ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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第四十四話 降臨 青龍ガンヴォルト


サイドストーリー

 

 

 

 

 今の蒼き雷霆(アームドブルー)のチカラはボクの知らない未知の領域まで引き上げられており、全能感に酔ってしまっても不思議では無い。

 

 それなのにも関わらず頭の中は酷く冷静で、かつてない程に冴え渡っている。

 

 精神を昂らせる二人の歌姫(モルフォとシアン)の歌声が響いているにも関わらず。

 

 何と言えばよいのか、とても不思議な感覚だ。

 

 ……背中の致命傷に近かった傷が瞬く間に塞がっていくのを感じる。

 

 普段蒼き雷霆の力を開放していた時の余剰に漏れる電流は鳴りを潜め、完全に制御された形で体内で渦巻く。

 

 ボクの冷め切った思考が目の前に居る(ペスニア)を脅威であると認識していない。

 

 そう、モルフォとシアンの歌を経由してフェムトのチカラが接続された瞬間、ボクは悟った。

 

 彼女に、ペスニアに負ける要素はもう無いのだと。

 

 ボクのこの姿を見て確信の笑みを浮かべたデイトナが炎を纏った飛び蹴りで突っ込んで来る。

 

 ダートリーダーを構え、フェムトのEPレーダーを参考に銃口を中心に放射線状にロックオンをする為の電磁パルスを放射。

 

 デイトナと後方に居るペスニアを除く全員を巻き込む形でロックオンし、ボクは特に意識せずに、当たり前のようにスパークカリバーを前面に展開してそのまま突っ込んで来たデイトナ撃墜し、いつもの調子で雷撃麟を展開した。

 

 しかし、展開されたのは雷撃麟ではなく、SPスキル【ライトニングスフィア】と複数の雷球だった。

 

 

「おいおいマジかよ。GVのアレ、ライトニングスフィアだよな?」

 

「見た目だけならそうだろう。しかし、アレは雷撃麟の様に長時間展開できる代物では無い。ましてや、展開中に自由(フリー)に動ける等あり得ない事だ」

 

「スパークカリバーも特に力んで使ってる訳じゃねぇ。自然体に、それこそ当たり前のように振るってやがる。アシモフ。お前もフェムトと接続してる筈だ。ああはならんのか?」

 

「ならないな。そもそもの話だが、私の蒼き雷霆には()()()()()()()()()()。恐らくだが、私のコレはGVの蒼き雷霆の残滓(レズィドゥー)と言う事なのだろう」

 

「GVが特別だったりお前の能力が暴走していたのはその辺りが関係してそうだな。……しっかしまぁ。これはひどい」

 

「オレ達の出番、マジでねぇな。あの一瞬で全部片付いちまってるし。……アレ、本当に大丈夫なのか? 心配になっちまうぜ。力の使い過ぎで昔のアニメみたいにドワォするなんて勘弁なんだけどな」

 

《こっちでGVのモニタリングをしてるけど、ビックリする位力の波が存在して無いわ。あんなに沢山暴れている筈なのに、本当に静かなのよね》

 

「この辺りはフェムトの青き交流がチカラを安定させているんだろうな。何て言うか、ただチカラを振りまく蒼き雷霆に制御ユニットがくっ付いた感じなんだろう」

 

 

 戦いの最中に皆の会話を拾い上げ、ハッキリと認識出来ている。

 

 周囲の状況を事細かに把握すら出来ており、本当に世界が変わったように感じた。

 

 きっとこの光景は、何時もフェムトが見ている物なのだろう。

 

 そう考えつつペスニアが呼び出した幻影(イマージュパルス)亡霊(デイトナ達)を撃破したのを確認し、自然体に残心する。

 

 

『あぁ……! 凄い! 凄いわ! 貴方からこのわたしでも計り知れないチカラが渦巻いてる! 謡精暴龍に匹敵する凄まじいチカラが!』

 

「……投降するんだ。キミはもう分かっている筈だ。勝ち目はもう無い事を」

 

