心地よい微睡の中。
真っ暗闇の空間内に私は居た。
身体は動かず、それでいて意識が朧気で、夢であると言われれば先ずそうだろうと断定する程に良く分からない状況。
そんな中、少し離れた位置から一筋の光が漏れ出し、そこから何やら映像の様な物が映し出される。
そこに映し出されたのは膝を付いているGVの姿。
但し私の知るGVよりも背が高くなっており、背中にモルフォの翼を纏った姿をしている。
その空間内は黄色を基調とした大広間となっており、所々激しい戦闘痕らしきものが多く存在しており、実際に激しい戦闘があった事を物語っている。
そして、この映像にはGV以外にもう二人程の少女達の姿が映し出されていた。
一人は謡精暴龍との決戦前に合流した少女であるきりん。
そしてもう一人は、背中に暴龍
GVは苦しそうに身を屈め、きりんはそんな彼に対して
その瞬間、映像が切り替わった。
そこはGVとメビウスだけが存在する精神世界と呼ぶべき空間。
二人はそんな摩訶不思議な場所で、会話を交わしていた。
『……? これは……!?
『
『そうか……キミがボクに視せた破滅の運命は、もうそんな間近にまで迫っていたのか。……キミはただ、この世界を守りたかっただけなんだね。無限の星読みと共にボクが命を絶てば、破滅の未来を回避できる。そう考えていたけれど……人に生きる事を訴えて来たボクが、自分の命を諦めるなんて、許されない』
この映像は一体何なのか?
朧気だった意識がいつの間にかこの映像についての考察まで出来る位回復しており、私はそのまま食い入る様に映像を見る。
『それに、もしここで諦めていたら……ボク自身が、きりんに影を落とす事になる。彼女に希望を、世界を繋いでもらう為には……』
『
『延ばして、先送りして、みんなで協力して変えていく……か。メビウスが視せた未来、「今の姿のボク」が引き起こす破滅であるならば……
GVが、世界を破滅させる?
一体、何が原因でそんな事に?
『いつかまた、必ず破滅の未来が訪れる。でも、キミや治龍局の皆なら、きっとより良い答えを見つけられる筈だ。……また、キミに会えるといいな』
GVは目を瞑り、とても苦しそうな表情で沈黙する。
何かしらの迷いを、未練を断ち切っているのだろうか?
『ボクはまだ、そこへ行く訳にはいかない。――チカラを貸してくれ、メビウス! 迸れ!
GVのこの言葉を最後に、映像は先ほどの戦闘痕の激しい空間へと戻る。
彼は青白く光り輝き、きりんはその様子を見て困惑を隠せない。
そして、光の収縮と共にGVの身体も大人から子供、子供から赤子へと姿を変えて……天高く、舞い上がった。
映像はそんなGVを付きっ切りで追いかけ続け、成層圏を越え、周回軌道を越え、宇宙を越え……やがて、深いジャングルの奥地と表現すればよい程の鬱蒼とした森に着陸する。
しばらく月日が流れ、彼はこの世界において最初の第七波動能力者として歴史に名を残す事となった。
そこで映像が一度途切れ、今度はとある研究施設で被験者となっている幼いGVらしき姿が映し出される。
非道な人体実験が繰り返され、彼は日に日に疲弊していく。
……この研究施設には、身に覚えがあった。
ここは私も居た研究施設。
つまり、皇神の持つ研究施設だ。
但し、まだ非道な実験をしていた頃の。
『うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
幼いGVの悲鳴が木霊する。
この映像にも見覚えがあった。
この実験は初めて私がGVを目撃した時に行われた時の物だ。
しかし、この映像には
たまたま死角になって映っていないのか、或いは……
そんな風に考えている内に、映像は彼がアシモフに救出される場面を映し出す。
そして、アシモフから彼は『ガンヴォルト』と名付けられ、やがて彼の所属するフェザーでも有数の能力者として蒼き雷霆の名を轟かせる事となる。
その後、GVはシアンとの運命の出会いを果たし、フェザーを脱退する。
しかしやはりと言うべきか、シアンを連れてその場から立ち去る場面では私の姿は無かったし、エリーゼの暴走を引き起こした大爆発は起こらなかった。
それから約半年の月日が流れ、そこからGVは傭兵稼業を本格化させる。
