクトの所在を把握する為に各地を転々としていた時、コイツは現れた。

 三十から四十辺りの歳を取った風貌を持った赤髪の男で、その見た目通りの戦いの技巧を持った人物だ。

 突然の強襲だったが故にお互い会話を交わす事は無かったが、オレが取り逃した数少ない第七波動能力者(セプティマホルダー)の一人であり、何処の技術かは不明だが変身現象(アームドフェノメン)もしていた。

 翡翠の死神と言う二つ名はその変身現象をした時の姿から取られた物なのだろう。

 確か、ヤツの第七波動の名前は……


「何!? 復活しただと!?」

『アハハハハハハ♪ これがおじさまがわたしに遺してくれた【死霊(ガイスト)】の第七波動! ()()()()()()()()()()()()()()よ!! 以前ダイナイン達と一緒に戦った時に話したわよねぇ!? ()()()()()()()()()()()()()って!』

「それって、まさか……!」

『貴方達が謡精暴龍に奪われていた麒麟デバイスを、暴走と言う形で使われて仮初の身体に捕らわれた彼等を開放してくれたから、こんな事が出来る様になったの。わたしはその時麒麟デバイスをアイツから取り上げたり、それを修復したりで忙しかったから感謝しているのよ? 本当にありがとう。お陰で余計な手間をかけなくて済んだわ♪』

「こ、コノヤロウ……アイツらを如何にかするのにどんだけ苦労したと……!」

『いいじゃない別に。アンタ達はそっからデータを解析して戦力強化してたんだから。その辺り、お互い様でしょう?』

「……能力は原則につき一人一つしか持てない筈です。何故その第七波動を扱えるんですか?」

『フフ♪ わたしの想像以上の実力を持った貴方達だから、特別に教えてあげる。……わたしを残して死んでしまったおじさまの第七波動の残滓の全てを取り込んだからよ』

「能力を取り込むだって……!?」

「んなデタラメな事が出来るってのかよ!」

「……なるほど、【普遍化(ノーマライズ)】に近い現象を用いたか」

「……!!」

『……? 普遍化って、何なのかしら?』

「……簡単に言えば、任意の第七波動を誰でも扱えるようにする技術の事だ」

『ふーん……ま、ポンコツにしては上出来よ。一応礼は言っておくわ』


 この言葉は専門用語だから分からないのも無理は無い……か。

 だとしたら、ペスニアは感覚的にそれが出来てしまっている特異な例なのだろう。

 話は変わるが、普遍化は昔エデンを壊滅させた際にヤツらが何を企んでいたのかを調べた時に出て来た言葉で、それによると電子の謡精(サイバーディーヴァ)を普遍化する事でエデンを率いる能力者達を強化し、当時の無能力者(マイナーズ)達を相手に戦争を仕掛けようと企んでいたらしい。

 現に、オレのこの言葉にパンテーラが明確に反応している。

 ……流石にこの世界の情勢においてそんな事を企んではいないらしいが、やろうとした時期はあったのだろうと推察できる。

 そうで無ければわざわざこの国へと潜入する理由も無いだろうからな。

 まあ、それは置いて話を戻そう。

 つまりペスニアはB.Bの第七波動をそう言った形、或いは近い形で取り込んでいるから死霊の第七波動を扱えるのだと思われる。

 この事が何を意味するのか。

 それはオレ達が更なる困難に直面する事を端的に表している。

 先ほどの様に、暴龍達が復活すると言う形で。


『ん~……。同じ事しても面白く無いわねぇ。……そう言えば、理性がどうとか言ってたっけ』


 その言葉と同時に、ペスニアは歌い始める。

 またあの時と同じ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を用いた歌を。

 その歌と同時に、暴龍の濁り切った瞳に光が宿る。

 コイツ、まさか……!


『ちょっとペスニア。コレが出来るんなら、最初からやっとき!』

『あはは♪ ごめんなさいねインテルス。大抵の相手は暴れさせるだけで何とかなってたから、つい♪』

『全く……いくらこの姿でも倒される程の攻撃を受けたら痛いんだから、その辺り察して欲しいよ』

『リベリオったら、細かい事を気にしてはダメよ?』


 龍放射を操ると言う事、そして電子の謡精の能力も残っている事から察してはいた。

 ペスニアの能力には暴龍を操る力も備わっているのだと。

 恐らくだが本能を抑えると言う形で操り、理性を取り戻させたのだろう。


『それじゃあ気を取り直して第二ラウンドを始めましょう。今度は簡単には行かないわよ?』


 事態は完全にふりだしに戻って……いや、それ以上に後退してしまった。

 暴龍である彼らに理性の光が宿った以上、苦戦は免れないだろう。

 そう思いながらオレは、再びヤツらに向かってブリッツダッシュで飛び込むのであった。

 これまで以上に心を研ぎ澄ませながら。






第四十二話 イマージュパルスと暴龍、その脅威

 

 

 

 


 

STRIK

 


 

 

 

 

 最初の内は私達が圧倒していた。

 

 初の【宝剣兵装】の運用も順調に機能し、爆竹の勢いで暴龍達を撃滅出来ていた。

 

 しかし、ペスニアがそんな彼らを一度蘇生してから流れが悪くなり出した。

 

 彼女の歌によって理性を宿した暴龍は凶悪そのもので、かなりの苦戦を強いられる。

 

 しかし、その巨体故の小回りの利かなさを付け入る事で誰一人かける事無く再び勝利する事に成功。

 

 だがやはり、彼女は再び暴龍を蘇生させる。

 