『フフ……お断りよ。わたしにはまだやるべき事がある。貴方の力をこの身を以て確かめる事が』

 

「いくら幽霊だからと言って、なぜそこまで自分の身を蔑ろに出来る?」

 

『そんなの決まってるわ。謡精暴龍を倒す事が今のわたしの全て。その為なら、この身は惜しくない。……いいえ。正確にはこうね。わたしはね、()()()()()()()()()()()()()()()のよ。死ねない身でおじさまの、愛する人の居ない世界で意識を持つなんて地獄その物。だからギリギリまで待っていたのよ。わたしを、謡精暴龍を消滅させうる存在が現れるのを』

 

「…………」

 

『覚えておきなさいモルフォ。大切な人に好意を伝えるのは早ければ早いほどいいわ。……わたしは強がってばっかりで、結局おじさまに伝える事も出来なかったから』

 

『ペスニア……貴女……』

 

『……もう勝負が実質ついた以上、ここで戦うのはマズイわね』

 

 

 そう言いながらペスニアは錫杖を用いてメラクの姿をした幻影を呼び出す。

 

 そして彼の持つ能力によって行き来可能なワームホールが形成される。

 

 ペスニアは死地へとボクたちを導こうとしていた。

 

 ボク達のでは無く、彼女自身の死地へと。

 

 

『この先で決着を付けましょう。結末が約束された勝負の決着を』

 

「お、おい!」

 

 

 ジーノの静止の声にも反応せず、ペスニアはワームホールの先へと向かった。

 

 ボク達と対峙していた時のプレッシャーを完全に四散させ、達成感すら感じさせる狂気を四散させた優しい表情をしながら。

 

 

「……行ってしまったか」

 

《GV、どうするの?》

 

 

 モニカさんの言葉を聞いた後、ボクは後ろを振り向く。

 

 小さなモルフォと言うべき姿となったシアンと新たな衣装を身に纏ったモルフォ、そしてミチルやヒスイさんを始めとしたこの場で協力してくれた皆を改めて視界に収める。

 

 皆の答えは言葉に出なくとも、その表情を見るだけで分かり切っていた。

 

 

「……行きます」

 

『うん! GVならそう言うって思ってた!』

 

『当然アタシも行くわ! この状況じゃあライブの再開をするのにも時間が掛かっちゃうし。それに……ここで引いたら電子の謡精(サイバーディーヴァ)の名が廃るわ!』

 

「今のわたしなら足手纏いに何てなりません! 一緒に行かせてください!」

 

「わたしも同じくだよ! マザーの遺してくれたこのチカラがあれば、お姉ちゃんと一緒に戦えるんだから!」

 

「全く……二人が行くと言うのなら、私も行かなければならないな」

 

「相手が相手だからな。オレも当然行くぜ。コイツらと一緒にな」

 

「わたしも勿論向かいます!」

 

―――――――(わたしも いっしょ)

 

「そうなると……オレ達は居残りかねぇ。リーダー?」

 

「そうだな。この場の混乱した事態を収拾する必要はあるだろう。元より、その為の私達だ」

 

《そういう訳だから、チームシープスはアメノウキハシでの混乱を何とかする方にチカラを入れるわ》

 

「助かります。モニカさん、ジーノ、アシモフ」

 

「GV……どうか、無事に戻ってきてください。皆と一緒に」

 

「大丈夫だよオウカ。ボクは必ず皆と戻る。約束するよ」

 

 

 そういう訳でチームシープスとオウカ以外のメンバーであるシアン、モルフォ、ミチル、コハク、ヒスイさん、ニコラ、えころさん、そしてメビウスと言う少し変わった赤子の姿をした存在と共にワームホールの先へと足を踏み入れた。

 

 その先は凄まじい戦闘痕のある戦場で、その周囲にある多くの建物や施設にまで被害が及んでいる。

 

 恐らくここは昨日ニュースで避難を終えていたエリアであり、紫電達はこうなる事を予期していたのだろう。

 

 そして、ボクの視界にフェムト達の姿が映る。

 

