ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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覚醒編
第四十三話 新生する歌姫達 龍と宝玉が揃いし時



サイドストーリー

 

 

 

 

「オウカさん! しっかりして下さい!」

 

 

 わたしは今、シアンちゃんとコハクちゃんとヒスイさんと一緒に気絶してしまったオウカさんを介抱している。

 

 元々わたし達はロロのツテを頼りにここ、アメノウキハシと呼ばれる場所でモルフォのネットライブの様子を生で見る機会を得ていた。

 

 しかし突然オウカさんは顔を真っ青な状態となり、そのまま倒れてしまった。

 

 なので、ヒスイさんは私達と一緒にそんなオウカさんを抱えて休める場所へと向かおうとした時、警報が鳴り響く。

 

 

「ふえ!? 何何? どうなってるの!?」

 

「何だか、怖い感じがする……」

 

「妙な感覚だ……それに、この気配は一体?」

 

「何があったんだろう?」

 

 

 そんな風に考えていたら、モルフォのステージにGVが現れる。

 

 曰く、何者かがモルフォを狙っているらしく安否確認の為にGVに呼ばれたシアンちゃんはこの場から離れた。

 

 そして、二人は無事合流していざ避難を始めようとしたその時、彼女は姿を現す。

 

 その女の人はモルフォの姿をした女の人なんだけど、彼女に似つかわしくない大鎌や杖の様な物を持っており、明らかに異様な雰囲気を漂わせている。

 

 そんな彼女は、衝撃的な言葉をこの場に齎した。

 

『この国はもう、今日を以て終わるのだから』と言う言葉を。

 

 

「この国を、終わらせるだって?」

 

『そうよ。っていきなりこんな事言われても分からないと思うから説明してあげる』

 

 

 黒い衣装を身に纏ったモルフォの姿をしたペスニアと言う怖い女の人は語りはじめる。

 

 ステージの近くに居るわたしにも聞こえる位の声で。

 

 その話は要約すると、彼女は謡精暴龍と言う存在と戦う為のチカラを得る為に、この国に住んでいる能力者達全員を暴龍と言う怪物に変化させようとしていた。

 

 しかし、準備を終えいざそれを始めようとしたら定期的に流しているモルフォの歌のチカラに阻まれてしまった為、ここまで来たのだと言う。

 

 

『そう言う訳なんで……歌の排除も兼ねてモルフォの事を暴龍にしようって訳なのよ。理解できたかしら?』

 

「……理解は出来る。そして、貴女のその境遇に同情できる部分も確かにある。だけどモルフォを、彼女を犠牲にしていいと言う理由にはならない!」

 

「GV……」

 

『……ふぅん。そっかぁ。貴方達、()()()()()()なのね。フフ♪ 大丈夫よ。そこのカッコイイ男の子も一緒に暴龍にしてあげるから。好き合ってる二人を引き裂くなんてシュミ、わたしには無いから安心して?』

 

 

 ペスニアのこの発言を受け、GVは困惑した表情を見せ、シアンちゃんは怯えた表情にうっすらと赤みを帯びている。

 

 モルフォの方はもっと分かりやすく、顔を赤らめながらもにやける顔を抑えるのに必死な感じで表情を取り繕っていた。

 

 ……後でシアンちゃんとはお話をする必要がありそう。

 

 でも、そんな事を考えていられたのはこの瞬間までだった。

 

 

『そういう訳だから……先ずは貴方を無力化させてもらうわね。邪魔になりそうだし』

 

「……っ!」

 

『ん~……誰がいいかしら? ……決めた。早速だけど、彼らに頑張って貰おうかしら?』

 

 

 この言葉と共に、彼女の周囲に三人の鎧を着たような姿をした人達が姿を現す。

 

 三人共何処か苦しそうな表情をしており、ペスニアに対して抵抗している風にわたしは感じた。

 

 

「な!? デイトナ! イオタ! それにストラトスも!」

 

『すまねぇGV……』

 

『ぐ……まさかこの様な形で国に剣を向けてしまうとは……!』

 

『体の言う事が効かない……どうなっている?』

 

「皆に何をした!?」

 

『フフ♪ わたしの持つ第七波動の支配下に置いただけよ。……この状況を覆したいと思うのならば、チカラを示して見なさいな。このわたしを倒すと言う形で。それが出来なければ、貴方も彼らと同じ末路を辿る事になるわ』

 

『GV! 遠慮すんな! オレ達諸共ぶっ倒せ!!』

 

