こちらが態勢を整い終わり、謡精暴龍の
その後、謡精暴龍の周囲を覆うように不規則な幾何学模様の立体型の魔法陣が小規模な物から大規模な物まで、凄まじい数が展開された。
そこから現れ出でたるは、違う道を辿った私達の
彼等は
目の焦点もあっておらず、中には腕や足が千切れかけている人達も居るが、何らかのチカラが働いているのか、動く事に支障は無いらしい。
そして、そんな彼らを率いる
いや、既視感なんて物じゃない。
このチカラの波動は私にとって、とても馴染み深い物だ。
『あの暴龍から、感じた事の無い深い絶望を感じるわ。本当に、底知れない絶望を』
(……認めたく無いけど、あれは間違い無くエリーゼの物よ)
エリーゼの第七波動の意思であるアニムスが、あの暴龍の正体を看破する。
私の既視感をプラスした上で彼女がそう判断する以上、間違い無い。
よって、あの
そんな生命暴龍なのだが、視線は私に集中しており、少なくとも彼女は私と出合っているのは間違いない。
その上で
あの生命暴龍は私の考えうる限りの最悪を想定したかのようなIFであり、目を背けてはならない事実。
この様な未来も起こりえたと、改めて己を自戒せねばならない。
私の隣に立つエリーゼがそうなってしまわないように。
私は横目でエリーゼを見る。
自身のIFを直視してしまった為か、悲しそうで憂いを持った表情と視線を生命暴龍に向けていた。
やはり、この様な姿になってしまった自身を見るのは相当に堪えているようだ。
「エリーゼ」
「大丈夫……とはあまり言えないかな」
私はそんなエリーゼの手を優しく取る。
私の手の体温を感じ取り、震えていたその手は落ち着きを取り戻す。
……これまでの謡精暴龍の行動を見る限り、明らかに意思の様な物を感じ取れる。
アミカは本能のみで意思が無いと言ってはいたが、私達にこれまでぶつけて来た戦力は明確にこちらの動揺を誘う相手ばかりであった。
紫電、パンテーラ、マザー。
ランダムな終末世界から呼ばれると言うのならば、本当に私達に関係の無い存在が出て来てもおかしく無い。
それに、きりんが言うに想定よりも早く電子結界が消失した事も気がかりだ。
本来ならばこちらの戦力はこの段階に到達した時点でもっとキツくなる筈だった。
これはアミカ達の記憶ときりんから得た情報を元に私がシミュレートをした謡精暴龍の戦力換算から導き出された物で、正確性は相応にあると自負している。
この事から考えるに、謡精暴龍は他の要因で更に弱体化しているのでは無いかという事。
それは本来喜ばしい事の筈なのだが、どうにも引っかかりを覚える。
何か、別の意思によるの意図を感じてしまう。
そう感じずにはいられないのだ。
「フェムト、どうした?」
「私の弾き出したシミュレートの想定を大幅に超えてこちらが戦力を保持出来ているのが気がかりなんです。本来ならば喜ばしい事の筈なのですが」
『ん~……考えすぎじゃない? それに、悠長に話してる暇はもう無いと思うよ。あの召喚陣みたいなの、今もどんどん増え続けてる』
「ここまで来た以上、ボク達に選択肢は残されていない。フェムトの言っている事は気がかりではあるが、目の前の脅威を撃破しない事には始まらないからね。……準備は整った。これよりボク達は死地へと突貫する。二段構えであるとは言え、ここを失敗すれば世界は終わる。総員、己が役目をしっかり果たしてくれ」
この引っ掛かりは気になるが、紫電の言う通り先ずはこの場を切り抜けなければならない。
紫電の言葉と同時に、今まで温存していたGVとエリーゼはチカラを開放。
GVが纏う私達のモノとは違う蒼く透き通るようなオーラが勢いを増し、三つ編みの長いおさげがそれに連動して激しくはためく。
エリーゼは背中の翼から私の扱う雷が迸り、左手に持つ黄金の剣から血液と思わせる赤い液体がコーティングされる。
突撃の準備の整った私達は、今も増え続けている召喚陣を展開している謡精暴龍と呼び出された数多の存在を使役する生命暴龍へと突撃を開始。
それと同時に後方支援火力部隊からの