 モルフォとシアンの歌を通じて無事な事は確認出来ていた。

 

 しかし、この目で見ない事には安心など出来るはずも無い。

 

 デイトナ達は犠牲になってしまったが、それでもフェムト達が無事で本当に良かったとボクは思う。

 

 

「フェムト!」

 

「GV! それにシアン達も!」

 

『フェムト! そっちは大丈夫なの?』

 

「ええ! 頭領さんが応援に駆けつけてくれました!」

 

「アキュラくん! 無事でよかった……」

 

「ミチル!? どうしてここに? いや、それよりもその恰好は……」

 

「ロロちゃん! 大丈夫?」

 

『こ、コハクちゃん!? それを聞きたいのはコッチの方だよ!? ミチルちゃんもそうだけど、どうしてそんな恰好をしてるのさ!?』

 

「こっちでも色々あってね……」

 

 

 互いに無事を確認し、情報交換を行うボク達。

 

 こちらでは何でも能力者殺しの武装を扱う存在に苦戦を強いられたらしく、それが切欠でデイトナ達が犠牲となってペスニアの眷属にされてしまったのだと言う。

 

 彼女がボク達の所に来る前の時も置き土産と言う感じで大量の暴龍と一緒に同時に襲い掛かって来た為、全滅も覚悟していたらしいのだが、それは紫電直属の頭領さんと呼ばれる人物が持ち込んだ三本の封鍵によって切り抜けたとの事。

 

 使用したのはフェムトに紫電、そしてエリーゼ。

 

 現在は一時戦闘を終了していた為封鍵開放状態は解除されており、三人がそれぞれ手にしている状態だ。

 

 そこまで話していて、フェムト達の後ろに見慣れない人達が居る事に気が付いた。

 

 何でもこの人達はペスニアに協力していた人達らしく、彼女の持つ能力である死霊(ガイスト)と呼ばれる第七波動の影響下にあった。

 

 そのお陰で倒しても何度も復活する為、暴龍として強化されていた事も合わさりフェムト達はジリジリと追いつめられていったのだが、封鍵とエリーゼの存在が逆転する決定打になる。

 

 その方法とは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う逆転の発想。

 

 何度倒しても復活するのならば、逆に蘇生してしまえばよい。

 

 その考えは上手く嵌り、エリーゼがフェムトの持つ龍放射を浄化する性質も合わさり人の姿に戻した状態での蘇生を可能とした。

 

 変身現象をする為に必要な翼戦士の羽ペンと呼ばれる道具も没収されている為実質無力化しており、彼らはもう脅威では無い。

 

 そういう訳で後はペスニアを如何にかしてデイトナ達を蘇生して謡精暴龍を倒せば事態は収まる。

 

 そこまでボク達が話をまとめ上げたタイミングで先にワームホールで姿を消していたペスニアが再びボク達の前に姿を現す。

 

 アメノウキハシ内で対峙した数が馬鹿らしく見える程の大量の暴龍達と特徴的な銃を持った幻影アシモフ達、そして死霊の影響下に晒されている人達(デイトナ達やヒスイさんと戦っていた六人)を引き連れて。

 

 先ほど別れた時と同じ様に初めて対峙した時のような狂気を完全に四散させており、決意を固めた、或いは覚悟を決めたと言った表情をしている。

 

 そんな彼女はフェムト達の後ろに居る六人の協力者たちに、最後の別れとも言うべき言葉をかけた。

 

 

『まさかそんな(蘇生する)形で死霊の影響下から外すだなんて、ビックリしたわよ』

 

「スマンなぁペスニア。捕まってしもたわ」

 

『いいのよ。元はと言えばわたしが巻き込んだ形だったんだから。……そのまま彼らに協力してあげて頂戴な。ダイナインと幸せにね、インテルス』

 

「いいのかい? ペスニア」

 

『構わないわよ。折角生き返ったんだし、貴方達までわたしに付き合う必要は無いわ。世界は違えど、あのポンコツ経由なら貴方も家族に会えるはず。今の内に何て言葉をかけるか考えておきなさいな。リベリオ』