「しかし……! デイトナ!」

 

『加減をする等と言える相手では無い! やるのだ!』

 

『オレからも頼む……!』

 

「二人共……分かった。ならば、ボクは迷わない!」

 

 

 GVがチカラを開放し、蒼き雷霆(アームドブルー)と呼ばれる能力によって蒼き雷撃が舞い散る天使の羽と共に迸る。

 

 そのチカラを目の当たりにしたペスニアは、まるで玩具を見つけた子供みたいに笑顔を晒す。

 

 

『へぇ~……。貴方、そのチカラを扱えるのね。軽くあしらうつもりだったけど、これなら少しは期待できるかも。本当は貴方達を暴龍にしてしまう方が手っ取り早いと思うけど、念の為……ね。ちょっと確かめてみようかしら』

 

「……シアン、モルフォ。二人は下がっているんだ」

 

「うん」

 

『気を付けてGV! それとゴメン……アタシ、さっきのライブでチカラを使っちゃって……』

 

「ありがとうモルフォ。気持ちだけで充分だよ」

 

 

 シアンちゃん達がステージから退場し、わたしの居る場所へと向かってくる。

 

 それと同時に先ほどのライブによって消耗していたモルフォは姿を消し、シアンちゃんがステージから降りたタイミングで、戦いは始まった。

 

 炎が、光が、黒い粒子の様な物がGVへと殺到する。

 

 しかし、それらの攻撃はGVには当たらない。

 

 相手をしている三人に戦う意思が無いという事もあるだろうが、何よりも彼らを相手に戦い慣れている様にわたしは感じた。

 

 その結果、三対一という状況なのにも関わらず終始GVが優勢を保っている。

 

 ……こうしてGVが戦う姿を見るのは初めてでは無い。

 

 実はアキュラくんとの訓練をこっそり覗き見た事がある。

 

 その内容は素人目で見ても分かる位、アキュラくんとGVは拮抗していた。

 

 だから大丈夫。

 

 GVは負けない。

 

 それに、手が足りなければヒスイさんもこの場に居る。

 

 そんな風にわたしは考えていた。

 

 

『この三人にずっとかまけてて大丈夫かしら?』

 

「……? 何を言っている?」

 

『フフ……こういう事よ!』

 

 

 ペスニアが錫杖を掲げると同時に、私達の近くにGVが戦っている三人の姿をしたナニカが姿を現す。

 

 この三人はわたし達を明らかに狙っており、先の言葉から察するに目的は明らかだった。

 

 

「シアン! 皆!」

 

『フフ♪ よそ見をして大丈夫かしら?』

 

「……っ!?」

 

 

 この事からGVの気が散ってしまい、彼は一部の攻撃を掠めしてしまう。

 

 普段ならば当たる筈の無い攻撃。

 

 ……わたし達は今、GVの足手纏いになってしまっている。

 

 シアンちゃんも同じ風に考えているのか、表情がとても暗くなっていた。

 

 

『アハハ♪ 難易度上昇ってヤツよ♪ 確か……【タワーディフェンス】ってジャンルのゲームだったかしら? 彼女達が捕まったら当然あなたの負けよ? 頑張んなさいな。……新しく増えたその三人も相手しながらね』

 

『こ、コノヤロウ……えっぐい手を使いやがって! シアンちゃんに何しやがる!』

 

『この様な邪悪な手口に手を貸す事になろうとは……!』

 

『くそ……!』

 

「悪いが、そうはいかない」

 

 

 しかし、この状況に待ったをかけたのがヒスイさんだ。

 

 彼女はGVと同じチカラを扱えるとアキュラくんから聞いている。

 

 そんな彼女がわたし達の前へと立ち、チカラを開放した。

 

 GVと同じ蒼い雷をその身に宿し、刃の無い持ち手から雷光と共に特徴的な刀身(蛇腹剣の刀身)を出現させる。

 

 あの剣はアキュラくんがヒスイさんの為に作っ物らしく、彼女のチカラを刀身に変える性質を持っているのだと言う。

 

 その剣が一瞬煌めき、私達の近くに出現した三人は瞬く間にノイズの走ったかのような不思議な消え方をして消滅した。

 

 

「ヒスイさん……! すいません。助かります!」

 

「こちらの事は気にするなGV。お前はお前の成すべき事を成せ」

 

『え……あぁ! 貴女、ブレイドじゃない! こんな所で会うなんて思わなかったわ!』

 