それに合わせ生き残ったゾンビ能力者達が一斉に動き出し、突撃した私達と衝突する。
手応え的に火力支援と航空支援のあるこちらが優勢だが、生命暴龍によるそれなりの質を伴った数の暴力はマザー戦の時よりも厳しい。
こちらの五感に訴えかける嫌悪感による要素も加わっているのが地味に厄介で、私も正直に言うと少し怖いと感じてしまっている形で気圧されている。
しかし、こんな泣き言など言ってはいられない。
現に私達の仲間が血路を開いてくれているのだから。
「行くよ! シアンちゃん! モルフォ!」
『うん!』
『先ずはアタシ達の歌で!』
あるべき場所へと戻りし謡精
新たに生まれたやさしき謡精
従える少女と共に 三位一体の歌を紡ぐ
ソングオブディーヴァ トリニティ
ミチル達を中心に謡精の歌が広がり、私達全体に限界を超えた
これに合わせ先陣を切ったのは、
「残光よ! 無へと帰す輝きの刃で、我等の道を切り開け!」
集いし残光、輝く刃
終焉を告げる光の煌めき
地平を裂いて無へと還す
イオタの放つ空間を切り裂く一閃がゾンビ能力者達の一部を消滅させ、この一撃で出来た空間に沿いながら私達は突貫する。
その隙間は私達が突撃して直ぐに埋まってしまいそうになるが、この間にブラックホールを収束させていたカレラが私達の前へと躍り出て、そのチカラが開放される。
「往くぞ
極限に収束されし我が磁力
集めて集めてまだ集め
いざ解き放て、極光の光
爆縮開放
針の穴を刺すように私が謡精暴龍へ施したロックオンを頼りに、カレラの放つ極光は道を阻むゾンビ能力者を巻き込みながら突き進み、胴体へと直撃する。
当たり前であるが謡精暴龍は健在、しかしその大きな巨体に風穴を開ける事に成功しており、不死化していなければ明確な致命傷と言えたであろう。
「切り開く。行くぞ、ロロ」
『任せて! アキュラくん!』
『わたしも続くよ!』
「コハク、合わせられるか?」
「任せてよ! お姉ちゃん!」
舞い踊るのは我等双刃
審判せしは千万無量
因果断ち切る白銀の十字架
クロスシュトローム
斬入ること雷霆の如く
迸ること百華の如し
裏八雲が奥義
九十二式・乱れ夜叉砕き
昏き雷光纏いし
共に交わり かの者達を斬滅せしめん
アキュラとロロが前面に居る能力者ゾンビ達をコンビネーション攻撃によってかき乱し、きりんの剣戟による神速の追撃とヒスイさんとコハクのコンビネーション攻撃が敵対者を粉砕する。
「お兄様! 合わせて下さい!」
「委細承知! 任せてくれ、パンテーラ!」
白夜に揺蕩う愛憎模様
咎人は極光を仰ぎ
氷愛の檻に囚われん
パンテーラと義理の兄であるテンジアンによる合体SPスキルがゾンビ能力者達を氷獄と幻影で隔離し、惑わし、私達に勝利への道を切り開く。
「テセオさん
「こう言うノリ、キッツいなぁ……」
識閾越境 比良坂直行
なす術絶無の屠龍劇場
此れは怠惰の絶命Channel
レイジーノイジーフォートレス
数多のゾンビ能力者達が電脳で作られた迷宮へと隔離され、封殺される。
それ以外にも、多くの仲間達が持てるチカラを振り絞り、謡精暴龍への道を切り開く。
「始めるぜ……!」
疾走を始めた獣の本能
その身貫く無数の鋼刃
痛みを越えて至る楽土
アイアンメイデン
「藻屑と消えな!」
水面が映す我が写し身
全を飲み込む大いなる潮流
地上の穢れを清め流す
アクアアバタール
「終焉の時間……」
果てなく伸びる金色の髪
艶やかなる乙女の命
天をも貫く塔となれ
エンタングルブロンド
「時間だ。最終工程に入る」
糸が紡ぎし機人の演舞
絡み手繰るは死の運命
この戦場こそ我が厨房
ビートアップアントルメ
「
心躍らす煌めきのプリズム
聳え立つよう並ぶプリズマ
逃れ得ないインプリズン
プリズムプリズマプリズン
「お見せしよう……大輪の花を!」
眩き爆炎が咲く絵画を
輝く大火が飾る世界を
賞し賛えて狂喜せよ
カーニバルデプスチャージ
「終わりにしよう……」
運命が紡ぐ一筋の糸
我等はその手に結びて辿り
鮮血の彼方は手操りて待つ