 

「ペスニア……」

 

『良かったわね、イソラ。……折角奇跡が起きたんだからその命、大切になさいな。アイドル活動、応援してるわよ』

 

「僕としては君と一緒の方が都合が良かったんだけどねぇ……」

 

『わたしと一緒だと壊す物が最終的に無くなっちゃうからこれで良かったんじゃない? クリム』

 

「ペスニア、われは本当にそれでええのか?」

 

『構わないわよバクト。貴方もファミリーの内乱だったりわたしに振り回されたり散々だったんだから、少しは落ち着く時間が必要でしょ? 折角真っ新な状態で蘇生したんだから、精々この先どう生きるかを考えておきなさいな』

 

「……インテルスの件、感謝しています」

 

『エリーゼの蘇生って随分器用なのね。ご丁寧に機械の姿で蘇生しちゃうだなんて。……インテルスの事、今度はちゃんと守り通してみせなさいな』

 

「ええ。今度は必ず守り通して見せます」

 

『頑張んなさいな、男の子♪ ……待たせてごめんなさいねフェムト。それに他の人達も』

 

「…………ペスニア」

 

『もう事情はGV達から聞いたと思うから言わせてもらうけど……同情はいらない。わたしはこの世界に酷い事をした自覚位あるわ。だから、ちゃんと責任は取らないとね』

 

 

 話を終えたペスニアは麒麟デバイスと呼ばれる錫杖をこちらに向けた。

 

 それと同時にペスニアの真下に名も無き暴龍とは明らかに違う二体の暴龍が出現。

 

 その姿の全体像は赤で統一されており、非実体型の炎の翼を持ち、人間で例えるなら髪に該当する部分の先端が緑色に染まっている。

 

 それだけでは無く、背中に巨大な黄色い紋章の様な物も背負っていた。

 

 もう一体の全体像は対照的に青で統一されて女性らしいフェルムを持っており、その身をボクが持つ蒼き雷霆と同じような雷撃を身に纏い、尻尾の部分がヒスイさんの持つ蛇腹剣を展開したような感じになっている。

 

 双方とも幻影であるにも関わらず、明らかに名も無き暴龍と比べて別格の存在感とプレッシャーをボク達に与えた。

 

 

『この二体の暴龍こそがわたしの本当の切り札。【暴龍ZEDΩ.】、そして【暴龍ブレイド】よ! わたしの知る最強第七波動(セプティマ)太陽(核融合)を操る【金色の黎明(ゴールドトリリオン)】。そして貴方達も良く知っている蒼き雷霆……わたしの集めた戦力と、この二つのチカラを操る最強の暴龍達。見事乗り越えてみなさいな!』

 

「総員、奮起せよ。目標はペスニア達の撃破。そして、デイトナ達の蘇生だ」

 

「封鍵のチカラ、再び使わせてもらいます!」

 

気のせい……かな? ペスニアの中に誰かが居るような……さっきの様に封鍵のチカラを借りれば、きっと分かる筈

 

 

 紫電、フェムト、エリーゼが封鍵を掲げる。

 

 封鍵は掲げた瞬間姿を消し、それ由来の莫大な黒いエネルギーの塊が彼等の頭上に現れ、ゆっくりと降下。

 

 三人を黒いエネルギーの塊が包み込んで弾け、新たな装いをした三人が姿を現す。

 

 蒼い外装を新たに身を纏い、より天使らしい服装を身に纏ったリトルを従えるフェムト。

 

 ヘビの巻き付いた杖を右手に、黄金の剣を左手に持った雷を纏う純白の翼を持つエリーゼ。

 

 よりシャープに洗練された灰色の鎧と呼ぶべき物を身に纏った紫電。

 

 封鍵のチカラとはミチルが魔法少女と呼ぶべき姿をした様に、使い手によって姿形の変化に差があるらしい。

 

 そして、この変身を終えたタイミングでペスニア達は動き出し、戦いは始まった。

 