「お姉ちゃんを知ってるの?」

 

『ええ。ええ! 知ってるわ! 知ってますとも! わたしの世界線の彼女はチカラを貸してくれた戦友の一人だったんだから! あぁ……嬉しいわねぇ。あのポンコツ(アキュラくん)経由でこっちに来てたのね。違う世界線であるとは言え、会えて嬉しいわ!』

 

「……それにしては、貴女の知る私の姿が見当たらないみたいだが?」

 

『それはそうよ。わたしの知る貴女は向こうの世界での決戦の時に、暴龍に姿を変えて特攻したのだから』

 

「……そうか」

 

 

 ペスニアの表情から察するに、彼女の世界線? に居たヒスイさんとは仲が良かった事を伺わせる。

 

 それが理由なのか、一瞬だけペスニアは表情を歪めた後、こう切り出した。

 

 

『貴女の実力はよく知ってるつもりよ。抜け殻なあの三人ではさっきみたいに戦いにもならない事も。……さあ、出番よ貴方達! 相手はあのブレイドなんだから、気合を入れなさいな!』

 

「まだ戦力を隠していたのか!」

 

『当たり前でしょう? 謡精暴龍と戦う直前の段階まで来てるんだから、ある程度の戦力は確保しているつもりよ。つ・ま・り……まだまだこんな物じゃ無いって事よ!』

 

 

 その姿と共に現れたのは本当に見慣れない六人の姿。

 

 その六人全員、なにやら蒼黒い雷を身に纏っており、明確な意思を感じる事は無い。

 

 

『彼らはこの世界の……確かエデンだったかしら? そこから調達した子達よ。名前はそれぞれテンジアン、ガウリ、ニムロド、ニケー、アスロックにジブリール』

 

「……かつて存在していた多国籍能力者連合の能力者達か」

 

『そういう事♪ 貴女を相手にするのだからこの位用意しないとね』

 

「……それは大変光栄な事だが、誰かを忘れてはいないだろうか?」

 

『え?』

 

「この距離……今だ!」

 

 

 ペスニアがヒスイさんと話をしている間にGVが三人を倒したらしく、その手に光り輝く雷の剣を携え彼女に切り込もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

煌くは雷纏いし聖剣

 

蒼雷の暴虐よ 敵を貫け

 

 

スパークカリバー

 

 

 

 

 

 

 

『っとと、危ない危ない』

 

「受け止めた!?」

 

 

 ペスニアはその手に持っていた大鎌と龍の形をした両翼で雷の剣を受け止めていた。

 

 ただ、その表情は少し苦しそうな事から余裕を持って受け止めた訳では無いらしい。

 

 

『……っぅ。痺れるわねぇ! やっぱりこの雷、わたし少し苦手だわ』

 

「なら! このまま押し込む!」

 

『そういう訳にはいかないわ。……さあ、出てきなさい!』

 

「何を……! くッ!」

 

「GV!」

 

 

 ペスニアの持っている杖が光り輝くと同時にGVの横合いからナニカ巨大な手の様な物が彼を吹き飛ばす。

 

 その光景の衝撃に、思わずシアンちゃんがGVの名前を叫ぶ。

 

 不意打ちだったのもあり、彼はその直撃を受けわたし達の居る場所まで吹き飛ばされてしまう。

 

 その巨大なナニカの正体。

 

 それはペスニアの言う暴龍と呼ばれる存在だった。

 

 

「しっかりして! GV!」

 

「……大丈夫、この位平気さ。……電磁結界(カゲロウ)が反応しなかった。恐らくペスニアの干渉だと思うけど

 

『この短期間であの三人をやっちゃうなんて。貴方ブレイドと同じ位強いのねぇ♪ きっと強い暴龍になるわ♪ 今から楽しみねぇ♪ ……それでどうかしら? 【名も無き暴龍】の一撃を受けた感想は』

 

「……ただ馬鹿力を持っただけって所かな。思ったよりも見掛け倒しなんだな」

 

 

 そんなの嘘だ。

 

 今もわたし達を庇うその背中から沢山の血が流れていると言うのに。

 

 GVの纏う蒼い雷が傷を少しづつ癒してはいるけれど、これが見掛け倒しだなんてあり得ない。

 

 彼は強がっているだけだ。

 

 わたし達を守る為に。

 

 