その先の光景は、私から見れば辛い物だった。
今ではすっかり打ち解けて軽口すら叩けるようになっていたデイトナ達との、壮絶な殺し合いの映像が映し出されたからだ。
イオタが、カレラが、メラクが、デイトナが、ストラトスさんが……エリーゼが、次々と倒されていく光景は本当に心に来た。
その合間の出来事でパンテーラと戦うのかと思ったら彼女は倒され、アキュラとの戦闘になった時は驚いた。
その時のアキュラは以前紫電の語っていた通りの人物像で、正しく復讐に燃える、こちらの聞く耳を持たない存在であった。
これほどの鮮烈な印象を持ったアキュラが、私の知る今のアキュラに落ち着くと言うのが、正直な話になるがとても想像が出来ない。
そうして暫くの月日が経ち、シアンはエリーゼの蘇生によって復活したメラクに連れ攫われ、GVはチームシープスと合流し、救出を決断。
そのまま起動エレベーター【アメノサカホコ】へと乗り込み、復活したメラク達を撃破し、アキュラを撃退し、遂に紫電を手にかけてしまう。
その後、GVはシアンを救出した後に脱出しようとした際に合流したアシモフの誘いを断り……GVとシアンは彼が持っていたアキュラの銃によって撃たれてしまう。
GVは瀕死の重傷で、シアンは即死。
この時、モルフォと意識を統合した電脳体となったシアンがGVと一つになる事で瀕死だった彼を蘇生する。
その姿はあの時の、デイトナ、イオタ、メラクの三人で一度GVを追いつめた時に見せたオーラを纏った物だった。
アシモフを追う道中で遭遇したカレラを撃破し、シアンを殺されて復讐鬼と化したGVによってアシモフは倒され、彼はそのまま仲間の静止を聞く事も無く立ち去ってしまう。
この映像と共に映し出される画面にヒビが出現し、亀裂が発生した。
……この亀裂やヒビも、何か意味があるのだろうか?
私は映像にヒビが入ったタイミングを頭の片隅に入れ、映し出される映像に集中する。
画面は切り替わり、今度は街外れにある裏通りでGVがオウカを救出している場面を映し出す。
この時のGVはパッと見ただけでも分かる程に心身共に限界に達していたが、この時助けたオウカの献身によって何とか立ち直る事が出来た様だ。
しかし、立ち直っている合間にオウカと似たような経緯で助けた海外のフェザーに所属していたとされる青髪の少年【シャオ】から、新たな戦いを告げるミッションが齎された。
その過程で私達が移動拠点として使っていた飛天へと潜入し、そこで彼は気絶しているミチルを発見し、保護する。
そこまでは良かったのだが、この後色々あってシアンのチカラがパンテーラの手によってミラーピースと言う形でエデンの手に渡ってしまう。
それを何とかする為にGVは各地に潜んでいるエデンの構成員達を撃破し、シアンのチカラを取り戻していく。
その過程でエデンの拠点であるベラデンの存在を突き止め、乗り込んだ。
拠点である以上戦いは激しさを増し、GVは傷つきながらも突き進む。
そして、遂に最後のミラーピースを集めきり、後はパンテーラを撃破するだけの状況となった。
だが、ミチルが本来の電子の謡精の持ち主である事を利用してGVからシアンを引き剥がし、彼女を
窮地に追い込まれるGVだったが、GVの中にも歌はある事をシアンが語り掛け、それに応える形でGVが歌を歌う事で窮地を脱出し、最終的にパンテーラを撃破。
戦いは終わり、シアンは消え、残されたのは冷たい体となったミチルのみ。
そんな状況下で遅れてやってきたアキュラは、この状況を見てGVに八つ当たりと言う名の戦いを仕掛けた。
この戦いも当然GVが勝利するが、アキュラの撃破に呼応したミチルが彼を歌のチカラで蘇生、パワーアップさせる。
『感じるぞ。……これは、ミチルの力。オレに味方してくれている。……ミチルはオレに貴様を倒せと言っている!』
『そんな……バカなことが……』
『現に謡精はオレに歌いかけている! 貴様は独り寂しく、ハミングでも口ずさんでいるんだな!』
私から見てもあまりにも酷すぎる言葉を投げかけられたGV。
それでも何とかアキュラを撃破し、彼に歩み寄ろうと近づくが、それをミチルが阻む。
そんな彼女にGVは語り掛けるが、彼女は徐々に言葉を詰まらせる。
