「やっぱりですか……」
《まあ不幸中の幸い、さっきの一幕で宝剣の開放許可は下りてるのは継続してるから、今度は僕
「……私も行かなきゃダメなんですか?」
《そうだね。出来れば一緒に急行して欲しい。彼女の持つ力はボクでも厄介だから、キミの
そういう訳で、私はあの爆発のあった現場へと足を運んだ。
そこで待っていた物は、散乱した瓦礫に加え、地下への入り口らしき物から這い出てくるゾンビとしか形容できないナニカであった。
そのナニカを私が発見したと同時に、宝剣を開放した紫電がその場に姿を現す。
その姿は、私から見て左が黒く右が白いアーマーを纏った姿。
彼の正も負も飲み込み、それでも今出来る事の最善を尽くそうとする意志が具現化したような、そんな姿をしていた。
「おまたせ、フェムト」
『待って無いよ。私も丁度ここに来た所なんだ。それよりも……』
「ああ、予想以上に酷い有様だ。ここは一応皇神が管理している倉庫という事になっているから、表向きの被害はそこまででもないけれど」
『ここに居た研究員達の被害は甚大だと思うよ。でも、あの女の人の能力【
「そうだね。……まあ、今は被害を抑える事に専念しよう。数はそこそこ居るみたいだから、フェムトは左側を頼むよ。ボクは右側を殲滅するから」
『了解だよ、紫電』
せめて、研究員達の中にニコラの様な人が一人でもいてくれたら……いや、それは無理な話だ。
だって、私ですらこの能力を知った時、ニコラの事を生き返して貰おうって考えが何度も過ってしまったのだから。
そもそも、今の彼女ではその生き返すと言う効果は本人以外には適応されない。
それ以外の人達は今の所例外なくゾンビと化してしまう。
だからこそ、私はそんな誘惑に抗うことが出来たのだ。
だけど、もし彼女が完璧に能力を使いこなせるようになったのだとしたら……多分、私は抗えないし、紫電も利用しようとするだろう。
そんな風に考えていると、
……今は目の前の戦闘に集中しなければならない。
そもそも
今にして考えれば、相手がゾンビである事に安堵するべきなのかもしれない。
何故ならば、そもそも生きた人間に対してトリガーを引いた事すらないのだから。
それに、生き返った影響で誘導レーザーにおける生体電流誘導が通るので、持ちうる火力を全て発揮出来るのも悪くないし、実戦データも持ち帰れるのも好都合だろうと言う思考で自身の怯える心を奮い立たせ、前を見据える。
そうして、私の本当の初陣、ゾンビ達の掃討が紫電と協力する形で始まった。
STRIK
私は全武装のウェポンロックを解除し、私がモニターに捉えているゾンビ全てをロックオン。
しかる後、前進しながら近くのゾンビを火炎放射で焼き払い、離れた位置に居るゾンビをエネルギー砲で正確に打ち抜く。
それと同時に、まだ残っているゾンビ達に対し、二門の誘導レーザーが火を噴いた。
そのレーザーは想定された従来のスペックを大きく超えた規模で放たれ、狙ったゾンビまでの通り道に居たゾンビも纏めて薙ぎ払われた。
その威力は今得られたデータから、マンティスの装備している
これは恐らく、リトルの力で従来の出力が増幅されたのが理由なのだろう。
そして、この攻撃が決め手となり、私が担当したゾンビの群れは蹴散らされた。
(周囲の敵性反応は無し。よし、予想以上に早く片付ける事が出来た。……心配はしてないけど、紫電の方はどうなって……)
「そっちも終わったみたいだね。こっちも丁度終わった所さ」
『……流石だね、紫電』
こっちは一応完全武装してる筈なのに……
こうして見ると、やはり紫電もガンヴォルトと同様に規格外の能力者だって言うのが良く分かる。
彼の持つ能力は分かりやすく単純であるが、その分応用も効きやすく使い勝手がいい。
それに最近では自身の能力である念動力とも仲が良く、良い関係を築けている事で更に能力の出力が増しており、皇神の上層部は三本目のサブ宝剣をと言う話まで出ているのだ。
正直な話、彼の能力を研究すればもっと出来る事も増えるのではと思うし、物体に干渉出来るって事は、理論上電子なんかにも干渉出来ると思うから突き詰めれば蒼き雷霆みたいに電気を操る事だって出来そうだし……。
まあ、操作に必要な演算能力が人の持つ脳だけでは足りないから現実的では無いのだろう。
ただ、この演算能力に関して言えば後付けする方法が確立しつつある。
そう、私の持つ試作型の宝剣によって。
この試作型の宝剣には名前は無いし、それ所か剣の形ですら無い。
宝剣担当の研究者が言うには、取り合えず第七波動を封印できる器があればそれは宝剣なのだとか。
そう考えると、私達能力者自身も宝剣と捉える事が出来るという事に……?