『へぇ……言ってくれるじゃない。でもそんな嘘、わたしには通用しないわ。後ろの子達に心配させまいと強がってるみたいだけど。……膝、笑ってるわよ?』

 

「……!」

 

『その気になれば貴方は逃げる事も出来るだろうけど……そんな事、貴方はしないわよねぇ。守りたい人達を置いて行くなんて事』

 

「逃げるなんて、するつもりは無い!」

 

『でも、頼みの綱のブレイドは六人を相手に手が離せない。……所謂チェックメイトってやつよ。そろそろ諦めたら?』

 

「諦めるつもりは無い! 何故ならば……()()()()()()()()()!」

 

 

 GVのこの言葉と同時に四方八方から大型の鎖が暴龍を、六人の能力者達を絡め取る。

 

 そして、それを成したであろうGVとヒスイさんと同じ蒼い雷を身に纏う水色の長髪の男の人が姿を現した。

 

 

「待たせたなGV」

 

「アシモフ!」

 

「話はお前の通信機を経由して聞いていた。そのモルフォに似た彼女が恐ろしい危険な相手(クレイジーなデンジャラスガール)である事はコチラも把握している」

 

 

 

 

 

 

 

閃く雷光は反逆の導

 

轟く雷吼は血潮の証

 

貫く雷撃こそは万物の理

 

 

ヴォルティックチェーン

 

 

 

 

 

 

 

 暴龍達を絡め取る鎖から雷撃が迸り、その一撃が決め手となり彼らは消滅。

 

 アシモフと呼ばれる男の人の増援によって一気に形成が逆転した。

 

 それと同時に、GVの通信機らしき物から女の人の声が聞こえる。

 

 

《GV! 遅くなってごめんなさい! アシモフは間に合ったかしら?》

 

「ええ。お陰様で」

 

《そう。良かったわ》

 

「ふぃ~……リーダーが間に合った様で一安心だぜ」

 

「ジーノ!」

 

「へへ! 避難民の誘導はここに居るシアンちゃん達以外全部終わったぜ」

 

「助かるよ。ジーノ」

 

「おうさ! チームシープス、久しぶりに全員集合だぜ! これが物語ならもうオレ達の勝ちが確定している流れなんだが……」

 

「現実はそうもいかないらしい。……私の親友から彼女についての話は聞いている。ペスニアと呼ばれる彼女は所謂幽霊(ゴースト)と呼ばれる存在らしい」

 

《ゴーストって、それって幽霊!?》

 

「おいおい、そんなオカルトめいた事……えころを知ってるオレ達からすれば居るのも納得って所か」

 

「そういう事だ」

 

『……話は終わったかしら?』

 

「待たせてすまないな。幽霊少女(ゴーストレディ)

 

『まさかデマーゼルの大本だった貴方が出て来るなんてね。ふぅん……イマージュパルスで使役してた時は気にしなかったけど、よく見るとなかなか渋くてカッコイイじゃない。まあ、おじさまには及ばないけど』

 

 

 ゆ、ユーレイさん!?

 

 そう言えばオウカさんが真っ青になって気絶してたけど、その理由って……!?

 

 この事を知ったわたしやシアンちゃん、それにコハクちゃんは顔を真っ青にしてしまう。

 

 

「だが少し待って欲しい。相手がゴーストだと言うのなら、何故私達の目で捉えられる?」

 

『それはわたしのおじさまの第七波動(セプティマ)のお陰ね。幽霊であるこの身を実体化させたり、デイトナ達を実体化させて嗾けたりするのにも使えるのよ?』

 

「デイトナ達がそうなっているという事は、フェムト達はもう……」

 

『あぁ、彼らはまだ抵抗を続けてるわよ? 歌に阻まれてるのが分かったから途中で抜けてここまで来たのよ。だから安心して頂戴な。……もっとも、全滅しちゃうのは時間の問題だと思うけど』

 

「なら、オレ達がその前にお前さんを倒せばパッピーエンドって所だな」

 

『フフ♪ そう簡単に行くかしら?』

 

 

 ペスニアがそう言いながら再びデイトナ達を翠色のオーラと共に呼び出す。

 

 それだけならば問題は無かったけど、今度は杖も一緒に輝き、先程の暴龍と呼ばれる存在も姿を現す。

 

 

『うーん……ここはちょっと狭いから呼び出せるのはこれで限界かしら。ここの施設はモルフォの歌で満ちたこの国にわたしの歌を拡散させるのに便利そうだし、派手にぶっ壊す訳にも行かないのよねぇ。……まあでも、貴方達を始末するのには十分かしら。ここからはわたしも手を出すし、何よりも……貴方達は足手纏いが四人も居る以上、これだけの数を相手にまともに戦う事も出来ないでしょう?』