そして、GVは彼女の言葉から記憶を失っている事を、そしてシアンは彼女と一つになった事を察し、アキュラに彼女を託してその場を後にした。
この映像が終わる瞬間、またしても亀裂が生じ、ビビが大きくなった。
その後、オウカと出かけていた私服姿のGVは街中でミチルと再会する。
彼女はGVの事をどこかで会った事があるのではと語り掛けるが、GVは気のせいだよと言い、彼女と別れた。
その後、オウカとの少しだけの穏やかな時間と、激化する戦いの時間を行ったり来たりする映像が映し出される。
ミチルが魔法少女の姿になっていたり、GVがこの時代に合わない侍の男と共闘したりする事もあった。
そして、そんな戦いが終わる度にヒビが入る事に朧気ながらに分かって来たタイミングで、それは起こった。
GVから荒れ狂うチカラが溢れ出し、それがオウカを傷つけてしまったのだ。
そして、この映像と共に画面は完全に砕けちり、何も映し出さなくなった細かい破片らしき物が私の足元に残った。
これで終わりなのかと思ったその矢先、またしても映像が出現する。
その場面は、
きりんがチカラをありったけ込めた札を投げつけ、同じようにGVとメビウスの会話が起こり、同じようにGVは赤子の姿となって飛び去り、同じようにジャングルの森の中へと着陸し、同じように最初の第七波動能力者として名を轟かせ……
暴走したチカラでオウカを傷つけてしまったタイミングで、再び画面は砕け散る。
キラキラと落ちて行くその破片は、先に砕けていた破片と合流し、蓄積された。
そして再び映像が出現し、やっぱりきりんがチカラを込めたお札を投げる所から始まり……
これが、何度も何度も繰り返された。
(……繰り返される映像は一見同じ内容に見える。でも、少しづつだけどGVのチカラが増しているように感じる。……それだけじゃない。動きも映像が繰り返された回数分良くなっているし、ミッション内容も良くなっているように見える。これはきっと気のせいじゃない)
映像が繰り返される度にチカラを増し、動きを洗練させている事から、私はある仮定を導き出した。
未来から過去へ。
過去から未来へ。
何度も何度も、同じように。
そうで無ければ、この映像の説明は出来ない。
この事実に気が付いた私は、非常に強い憤りを感じた。
(……酷い。酷過ぎる。生き続ければ世界を滅ぼしてしまう。かと言って死ぬ事も許されない。輪廻転生だなんて言えば聞こえは良いのかもしれない。でも、こんなの、あんまりだ。これじゃあGVは何時まで経っても進む事も、終わる事も出来ない。こんなの、生き地獄その物じゃないか!)
そうして憤っている私の事等お構いなく映像は続き、砕け、破片は私の足元へと蓄積していく。
しかし遂に、何度も何度も続いたそれに変化が現れた。
それはGVが世界で最初の第七波動能力者として名前を轟かせた後の事。
これまで通りならこの後の映像は幼いGVが映る筈だった。
だけど、映っていたのはニコラと私の知らない男の姿。
『本当にあった……』
『やったな神園博士!』
『あぁ! 遂に探し出すことが出来た。
『へっ! コッソリ忍び込んで
『全くお前と言う奴は……まあいい。後は適合者を見つけ出すだけだ。寧ろここからが本番と言ってもいいだろう。気を抜くなよ、ニコラ』
『わ~ってるよ』
しかし、そんな二人の想いとは裏腹に、神園博士は研究施設の崩壊に巻き込まれて死亡。
ニコラは持ち前のSPスキルで生き残り、保管されていた宝玉因子を守り通した。
その後、ニコラは私も知る研究施設へと配属されるが、こっそり裏で進めていた宝玉因子の適合者は現れず、一人、また一人適合できずに終わってしまう。
そして、ニコラは遂に禁忌とされるデザイナーチャイルドと呼ばれるクローン人間を用いる決断を下す。
彼は
この少年はニコラの遺伝子を元に作成された存在だ。
しかしだからと言って適合するかしないかは別問題で、やはりと言うべきか、デザイナーチャイルドであったこの少年も拒絶反応が起こる。
しかも今回は今までの適合実験とは違って拒絶反応が激しかった為、彼は生まれて間もなく命を落とそうとしていた。
そんな時だった。
そんなニコラの元に、天使の少女が姿を現したのは。