 ペスニアが言う「結末が約束された勝負」が。

 

 

 

 


 

STRIK

 


 

 

 

 

 開幕にエリーゼがSPスキルを使用する為か、右手に持った杖を掲げ力を集中させる。

 

 それと同時にフェムトはEPレーダーを強化したと思われる電磁パルスを器用にデイトナ達へと放射しロックオン。

 

 アキュラは能力者殺しの特性を持った銃を持つアシモフモドキ達を電光石火の動きで牽制。

 

 モルフォとシアン、そしてミチルは広域に歌を展開し、更に強力な精神的高揚(バフ)を与える。

 

 そしてボクはフェムトと目を合わせ、縦に首を振ったのを確認しフェムトのロックオン対象に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

煌くは雷光纏いし数多の聖剣

 

蒼雷の暴虐達よ 敵を貫け

 

 

アンリミテッドカリバー

 

 

 

 

 

 

 

 ボクの周りにフェムトがロックオンした数よりもはるかに多くの数のスパークカリバーを展開。

 

 これら一本一本が事前にアンリミテッドヴォルトを仕込んだスパークカリバー並みの威力を兼ね備えている。

 

 これを射出し、一度デイトナ達を死霊の支配から逃そうとしたタイミングでエリーゼの力が開放された。

 

 

 

 

 

 

 

蛇神の血が命を紡ぐ

 

医神のチカラを双蛇の杖に宿し

 

さあ、今こそ死を超越せよ

 

 

ライトブラッドアスクレピオス

 

 

 

 

 

 

 

 エリーゼ杖から放たれる神秘的な紫色の光がデイトナ達を包み込む。

 

 そして、この光に紛れるようなタイミングでボクが用意した無数の雷剣が稲妻の軌跡を描き突貫する。

 

 強化された雷剣はデイトナ達を見事に貫き、瞬間的ではあるが死霊の支配からの脱却に成功。

 

 しかし、これまで通りならこの後ペスニアが死霊による蘇生を行うだろう。

 

 だがそれはデイトナ達が居た場所から紫色の光が再び輝きだした事で覆される。

 

 

『……なるほど、こうやってインテルス達を死霊の干渉から弾き出したって訳なのね。さしずめ()()()()()()()って所かしら』

 

「そういう事です! デイトナ達は返してもらいますよ!」

 

「スマンフェムト! お陰で助かったぜ!」

 

「この恩は決して忘れぬ。感謝するぞ、フェムト!」

 

「お礼はエリーゼに言ってください! 私はロックオンしただけですよ!」

 

「そうだったな! ありがとうな、エリーゼ!」

 

 

 蘇生したデイトナ達がこちらの戦列に復帰する。

 

 それだけで無く、ヒスイさんが相手をしていた六人もパンテーラを中心に集結し、戦列に加わっていた。

 

 彼らはエデン直属のG7(グリモワルドセブン)と呼ばれる人達らしく、ペスニアに戦力増強と称しコマにされていた人達だ。

 

 その中に居る一人の小さな女の子がボクに対して顔を上気させながら強く視線を向けている。

 

 まあ、仕方が無かったとはいえ救出手段がかなり乱暴であった為、もしかしたら恨まれているのかもしれない。

 

 この戦いが終わったら謝っておこうと思いながら残りの手勢の相手をする。

 

 しかしペスニアが結末が約束されたと称する通り、もう既にボクの放つ雷だけで半数近くの戦力を削ぎ落している。

 

 当然フェムト達の様々な補助や支え等の援護があるからこそなのだが、冷静に考えられる事が出来なければ容易くチカラに飲まれ、酔いしれてしまいそうだとメタ視点を強めながら意識を強く持つ。

 

 今のボクは、世界中が敵に回っても平気だと漠然と思える程のチカラを振るっている。

 

 だからこそ、己を強く保たなければならない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ……?

 

 以前とはいつの頃だろうか?

 

 取り返しのつかない事態とは何なのか?