 

「くっ……」

 

 

 そう言いながら、わたしとシアンちゃんとコハクちゃん、そして気絶しているオウカさんをペスニアは視界に収める。

 

 ああ、情けない。

 

 わたし達は今明確にGV達の足を引っ張ってしまっている。

 

 内心そう意気消沈していたその時、コハクちゃんの様子がおかしい事に気が付いた。

 

 

「コハクちゃん?」

 

「え? この感じ……ひょっとしてチカラを貸してくれるの?」

 

「どうした、コハク?」

 

「うん、うん……大丈夫。わたし、覚悟は出来てる。それでみんなを、お姉ちゃんやアキュラくんを助けられるなら」

 

 

 何やら上の空と言った形で、まるで見えないナニカと話しているコハクちゃん。

 

 その瞬間、コハクちゃんを中心に何やら黒く緑色の線の入ったブロックの様な物が収束し、彼女の姿を変化させる。

 

 

「こ、コハク……その姿は」

 

「この姿の事は後! お姉ちゃん。今は目の前の事に集中しよう! 終わったらちゃんと説明するから!」

 

 

 深い紫色の腕の様な翼。

 

 蒼いレオタードのような姿。

 

 彼女を守る四つの蒼い水晶のような遠隔機器。

 

 そして、髪やふくらはぎ辺りから迸るように揺らめく黄色い波動。

 

 その姿はアキュラくんが以前戦闘データと言う形で異世界の冒険談を話してくれた時の、マザーと言う存在に操られていた時のコハクちゃんの姿だった。

 

 

 

 

――ぼくが開放されるまでの間、貴女達には沢山迷惑を掛けてしまった

 

――それ所か、貴女達はマスターに再び会わせてくれた

 

――だからこれは、そのお詫びとお礼

 

――ぼくの遺したこのチカラで未来を切り開いてくれる事を、切に願う

 

 

 

 

 この姿になったコハクちゃんの参戦によって、戦いは大きく変化する。

 

 緑色の数多の細いレーザーの規則的な攻撃。

 

 水晶を飛ばす攻撃。

 

 翼にある腕と同時に放つ氷の刃による攻撃。

 

 そして、本人を守る強固なバリアもあり、GV達の戦いは何とか拮抗する膠着状態まで持ち直した。

 

 ……逆に言うと、今の状況ではここまでが限界でもあった。

 

 そう、わたしとシアンちゃんとオウカさんの存在が理由で。

 

 

(折角何とななるかもしれないのに、ここまで来てわたし達が足手纏いになっちゃうなんて……わたしも戦いたい。何も出来ずに終わっちゃうなんて、そんなの、そんなの……)

 

「ミチルちゃん!」

 

「ぇ……」

 

 

 シアンちゃんの声のお陰でわたしに対して丸ノコらしきものが飛来してくるのを確認することが出来た。

 

 しかしこの時、皆手が離せない状況となっており、わたしに飛んで来る攻撃に対して何とか出来る人は存在しない。

 

 わたしはここで終わってしまうのだろうか?

 

 ……それでもいいと、わたしは考えてしまう。

 

 アキュラくんやヒスイさん達に守ってもらっている筈なのにもかかわらず。

 

 でも、この場での戦闘はわたしが居ない方が有利になる事は間違い無いのだからと生きる事を諦めようとした……その時。

 

 私の目の前に白衣を着た男の人が割り込み、その攻撃を弾いた。

 

 

「ぁ……」

 

「ふぅ~……何とか間に合ったみたいだな」

 

 

 その男の人はわたしの知る人。

 

 ノワとは知り合いで、ぶっきらぼうだけどやさしくて、私の知るアキュラくんは反発しているけど、内心認めているおじさま。

 

 そして、おじさまの傍にいつも一緒いる彼女も一緒だ。

 

 

「はい! ギリギリセーフですね! ほ……ニコラ様!」

 

「ニコラおじさま! どうしてここに!?」

 

「パーティー会場はここだと()()()から聞いてたもんでな」

 

――――――――(だいじょうぶ? けがはない?)