そんな風に、何処か引っ掛かりを感じつつ紫電との会話は続く。
「これも君のお陰さ。能力が生き物であると発見してくれたお陰で、ボクは更なる高みへと至る事が出来たんだから。それに、
『あぁ、それ分かるよ紫電。うちの子も同じように好奇心旺盛でさ、情報処理の際の余ったリソースでインターネットサーフィンしてて、一仕事終わった後でその事を話しの種にしてくれるんだよね。その様子が何とも一生懸命な雰囲気が伝わってくるから、カワイイんだよね』
「ふふ……。君はすっかり親馬鹿…じゃ無かったね。そう、
『それは紫電もだろう?』
そんな風に話しながら発生源である地下施設の入り口まで向かっていたら、
一人目は何処かおどおどして怯えており、何とも場違いな雰囲気をした女の人。
二人目は自信に満ち溢れており、何処か高圧的で我儘な雰囲気のある女の人。
三人目は理性の欠片等、どこにも感じさせないような狂った蛇の様な表情をした女の人。
そして何より、三人の姿形がまるで三つ子の様に同じなのが異常であった。
そもそも、エリーゼには姉妹なんて居ない筈であり、怯えている女の人だけがエリーゼの筈なのだ。
そして、あの強気の女の人は、メラクの情報にも出てきた別人格の情報と酷似している。
だとすると、生命輪廻の能力による何らかの作用が働き、彼女達はここに居るのだろう。
そんな三人が、宝剣を開放した状態でこちらを捕捉していた。
そして、その三人に対して紫電は降伏勧告を当たり前のように優しく行う。
「やぁ。さっきのゾンビを作ったのは君達だね?」
「え、えっと……」
「キシャシャシャシャ!!」
「エリーゼ1、アンタは引っ込んでそいつを抑えてな。……だとしたら如何するんだい、坊や?」
「出来ればこのまま武装解除してくれると嬉しいんだけど、そんな気配は無いか。……そうだね、力ずくでも止めようかなって思ってる。悪いけどこっちも仕事なんでね。見逃す訳にはいかないのさ」
「は! そんな脅しでアタシは止められやしないさ! アタシ達の生命輪廻の力で、全ての生物をゾンビにしてやる!」
『分かってはいたけど交渉決裂だね、紫電』
「ああ、分かってはいたけどね…。さて、この様子だとやっぱりフェムトの
「……アレ、あんまり使いたくないんだよね」
「まあ、アレを使うその前に、あの三人をギリギリまで追いつめる必要があるから、その過程で降伏してくれる事を祈ろう」
STRIK
その紫電の言葉と共に、エリーゼを名乗る女の人達との戦いが始まり、自然と私が弱気のエリーゼを、そして紫電が強気のエリーゼと狂ったエリーゼを相手にする事となった。
……とは言え、こんな事を思ってはいけないのだと思うけど、正直あまり気が進まない。
能力持ちなのは間違いないし、実際その能力は厄介なのは事実だ。
だけど……。
今回の場合、相性と言うのだろうか?
彼女の攻撃の大半は正面装甲で受けれれるし、そもそも攻撃その物がデイトナやイオタと比べると明らかに甘いので、私でもある程度は避けられる。
いや、彼女が投げたクナイが蛇に変わって襲い掛かって来るのも、腕が鞭になって装甲を傷つけたのも驚いた。
けど、それが致命的かと聞かれると……うん。
それに彼女の攻撃手段は、既にメラクからの情報で把握しているのだ。
つまり、今正に放とうとしている石化光線に対しても…
「えぇ!? どうして効かないんですか!?」
『そりゃあ物理的に光線を遮断してるんだから効くわけないでしょう? まあ、念のため目は瞑りましたけど。センサーを経由するかどうかはまだ不明ですし』
「うぅ……」
『…悪い事は言いません。今すぐ降伏して下さい。貴女の攻撃は私には通用しない。それに……向こうを見れば、その理由も分かると思う』
「え? ……っ!」
気弱なエリーゼの視線の先では、既に紫電に追いつめられていた強気なエリーゼと狂ったエリーゼの姿があった。
それに動揺し、明らかに狼狽する弱気なエリーゼ。
紫電は明らかに余裕を持って二人を追いつめている。
だからこそ蘇生の力を持って何度でも立ち上がっても無駄なのだと弱気なエリーゼには知って欲しかった。
そうして紫電は二人を追いつめ、その動きを念動力を用いて止める。
「ふぅ……思ったよりも手間取ったね。そっちの子は……必要無いみたいだね。じゃあフェムト、お願い出来るかな?」
『正直あまり気は進まないけど……』