レッドラインデッドレイヴ
「これぞワシの道ィ!」
転遷が生む螺旋の流線
降誕双つ混沌の回転
仁義の許より向かうは極道
「皆に届け……!」
我が往くは天下の花道
汝に贈るは死出の旅路
群衆の鬨よ舞台を満たせ
ラストナンバー;ファナティクス
「スキルスタンバイ……」
悲劇の終わりの始まりに
深更の幕が下ろされて
全ては闇に染められる
「取って置きや……!」
夢破れた秩序なき墓
鋼の遺物たちが目を覚まし
踏み入るものを包み砕く
グラヴィトンスクラバイター
「しょうがねぇ、ここは腹を括るか。えころ! 合わせろ!」
「はい! ニコラ様!」
「見せてやるよ。
胸が高まる領域にて
その眼から逃れられる存在無し
昇天へと導く極限の早撃ち
ドキドキフィールド・
「アミカ! 一緒にツーリングと洒落込もうぜ!」
『うん! わたしも一緒に行く!』
狂騒の宴 翠の
その手に抗う術はなく
迫る数多の死線に ただ祈れ
デスプロセッション
後先考えないチカラの開放のSPスキルによる殲滅によって謡精暴龍による召喚速度よりも一時的に上回る事で、私達は遂に攻撃する為に必要な射程圏内へと突入する事に成功する。
それに対して油断してしまったのがいけなかったのか、GVの近くへと一体のゾンビ能力者の接近を許してしまう。
その姿は他のゾンビ能力者と違い鎧を纏っておらず、完全な生身。
それもそうだろう。
彼はGVがゾンビと化した存在だったのだから。
そんなゾンビGVが穢れた
「ここまで来て、んな事させる訳ねェだろうが! 燃え上がれ! 俺の脚ィィィィィィ!!!!」
「デイトナ!」
「オレに構うんじゃねぇGV! そのまま行けぇ!!!」
揺らめくは太陽宿りし聖剣
紅炎の暴虐よ 敵を貫け
プロミネンスキャリバー
デイトナがGVに対抗する為に編み出したSPスキル「プロミネンスキャリバー」が、奇しくも別世界で生命暴龍の犠牲となったゾンビGVへと炸裂。
太陽のチカラを秘めた脚撃によって、彼は燃え尽き浄化された。
……燃え尽きるその瞬間、彼の表情が安らかであったのは気のせいで無かったと思いたい。
これで残す障害は生命暴龍のみ。
生命輪廻のチカラをねじ曲がった状態で極限まで成長した生命暴龍を撃破する事はまず不可能と言っても良い。
例外は同じチカラを持ち、ここに居る生命暴龍とは異なる成長を遂げる事が出来たエリーゼのみだ。
故にエリーゼは生命暴龍に対し、同時に謡精暴龍を巻き込む形で左手に持つ黄金の剣を用いたSPスキルを発動させる。
それは生命に終焉を齎すメドゥーサの首の左側から流れる血のチカラ。
絶望に沈む生命暴龍への、せめてもの手向けの
「わたしの持てるチカラの全部をこの剣に! フェムトくん!」
「ええ! これで終わらせましょう!」
蛇神の血が命を奪う
黄金の剣に絶命のチカラを宿し
さあ、今こそ安らかな死を与えん
レフトブラッドクリューサオール
絶命を齎す血を纏う黄金の剣のグリップを私とエリーゼは一緒に固く握り、ありったけの
その突撃によって生命暴龍の身体を貫通し、謡精暴龍へと剣を突き立てる事で不死化を解除する事に成功。
私はこの一撃による反動でそのまま気絶してしまったエリーゼを抱え離脱すると同時に、生命暴龍へと視線を向ける。
視線の先には砂となって消えようとしている生命暴龍の姿があった。
……どのような経緯で彼女がそうなってしまったのかは憶測や想像をする事しか出来ない。
しかし何にせよ、これで彼女は開放された事だろう。
だって、暴龍の姿となっても分かる位、私に向ける視線は安らぎに満ちていたのだから。
――生命暴龍の消滅を確認した後、私は再び謡精暴龍へと視線を向ける。
不死化を解除された謡精暴龍はボロボロであった身体の痛みを思い出したのか、狂ったように暴れまわっていた。
そんな謡精暴龍へとトドメの一撃を放たんと真にチカラを開放した聖剣を携えたGVが、先と同じように事前に私のEPを受け取っていた紫電が、そんな二人に
この戦いに終わりを告げる一撃を叩き込む為に。
「
「掌握せよ!