 

「え? あ、はい。ご親切にどうも……」

 

『あ! 貴方、以前わたしの邪魔をしたおじさんじゃない!』

 

「憑りつこうとした所を祓い清めただけさ。って言うか、おじさんは酷いじゃ無いか。せめてミチルちゃんみたいにおじさまって言って欲しいもんだぜ」

 

『それを呼んでいいのはあの人だけ! 貴方なんかおじさんで十分よ!』

 

「……ヒデェなあおい」

 

 

 ニコラおじさまは少しガッカリしながら両手に鉄扇を携える。

 

 そんなおじさまの背中には見慣れない剣らしきものがあり、それがわたしの眼を惹きつける。

 

 他にはおじさまに付き添う形でノワの親友であるえころさんと、何やらフワフワと浮いてる小さな赤ちゃんみたいな変わった姿をした子も一緒だ。

 

 おじさまはこう言った変わった生き物をよく連れて来ていてくれていた為、珍しい事では無い。

 

 だからこの赤ちゃんみたいな子もそうなのだろうと、わたしはあたりを付けた。

 

 そんなつかの間の最中、シアンちゃんがニコラおじさまに話しかける。

 

 

「あの……」

 

「おう、久しぶりだなシアンちゃん。GVとは仲良くやってるか?」

 

「はい! ……ニコラさん、わたし、わたし……」

 

「……ミチルちゃんと同じで、足手纏いな事を気にしてんのか」

 

「……うん」

 

「なら、そんなシアンちゃんとミチルちゃんに朗報だ」

 

 

 そう言いながら、ニコラおじさまは背中に背負った剣らしきものをわたし達に差し出す。

 

 その剣は黄色い取っ手に青い刀身を持った変わった形をした……所謂、儀式に使われる剣と呼べる代物だ。

 

 

「この剣の名前は封鍵。この国に流れる龍脈を制御するのに使われていた大層ありがたい霊験あらたかな代物さ。このチカラを()()()()()()使()()()、少なくとも足手纏いにはならない筈だ」

 

「わたしも……ですか?」

 

「以前説明したから分かると思うが、ミチルちゃんは電子の謡精(サイバーディーヴァ)を嘗て所有していた、言わば本来の持ち主だ。そして、ミチルちゃんとシアンちゃんは()()()()()()()()()()()()()()()()()。……これがどう言う事か、二人なら分かる筈だ」

 

「……!」

 

「だが、フェムト達の様に一つになった後で終わったら元に戻れる保証はねぇ。一発勝負だ。互いの存在をかける形のな。ただハッキリしている事もある。それはモルフォの持つチカラが増すという事だ。最悪、そこで倒れている子を守る位の事は出来る。……さあ、どうする?」

 

 

 ニコラおじさまの誘いに、わたしとシアンちゃんは迷うことなく乗る事に決めた。

 

 おじさまから渡された封鍵を二人で手を取り、想いを乗せる。

 

 どうかチカラを与えて下さいと。

 

 その時、封鍵は一瞬でその場から姿を消し、それ由来と思われる頭上から莫大な黒いエネルギーの塊がゆっくりと落下し、わたし達を包み込む。

 

 この瞬間、わたしはシアンちゃんのこれまで過ごした記憶を垣間見る事となる。

 

 恐らくだけど、今わたしとシアンちゃんの記憶が統合されているのだろう。

 

 シアンちゃんもきっと、わたしの記憶を垣間見ていると思う。

 

 そして、黒いエネルギーが弾けると同時にシアンちゃんの姿は居なくなっていた。

 

 恐らくリトルちゃんの時みたいにわたしと一つになったからだろう。

 

 そして、今のわたしの姿は……

 

 

「良く似合ってるぞ、ミチルちゃん」

 

「う~ん。コレは紛れも無く【魔法少女】の姿ですね! ロロさんの姿を模した杖も持ってますし、間違い無いです!」

 

 

 そう、ニコラおじさまとえころさんの言う様に、わたしはアニメや漫画なんかで良く出て来る魔法少女のような姿をしていた。

 

 そして、同時にわたしに眠るチカラもまた、感じ取っていた。

 

 そのチカラを開放し、わたしはモルフォを出現させる。

 

 その姿は先ほどの時と比べて衣装が変化しており、蝶を思わせる意匠があちこちに追加されており、本人の周りにも蝶と思われるエフェクトが飛び交っていた。

 

 

『チャオ! アタシ、完全復活よ! う~ん、これは凄いわ! まるでお風呂に入った(デフラグを終わらせた直後)みたいに清々しい気分! 今まで足りないと感じてたナニカがちゃんと収まったって感じね!』