 それ所か、今度は彼女が手に持つ麒麟デバイスと呼ばれる物で暴龍のイマージュパルスまで出現させたのだ。

 

 それをもう何度か繰り返される度にイマージュパルスで呼び出される暴龍が増加し、それに比例する形で暴龍の力も増している。

 

 このままではジリ貧になるのは避けられないだろう。

 

 

『アハハハハハ♪ 凄い! 本当に凄いわ! 貴方達はどこまでわたしを喜ばせれば気が済むのかしら!?』

 

「貴女を喜ばせる為にやってる訳ではありませんよ……!」

 

「クソッ! また数を増やしてきやがった!」

 

 

 今の所まだこちらの被害は無いが、それもいつまで続くかは未知数だ。

 

 私の支援スキルであるスピードヴォルトとシールドヴォルトは使用済みで、私の出来る事はリトルの歌(ソングオブパルサー)以外、可能な限り行っている。

 

 それに、途中から大型自律飛空艇(ドローン)飛天がこの戦場に到着した事で、この飛空艇に新たに搭載されたイオタの第七波動(セブンス)である残光(ライトスピード)を元に開発されたレーザータイプの広域宝剣兵装である【レイストーム】による要請が可能となった。

 

 更に、完成した無人戦闘機フェイザントの編隊による純粋な航空爆撃である【プランZX】と言う要請も可能となった事で、もうこの戦いは一種の戦争の域に到達してしまったと言える。

 

 この国にとっては滅ぶか滅びないかの瀬戸際である以上、戦争と言う表現も間違っていない筈だ。

 

 それでも不幸中の幸いと言うべきか、この事を見越して紫電はこの周辺の地区に住んでいる人達を戦いが始まる前に避難させており、民間人への人的被害を気にしなくても良くなっている。

 

 お陰で私も遠慮無く兵装の要請を飛ばすことが出来ると言う物だ。

 

 

(こちらフェムト。レイストームの発射をお願いします!)

 

(要請受諾。ロックオン確認。……レイストーム、発射(はっしャァッ)!!!)

 

 

 上空に居る飛天から放たれる無数の光が暴龍イソラに向かって放たれる。

 

 紫電の扱う星辰程では無いが、この武装は取り回しが良く連射が効くのがウリだ。

 

 それと合わせ間髪入れずに暴龍クリムの足止めを目的にフェイザントによる爆撃、プランZXを要請。

 

 フェイザントは無人機である為、こちらが要請の意思を伝えれば即座に行動に移してくれる。

 

 

(皆さん! 暴龍クリムに対して航空支援を要請しました! 近くに居る人達は一度エリーゼからの治療を受ける事も兼ねて退避して下さい!)

 

(すまねぇフェムト! 手間かけさせちまった見てェだな!)

 

(傷を受けた人はわたしの所へ! フェムトくんのアビリティと私の【ライフリジェネ】のお陰で余波位なら多少は誤魔化せますが、暴龍の攻撃の直撃は誤魔化しが効きません! マズイと感じたら即座に後退して下さい!)

 

(動けなかったらボクに言ってくれれば直ぐに転送するからね。……はぁ、こんな事をボクがするのは今日限りの貴重な機会なんだから、しっかりありがたみを噛み締めて欲しいね)

 

(ヌゥ……! 小生はまだ戦えるでござる!)

 

(カレラ、無理をするな。一度後退して傷を癒せ)

 

(そうだ。嘗ての俺の様に手遅れになってからでは遅いのだぞ)

 

(済まぬイオタ殿、ストラトス殿。……メラク殿、頼めるか?)

 

(はいはい。ボクにお任せあれ~ってね)

 

 

 暴龍クリムの一撃を受けていたカレラがフェイザントの航空支援による爆風を盾にしつつ、メラクの力を借りて一時退避する。

 

 あの強化された爆発の直撃は、流石のカレラでも一時後退せざるを得ない代物らしい。

 

 とまあ、この様な事がありながらも今回もイマージュパルスを含めて暴龍の撃破に成功。

 

 そして、同じ轍を踏まない様に私もデイトナと共にペスニアに肉薄しているのだが、彼女はあろう事か戦いながら歌いだしたのだ。

 

 それ所か歌いながらしゃべる事も出来るらしく、張りついて止めるという事も出来ない。

 

 

「くっそ! 無駄に器用な事しやがって!」

 

『この手の精神感応能力持ちにとっては当たり前の芸当よ。そこに居る玉っころや今頃ライブ中なモルフォだってそうでしょうに。……さあ、また難易度を引き上げるわよ。どこまで耐えられるかしら? アハハハハ♪』

 

「……何故一思いに始末しない?」

 

「紫電?」

 

「ボク達は完全に遊ばれている。情けない事だが、ペスニアの態度から見てそれは明らかだ」

 

『別にそう言うつもりはないんだけどなぁ。わたしはただ貴方達の戦い方を学んでいるだけよ。ネットで調べた事も実戦しながらね。向こうに居た頃は戦い方なんてそれこそ個人対個人が普通だったし、謡精暴龍との戦いだって操っていた暴龍を特攻させて後は各個体に任せただけだったし……だからね。貴方達の様に創意工夫を凝らして戦っている姿はわたしにとって、とても新鮮なのよ。新しい可能性を感じずにはいられない。もしかしたらって考えちゃう』

 

 

 恐らくだが、ペスニアの居た世界線ではその手の戦術、戦略的な書物やデータベース等が消失してしまっているのだろう。

 

 だからこそ、初期の頃は純粋な力押ししか出来なかったと言える。

 

 