 

 突然頭の中から出て来たその言葉に対してそんな風に考えながら雷撃を放ち、フェムトが導く様にロックオンした対象に向かい、電光石火で突撃する。

 

 その移動の最中、名も無き暴龍に衝突しそうになる時もあったが……

 

 

「穿つ!!」

 

 

 己を雷に変えながら通り抜けつつスパークカリバーによる追撃行い、さらにその先に居た名も無き暴龍を()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「砕け散れ! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「うわぁ……GVのヤツ、とんでもねぇ事になってやがる……」

 

「小さなビル程大きい暴龍を持ち上げて集団に突っ込む? ちょっと意味が分からないんだけど」

 

「……ヴォルティックバスターをあの巨体相手に決めるとはな」

 

『なんかもう、完全に人間やめちゃってない?』

 

「大丈夫です。GVが人間を辞める事はありませんよ! っと」

 

『ん。私がチカラを制御してる。だから大丈夫』

 

「あれで制御出来てるっつうのも変な感じだな!」

 

「まあでも、残りはもう彼女の切り札である二体の暴龍だけです!」

 

『油断しちゃダメよ! ここまで来たんだから!』

 

『わたしとモルフォとミチルちゃん、そしてロロとリトルの歌で皆を支えます! 頑張って、GV! 皆!』

 

 

 ここまで追いつめられているペスニアはフェムトに張り付かれている。

 

 現時点ではもう大勢は決したと言っても良いが、これまでの彼女自身、手を抜いている訳では断じて無かった。

 

 アシモフモドキは能力者殺しの銃のターゲットをボクに集中させていたし、彼女なりにやれる事の最善手を出来る限り行った上で、この結果なのだ。

 

 それに、今のこの状況下でも彼女は出来る限りの手を打っている。

 

 それでもボクがフリーで暴れられたのは、あの切り札と言われる二体の暴龍を紫電達が抑えてくれていたからだ。

 

 だからこそ、ボクは引導を渡そうと思う。

 

 ペスニアの切り札であるあの二体の暴龍へと。

 

 真なる聖剣のチカラを以って。

 

 

 

 

 

 

 

掲げし威信が集うは切先 

 

夜天を拓く雷刃極点

 

齎す栄光 聖剣を超えて

 

 

グロリアスストライザー

 

 

 

 

 

 

 

 真のチカラを解き放った雷の聖剣を虚空より抜き放つ。

 

 それと同時に天使の羽のエフェクトが舞い散り、ボクに対して勝利と言う名の栄光を授ける真なる雷剣が顕現した。

 

 それに対して二体の暴龍はボクが危険だと判断したのか、それぞれその口から強力な雷撃と核融合由来のチカラを持った吐息(ブレス)を放つ。

 

 そのブレスを聖剣を用いて打ち消しながら突き進み、二体の暴龍を同時に貫く。

 

 これによって二体の暴龍はホログラム状に姿を消し、遂に残るはペスニア一人となった。

 

 その事に気が付いた彼女は、張り付いていたフェムトを弾き飛ばし、改めてボク達の方へと振り向く。

 

 姿形は変わっていないが、これまでの戦いの時とは違い彼女は明らかに疲弊していた。

 

 

『ふ……フフ……流石に、こんなにあっさり全滅しちゃうだなんて、思わなかったわ』

 

「ペスニア……」

 

『これならもう謡精暴龍が倒されるのは約束されたも同然……さあ、わたしを終わらせて。そのチカラを以って、消滅させて頂戴な……』

 

 

 ボクは彼女の望みを叶えるべく、未だ顕現している聖剣を振りかぶる。

 

 フェムトが持つ退魔のチカラの宿った雷の性質が聖剣へと宿り、ペスニアを屠らんとうなりを上げた。

 

 さあ、後はこれを振り下ろすだけで決着が付く。

 

 だけど、ボクの心は何処か引っ掛かる。

 

 振り下ろしてしまったら取り返しのつかない事態を引き起こしてしまうのでは無いかと。

 

 