そう言いつつ、私はマニピュレータにあった両腕の装備をその場に置き、拘束された彼女達へと近づき、マニピュレータで二人を優しく握る。
その後、彼女達の生体電流に干渉し、一部生命に関する機能を除いた全ての機能を停止させた。
この方法は手足を動かすのに必要な生体電流が必要な部位に届くのを干渉し、停止させる事で実現しており、その気になれば肺や心臓等に送る生体電流も意図的に停止させる事が出来る。
つまりこれは生体電流マッサージや治癒をさらに発展させたような物なのだ。
多分その気になれば生体電流経由で脳に干渉して洗脳なんて事も出来るはず。
まあ、これを試すなんて余程の事が無い限りしたくは無いのだけれど。
ただしこれを使うには他者と直接的、或いは間接的に繋がるように接触する必要がある。
例えば今回の様に、リトルマンティスを経由してこの二人のエリーゼに干渉している。
しかも、リトルマンティスの動力炉から得た電気出力も上乗せする形で。
それがもしこのリトルマンティスが、リモコン操作で直接乗り込む形では無かったら、この様な事は不可能なのだ。
「うんうん、やっぱり役に立ってくれたね、フェムト。この手の再生する相手は無力化して捕獲するのが人道的な意味も含めて正しいやり方だからね」
『そりゃあ確かにそうだけど……私は基本表に出ないから、余り活用は出来ないよ』
「だけど、それを活用させようとこの技術を元に
『私の
「そこが評判のいい理由なんじゃないのかな? 君の能力の場合は解除する際も同じ事をしなきゃいけないし、そして何よりも、
とは言え、アレも完璧かと言われると微妙な所と言わざるを得ない。
先ず、
実際に私もこの弾頭の被験者になって効かなかったんだから、そこは間違い無い筈だ。
それに、ある程度の強度のある防護服辺り、具体的には皇神兵の標準装備で容易く防げる為、直接的な戦闘で役に立つかは微妙な所だと私は思う。
まだまだあの特殊弾頭は仕様の穴が多そうだけど、あれはあくまで犯罪者捕縛用なので、これで良いのかもしれないが。
まあ取り合えず、弱気なエリーゼもこの様子を見て投降してくれたからこれで任務は完了だ。
後は今日の戦闘等で得られた稼働データをロボット兵器開発部門の人達に渡すだけ。
……思えば今日は、本当に長い一日だったなぁ。
エリーゼは多分今回の件で紫電の管轄下に戻るのは間違いないし、明日からは色々な意味で忙しくなりそうだ。
「それじゃあ任務お疲れ様、フェムト。後の事はボクに任せて君は戻ってくれ。明日からは多分、忙しくなりそうだからね」
『了解だよ紫電。エリーゼ達の事、よろしく頼むよ』
「大丈夫さ。今度こそ、彼女達を好き勝手させるつもりは無いから。……そういう訳だから、もう安心していいからね?」
「は、はい! お手数をお掛けします……」
CLEAR
こうして私はロボット兵器開発部門の人達にデータの提出とリトルマンティスの返却を行い、自分の部屋に戻り、その部屋にあった鏡で、今の私の姿を改めて眺めた。
その姿は私の見た目と願望を反映したのが理由なのだろう。
アーマー何て言う物は無く、何故か
それでいて従来の防護服よりもずっと頑丈に出来ているし、機能面も衛生的だったり、パワーアシストだったり、普段着みたいに脱げたりするのでとても便利なのだ。
その上宝剣開放許可も事実上制限が無い為、最近ではこれがもう普段着になりつつある。
実際便利なんだから仕方がないし、何よりもリトルがなるべく普段こうしていて欲しいと強請るのが理由なのだけれど。
とは言え、流石にお風呂に入る時や寝る時はどうしようもない。
そういう訳で、今から私はお風呂に入るので変身現象を解除し、リトルを元の宝剣の姿へと戻す。
そして私は、宝剣の姿となったリトルに対して何時もの様に
「じゃあ私はお風呂に入るから、一緒に入ろうか」
「うん。
そう、
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
〇第七波動【
ペンダント型の宝剣や生きた宝剣があるって言うんだから、ヒューマノイド型の宝剣もあってもいいよね! と言う理由で出来た模造設定によって誕生した宝剣。
少女型なのはリトル本人の性別の申告もあるけれど、それ以上に宝剣開発部門が別部門の人達を巻き込んで頑張り過ぎた結果、こうなった。