『でもね、まだ足りないのよこれじゃあ。とてもじゃ無いけど、謡精暴龍相手じゃ全然足りない。一撃を受けただけで撤退しちゃう位の脆弱な体では、面白い戦い方が出来ても宝の持ち腐れだわ』

 

 

 ペスニアは表情こそころころと目まぐるしく喜怒哀楽を変化させているが、眼だけはちっとも変化していない。

 

 暗い決意を宿した深淵の眼は、謡精暴龍に対する憎悪によって暗黒の炎と呼ぶべき意志の強さを物語る。

 

 

「この状況……まるで蠱毒を思わせるね。互いに喰らい合わせ、謡精暴龍に対する毒を作り出すかのように」

 

『……ええそうね。わたしがやろうとしているのは正にそれよ。互いに喰らい合い、生き残った者が謡精暴龍と戦うの。私が勝てば貴方達を暴龍にした上で決戦に臨めるし、貴方達が仮に勝つ事があるならば、このわたしを撃破したならば謡精暴龍も大幅な弱体化は避けられないし、何よりわたしに勝った以上、負ける事何てあり得ないでしょ? つまり如何足掻いてもわたしの得になるって訳』

 

「本気かよ……狂ってやがるぜ。こいつはよ」

 

『あはははは♪ ……おじさまの居ない色あせた世界で、正気で何て居られる訳ないでしょう!? わたしは謡精暴龍を倒す為なら何だってやるわ! 自分の身を犠牲にしてでも、刺し違えても、何を犠牲にしても必ず倒すわ!!』

 

「……そんなにその人が大事だったのですか」

 

『ええそうよ! おじさまはわたしに色の付いた世界を教えてくれた大切な人だった! 大好きな人だった! 愛していたのよ! 貴方だって想像すれば分かるでしょう!? あの子が、エリーゼが居なくなったらって考えれば!』

 

「それは……」

 

『でも安心して? わたしは貴方達を離れ離れにするシュミは無いの。だから……二人仲良く、暴龍にしてあげるのよ!!!』

 

 

 ペスニアの気迫が爆発的に膨れあがり、それに呼応して暴龍達の力もさらに活性化している。

 

 ……これからの戦いはリトルの歌を、エリーゼのリザレクションを解禁しなければならないだろう。

 

 もう本当に、私達に手段を選ぶ選択肢が無い。

 

 私はエリーゼに対して専用回線を開く。

 

 

(エリーゼ)

 

(フェムトくん……)

 

(リザレクションを解禁する。恐らくだけど、ここから先は私達の誰かに犠牲が出るのは避けられない。紫電にも作戦が始まる前に話だけは通してある。だから遠慮無くやって欲しい)

 

(分かった。わたし、頑張るから)

 

(……ごめん、エリーゼ。結局リザレクションを解禁せざるを得なかった。この事は秘匿しなきゃいけない事だったのに)

 

(謝らないでフェムトくん。……わたしね、嬉しいんだ)

 

(嬉しい?)

 

(だって、こうやってフェムトくんの支えになれてるんだもの)

 

(エリーゼ……ありがとう)

 

 

 私は専用回線を解除し、これまで会話に参加せずにTASの維持やスキルの管理に専念していたリトルに対して指示を出す。

 

 歌を解禁する指示を。

 

 

(リトル、返事できそう?)

 

(……ん。何とか慣れて来た)

 

(それなら、歌う事も出来そうかな?)

 

(大丈夫。龍放射の満ちたこの環境ならリスク無しで歌えるよ)

 

(……? どう言う事です?)

 

(アキュラがわたしの事を切り札だって言った意味、分かった気がするの。だって、さっきから私達の周辺にある龍放射、EPに凄い勢いで変換されてるの。アビリティのソレとは関係無く。これがきっと、調律(チューニング)するって事なんだと思う)

 

(リトル……)

 

(フェムト。私頑張るね。一生懸命歌って、皆を助けるの。今も一緒に戦ってるロロみたいに。今もライブと言う形でこの国の人達に希望を与えているモルフォみたいに)

 

 

 リトルの存在感が急速に高まるのを感じる。

 

 周囲の龍放射をEPに調律し、その力を用いて歌を発動させる。

 

 今後私達に力の供給をする事が大変になるであろうエリーゼの負担をゼロにした上で。

 

 私だけでは無く、皆を助ける為の歌を。

 

 

 

 

 

 

 

私の歌は皆の為の歌

 

共に歩む人達に捧げる魂の歌

 

そして、仲間を繋ぎ止める楔の歌

 

 

SONG OF PULSAR(ソングオブパルサー)

 

 

 

 

 

 

 

近すぎると見えなくなる

 

 

 

近すぎると感じなくなる

 

 

 

近すぎると傍に居る事に気が付けなくなる

 

 

 

だから私は少しだけ離れるの

 

 

 

大切な貴方を感じる事が出来る様に

 

 

 

互いに触れ合える喜びを感じ取れる様に

 

 

 

 

 私を中心に、リトルの歌が響き渡る。

 

 以前よりも少しだけ上手になった彼女の歌が。

 

 変換したEPを糧に、リトルが顕現を果たす。

 

 少しでも皆の力になれる事を信じて。

 

 

『みんなお願い。頑張って!!』

 

 

 リトルの顕現と同時に私も含めた全員に蒼白いオーラが迸った。

 

 このオーラが周囲の龍放射を打ち消す所か、取り込んで纏う者に対するチカラとなって恩恵を授けている。

 

 しかも今回はアビリティやロロの力との相乗効果も合わさり、以前よりもずっと力強い。

 

 そして、この恩恵はTASで接続している途中参戦した飛天やフェイザントにも及んでおり、パラメータを可視化した情報を見た限り、その性能を限界以上に引き出されているのを確認出来る。