「迸れ!
那由他の星の海宙より
選び手繰りて実と成す
昏き幻想のアルカディア
天体の如く揺蕩え 数多の雷
我等に至る全てを打ち払い
我が盟友に勝利を捧げん
ライトニングボルテックス
掲げし威信が集うは切先
夜天を拓く雷刃極点
齎す栄光 聖剣を越えて
グロリアスストライザー
真なる聖剣はGVによって極限までチカラを引き出された事で剣身から凄まじい蒼き光の柱と呼べる物が形成され、唐竹割りの要領で振り下ろされる。
それに合わせ、私のありったけのEPを再び譲渡された紫電の無数の紫色の雷球が謡精暴龍の周囲に出現し、謡精暴龍にダメージを与えつつ動きを封じる。
光の柱は謡精暴龍を飲み込み、その身を光の柱による電熱で焼かれもだえ苦しむ。
更にダメ押しとばかりにGVは振り下ろした聖剣を腰だめに構え、直接聖剣をその額に突き立て、ありったけのチカラを直接注ぎ込んだ。
「オォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!」
GVの咆哮と共に注ぎ込まれるEPエネルギー。
それはこの空間内の龍放射を全て浄化しつつ、同時に謡精暴龍へのトドメの決定打となった。
「ハァッ、ハァッ……これで、どうだ?」
チカラを注ぎつくしたGVは真なる聖剣を消失させ、ゆっくりと後方に下がりながら片膝を地面につける。
流石のGVも、ここまでチカラを出し尽くした為、膝を付いてなおフラフラの状態だ。
紫電はこれまでの陣頭指揮の疲れも重なってしまったのか、意識を失い倒れてしまっている。
メビウスも赤子である為か、浮遊するチカラも残っていないらしく、紫電の倒れている近くの地面に転がってしまっていた。
そして、戦いが終わったのを察したのか、謡精の姿から元に戻ったシアンがGVの元へと駆け寄る姿を私の眼が捉える。
それを切欠に周りを見渡してみれば、他の皆もほぼ例外無く動けない状態になってしまう程にチカラを使い尽くしており、中には完全に大の字になって倒れこんでしまっている者もちらほらといた。
謡精暴龍もそうだが、ゾンビ能力者達も数が多く一体一体が相応に手強かったのだからこうなってしまうのも無理はない。
そして、私自身も例外では無い。
EPはほとんど空で、今も気絶しているエリーゼを男としての見栄による空元気で何とか支えているだけの状態。
もしこれ以上何かあれば、まともに戦えるのは今でも余力を残せているアキュラとロロ位だと思われるが、そんな彼らも倒れてしまっているミチルを介抱している様子から、即座に戦線への復帰は難しい。
とは言え、謡精暴龍がチカラ尽きたのは間違いない。
その巨体の重みの勢いで大きく地面を揺らしながら横たえたのを確認した私は心から安堵し、エリーゼを抱えたままその場で座り込む。
それと同時に、私の意識が急速に閉じようとしている。
私自身、慣れないチカラを使い過ぎたのが原因なのだろう。
そう思いながら意識が閉じようとしている間、現界していたリトルが私に対して意味深な言葉を告げる。
『……
「リトル?」
『フェムトと私のこれまでの経験と、決めていた方向性……
「まさか、このタイミングで?」
『ん』
目蓋が酷く重く感じる。
リトルが告げている事実は極めて重要な事であると言うのに……
『大丈夫。ここからは私が頑張る。フェムトはエリーゼと一緒に休んでて』
「リトル……」