『えころか!』
『どうしたんですかホ……ニコラ様? この少年は……』
『例の移植実験だよ! 拒絶反応が酷過ぎてヤベェんだ! お前の天使パワーでこう、何とか出来ねぇか!?』
『わたしのチカラはそんなに万能じゃありませんよ! まあ、出来る限りの事はしてみます!』
えころについては謡精暴龍との決戦前にニコラから軽く紹介されたと言った感じだ。
二人の間柄を横から見た限り、それなりに長い付き合いがある事は何となく想像は付いていた。
えころは自身のチカラは万能じゃない等と言ってはいたが、それでも少年の拒絶反応を抑える事に成功している。
しかし逆に言うと、抑える事しか出来ていないという事でもある。
『うぅ……抑えるので精一杯です……!』
『どうすればいい……どうすれば……! えころ。お前の羽、少し借りるぞ!』
『え? いきなり何を言って……? ひゃん! ビックリしたじゃないですか! ニコラ様、わたしの羽なんて何に使うつもりなんですか!?』
『お前のチカラで抑えられてるんだ。コレを因子としてコイツに移植すれば……!』
そうして日を跨いだ大手術が終わり、少年は生き残った。
但し、その過程で少年は姿形を変化させていた。
GVと同じ様な長い金髪と、幼女と間違えられてもおかしくない姿へと。
そう、彼は、私だった。
幼い頃の、私だったのだ。
その後の映像は私の知る物と共通していた。
ニコラとの生活。
施設の崩壊と彼との別れ。
紫電との出会い。
皇神での仕事の日々。
そして……
『いいかい? 良く聞くんだ。君の名前は
この映像と共に、今までの過程で足元に蓄積されていた映像の破片が光り輝き、人の形を形成する。
それは今映し出されている映像を巻き込んで更に輝きを増し、その姿は徐々に私の背丈に近くなり、やがて光は収まった。
そこに居たのは、私の知るリトルの姿。
「フェムト。終わったよ」
「終わった?」
「ん。私は無事に
「でも?」
「名前がまだ決まってない。だから新しく付けて欲しい。私の新しい名前を」
「それはいいけど、その前に確認したい事があるんだ。リトル、今の映像は一体?」
「あれは私の奥底に眠っていた
「…………」
「きっとこの破片達はきりんの意思の残滓があったんだと思う。GVを助けたい。何とかしたいって想いの残滓が」
「だから青き交流には龍放射を浄化するチカラが、蒼き雷霆との共鳴によるGVを安定させるチカラがあったんですね。GVと共に歩み、少しずつ自身を変化させ、チカラを身に付けると言う過程を経る事で……」
「ん。つまり私達は、GVを助ける為に存在していた。それが間接的に世界を救う事にも繋がるから」
そうして疑問を晴らした所で、改めてリトルの名前を考える。
リトルの元となった存在はきりんのチカラの残滓がループを経て集積した物。
…………
決めた。
長き時間共にあり続けた事で、きりんのチカラは蒼き雷霆に染まった。
私の扱っていた雷撃がGVと同じEPエネルギーなのはその為だ。
そして、きりんの名は恐らく中国神話に現れる伝説上の動物【麒麟】から取られた名前。
麒麟は時に
その名は【黄竜】。
【青龍】【朱雀】【白虎】【玄武】の四神の中心的存在、または、四神の長とも呼ばれる。
「麒麟のチカラが長い長い輪廻の元に蓄積し、蒼きチカラに染まり、生まれ変わった。……【
「蒼き黄龍……ん。分かった。今日からわたしは蒼き黄龍。改めてよろしくね。フェムト」
蒼き黄龍改めリトルは自身の名前が定まったと自覚した瞬間に光り輝き、その姿を変化。
背丈に変化は無いが、髪がターコイズブルーの髪の色の先が少しだけ赤く染まっており、服装と胸元と腰回り等があの映像に映し出されていた踊り子に近い感じに変化。
以前の天使の衣装と踊り子の衣装が合わさった感じとなっており、露出度は控えめながらも何処か妖艶な雰囲気を醸し出している。
羽と輪っかは消失したかと思いきや、任意に出し入れ出来る様になったらしく、私の前で出したり引っ込めたりしてリトルが確認している。
そうしている内に、私達の居る空間に光が溢れ出し……気が付いたら、元居た場所に居た。
(戻って来れた。……エリーゼは横に居る。他の皆は……! このチカラの波動は!)