 

 

『……! やっと出て来たわね!』

 

『……』

 

『改めて対峙して見て分かったわ。貴女は龍放射を打ち消す所か、何らかの形で取り込んでチカラに変えているのね! これは間違い無く謡精暴龍に対する切り札になり得るわ! だから……そのチカラ、わたしに捧げなさい! 貴女を取り込んで、わたしは謡精暴龍を倒すわ!』

 

『ダメ。わたしの存在の全てはフェムトの為にあるから』

 

『なら! フェムトをエリーゼと一緒に暴龍に変えて、貴女共々切り札として使わせて貰うわ!! 総てはおじさまの仇を討つ為に!!!』

 

 

 戦いは激しさを増していく。

 

 互いの攻撃による余波が地下施設のあった場所だけでは無く、その周辺にある地区の施設を始めとした建物等を粉砕する。

 

 暴龍インテルスによる重力制御の嵐が辺り一面を微塵に砕く。

 

 暴龍ダイナインの背中にある超大型の偏向布巾(ベクタードクロス)が私達の攻撃を周囲に弾き飛ばす。

 

 暴龍イソラの分身(コンパニオン)で出来た無数の巨体で出来た分身が私達の元に特攻する。

 

 暴龍バクトの放つ無数の螺旋のドリルが回転を加速させ、地表を砕きながらこちらの陣形を乱そうと突貫する。

 

 暴龍リベリオの変幻自在の赤い糸が攻防一体となって私達を阻む。

 

 暴龍クリムの圧縮された爆発エネルギー弾による無慈悲なる無数の散弾が私達を襲う。

 

 そして、決意を纏ったペスニアがSPスキルを発動させ、遂に私達のメンバーに犠牲者が出る事となった。

 

 

『捉えたわ! さあ、最初の犠牲者は貴方よ! 紫電!!』

 

「しま……っ!」

 

 

 暴龍リベリオの赤い糸に紫電が捕らわれる。

 

 直ぐにでも救出しようとアキュラとパンテーラが駆けつけようとするが、他の暴龍に阻まれて近づく事が叶わない。

 

 仮に今からメラクやテセオに転移の指示を出したとしても、このタイミングでは間に合わないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

狂騒の宴 翠の鎌が閃き踊る

 

その手に抗うすべはなく

 

迫る死線に ただ祈れ

 

 

デスプロセッション

 

 

 

 

 

 

 

 ペスニアの持つ麒麟デバイスが光り輝き、姿を現したその存在。

 

 イマージュパルスと言う形で現れた彼は、正しく翡翠の死神と呼ぶにふさわしい外見をしていた。

 

 赤髪の壮年の風貌である所から、ペスニアの言う通り「おじさま」と呼ばれるに相応しい姿であると言えるだろう。

 

 そんな彼はペスニアと共に連結させた大鎌で闇夜に紛れながら紫電を切り刻む。

 

 そしてヨハネの黙示録に登場する第四の騎士、ペイルライダーを思わせる翡翠のオーラを纏った大型のバイクに二人は乗り込み、そのまま紫電に対して突撃を慣行。

 

 そのまま何度も往復する形で引きずり回し、ダメ押しと言わんが如く二人は同タイミングで大きく死神の鎌を振るい、紫電に絶命と言う致命傷を与えた。

 

 上半身と下半身に別れた紫電は爆発四散し、辺り一面に彼だった物の残滓が散らばる。

 

 

「紫電!!!」

 

「……間に合わなかったか」

 

 

 パンテーラの悲痛な叫び声とアキュラの意気消沈した声が私の耳に届く。

 

 紫電はこの部隊の士気にかかわるだけでは無く、私の友であり、この戦いが終わった後でも必要になる人だ。

 

 だからこそ、こんな所で終わらせるわけには行かない。

 

 

(準備は出来てるよ! フェムトくん!)

 

(エリーゼ、お願いします!)

 

(任せて! ……貴方はわたしとフェムトくんを引き合わせてくれた人。だからその恩を今、返します!!)

 

 

 

 

 

 

 

廻る輪廻が生命を紡ぐ

 

不可逆の帳を超えて

 

魂よ、現世に還れ

 

 

リザレクション

 

 

 

 

 

 

 

 紫色の荘厳なる光の柱の中心に、散らばった紫電の残滓が集う。

 

 そして肉体は再構成され、私達の目の前で確かに命を散らせた紫電は復活を果たす。

 

 この奇跡的な、そして禁忌とされる光景を目の当たりにしたのが理由なのか、敵味方合わせて動きが止まる。

 

 

(くぅ……どうやら助けられたみたいだね。ありがとう、エリーゼ)

 

(あの時のお礼も兼ねてますので気にしないでください)

 

(紫電……あぁ……良かった。本当に良かった。これもまた、愛のなせる奇跡なのですね)

 

(なんかパンテーラ、キャラが違くね?)