『何を躊躇っているの? ……お願い、わたしを終わらせて。大好きな、愛するおじさまの元へと連れてって。貴方の持つその剣で。一思いに』

 

 

 ペスニアが懇願するように、縋りつく様にボクにトドメを刺すように促す。

 

 ボクはそれに従おうと、聖剣を振り下ろそうとして……

 

 

「ダメです!!!」

 

 

 エリーゼの放つ大きな声によって、ボクは止められた。

 

 それと同時に雷の残滓をまき散らしながら聖剣は消え去る。

 

 もう役目を終えたと言わんばかりに。

 

 

『なんで! どうして止めるの! こうするのが貴女達にとっても最善手の筈でしょう!? お願いだから、いい加減終わらせてよぉ!!!!!』

 

「ダメなんです!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

『ぇ……何を、言っているの?』

 

「その人が誰なのかはわたしには分かりません。ですが、その人はペスニア、貴女の事を案じてます。消滅させないで欲しいと願っています! それを無下には出来ません!」

 

『……嘘。そんなの嘘よ。だって、そんなの、そんなの……!』

 

『……話せない、触れ合えない状態の人の存在を証明するのは難しい。ましてや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『そうよ……結局、触れ合えなきゃ、言葉を交わせなきゃ……意味なんて無いじゃない……!』

 

「だから、わたしがそれを可能にします。わたしの持つこのチカラで」

 

 

 そうしてエリーゼはペスニアに対して手を差し出す。

 

 戦っている時には見せなかった慈悲深く、優しい表情を向けながら。

 

 ペスニアは手を差し出さなかった。

 

 表情を見る限り彼女自身、今更救われようなんて考えてなどいなかったのだろう。

 

 しかし、エリーゼは差し出さなかったペスニアの手を優しく両手で握った。

 

 

『……何の、つもりよ……?』

 

「救うと言う行為には相手にある種の剥奪感を与えるとフェムトくんから聞いています。それによって恨まれる事もあるかもしれないとも」

 

『そこまで分かっているのに、どうして……』

 

「わたしもそうやって救われたからです。こうして手を無理矢理繋いでもらって、引っ張られたんです。わたしもその時は戸惑いや困惑の方が大きかったけど、最終的には笑顔で過ごせるようになりました。だから、()()()()()()()()()。ちゃんとお話しして、貴女の中にいる人と向き合って下さい」

 

『やめなさい……』

 

「いいえ。やめません。それをしたければこの手を振りほどけばいい」

 

『お願い、やめて……』

 

 

 ペスニアはやめてと懇願しながらも、繋いだ手を振りほどく事は無かった。

 

 そうしてペスニアがまごまごしている内にエリーゼにチカラが収束していく。

 

 

『今のわたしをおじさまが見たら、嫌われちゃう』

 

「そんな事は無いよ。だって……今も貴女の事を優しい瞳で見つめているから!」

 

 

 

 

 

 

 

廻る輪廻が生命を紡ぐ

 

不可逆の帳を超えて

 

魂よ、現世に還れ

 

 

リザレクション

 

 

 

 

 

 

 

 ペスニアに対し……いや、()()()()()()()()()()に対してエリーゼの蘇生が発動。

 

 ペスニアの隣に人の輪郭が形成される。

 

 その輪郭は彼女の身長を越え、やがて一人の壮年の赤毛の男が姿を現す。

 

 恐らくだが、この男こそ彼女が言うおじさまと呼ばれる人物なのだろう。

 

 

「………ふぅ」

 

『ぁ……あぁ……』

 

 

 エリーゼは蘇生を終えた後、こっそりとボク達の元へと戻り、ペスニアと赤毛の男の動向をボク達と同じように様子を見る。

 

 何故ならば雰囲気から察するに、あの二人は所謂二人だけの世界に突入していると感じていたからだ。

 

 赤毛の男は黙って彼女を抱きしめ、頭を撫でる。

 

 まるでこれまでの彼女の苦労を労るかのように、優しく、優しく。

 

 それと同時に、ペスニアの姿に変化が現れる。

 