『私ね、とっても嬉しいの。フェムトが示してくれたチカラの方向性は、私に新しい可能性を与えてくれたから』
そう言いながら、リトルはエリーゼを抱えたままの私を寝かしつけ、膝を頭に乗せて優しくその小さな手で私の頬を撫でた。
私の顔に、聖母と見間違える程に綺麗な微笑みを向けながら。
私はその心地よさとこれまでの疲れに身を任せ、瞼を閉じた。
次に目覚める時は、どの様な可能性を持ったリトルが新生するのかを想像しながら。
サイドストーリー |
|---|
チカラを使い果たしたボクの傍に、元の姿に戻ったシアンが駆け寄る。
ボクと同じくチカラを使い果たしたのが理由なのか彼女もフラフラで、今にも倒れてしまいそうで危なっかしい。
案の定、少し出っ張った足元の地形に引っかかって倒れそうになってしまう。
でも既にボクの近くまで来ていた為、直ぐに駆け寄り倒れる前に抱き支える事に成功する。
「あぅ……ゴメンねGV」
「大丈夫だよ。この位、何とも無いさ」
そう言いながらシアンを抱きかかえつつゆっくりと座り込み、チカラ尽きて倒れ伏した謡精暴龍を見据える。
もう戦いは終わっている筈なのだが、何故か倒れ伏した謡精暴龍から目を離せない。
しかしそれ以上に、ボクの両手に収まるシアンの体温が、ボクを安心させてくれる。
……何はともあれ戦いは終わり、今回も無事にシアンを守り通す事が出来た。
そんなボクの気持ちに連動しているのか、蒼き雷霆に宿る意思も嬉しそうだ。
思えば遠い所まで来たものだ。
フェムトの提案を飲み、シアンを守る護衛に着き、こんな異空間で世界を賭けた戦いを繰り広げて……
そんな風に物思いにふけっていたら、ボクの視界に収まっている倒れ伏した謡精暴龍の亡骸から少しだけ蒼き光が漏れている事に気が付く。
その光は徐々に大きさを増し、それと同時に猛烈な嫌な予感がボクの脳裏を駆け巡る。
ボクは辺りを見渡す。
皆チカラを使い果たし身動きが取れず、アキュラもミチルの介抱に集中している為か謡精暴龍の異変に気が付いていない。
フェムトはエリーゼと共に倒れ伏し、現界していたリトルも姿を消している。
アミカときりん、そして後方支援をしていた人達も含め、B.Bがチカラを使い果たしてしまった為、リトルと同じように現界出来ない為手を借りられない。
仮にあの蒼き光を放つ存在が敵であった場合、アキュラ達は気絶しているミチルを始め、動けない人達を守らなければならない為、まともに動く事を期待するのはやめた方が良いだろう。
故に、自由に動けるのは実質ボク一人。
「GV……?」
「まだ、終わっていないみたいだ」
「そんな……皆もう動けない状態なのに」
「今辛うじて動けるのはボクだけだ。だから、シアンは下がっていて」
「うん。気を付けてね、GV」
本当に、肉体的なダメージが無かったのは不幸中の幸いだった。
枯渇しかけたチカラをかき集め、辛うじて使用出来たチャージングアップを用いて何とか以前の戦い方が出来る位までチカラを取り戻しつつシアンを腕から降ろし、ボクよりも後ろに下がらせる。
ダートリーダーを油断無く構え、今も勢いを増している蒼き光を見据える。
その光は謡精暴龍の亡骸を食いつぶしながら勢いを増しており、それと同時にプレッシャーと呼べる圧力が徐々に強くなっていく。
やがてその蒼き光は謡精暴龍の亡骸を喰い尽くし、異形の人の形へと姿を変える。
『フ……フハハハハハハ! 遂ニ、遂ニ成シ遂ゲタゾ!