 

(アレが素なんだと思いますよ)

 

 

 紫電が奇跡的な蘇生を成した事で、私達の間に再び強い士気が蘇る。

 

 それに呼応し、私達は勢いづいて最初の頃の勢いを取り戻し、再び爆竹の如く暴龍達を撃滅。

 

 これはペスニアが動きを完全に止めた所が大きく、私達は見事にチャンスをモノにしたと言えるだろう。

 

 しかし、私達はまだ気が付いていなかった。

 

 この時彼女は強い、とても強い憤りと悲しみを感じていた事を。

 

 

『死者の、蘇生……今更……今更そんな物があるからって、何だって言うのよ!! おじさまはわたしと一つになったからもう何処にもいないのに!! どうして、どうして今になってそんな希望が出てくるの!? どうして失った後でわたしを嘲笑う様に出て来るのよぉ!!!!』

 

 

 この感情の爆発に呼応し、全滅させたはずの暴龍に加えて今まで通りの暴龍のイマージュパルスが再度出現する。

 

 それだけでは無く、今度は私の知らない男の姿が無数に現れる。

 

 共通しているのは皆同じ顔をしており、GVと同じような蒼き雷をその身に迸らせている事だ。

 

 

(ここに来てアシモフのイマージュパルスだと! それにヤツらの持っているあの銃、まさか……!)

 

 

 アキュラがテレパス経由で出現した男たちの正体を看破したと同時に、その男たちが持っている銃からカレラの力を感じる漆黒の弾丸が一斉に放たれる。

 

 その弾丸は決して早いものでは無く、一見するとあまり強そうには見えない。

 

 なので、私は鉄扇を用いてこの弾丸を防ごうとしたのだが……

 

 

(フェムト避けろ!!)

 

(アレに当たっちゃダメ! 避けて!!)

 

(……!!)

 

 

 私は決死の声のテレパスで避ける事を促すアキュラとロロに従い、漆黒の弾丸を回避する。

 

 しかし突然の攻撃のせいなのか、回避しそこなったストラトスさんが直撃しそうになってしまう。

 

 その直撃コースの漆黒の弾丸を、横から飛んできた同じ漆黒の弾丸が叩き落す。

 

 振り向いてみれば、それはアキュラが持っていた銃から放たれた物だった。

 

 

(く……すまない)

 

(無事ならそれでいい)

 

(あの弾丸、カレラの力を感じました。……まさか!)

 

(そのまさかだフェムト。あれの名は対能力者用特殊弾頭(グリードスナッチャー)。嘗てのオレがカレラの能力を参考に作った能力者殺しの特殊弾頭。直撃すれば例えほぼ不死身であると言えるエリーゼにも死を与える必滅の弾丸だ)

 

(……! そう言えばペスニア世界線のアキュラの技術は、デマーゼルによって回収されていました)

 

(それもあるだろうが、大本は一度オレがヤツと戦った際に奪われた銃だろう。そうで無ければ態々あの男にオレの父さんの形見でもある(ボーダー)を持たせたりはしない筈だ)

 

(それをさっきお前が放ってたって事は、こっちも同じような手札があるって事じゃねぇか。数は足りないにしても、不利になった訳じゃあねぇんだろ?)

 

(そうもいかないんだデイトナ。向こうはこの弾丸に対策が施されている。その性質は暴龍に変化した状態でも引き継がれている筈だ。不利になったのはこちら側と言えるだろう。それも一方的にだ)

 

 

 つまり、相手側はこちらに対して必滅の弾丸を一方的に誤射も気にせず撃ち込めると言う状況を作り出したという事になる。

 

 ……私達のこの部隊の大半は能力者だ。

 

 つまり、この弾丸を扱える相手側からすればカモがネギを背負っている状態である事と同じと言える。

 

 故に、その後の私達がどのような末路を辿るのかは明白であった。

 

 先ず落とされたのは遊撃隊に参加していたニケーだった。

 

 これを即座にエリーゼに頼んで蘇生しようとしたのだが、ペスニアはニケーに対して死霊の能力で即座に仮初の肉体を与え、蘇生を妨害してしまう。

 

 

「そんな! ニケー!!」

 

『……もういいわ。貴方達からはもう十分に経験を積ませてもらった。だから……わたしの手に堕ちなさい! そして後悔なさいな!! わたしの前で無意味な希望を見せつけた事をねぇ!?』

 

 

 仮初の肉体を与えられ、更に身動きを取れ無い状態にされたニケー。

 

 しかし、彼女はそんな状況下に置かれたにも関わらず、とても穏やかな表情をしている。

 

 まるで今起こっている絶望が覆される事を分かっているかのように。

 

 そんな事等関係無いと言わんが如く、次々と私達の仲間が漆黒の弾丸の餌食となってしまう。

 

 例外と言えるのは能力を持たないアキュラと必滅の弾丸の元の能力を持ったカレラ位だが、それを分かっているのか、暴龍達はこの二人に対して集中攻撃を仕掛ける。

 

 アキュラは歴戦の戦士であり、彼の持つ装備は生存を重視しているが故に逃げ切る事は出来るが、カレラは持ち前の力で機動力を補強してもそれには及ばない。

 

 故に、純粋に暴龍の圧倒的フィジカルに叩き潰されてしまうのは道理であった。

 

 

(……現時刻を以て、各自の自由行動を認める。皆、自分の生存を優先した行動をして欲しい)

 

(紫電!?)

 

(ああまでされたらもうボクらに勝ち目は無い。能力者殺しの弾丸に加え、蘇生封じまでされてしまったらね)

 

(あ~ぁ、ダメだったかぁ……)

 

(メラク、君も早く逃げるといい。能力を使えばすぐだろう?)

