《すまないねぇ…今宝剣を開放できるのも、現場の位置に一番近いのもフェムトだけなんだ》
「確かに私なら諸事情で宝剣の開放許可は常時ある様な物ですし、既に開放済みで現場からは近いですけど」
《今の状況を説明するよ。例の彼、【ガンヴォルト】がモルフォとシアンの乗っている列車の最後尾に乗り移っているを確認したって報告が入ったんだ。今はまだ無人戦車【マンティス】を三機ほど向かわせたから暫くは足止め出来ると思うけど》
「蒼き雷霆が相手では、それが限界ですよね…。一つ言っておきますけど、今私が
《出来る範囲で構わないさ。元々君の第七波動は戦闘にはどうしても不向きだからね。まあ、その欠点を補う為の君専用の戦車なんだけどね。……正直、今彼女達を失うのは不味い。彼は
「皆の宝剣開放許可、間に合いますか?」
《君の頑張り次第さ。…気を付けるんだよ? 君に倒れられると部隊が回らなくなってしまうし、未来も閉ざされてしまう。「まだ行ける」と思ったら、素直に戻るんだ。いいね?》
「……分かったよ、紫電。やれるだけはやってみます」
《ありがとう、フェムト。……それじゃあ、ボクからの緊急ミッション、宜しく頼むよ。この埋め合わせは小切手を用意しておくから。それと、ナビゲートもボクがやるよ。開放許可が降りないと動けないけど、この位なら出来るからね》
「了解だよ、紫電。それじゃあまた連絡するから」
一体どうしてこうなってしまったのか……。
少し時間を巻き戻すが、私は皇神グループのロボット兵器開発部門の人達にお願いして、マンティスの技術をベースに小型簡略化し、機動力と正面装甲に特化して作られた試作型有人戦車【リトルマンティス】の試運転を行っていた。
丁度その頃、フェザーの電子の謡精抹殺ミッションを実行しようとしていたテロリストが、此方の流した偽情報に引っかかり、皇神第一ビルにて尋問を受けていたらしい。
だけど、情報を引き出された上に脱走を許し、そのままシアン達が護送されている列車に乗り込まれ、今に至る。
「……共に行こう、
STRIKE
私は開発部門の人達に即座に今までの稼働データを転送しながら事情を説明し、直ちに現場に向かった。
このリトルマンティスの利点は、小型高機動なお陰で従来のマンティスよりも現場までの道のりや戦闘の場所を選ばない所にある。
つまりこの機体のコンセプトは、対能力者を想定した物だ。
生半可な攻撃は正面装甲で防ぎ、装甲を貫く程の攻撃は機動力で対処。
武装は既存の皇神兵の手持ちの武装から、無人戦車が扱っている高火力装備までの広い範囲で運用することが出来る。
これは無人戦車と共通のウェポンラックに加え、本来マシンガンになっている両腕の部分をマニピュレーターに換装できるようにした事で実現。
その代わり、積み込める武装は少なく、信頼性の高い実弾兵装は余り積み込めず、エネルギー系統の武装がメインで、マンティスから流用した自前の動力源だけでは不足しがちなのが欠点だ。
ただし、その欠点は自前で積み込まれている動力源を青き交流の能力と同調させ、増幅する事、そしてその際に発生した余剰エネルギーを保持するコンデンサを積む事で解消している。
今の武装は両腕に皇神兵が装備している標準的なエネルギー弾を発射する銃と、火炎放射器。
そして両肩に私の能力を利用した試作型の生体電流探知による誘導レーザーを二門搭載している。
そんな状態のリトルマンティスで、私は一刻も早く現場へと急いだ。
そして、もう少しで現場に差し掛かろうとしたその時、モルフォの歌によるソナーを解析した簡易的なレーダーが反応し、アラートが点灯。
即座に進路を変更したと同時に、レールガンらしき物による着弾の音と衝撃が響き渡る。