「……お前は何者だ?」
『ホウ……随分ト懐カシイ姿デハナイカ、ガンヴォルト。ソシテシアンヨ』
「わたしの事も……!」
「お前はまさか、アキュラが言っていた……!」
『アノオールドエイジノ遺物ヲ知ッテイル……ナルホド、私ノシラヌヤツモ、コノ
「デマーゼル……アシモフの、もう一つの可能性……!」
『始マリハ、オールドエイジノ遺物共ヲデリートシタ時マデ遡ル。ヤツノ持ツ知識カラメビウスノ存在ヲ、可能性世界ノ存在ヲ知ッタ私ハコウ思ッタ、私ノ支配ガ及ンデイナイ世界ハ星ノ数程存在スルト』
「…………」
『故ニ、可能性世界全テヲ掌握シヨウト行動ヲ
言っている事が目茶苦茶なアシモフ……いや、電人デマーゼルか。
もうヤツからはアシモフであった面影は存在していない。
可能性世界全ての掌握だって?
そんな大それた事、させる訳には行かない!
ボクの気持ちに呼応し、枯渇しかけていた筈の蒼き雷霆に再び熱が戻り、身体から蒼き雷が迸る。
「その結果、守る筈だった人達を見殺しにしたのか!?」
『アレハ完全ナルイレギュラーダッタ。可能性世界ヲ掌握スルニハメビウスト謡精ノチカラガ必要不可欠ダッタ。シカシ、結果トシテ私ハ無敵ノチカラヲ得タ。何モ問題ハ無イ』
「問題が無いだって……!? 言っている事が目茶苦茶だ!」
『可能性世界ニ点在スル人々ヲ支配スレバ、犠牲トナッタ者達ノ埋メ合ワセハ容易ニ出来ル』
「お前の考えは危険だ! 仮に全て上手く行ったとしても、容易に守るべき人々を見捨てるその考えには賛同できない!」
『好キニ吠エロ。今更オ前ノ様ナエイジ遅レノセプティマホルダーノ意見ナド、聞クニ値シナイ』
デマーゼルはボクに手を翳し、計り知れない程の雷撃を四方八方から同時に浴びせかける。
一撃。
そう、たった一撃でボクは容易く膝を付いてしまう程に追い込まれてしまった。
「ぐぁっ……!」
『同ジ雷撃能力者トシテノセメテモノ情ケダ。アノ時ト同ジ様ニ、長ク痛ミヲ感ジサセヌママデリートシテヤロウ。
「……!!!」
あの時と、同じ?
そう思った瞬間、蒼き雷霆から映像が送り込まれる。
アキュラも使っていた漆黒の弾丸を用いたアシモフに撃ち抜かれたボクの姿が。
薄れゆく意識の最中、胸から血を流し崩れ逝くシアンの姿が。
あぁ……ダメだ。
こんな結末は許されない。
そう思いながら、再び立ち上がろうとしたその時。
蒼き雷霆から、初めて明確な声が聞こえた。
それと同時にボク自身の体感時間が、デマーゼルがほぼ止まっていると感じてしまう程に加速する。
ボクは改めて考える。
今まで関わり合いになった人達の事を。
紫電の事を。
チームシープスの、フェザーに居る皆の事を。
アキュラの事を。
フェムトの事を。
オウカの事を。
ミチルの事を。
モルフォの事を。
そして、シアンの事を。
ボクは皆を失いたくはない。
例え、ボク自身が犠牲になったとしても!