 

(そうしたいのはやまやまだけど……逃げても無駄そうな雰囲気なんだよねぇ……折角だから後方部隊の人達や遊撃隊のエデン構成員だけでも飛天に移しておくよ。彼らは幸いボク達とは違ってヘイトを稼いで無いみたいだし)

 

(……すまない)

 

(紫電)

 

(アキュラ……君は元々この世界の人間では無い。ならば逃げ切れる手段を持っている筈だ)

 

(生憎だけど、ぼく達は諦めが悪いんだ。だからギリギリまで戦うよ)

 

(そういう事だ)

 

 

 後方部隊や遊撃隊のエデン構成員達はメラクとテセオによって飛天へと飛ばされ、この場に残っているのは以下の通りだ。

 

 私とリトル、エリーゼに紫電、メラクにテセオ、そしてパンテーラにアキュラにロロの計9人。

 

 名前のあがっていない人達は全員やられてしまい、ペスニアによって仮初の肉体を与えられるという形で捕らわれてしまっている。

 

 まだ戦えるメンバーは揃ってはいるものの、このまま戦いを続ければ全滅するのは時間の問題と言えるだろう。

 

 そんな時だった。

 

 ペスニアの動きが止まったのは。

 

 

 

 


 

CLEAR

 


 

 

 

 

『……時間切れ、か。フフ……タイムリミットよ』

 

「タイムリミット? 何のことだ?」

 

『この国の人達全員を一瞬で暴龍にするだけの龍放射が溜まったのよ』

 

「なんだって!?」

 

『貴方達は誇ってもいいわ。わたし達を相手にここまで粘れたんだから。だから見せてあげる。この国が暴龍に満ちるその瞬間を』

 

「初めからそのつもりだったと言う事か」

 

『違うわよ。本当は溜まり切る前に貴方達全員を屈服させるつもりだった。所謂保険その一って所かしら。前にも言ったでしょう? 策士とはどんな状況になっても利益になるように策を立てるって。……さあ、始めましょう。この国を暴龍で満たす為に。わたしの復讐を成す為に』

 

 

 悔しいが、今の私達にペスニアを止める術は無い。

 

 彼女の周りには暴龍達が守りを固めているし、イマージュパルスで出現した彼らやアシモフと呼ばれる男の複製体が私達に手を出させないからだ。

 

 故に、黙って見ている事しか出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

我が歌うは悲哀の歌

 

想い人を守れず奈落に沈み

 

亡骸の山にて虚しく響く

 

 

SONG OF DRAGOON(ソングオブドラグーン)

 

 

 

 

 

 

 

 インテルス達を暴龍にした蒼黒い雷こと龍放射。

 

 それがペスニア達が出現した穴から信じられない量が出現する。

 

 それらがペスニアに一度集い、彼女を中心に歌と言う形での広域拡散が開始された。

 

 しかし、その様子は何所かおかしい。

 

 何故ならば、その拡散速度は私達が目視できる程度の速度だからだ。

 

 

『龍放射の拡散が想定よりもずっと遅い? これは……そう、そうなの。ここに来て貴女もわたしの邪魔をするのね。電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォ!!』

 

『どう言う事や、ペスニア?』

 

『元々この国はモルフォの歌に満ちていたのよ。その目的が何なのかは分からなかったけど。まさかこう言った形で拡散を妨害されちゃうなんて』

 

 

 話を聞く限り、どうやら定期的に行っている歌姫(ディーヴァ)プロジェクトのお陰で首の皮一枚繋がったらしい。

 

 だが、そうも言ってはいられない。

 

 何故ならばこの事が判明した以上、彼女が取る行動が何なのかが分かり切っているからだ。

 

 

『ウフフ……わたし、ちょっと用事が出来ちゃったわ』

 

「そう簡単に行かせるとでも?」

 

 

 ペスニアが向かう先は間違い無くモルフォの居るアメノウキハシと呼ばれる衛星拠点だ。

 

 今のこの時刻のモルフォは、歌姫プロジェクトによる歌の拡散も兼ねたネットライブを行っているからだ。

 

 だからこそ、私達は可能な限りここに居る暴龍達を足止めする必要がある。

 

 ペスニアを行かせてしまうのはどうしようもないかもしれないが、ここに居る戦力の足止めくらいならば出来るはずだ。

 

 彼女が居なければ、この人数でもここに居る戦力位なら何とか出来る。

 

 まだ飛天もフェイザント部隊も健在であり、皇神の砲兵の皆も無事なのだから。

 

 それに、モルフォの傍には最強の能力者の一角であるGVが居る。

 

 彼が何とかここの戦力を片付けるまでにペスニアの足止めを行ってくれれば、辛うじて勝機はある。

 

 

『そういう訳にもいかないわ。……大丈夫よ。全国に最も美しい暴龍の誕生を生中継してもらうだけだから。きっと綺麗な翼を持った暴龍になるわ。ふふ♪ 楽しみねぇ♪ ああそれとなんだけど……わたし、予備の戦力を持っていないなんて一言も言っていないわ』

 

「な……!」

 

『正に、「こんな事もあろうかと」ってヤツよ。この国のアニメでも使われる代表的な言葉よねぇ。……それじゃあみんな、足止めよろしくね』

 

『まかしとき』

 

『頑張ってね、ペスニア』

 

「待て!」

 

『あ、序だから捕まえた彼らも戦力として使わせてもらうから。下手な希望は持たない事をお勧めするわよ♪』

 

 

 私達に更なる絶望を与えつつ、ペスニアはものすごい勢いで天に存在するアメノウキハシへと文字通り飛んで行ってしまった。

 

 ……ここに居る戦力を何とかするにはこの場に居る全戦力が必要不可欠。

 

 故に、GVに対する増援と言う形でメラクとテセオを送り込む事は出来ない。

 

 私達が唯一出来るのは、アメノウキハシに対して最大級の脅威が迫っている事を連絡する事だ。

 

 これは遠距離通信を可能とするアビリティであるTASディスタンスを用いれば出来る事であり、少なくとも突然の乱入による不意打ちを避ける事だけは出来る筈。

 

 しかし出来る事ならばGVにTASで接続したいのだが、彼はメラクの時とは違って予めTASの接続に必要な個人データを仕込んでいた訳では無い為、近くに居るなら兎も角、遠距離での接続は不可能だ。

 

 今すぐにTASを弄ってでも如何にかするべきなのかもしれないが、こちらもギリギリである以上、下手な事をして取り返しのつかない事態を引き起こす訳には行かない。

 

 どうしたものかと頭を悩ませていたら、リトルから連絡が入る。

 

 

(フェムト)

 

(リトル?)