これは恐らく、ガンヴォルトの仲間であるフェザーのテロリスト達の仕業だろう。
それと同時に、爆発音が二つ発生し、先行していたマンティス二機の反応も消失した。
「紫電! 今フェザーと思われるテロリストからレールガンによる妨害を受けてる! このままじゃ現場に到着する所か返り討ちに合いかねないよ! 先行してたマンティスも二機やられてる!」
《狙撃ポイントは把握しているかい?》
「勿論! データはもう贈ったから、何とか狙撃による妨害を止めて欲しい!」
《分かったよ、フェムト。…………そろそろ狙撃が止むと思う。その隙を突いて早く現場に向かうんだ》
「……狙撃が止んだのを確認! ありがとう、紫電」
こうして私は現場に向かったのだけれど、シアン達の居る車両の近くには、破壊されたマンティスの残骸が転がり、ガンヴォルトに確保されてお姫様抱っこされたシアンの姿があった。
遅かったと思うと同時に、シアンが無事で良かったと言う何とも複雑な気持ちで、私とガンヴォルトは対峙する。
向こうとしても私の存在は予想外だったらしく、シアンを一度降ろし、その背に庇う様に立ちふさがった。
「紫電、現場には到着したけど、シアンは既にガンヴォルトに確保されてる。だけど、危害を加えてはいないみたいだ。それ所か、護ろうとしてる」
《彼はどうやらテロリストらしからぬ相当なお人よしみたいだね。まあ、そのお陰で最悪の事態は回避できたけど》
「ホントだよ。シアンが殺されなくて、本当に良かった。けど、どうしよう? 正直このまま戦闘に入ると、シアンを巻き込みかねないよ」
《確保されてしまった時点で、ボク達の負けだよ。誠に遺憾だけど、このまま逃がすしか無い。不幸中の幸いと言えるけど、
「だけど、シアンが居なきゃ肝心の計画は実行出来ないでしょう?」
《その通りだけど……まあ、これも外に出るいい機会さ。しばしの自由を満喫してもらおう。君だって、彼女に不自由を強いているのを気に病んでいただろう?》
「だけど、それじゃあ紫電が……」
《それに、今回の不手際はあの
「……分かった。ちょっと拍子抜けだったけど、撤退するよ」
私は通信を終えた後、そのままガンヴォルトを改めて正面から観察する。
蒼き雷霆の雷撃にも対応した専用の青い防護服。
金色の長い三つ編みに、あの時の目の曇りなど嘘のように何処までも真っすぐで、綺麗で強い意志が込められた青い瞳。
その様子から、テロリストに言うのは間違っているかもしれないけれど、いい人に拾ってもらったらしい。
そんな彼は私の乗るリトルマンティスに対して警戒しながら、身動きが取れない状態にある様だ。
それが理由なのか、彼は臨戦態勢に入るかのように雷撃を身に纏い、周囲に羽を舞い散らせる。
私はその事に驚き、思わず彼に対して外部音声で思わず話しかけた。
…まあ、周囲には誰も居ないのだから、少しくらいは大丈夫だろう。
『君の雷撃は自分の意志で展開するとそんな風に羽が舞い散るんだね。とても綺麗で驚いたよ』
「……っ! この無人戦車、中に人が居るのか!」
「その声、フェムト?」
「シアン? 知り合いなのか?」
「うん。私に色々と良くしてくれた人なの」
『……私は一応宝剣持ちの能力者だけど、戦闘要員じゃないからね。シアンとの面識もそこそこあるんですよ、ガンヴォルト』
「…………」
『そう警戒しないで下さい……と言うのは私の我儘なんだろうね。個人的には君とは二人きりで話をしたかったけど……』
そうガンヴォルトに話した途端、なにやらシアンの目つきが変化した。
なんだろう、今のシアンの視線はどうにも、冷たい感じがする。
何と言うか…うーん、言葉が出てこない。
ただ、これ以上脱線した話を続けるのは宜しくない雰囲気が放たれているのは確かだ。