蒼き雷霆の持つ記憶が、ボクの中に流れ込んで来る。
アシモフを倒し、モニカさんは泣き崩れ、ジーノに呼び止められる。
ボクと一つになったシアンに対して疑心暗鬼となり、追いつめられるボク自身。
オウカの優しさに触れ、能力者と無能力者だって分かり合える事を知った。
飛天の内部で気絶したミチルと出合うボク。
パンテーラに【ミラーピース】と言う形でバラバラにされてしまったシアンの姿。
エデンとの戦いで徐々にチカラを戻していくシアン。
パンテーラとの決戦を制し、蘇生したミチルと対峙するアキュラの姿。
何とか撃退したアキュラを庇う、ミチルの姿。
町で出会った、記憶を失いボクと関わる事が無くなったミチル。
時は流れ……ボク自身の暴龍のチカラでオウカを傷つけてしまった。
それを理由にオウカと別れ、皇神に投降するボク。
きりんと出合い暴走するチカラに封印が施され、その副作用で犬の姿にされてしまった。
龍放射の影響を受けた能力達を次々と助け出し、【治龍局】はどんどん賑やかになっていった。
【
ZEDΩ.と対峙し、雌雄を決した。
きりんがZEDΩ.達とチカラを合わせ、ボクを、メビウスを封じた。
ボクはその身を赤子へと転じ、過去へと跳んだ。
世界で最初の能力、蒼き雷霆として名を遺した。
そして、そして、そして……
記憶が統合されたその瞬間、
そして、無限のチカラと形容すべきモノが溢れてくる。
体感時間が元に戻り、溢れ出るチカラと共にボクの姿形が変化する。
身長は伸び、服装とダートリーダーはそれに合わせて再構成。
そして、そんなボクの横にはチカラを使い果たしていた筈のメビウスの姿。
(
(メビウス!? ……ありがとう。そしてゴメン。またこんなボクに付き合わせてしまって)
(
(違う? それは一体……)
メビウスはそれ以上は何も答えずに、あの時と同じ様にボクと一体化。
それと同時にボクの背中から蒼く輝くモルフォの翼が広がる。
その様子を見ていたデマーゼルは、驚愕していた。
あり得ない存在を目の当たりにしたかのように。
『バカナ……何ダソノ姿ハ!? ソノチカラハ!? メビウスノチカラハ兎モ角、貴様ハ謡精ノチカラヲ取リ込ンデ等居ナイ筈!』
「お前がそれを知る必要は無い!」
「GV……?」
不安そうな声で、シアンはボクに語り掛ける。
それはそうだろう。
今のボクは彼女の目の前であり得ない成長をした上で、服装まで再構成してしまっている。
それに背中からモルフォの翼を出しているのだから、どう考えても普通では無い。
だからこそ、ボクは優しく話しかける。
「シアン……」
「ぁ……」
ボクがシアンに振り向いた瞬間、彼女の顔はほのかに赤くなる。
……シアンのこの反応と、これまでのこの世界の出来事と過去の記憶を統合した今、シアンはボクに惹かれていたのだと、この時ボクは初めて把握した。
だけど、ボクは世界を破滅へと導く事を運命づけられた存在へと戻ってしまった。
もう、ボクはシアンの手を取る事は出来ないだろう。
だけど……
「大丈夫」
それでも……
「シアンはボクが守る。だって、それが……」
覚醒編第四十七話
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇生命暴龍について
本編第三十一話にて示唆したバッドエンドでモザイク込みで名前だけ登場した存在。
大体本編第三十二話で起こった出来事によって暴龍と化したエリーゼその物。
謡精暴龍によって呼び出されたゾンビ能力者達は彼女が使役している存在でもあり、その脅威度は謡精暴龍とタメを張れる程。
〇ゾンビ能力者について
見た目がひび割れた鎧を纏った能力者と言った姿をした生命暴龍の犠牲者達。
世界中の能力者が犠牲となってしまっており、それはGVや紫電も例外では無い。
それらがどんどん出現していた為、急いで謡精暴龍を仕留めなければ戦力差は逆転されていた。
〇ミリオン榴弾砲について
ミリオンイーターで使われている羽虫を着弾点を中心に拡散させる榴弾による火力支援。
純粋な威力の高いブレイジングカノンと違い、こちらは広範囲を腐食させるデバフ的な扱いで運用する。