 

(GVに直接接続するのは無理だけど、()()()()()()なら何とかなるかもしれない)

 

 

 その言葉は福音の言葉であった。

 

 その言葉と同時に、私の視界に頭領さんの姿を捉える。

 

 背中に()()()()()()()()()を背負った、彼の姿を。

 

 私達はまだ終わっていない。

 

 それ所かこのリトルの言葉と頭領さんの存在は、全てをひっくり返す逆転劇の始まりでもあった。

 

 そんな事を、今この時の私達は知る由も無かったが……

 

 

(そうですよね。まだ私にも出来る事はある。やれば出来るとは言わないけど、「やれば何かが起こる」。諦めるのはまだ早い。そうだよね? ニコラ)

 

 

 この時の私は、そう思っていたのであった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





〇D-カウンターについて
龍放射を計測するイクス世界線でニコラと一緒に共同開発した機器。
危険域かそうじゃ無いかの計測も可能。

〇要請について
要請とは事前準備と言う形で砲兵部隊等をステージの後方に展開する事で、その部隊に対して火力支援をしてもらう事が可能となるシステム。
今回のフェムトは今回のミッション開始時に二つの要請を、そして時間が経過するとさらに二つの要請をノーマルスキルと言う形で扱う事が可能。
元ネタの地球防衛軍のエアレイダーを意識した感じになっており、発煙筒や誘導レーザーの代わりにロックオンが使われており、どの武装もほぼ確実に必中する性質を持つ。

〇宝剣兵装について
本小説第十話にて、第七波動を用いた兵器の更新によって作られた兵装。
この世界特有の第七波動を理解した上での兵装であり、各第七波動達からは事前に許可を貰っている。

〇ブレイジングカノンについて
フェムトが要請できる爆炎の第七波動を用いた宝剣兵装のカノン砲。
着弾時にルミナリーマイン規模の爆風が発生する強力な武装で、追尾誘導する関係上砲兵に対する要求される技量を大幅に減らしている。

〇レイストームについて
フェムトが要請できる残光の第七波動を用いたレーザータイプの広域宝剣兵装。
飛天に増設された沢山の砲身から放たれるレーザーは、ロックオンの影響でねじ曲がりながらロックオン対象に殺到するその有様は正しく光の嵐。
この事からレイストームと呼ばれている。

〇プランZXについて
正式名称【無人戦闘機フェイザント プランZX】。プランの名前はロックマンZXから。
フェイザント部隊から放たれる数多のミサイルとガトリング、そして対地爆弾による上空からの火力支援。
汎用性の高いミサイルやガトリング等で使われる弾丸等には無色の第七波動が使われており、何気にフェイザントの武装も宝剣兵装に換装されている。
そのお陰でフェムトのロックオン誘導が働く為、狙いを付けずにミサイルやガトリング等を垂れ流しながら離脱に専念することが出来る為、機体損耗率は極めて低い。

〇ライフリジェネについて
エリーゼの扱うノーマルスキル。
某ファンタジー等でもお馴染みの徐々に傷を癒す効果を持つ。
このスキルはフェムトのシールドヴォルト等と同じようにTASに乗せて拡散させる事が可能で、一度発動させればミッションが終わるまで永続する。
フェムトのアビリティとも効果が重複する為、その回復量は破格と言える。
しかし、今回のミッションにおいて相手が暴龍である為、今回はお守り程度の扱い。

〇ブリッツアサルトについて
アキュラがGVのライトニングアサルトを見てそれを彼なりに模倣した新たな機能。
主にEXウェポンのアンカーネクサスとタイムフリーザーが使われており、電光石火の速度を持って対象にタメージを与えつつロックオンする。

〇ハートブレイザーについて
原作のガンヴォルト爪にて飛天の動力炉をぶち抜いた際に使われた兵装。
本小説ではLPCSのお陰で実戦運用が可能となり、アキュラの新たなSPスキルとなった。
そのお陰で副次的にお守り代わりだったディバイドがエクスギアにマウントされる形で出番が復活した。

〇アキュラがB.Bと遭遇していた事について
本小説内のオリ設定で、白き鋼鉄のXが始まる前に遭遇していたと言う設定。
突発的な遭遇戦であった為、お互い手の内を余り晒さずに戦いは終わったと言った感じ。

〇今回のミッションについて
ゲーム的に考えるとアキュラ視点では普通のミッションだが、フェムト視点では一定時間暴龍の攻撃に耐え忍ぶと言う内容になっている。
暴龍を全滅させても時間が過ぎるまで無限湧きな上に、全滅させた回数に比例してイマージュパルスで呼び出される暴龍の数も増える。
上限もまた存在しており、ボーダーを持ったアシモフの群れが出現するのが合図となっており、それ以上の上限は存在しない。
初心者プレイヤーだと鬼門となるミッションだが、上級者視点ではクードスを大量に稼げるミッションと言った感じ。