一先ず、早く要件を話そう。
『単刀直入に言うけど、私は君を見逃そうと思う』
「……どう言うつもりだ?」
『簡単な事だよ、ガンヴォルト。皇神はあなたを高く評価していてね。Sランク越えを相手じゃあ戦闘要員でもない私ではとても太刀打ち出来ないんだ。それに、戦闘の余波でシアンに何かあってはこちらも困るし。勝負はもう、君がシアンを確保した時点で決しているからね。見逃した方が被害が少ないからそうしてるってだけなんだ。だから今の内に行って欲しい。私は見逃すつもりだけど、後から来る皇神兵達はそうはいかないから』
そうして一通り話をした後、私はハッチを開放し、姿を現す。
そんな私の姿を見て、ガンヴォルトは少し驚いているみたいだ。
まあ、私の見た目と声はどうにも少女じみているから、驚いているのだろう。
身長もシアンと同じくらいだし、向こうから見れば、場違いな少女が出てきたと思っても不思議ではあるまい。
それに、こうしてハッチを開けたのは、シアンを助け出す程のお人よしならば通用すると踏んで彼の良心を信じ、私が無害だとアピールする為だ。
これできっと、彼は信用してくれる筈だ。
……シアンからの視線がますます冷たくなっている気がする。
早く続きを話そう。
「何のつもりだ?」
「何って…無害アピールだよ。見逃すから早く行けって言うね。……正直、こうしているのはちょっと怖いから早く行って欲しい。こっちは戦闘訓練とか最低限しかしてないんだから」
「シアン」
「フェムトの事は、信じても大丈夫。少なくとも、嘘はついてない」
「……分かった。行こうシアン。しっかり掴まってて」
「うん」
そうしてガンヴォルトはシアンを再びお姫様抱っこで抱え、この場を去った。
蒼き雷撃を身に纏いながら、稲光の如く。
CLEAR
…………あぁぁぁぁ~~~~!!!!
正直物凄く怖かった!!
何あれ?
あの時計測したデータすらぶっちぎってる癖に何であんなに出力安定してるの!?
私の可愛い
いやホント、戦闘にならなくて良かったよ。
…だけど、勇気を出して対峙した価値はあったかな。
少なくとも、同じ研究で生まれた同胞が無事なのを確認出来た。
それに……。
「それでいい。…今回は私達の負けだよ。暫くは君にシアンを預ける。後で必ず取り戻すから、ちゃんとしっかり守るんだよ」
今は違うけれど、もしかしたら何時か進んでいる道が一緒になる日が来るのかもしれない。
そう、私は思う事が出来たのだから。
こうして一先ず最低限の任務を達成し、私は紫電に連絡を入れる。
「紫電、聞こえる?」
《聞こえるよ、フェムト。彼はもう行ったかい?》
「うん。ちょっと送り出すのに手間取ったけど、特に被害も無くね。まあ、あくまで私が無傷って意味なだけだけど。マンティスは全滅してるし、死亡も含めた怪我人が多いのも事実だし」
《うん、それは良かった。丁度今開放許可が降りたタイミングだったんだ。でも、もう居ないんじゃあ仕方がないよね?》
「うん、仕方がない」
《それじゃあ任務お疲れ様、フェムト。後はボク達が処理をするから、君は戻って……》
戻ってくれと、紫電が言いかけたその時、今私が居る位置から南で、大規模な爆発が発生。
そんな突然の事態に、僕も紫電も驚きを隠せなかった。
……あの位置、確か
「紫電」
《分かってるよ。……全く、だから彼女の力を無理に研究するのを、僕は反対したんだけどね》
「もう情報は入ってるの?」
《うん。あの位置は君も分かってると思うけど、最近メラクが連れてきた女の人、そう確か……【エリーゼ】だったかな。彼女が連れて行かれた地下施設があるんだ》
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。