〇ソングオブディーヴァ トリニティについて
ミチル、シアン、モルフォの三人のチカラを合わせたSPスキル。
広域に
〇雷霆絶爪について
ヒスイのコレダーデュランダルとマザーの【アタックコード:
乱れ舞う雷纏う蛇腹剣と絶爪の組み合わせは大軍をもなぎ倒す。
〇楽園氷獄について
ガンヴォルト鎖環からの逆輸入。
本小説では少女姿のパンテーラがテンジアンと組んで発動させている合体SPスキルである為、鎖環の時とは内容が少し異なる。
幻影と氷を使う点は変わらないが、隔離する方向性が強いと言う特徴を持ち、強い拘束力を発揮するSPスキルとなっている。
〇レイジーノイジーフォートレスについて
これも同じくガンヴォルト鎖環からの逆輸入。
内容も鎖環の時とほぼ同じ内容だが、巻き込んでいる規模が違う感じとなっている。
〇ドキドキフィールド・眼ガンサイトモードについて
名前と効果は【マイティガンヴォルトバースト】から頂いている。
ギャルがんではリソースを消費して一人の女の子を集中的に狙う時なんかで発動するのだが、それを戦闘用にした物がこのSPスキル。
ニコラ本人が封じていた【フェロモンショット】を解禁できる唯一のSPスキルでもある。
〇デスプロセッションについて
ガンヴォルト鎖環のデスプロセッションが超強化したような感じの合体SPスキル。
名前の変化は無いが、若干詠唱に変化がある。
本当は死霊合唱団ネタを拾いたかったんだけどそれが出来るメンツはこの世界に来る頃には全滅していた為ボツとなりました……
〇レフトブラッドクリューサオールについて
メドゥーサの子供であるクリューサオールの持つ黄金の剣に、人の命を奪うメドゥーサの首から流れる左側の血を纏わせた後、突貫する感じのSPスキル。
本来は一人でも使用可能なのだが、生命暴龍の出現に伴い、フェムトもありったけのEPを生命力に変換して注ぎ込むと言う形で参加している為、合体SPスキルと言う感じになっている。
〇ライトニングボルテックスについて
ガンヴォルト鎖環の紫電が蒼き雷霆を開放した時に使ってくるサイコフュージョンとライトニングスフィアを組み合わせたような攻撃方法に名前を付けた感じのSPスキル。
本小説内で使用したクロスヴォルテッカーと同じように、フェムトのEPを借り受けて発動している。
〇フェムトの次の段階について
本編第十二話で示唆されていた物。
条件が整った為、リトルは一時的に眠りに就き、今までの経験とフェムトの示した方向性を元に自身を再構成する段階へと突入する。
GVのソレと名前が一緒だが、方向性が明確に定まっている為、暴走する事は無いと言う設定。
〇デマーゼルについて2
前話での後書きでラスボスラッシュと称していたのに飛ばされていた白き鋼鉄のXに登場するラスボス。
謡精暴龍をこの世界に転移させた元凶でもある為、本小説内では全ての元凶とも称すべき存在でもある。
異物であるアミカを引き剥がしつつ謡精暴龍を食らい尽くした為、青龍GV状態ならばともかく、通常のGVではまるで歯が立たない程に強い。
〇蒼き雷霆の意思について
その正体は無印、爪、鎖環で活躍したガンヴォルト本人。
鎖環のラストバトルにおいて、きりんによって施された強固な封印に身を任せ、巡り巡ってこの世界のGVの能力として生きる事になる。
何気にこの世界の第七波動の多くが意思を持っている原因でもある。
フェムトの存在に希望を見出していたが、今回の話の流れの結果、この世界のGVと記憶の統合を果たし、互いに真に一体化する事で鎖環世界でのラスボス【暴龍の王ガンヴォルト】としてのチカラをこの世界のGVに与えた。
やっと把握する事が出来たシアンの想いと引き換えに。
ここまで来たら絶対にバッドエンドでは終わらせないから安心してくれよな!
〇暴龍の王ガンヴォルトについて
ガンヴォルト鎖環におけるラスボス。
ラスボスラッシュで彼が抜けていたのは「かつて
あらゆる未来を支配しようとするデマーゼルに対し、あらゆる未来を粉砕するGVをぶつけると言うシチュは個人的に凄い好き。書きながらニヤついちゃったの、正直に言うと初めてでした