サイドストーリー





 モルフォのライブの最中、ボクはフェムト達の事が気がかりだった。

 詳しい事は皇神の機密に抵触する為聞く事は出来なかったが、今朝のニュースを見た限り、かなり大規模な部隊を率いていた事が分かったからだ。

 それに、フェムト達が向かっている場所の地域一帯での避難が完了したと昨日のニュースでもやっていたので、武力が必要な何かが起こっているのは確かと言える。

 そんな風に考え物思いにふけっていたら、横から久しぶりに聞いた声がボクの耳に届く。


(…………)

「ようGV、久しぶりだなぁ」

「……! その声はジーノ? どうしてここにいるの?」

「ちょっと前に警備会社を立ち上げたのを覚えてるだろ? その会社が皇神グループの傘下に加わる事になってな。ウチの社長兼リーダーが何をしたのか知らないが、あっという間にモルフォライブの護衛って言う仕事をもぎ取っちまったのさ」

「……その様子だと、アシモフ達も元気にやってるみたいだね」

「おうよ。……所でよ、どうしたんだGV? 浮かない顔してよ」

「フェムトが心配でね。今朝やってたニュースに出た大部隊に彼が居るんだ」

「あぁ、あのニュースでやってたヤツか。それじゃあ心配するのは無理ねぇよなぁ」


 ボクは皇神グループとはフリーの傭兵と言う形でシアンの護衛に専念するという契約を結んでいる。

 だから、それに関わる物以外の情報がボクに届く事は基本無い。

 それが嫌であるとは思わない。

 シアンを守る、それが今のボクがやるべき事だからだ。

 ……だけど、最近はフェムトも前線に出ていると言う噂を聞いている。

 間違い無く後方で働いていた方が皇神グループの利益になるであろうあのフェムトがだ。

 別の世界線から来たと言うアキュラの存在といい、今この国は何かが起きている。

 紫電からの説明ではアキュラと同じく異なる世界線からデマーゼル何て言う存在が現れている何て聞かされてはいるが……

 そんな風に考えていた時、ジーノが持つ通信機から連絡が入る。


「んぉ? ちょっと待ってろGV。……こちらシープス2。どうしたんだリーダー? 何か問題でも起きたってのか? ……何? モルフォを狙う存在がここに迫って来てるだって!? マジかよ!」

「……!!」

「おう、分かった。GVとはうまく連携して何とかリーダーが来るまでにモルフォちゃんを守って見せるぜ。急いでコッチ来てくれよな。頼んだぜリーダー。……大変な事になったみたいだぜGV」

「モルフォが狙われてるって、本当なのか?」

「ああ、間違いねぇ。ソイツは真っ直ぐここ(アメノウキハシ)に向かって来てやがるってよ。ったく今日は()()()()()()()()()()()()()っつうのに、最悪じゃねぇか! オレは避難を急がせる! GVは急いでシアンちゃんの所へ急げ! ああそれと、後でシープス3(モニカ)をオペレーターに付けるから、それまでは一人で行動を頼む!」

「了解」

「頼んだぜ! GV!!」


 ボクはジーノと分かれ、急いでシアンの元へと駆けつける。

 今シアンはモルフォを操っている関係上、ステージの裏側と言う近い位置に居る。

 首謀者がモルフォを狙って居る以上、このままではシアンが巻き込まれるのは避けられない。

 シアンの元へと向かう最中、アメノウキハシに侵入者を知らせるサイレンが鳴り響く。

 その音に焦燥感を覚えながら、シアンの居るステージへと最速で駆けのぼる。

 サイレンが鳴り響いている以上、もうライブ所では無い。

 だからボクはもう直接ステージの上に駆け上り、モルフォの元へと辿り着く。


『GV! 何があったの!?』

「何者かがキミを狙っているとジーノから教えて貰ったんだ!」

『アタシを? シアンじゃ無くて?』

「恐らく彼女も含まれている筈だ」

『ちょっと待って、今シアンを呼ぶわ。…………よし、もうこっちに来る筈』

「GV!!」

「シアン!! 無事でよかった」

「このサイレン、どうなってるの? うぅ……折角近くでミチルちゃんとそのお友達にモルフォの事を自慢してたのに」


 一先ずシアンの無事を確認出来た。

 そうボクが安心したつかの間に、彼女は現れた。

 黒い衣装を身に纏ったモルフォの姿で。


『ウフフフフフ……見つけたわ。この国の国民的バーチャルアイドル、電子の謡精モルフォ!』

「……! 何物だ!」

『わたしはモルフォのなれの果て。黒死蝶の謡精女王(ペスト・ティターニア)のペスニア……わたしの歌を響かせるのに、貴女の存在が邪魔なのよ。モルフォ』

「GV……あの人、怖いよ……」


 ボクは咄嗟にシアンとモルフォを庇う様にペスニアと名乗るモルフォにそっくりな彼女の前に立ち塞がる。

 その出で立ちはモルフォその物と言えるが、彼女には無い特徴もある。

 衣装の下に黒いインナーとストッキングを身に付けている事や、背中に龍を連想させる翼をモルフォの色違いの翼と一緒に持っている事。

 そして何よりも、モルフォに似つかわしくない死神を連想させる大鎌と錫杖を所有しており、戦いを生業にしていると思われる程に、その立ち振る舞いに隙が無い。

 この感覚は勘が正しければ、目の前の存在はアシモフや紫電、そしてアキュラを越えたレベルの脅威を持った存在であるとボクに告げている。


『アタシと同じ姿!? ……生憎だけど、歌を響かせたいならもっと別の手段を使って頂戴! こんなズルをするなんて、アタシのイメージまで落ちちゃうじゃない!』

『そんな事を心配する必要は無いわよ? だって――』


――この国はもう、今日を以て終わるのだから




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