 

 

 そしてもう一つ、わたしの中で早く出して欲しいと訴えかける存在に気が付く。

 

 彼女が消えていない事に安堵し、その願いを叶える形で杖を掲げ、その子を、シアンちゃんを出現させる。

 

 その姿はモルフォを小さくしたかのような姿をしており、シアンちゃんの年齢相応の姿をしていた。

 

 世間一般で言えばモルフォのバージョン違いであると言っても十分通用しそうな程可愛らしいとわたしは思った。

 

 

『これがモルフォの感覚……凄い。今のわたし、何でもできちゃいそうな気分だよ』

 

「シアンちゃん! 良かった……消えないでいてくれて」

 

『それはお互い様だよミチルちゃん。……これでわたしも、GVのチカラになってあげる事が出来る』

 

 

 そんな風にシアンちゃんの無事に安堵していた時、何かが繋がった様な感覚を覚えた。

 

 その瞬間、モルフォとシアンちゃん、そしてわたしから蒼白い雷のオーラが迸ると同時に頭の中に声が響き渡る。

 

 

(やっと繋がった)

 

(この声、リトルちゃん!?)

 

(モルフォのデータを経由して何とか繋げる事が出来た。そっちは無事みたいで良かった)

 

(それはこっちのセリフ! そっちは大丈夫なの?)

 

(私達の方はもうすぐ決着が付きそう。とーりょーさんが増援に来てくれたから)

 

(そっか……あの人が来てくれたんだ)

 

(ん。早速で悪いけど、モルフォにお願いがある)

 

(何かしら?)

 

(貴女の歌で皆に私とロロのチカラを経由して欲しいの。そうすれば勝機は生まれる筈)

 

(分かったわ! この生まれ変わったアタシに任せなさい! さあシアン! 早速で悪いけど歌うわよ! 【輪廻(リインカネーション)】を!)

 

(うん! 任せてモルフォ! 今のわたしなら、思いっきり歌える!)

 

 

 

 

 

 

 

新たなる歌姫の誕生

 

祝福と歓喜を以て祝おう

 

愛しい人に捧げる歌と一緒に

 

 

SONG OF DIVAS(ソングオブディーヴァス)

 

 

 

 

 

 

 

解けないココロ溶かして 二度と離さないあなたの手

 

 

 

いつの日か世界が終わる時も あなたさえいれば怖くないの

 

 

 

冷たく降りしきる雨 (降りしきる)

 

 

 

陽炎消えて (陽炎)

 

 

 

切れ間から差し込んだ 光の梯子 生命の道標(コード)

 

 

 

あどけない寝顔見つめる 月明かり真白の花

 

 

 

戯れに裂いた水面に 広がって消えていく

 

 

 

茨の道でも優しさ 此処にある胸の奥に

 

 

 

解けないココロ溶かした あなただから

 

 

 

 

 モルフォとシアンちゃんの歌が響き渡り、彼女達の歌がこの場に居る皆にチカラを与える。

 

 この歌のお陰か、オウカさんも目を覚ました。

 

 そして、この歌によってロロとリトルちゃんのチカラが皆に接続されたその時、ニコラおじさまの意味深な声がわたしの耳に届いた。

 

 この後何が起こるのかを暗示するかのように。

 

 

「なるほどねぇ……宝玉の真のチカラを引き出せるのは生み出した龍そのものであるって事かい」

 

 

 わたしの前に立つGVからわたし達が放つオーラの輝きとは違う、綺麗な蒼いオーラを立ち昇らせる。

 

 背中に受けていた深い傷が瞬く間に塞がり、GVの周囲に戦闘中に展開している雷の膜の様な物がわたしの目でも分かる位極めて安定した状態で展開された。

 

 それでいてGVが無意識に体の周囲に迸らせている電流が無くなっている。

 

 何と言えばよいのだろうか?

 

 GVのチカラは間違い無く跳ね上がっているのに、それと反比例する形で静かになっている、みたいな……

 

 ああ、こう言えばいいのだろう。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

 それを把握した時、わたしは思った。

 

 今のGVはきっと、誰にも負けない。

 

 だって……

 

 

「行こう二人共。ボクと一緒に」

 

『『うん! わたし(アタシ)達の歌が、貴方の(チカラ)になる!』』

 

「迸れ! 蒼き雷霆(アームドブルー)! 響け! 謡精(ディーヴァ)の歌声よ! そして……調律せよ! 青き交流(リトルパルサー)! 雷の調和を齎す三位一体(トリニティ)のチカラと可能性、悲しみと絶望に堕ちた龍の巫女に示せ!!」

 

 

 だって、シアンちゃんとモルフォの二人の歌姫、そしてわたし達が一緒に居るんだから!