あの映像でも感じていた波動に気が付き、そちらへと振り向いてみれば、飛び込んで来たのは暴走していると思われるGVの姿と、彼を押しとどめようとしているアキュラ達の姿。
今は何とかギリギリで抑え込めているが、突破されるのは時間の問題と言えた。
何しろ今のアキュラ達はTASによる支援が無い状態である以上、あの謡精暴龍以上にチカラを開放しているGVを止めるのは無理に近い。
他の皆もエリーゼと一緒に気絶している人達も多く、早く立て直しを図る必要があるだろう。
とは言え、私は覚醒を果たす事に成功したが、今は先の戦いで一度EPエネルギーを使い切っている。
どうした物かと思ったが、よく見たら皆の傍にはリトルマンティスの姿があった。
これまでの戦いのデータの蓄積を反映され、従来の物よりもさらに小型化され、洗練された新型の姿になっている事から、技術者達の苦労が偲ばれる。
恐らくだが、私に届けると言う名目で今もアキュラと一緒に戦っているアシモフが足として利用したのだろう。
早速私はエリーゼを抱きかかえる形でリトルマンティスへと乗り込もうとする。
その道すがら、麒麟デバイスも転がっていたので拾い上げつつコックピットカバーを開け、エリーゼを副座席に座らせて私も乗り込む。
メインシステムを起動させ、現在のコンディションを把握する為に開いたデータを見る限り武装は無い真っ新な状態だが、コイツの持つ発電機能を持ったエンジンからEPエネルギーの生成を開始。
しかし、これまでよりも明らかに生成できるEPエネルギーの多さに私は戸惑いを隠せない。
(フェムト、私のチカラの方向性の話、覚えてる?)
(ええ。色々と考えましたが、主に
(ん。そのお陰で今の私は
リトルの言う「発電機を元に」とは、蒼き雷霆の様に無からEPを生成する物では無く、何かしらのリソースをEPに変換すると言う物。
蒼き雷霆に比べれば一見すると劣化しているかのように思えるが、強化前の青き交流の頃はそもそもEPを自力で調達出来ず、外部からの電気や龍放射からEPを生成していた事を考えれば十分な進歩と言えるだろう。
それにこのチカラはエリーゼのチカラを取り込んで
思えばあの時それが出来る様になった時点で、このチカラが身に着くのは必然と言えた。
それに、蒼き黄龍になって強化されたのはそれだけでは無い。
(EPの許容量が……計測不能?)
(ん。今の私は無限にEPを溜め込める。だからもう無駄な電力が発生する事は無い)
それはEP許容量、分かりやすく例えるならバッテリーと言った所だろう。
バッテリー等の蓄電池は近未来の今でも完全な物、つまり無制限に電気を溜め込める代物は登場していない。
そう考えれば十分恐ろしい事だと私は思う。
何故ならば、その気になればリトルはこの国の電気を全てその身一つに収めることが出来る様になったからだ。
他にも色々と能力の変化と強化が施されているが、今はそれを把握している暇は無い。
何故ならば、操縦席の画面の向こう側でアキュラ達がGVの暴走のチカラに巻き込まれて、大打撃を負ってしまったからだ。
そして、GVの暴走する雷がシアンに迫ろうとしていた。
私はそれに対して無意識に、咄嗟にEPレーダーを放つ要領でチカラを向ける。
シアンに迫る雷は蒼き光へと
それを確認した私は皆の前に盾になるようにリトルマンティスを立ち塞がらせ、麒麟デバイスを片手にコックピットから出て、変換したEPエネルギーを元に戦闘態勢へと移行する。
最初はどうして私の変身現象の姿が戦巫女のソレに近かったのかが分からなかったが、今ならばそれが良く分かる。
リトルのチカラの大本が、元々はきりんのチカラだったからだ。
故に、私の今の衣装がきりんの戦巫女の装束が蒼色に染まった物に変化したのは必然と言えた。
私が変身現象を終えると同時に、私の鉄扇とリトルの鉄扇が開いた状態で独りでに動き出し、私の周辺をX字に動きながら防御結界らしき物が展開。
後ろを振り向いてみれば、踊り子成分の混ざった新衣装を身に付けたリトルが
私は改めてGVの方へと顔を向ける。
背中に虹色に輝くモルフォの翼を背負い、あの映像の時と同じ衣装と背丈へと変化していた彼は、暴走するチカラに苦しんでいた。
この規模の暴走はあの映像の時よりもずっと酷い。
つまり今の私でも
当たり前の話だ。
何しろ蒼き雷霆は数多のループによって鍛え上げられた第七波動。
こちらも同じようにループを共にしているとは言え、そもそもチカラの規模がまるで違う。
でもだからと言って、諦めるつもり何てこれっぽっちも無い。