 黒いモルフォ姿だったのが、徐々に、少しづつ。

 

 彼女はやがて黒いローブの様な物を身に纏い、後ろに三つに束ね、正面を両耳が隠れる様に束ねた白く長い髪をした少女へと姿を変化させる。

 

 背中の龍の翼と呼べる物は、そのままに。

 

 

『B.B……おじさまぁ……! わたし、わたし……!』

 

「オレっちの分までよく頑張ったな、【アミカ】」

 

 

 彼女の本当の名前と共に、この戦いは終幕した。

 

 恐らく、彼女の想像を超える形で。

 

 

 

 


 

CLEAR

 


 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。






〇ペスニアの野望もとい本当の目的について
彼女は出来る事ならば消滅したいと望んでいた。
何故ならば彼女が大好きであったおじさま(B.B)は一つになって消えてしまったから。
一つになったのだから寂しく無いと最初は考えていた。
しかし、長い時は容易くその考えを打ち壊した。
なまじ近すぎるが故にその存在を感じ取れなくなってしまう。
そう、言葉が、温もりが無ければその人が本当に居るかどうかの証明は出来ない。
例え能力と言う形でその痕跡が残っていたとしても。

ニケーの占いはそんな彼女の野望である消滅する事が潰える未来が、つまり今回の話の結末が見えていたからこそ、死霊の支配下に置かれても穏やかな顔でいられたと言う側面がある。

〇今回のミッションについて
真に覚醒したGVもとい【青龍ガンヴォルト】操作のチュートリアルミッション。
出来る事は鎖環の覚醒GVと大差は無いが、どんなにチカラを使っても暴走しない超絶チート状態になっている。
ペスニア自身消滅したがっている側面もある事から、このミッションはそれこそオープニングでのフェムト操作よりも簡単な難易度となっている。
メタ的に言うと難易度的に前々回の耐久ミッションが最難関となっており、プレイヤー間ではあそこがラスボス戦で、後のミッションは特殊条件でのミッションが多い事からエンディング演出のウィニングラン状態等と言われている。

〇暴龍ZEDΩ.について
彼はペスニアが出会ったその時点で暴龍へと姿を変えていた。
謡精暴龍が暴れに暴れていた影響を受けた結果として。
だが、彼がそうなってしまったのは傍を離れようとしない少女と歌姫を龍放射から少しでも守る為でもあった。
最終的に彼は少女と一つとなり、謡精暴龍相手に暴龍ブレイドと共に特攻をする。
その時の戦いぶりとチカラは今回のミッションで扱えるGVと全き引けを取らなかったとだけ明記しておく。
今回GVに圧倒されたのはやはり幻影であったからと言うのが極めて大きい。
もしGVの相手が本体が相手だった場合、世界を股に掛けた大戦争が始まっていた。

〇アンリミテッドカリバーについて
青龍ガンヴォルト形態で使えるSPスキル。
一つ一つがアンリミテッドヴォルトで威力を引き上げたスパークカリバーに相当する雷の聖剣を大量に出現させ、ロックオン対象に雷の軌跡を走らせながら全て射出する。
ゲートオブバビロン……いや、何でもない

〇ライトブラッドアスクレピオスについて
一言で言えばFFシリーズでおなじみのリレイズ。
それをエリーゼが封鍵のチカラによって広範囲に展開出来る様になったSPスキル。
彼女の持つアスクレピオスの杖を模した双蛇の杖を用いた物で、本来の用途のリレイズ的な性質を利用してインテルス達やデイトナ達を死霊の影響下から開放している。
名前の由来はメドゥーサの首の右側から流れる死者を蘇生させるチカラを持った血液と医神でもあるアスクレピオスから。
ちなみにだが、これと対になるSPスキルも存在している。

〇女の子が顔を上気させていた件について
ナニがとも誰とも言いませんが……圧倒的なGVの雷撃によって上書きされた結果とだけ言っておきます。
少なくとも、本人は自身の性癖を自覚してしまう程に目茶苦茶喜んでいる。
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