 

 

 

 




最終章【覚醒編】まで遂に漕ぎつけることが出来ました。
本編はこの章で完結予定ですので、宜しければ最後までお付き合い下さい。
では改めて……ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。






〇ペスニアがGVに対してノーマークだった事について
ペスニアは途中まではイクス世界線を辿っている、つまり白き鋼鉄のXの副題にある【THE OUT OF GUNVOLT】な世界線である事からそもそもGVの事を認識していなかったのが理由。

〇ペスニア世界線のブレイドについて
謡精暴龍との戦いにおいてペスニアとは戦友の間柄。
本小説の世界線に来る直前のペスニア視点での最終決戦と呼べる局面で、()()()()()()()()()()と共に暴龍と化して命を燃やしながら特攻して血路を開き、魂諸共完全消滅する末路を辿っている。

〇名も無き暴龍について
無色の第七波動能力者が暴龍と化した存在。
能力によるチカラは無いが、純粋な暴龍としてのフィジカルは色の付いた第七波動能力者とは全く引けを取らない。
何気に第四十二話にも今回の話の時の様にイマージュパルスで登場している。

〇コハクちゃんの変身について
白き鋼鉄のX2でのラスボス第一形態の姿そのまま。
本小説内で実はマスターと共にコハク達の行く末を見守っていたマザーがチカラを貸した事で変身が解禁。
これ以降はコハクちゃんの意思で任意の変身が出来る様に。

〇ニコラが変わった生き物を良く連れて来ていた事について
ミチルちゃんに対して何か面白い物を見せたいと思ってニコラはちょくちょく面白生物をミチルちゃんに見せていたりする。
例えばちっこい魔界植物くんだったり。
そう言った不思議生物からミチルちゃんを守る為に(フェムト世界線での)アキュラもこの時付きっ切りだったりする。
これの影響で何気にニコラは(フェムト世界線での)アキュラから変な意味で一目置かれている。

〇シアンちゃんが小さなモルフォみたいな姿になったことについて
ガンヴォルト爪ではミラーピースと言う形でバラバラにされた際に弱体化した時の姿。
つまり通称【爪シアンちゃん】の事。
シアンちゃんを生存させつつも爪シアンちゃんを登場させたい。
これを叶える為に第三十一話で「生きた宝剣」と言う形でリトルと関連を持たせました。
この事は既に鎖環発売前に私の中で決まっていたのですが、発売後にミチルちゃんが真真エンドで魔法少女になっていたのでこのネタも入れています。
ニコラには戻れるか分からないと言われていますが、ちゃんと戻れます。
序にミチルちゃんの方も一度シアンちゃんと一つに戻った事で、互いの繋がりを獲得した為虚弱体質が完治しており、もうモルフォの歌に頼らなくても平気になった。

〇ミチルちゃんの魔法少女姿について
リトルの事を「生きた宝剣」と定義する事でミチルちゃんとシアンちゃんによる変身現象(アームドフェノメン)と言うのを当初は設定していたのですが、封鍵や鎖環での真真エンドのミチルちゃんの魔法少女姿のお披露目があった為、それらを組み込んでみました。
この姿では白き鋼鉄のXのバタフライエフェクトが出来る事は大体出来ると設定している。

〇GVの覚醒について
これについては本編第二十一話と三十一話辺りでABドライヴがフェムトの第七波動に反応すると言う形で伏線を張っています。
TASでGVと接続するとこの現象が発生し、GVのチカラを鎖環本編で言う覚醒GV、或いはバニシングワールド時のGVに相当する能力をリスク無しで行使できるヤベェ覚醒。
これに追加する形で封鍵で強化されたシアンちゃんとモルフォの歌とTASによるアビリティの強化も上乗せされている。
そして、フェムトの雷撃の特性も付与される為、龍放射を調律(チューニング)する特性ときわめて強力な退魔のチカラも追加される。
この状態のGVは本小説内では味方側におけるぶっちぎりの最高戦力と位置付けています。
なお、この現象はアシモフやヒスイ(ブレイド)でも上記と似たような感じで発生するが、GVほど強烈な物にはならない。



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