GVのあんな生き地獄を知ってしまった以上、そんな選択肢はこの場に立った時点で捨てている。
「フェ……フェムト……」
「GV。貴方はずっと、戦い続けていたんですね。昔も、今も、未来も……何度も何度も、繰り返して」
「フェムト? キミは、何を言って……」
「私の持つチカラが教えてくれたんです。GVは、記憶を失いながらも過去から未来へ、未来から過去へとループしていた事を」
「…………そう、か。なら、話は早い。フェムト、キミならこの雷の嵐を抜けて、ボクと接触が出来る筈。だから……」
「……覚えてますか? 貴方が初めてシアンに会った時の事を」
「……? 忘れた事何て、ないさ。それがボクの、本当の始まりだったんだから」
「貴方はシアンにこう言った。『簡単に命を投げ出すな! キミが自由を望むのならボクが
「…………」
「その上で聞きます。
荒れ狂う雷の嵐を調律しつつEPを溜め込みながら、彼の答えを待つ。
雷の嵐か吹き荒ぶ環境音をバックに沈黙は長く、GVは暴走するチカラでは無い別の理由で苦渋の表情を滲ませている。
そして、GVが口を開く。
「……ダメだ。ボクのその願いは、フェムトに、皆に、シアンに迷惑を掛けてしまう。とても、口には出来ない」
「……昔、ニコラから聞かされた話があるんです。『人は生まれた瞬間から迷惑を掛けている。赤子の出産の時点で母親に命をかける事を要求しているし、生まれた後も泣いたり喚いたりと散々だ。故に、人は生涯に渡って誰かに迷惑を掛ける事を宿命づけられている。……だから、困った事があったら素直に周りを頼る事だ。助けを求める事だ。そして、周りの誰かが困っていたら手を差し伸べろ。それが人の営みなんだ』って」
「……でも、ボクのチカラは、もう、人としての物じゃ……」
「何言ってやがるGV」
ニコラが話に割り込んだ。
持っていた鉄扇は半ば解け落ちてしまっているが、その瞳の意志の強さから察するに、私と同じように今のGVを見捨てるつもりは毛頭ない事が良く分かる。
「お前は
「ニコラ……」
「まあ確かに今のGVの迷惑を掛ける範囲の広さは相当だけど、それでも今のボクの方がまだ迷惑を掛ける範囲は広いと思うよ? こんなボクでも、今や副社長だ。……これからも皆には迷惑を掛け続けるだろう。でも、ボクはそんな皆に可能な限り手を伸ばし続ける。勿論、それはキミも当てはまる」
「紫電……」
「GV。思えば、何時の間にかお前から誰かに助けを求める事は無くなってしまっていたな。……私はお前の
「アシモフ……」
「手を伸ばせGV。誰かに見返りを求めるのは決して間違いでは無い。無償の施しなど、却って毒なだけだ」
『そうそう、GVってば変な所で遠慮するよねぇ。もっと素直に手を貸してもらってもいいとボクは思うな』
「アキュラ、ロロ……」
「GV……」
「シアン……」
「わたしはGVに助けを求めた。そしてGVは、わたしの手を掴んでくれた。だから、今度は……今度はわたしが、GVに手を伸ばすの! だからGVも手を伸ばして! あの時のわたしみたいに、助けを求めて欲しいの!」
「だけど、それは……」
GVが手を伸ばす事を拒む気持ちは良く分かる。
人を助けると言うのは、ある種の加害性を有している。
それは暗に『お前は私の助けが無ければ生きられない』と告げる形で相手のプライドを刺激すると言う側面が存在するからだ。
そして、彼は名実ともに最強の第七波動能力者。
例え本人がそんな事を思わなくても、言葉に出来なくても、本能的な部分で助けを拒んでしまうのは当然の事なのだ。
「どちらにせよGV、私は貴方の選択を待つつもりはありません」
「フェムト……何を、言って……」
「私は貴方を助け出します。それこそ、貴方が口で拒んででも、必ず助け出します」
だからこそ、私はGVが手を伸ばす事を待つつもりは無い。
私が加害者であると言う責任と覚悟を喜んで背負いながら。
そう、あの時のエリーゼと同じように。
「何故ならば……」
不思議と馴染む麒麟デバイスを構え、私はGVを見据える。
TASを経由しこれまで蓄積したEPの一部を治癒のチカラに変換し、この場に居る全員を癒す。
これによって皆は戦線に復帰し、エリーゼも目を覚ましてコックピットから出て来て私の横に並ぶ。
私は横目でエリーゼを見る。
その視線の先には、私と同じく横目でこちらを見ている彼女の姿。
互いに微笑み合い、改めて正面を見据える。
さあ、役者は揃った。
……GVにぶつけるのは、この手に持つ
「貴方に幸せになって欲しいと私が、私達が願っているからです!」
私が、私達がGVにぶつけるのは、ありったけの
「調律せよ! 蒼き黄龍! 生まれ変わったそのチカラで、蒼き雷霆に私達のありったけの想いと言葉を届ける懸け橋となれ!」
STRIK
GVを中心に巻き起こる雷撃の嵐の中を動けるのはそれこそ一握りの存在だけと言ってもよい。
だけどTASが復旧し、次の段階へと移行したリトルの加護を得た事で、この場に居る全員が動ける資格を得た。
しかし、GVを何とかする場合、アキュラ達のやっていた様に外部からのチカラの抑制では逆効果になってしまう。
故に、やるのなら別の方法が必要となる。
そう考えていた時、暴走するGVを中心に雷の嵐の中から人影が姿を現す。
アレは、イマージュパルスだ。
「……成程、超高密度の雷の嵐による力技か」
何時の間にか
どうやらあの人影達は問答無用の力技と様々な偶発的な要素が噛み合って出来た代物らしい。
「アレらはオレ達に任せろ。お前はミチル達と共にGVを頼む。終わり次第オレ達も手伝おう」
「分かりました。……ご武運を」
「さあ行こうシアンちゃん! モルフォ! GVを助けよう!」
『ええ!』
『うん! GVはわたしを助けてくれた! だから今度はわたしの番! 行くよ皆! わたし達の歌が、皆の
あるべき場所へと戻りし謡精
新たに生まれたやさしき謡精
従える少女と共に 三位一体の歌を紡ぐ
ソングオブディーヴァ トリニティ
三人が紡ぎ出すこの歌は私達の時代にモルフォと言う存在を刻み付けた決定的な歌である【蒼の彼方】。
この歌をバックに私達は雷の嵐の中へと突入する。
総てはGVのその手を引っ張り出す為に。
「皆、どうして……どうして、ボクなんかの為に……!」
「テメェが居なくなるとシアンちゃんが悲しむだろうが! んな事位分かってんだろうが!」
「GV、お前は皇神と手を結び、我等と同士となった。それ以上の理由は必要あるまい」
「ヌハハハハハハ! 小生の生涯の目標に相応しいチカラを持つオヌシを放っておく訳にはいかぬで候!」
「電子の謡精の護衛にキミが付いてから、ボクの仕事がかなり楽になったんだ。捨て置く理由は無いね」
「あの時オレが薬物中毒から復帰した時、それを祝ってくれた。理由なんてそれで十分だろう」
「蒼き雷霆の……いや、GV。キミのチカラはこれからも必要になるだろう。だから助けるのはボクのワガママさ。キミが気にする必要は無いよ」
デイトナが、イオタが、カレラが、メラクが、ストラトスが、そして紫電が、イマージュパルスと戦いながらGVに語り掛ける。
これまでのループでは、GVは彼等を殺す事しか出来なかった。
しかし、今は違う。
彼らと話し合い、手を取り、時には助け、時には助けられる間柄となった。
私はGVに向けてSPスキルを放つ。
攻撃する為では無く、
煌めく雷光は
瞬く雷閃は普遍の証
繋ぐ雷撃こそは黄龍の理
フェムトファイバーの組紐
GVのヴォルティックチェーンを参考に放たれたソレは私とGVを繋ぎ、それを導線にする事で私の、皆の言葉に出来ない熱い想いを乗せた
「GV、お前にはまだ輝かしい
《私とアシモフの結婚式に貴方も招待するつもりなんだから、ここで終わるなんて絶対にダメよ!》
「こちとら散々GVに助けられたんだ。偶には俺達がお前を助けたっていいだろう?」
「アシモフ……モニカさん……ジーノ!」
GVの目から温かな涙が零れ落ちる。
それは彼等の言葉だけでは無く、言葉に出来ない彼に対する想いをTASと私の組紐を通じて伝えているからだ。
「お前とこうして話してみて、案外悪く無いとオレは感じた。ミチルが認めるだけの男であると、辛うじて、そう、辛うじて思えるようになった」
『アキュラくんにここまで言わせるなんて相当だよ? だからさ、もっと胸を張っていいんだよ!』
『貴方はわたしを止めてくれた。止めを刺さないでいてくれた。そのお陰でわたしはおじさまに再会できた。だから、わたしはフェムトとエリーゼと同じ位、貴方には感謝しているの! だから生きて! わたしやきりんみたいに死んじゃったり、おじさまみたいに居なくなってはダメよ!』
「アキュラ、ロロ……アミカ……」
「お前はオレなんかと違ってまだまだ若い。人生これからだろう? それに……知ってるか? この国には一夫多妻制が存在する。後は判るな?」
「な……! 全くニコラは、こんな時にそんな事を……!」
「ははははは! だが、これでしみったれた雰囲気は消し飛んだだろう!」
ニコラが変な事を言ったせいでGVは泣き笑いすると言う何とも言えない状態になってしまったが、次に語り掛ける相手を考えれば、それでよかったのかもしれない。
『天下の歌姫であるこのアタシ、電子の謡精モルフォにここまで想われてるんだから、居なくなったらぜったいに許さないんだから!』
「凄く遅くなったけど……わたし、GVの事が好きです。大好きです。シアンちゃんに、オウカさんに負けないくらい、大好きなんです!! だから、だから……!」
『GV……わたし、GVと一緒に生きたい。これからもずっと、ずっと一緒に!』
GVを想う三人の少女の言葉が、想いが、組紐を通じてGVの心にダイレクトに届く。
嘘偽りの無い彼女達の想いを一身に受け、遂に――
「モルフォ……ミチル……シアン……! ボクは、ボクは……! ボクもシアン達と一緒に生きていたい! 皆と一緒にこの世界を生きて行きたい! だから、どうか……!」
「その言葉が、聞きたかった!!!!!」
――GVが、私達に助けを求めた。
……その言葉を出すのは怖かっただろう。
負ける事が許されなかったGVにとって、ありったけの勇気を振り絞る必要があっただろう。
だからこそ、私は、私達は延ばされた手を迷わず取る。
そして、組紐を通じて
これまで培われてきた私の持つ熟練させた技術の、ありったけを。
元々蒼き雷霆は無限の可能性を持った第七波動だと言われている。
だから制御法をGVが知れば何とかなるとあたりを付けていた。
しかし、GVは私達と生きる事を諦め、助けを拒んでいた。
この状態で制御方法を送り込んだ所で、拒絶されて終わってしまうだけだ。
だからこそGVの本音を引き出して心をさらけ出してもらう必要が、私達と共に生きたいと思ってもらう必要があったのだ。
後はもう、蒼き雷霆の可能性とGV本人の意思次第。
だけど、その結果がどうなるのかなんて分かり切っている。
何故ならば……
もう既に雷の嵐は止み、彼の腕の中にはシアンが収まっていたのだから。
CLEAR
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇ループ設定について
ガンヴォルト鎖環からの描写を独自解釈した物。
原作では歌や演出で匂わせている感じなのであしからず。
ただ、鎖環の追加EDのお陰でその辺りのイメージがより鮮明になったのは個人的には朗報でした。
〇宝玉因子がどの様に発生したかについて
リトルの大本である宝玉因子は、鎖環のラストバトルにおいてGVに対してありったけのチカラを込めて形成された封印が、オウカを傷つけて暴走した時に粉砕して出来た残滓が数多のループによって蓄積された事によって偶発的に発生した、正にイレギュラーと呼べる物。
アミカがフェムトの事を
〇
青き交流と蒼き黄龍、ルビは違うけど漢字の読み方は共通して「あおきこうりゅう」。
その能力は一言で言うなら「超凄い発電機とバッテリー」。
あらゆるリソースをEPに、EPを任意のリソースに変換する事が出来るチカラと、EPを無制限に保有するチカラを持つ。
第十二話で発電機と言う方向性を与えられ、今までEP残量がネックになっていた事からこの様なチカラの獲得に至った。
勿論龍放射の調律や蒼き雷霆との共鳴現象等のチカラも残っている。
他にもフェムトが把握していないチカラも存在しているらしいが……
〇リトルの変化について
リトルの核である封印の残滓はきりんのチカラ以外に
これは鎖環ラストでZEDΩ.とルクシアのチカラを借りている為。
ルクシア要素は衣装と身体つきに、ZEDΩ.要素は髪の先端の色に現れている。
ちなみにだが、フェムトの衣装が戦巫女なのもこれと同じ理由で、こちらは蒼き雷霆の影響で衣装の色合いが蒼色よりに変化している。
それと、リトルの口調はレイラの影響を受けている。
〇今回のミッションについて
今回のミッションが「本編」における正真正銘のラストバトル。
その内容はGVの説得。
メタ的には恐ろしい密度の攻撃に対する耐久で、時間経過でイベントが進み、自動的にクリアとなる。
〇蒼の彼方について
拙者、ラストバトルで最初に聞く歌が流れるのが大好き侍。
異議のある者は、拙者が相手いたす。
〇フェムトファイバーの組紐について
蒼き黄龍に覚醒したフェムトのSPスキル。
ヴォルティックチェーンを参考に作成されており、超高密度で限りなく細く形成された組紐で、これを導線に相手に言葉に出来ない想いを伝えることが出来る。
一応攻撃転用も出来るが、そうすると結構スプラッタな事になったりする。
元ネタは東方Projectに登場する架空の繊維。フェムトと主人公の名前を設定した時からやってみたいと思ってたんですよね~