ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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サイドストーリー





「こちらGV。フェザーへ、任務完了しました」

 今日の仕事を終えて帰宅した僕は、依頼人に任務完了の報告を入れる。

 あの出来事から半年、私設武装組織(レジスタンスグループ)フェザーを辞めてフリーの傭兵と言う名の何でも屋のような事をするようになった。

 最初の頃は戸惑いも苦労する事もあったけど、今のこの生活にもそれなりに板に付いて来たと言う実感を持ちつつある。

 そのお陰か、たった半年ではあるけれどこの隠れ家にも愛着が出来ており、ここがボクの新たな居場所であると言う感覚すら感じていた。

《お疲れ様、GV。今日も大変だったわね。……ねぇ、GV? 結局の所、貴方が受ける依頼って殆どうち(フェザー)からの物なんだし…また戻って来る気は無いの?》

「フェザーからの依頼は実入りがいいから受けているだけですよ。あの時、アシモフが言っていた通りです。そこ(フェザー)にシアンの居場所は無い。彼女には、()()が必要だと思うんです。ボクにとっての【アシモフ】や【モニカ】さんに【ジーノ】達がそうだった様に。だから、今は彼女に付いていてあげたいと思うんです」

《……はぁ、分かったわ。ごちそうさま。シアンちゃんによろしくね》

「ごちそうさまって……別にそういう訳じゃ」

《まあそれは置いといて……真面目な話に戻すわよ。GV、分かってると思うけど最近皇神兵の装備が変化しつつある事、気が付いているわよね?》


 そう、この半年の間に皇神兵の装備に様々な変化が起きており、その間フェザーは徐々にではあるけれど劣勢に立たされる事が増え、ボク以外のミッション達成率も緩やかに減少傾向にある。

 例えば、火炎放射器を持つ皇神兵。

 明らかに放出される炎の強さと射程が増しており、間合いが取りにくくなっている。

 そして何よりも特徴的で衝撃的だったのが、その火炎放射器から第七波動(セブンス)反応を検知した事であった。

 そして、これ等は他の皇神兵にも同じ事が言え、エネルギー砲の射程が伸びていたり、投擲の射程が伸びていたりと、明らかに皇神兵は第七波動を戦力として利用し、力を付けている。

 ただ、まだそういった装備が行き渡っておらず、数が少ないのが救いと言えば救いなのだけれど。

 しかし、時間の経過につれて増えつつあるのはボクも肌で感じている為、楽観的にはなれない。

 しかも最近、同じ第七波動を運用する規格化された皇神兵まで出てきた話もある。

 その戦力は突発的にその部隊と衝突したフェザー隊員達が、ミッションの達成よりも撤退を余儀なくされる程であったのだと言う。


《GV、貴方ならこの位どうって事は無いと思うけど……万が一何かあったらシアンちゃんが悲しむから……だから気を付けてね》

「了解です、モニカさん」


 モニカさんとの通信が途切れ、ボクは彼女の忠告を心に留めながら隠れ家の扉を開き、シアンの元へと向かう。


「あ、おかえりなさい、GV。お仕事お疲れ様。はい、これどうぞ」

「これは……コーヒー?」

「うん。ネットで調べて入れて見たんだけど……どうかな? 一応味見もしてみたんだけど」


 コーヒーその物の原液は濃かったけど、それをミルクと砂糖を入れて補っている為、温かくて少し甘い、疲れも取れる何処かホッとする気持ちになる味であった。

 シアンはこう言った事は詳しく無いと思っていたけど、どうやらまだ向こう(皇神)に居た頃に、ネット検索等のやり方を教えてもらっていたのだそうだ。

 そう、あの時僕とシアンを見逃してくれた皇神の能力者、フェムトによって。

 そのお陰でボクはこうしてシアンからコーヒーを頂く事が出来たと考えれば感謝するべきなのかもしれないが、その事を嬉しそうに話すシアンを見ていると、何やらモヤモヤした気持ちになってしまう。

 この感情が一体何なのかが言葉には出来ないのが、どうにももどかしい。


「……本当は、わたしももっと色々な事が出来たらいいなって思ってるんだけど……」

「シアンは十分にボクの力になってくれているさ。……それに、ボクがミッションを行っている時、調子がいいとモルフォの歌が聞こえてくることがある。そんな時は、必ずボクはシアンの所へ戻るんだって決意する事が出来るんだ」

「GV……」


 こうした他愛の無いシアンとの会話は、ボクの戦いで疲れた心を癒してくれる。

 そんな風に思いながら話を進めている内に、突然モルフォが現れる。

 モルフォはシアンの第七波動、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の化身で、こうして勝手に出てくる事が良くあるのだ。

 そんな彼女はシアンの分身の様な物なのだけれど、明るくて自由奔放なモルフォと大人しく、しっかりしているシアンの二人の関係は、仲の良い姉妹を思わせる。


『フフ……アタシ達はいつもGVの事を想っているから……。それが貴方に伝わっているのよ。後、どうにもフェムトが言うには雷を操る能力とアタシ達の力の相性って物凄くいいみたいなの。まるで相思相愛みたいにね』

「そ、相思相愛って……。もうっ! あんまり恥ずかしい事言わないで引っ込んでてよ!」

『はいはい…じゃあまた……っ! GV!!』

「モルフォ? ……GV! 大変だよ!!」

「どうしたの? シアン、モルフォ?」


 ボクがそう尋ねようとした時、扉から呼び鈴が鳴った。

 ……二人のこの反応、もしかしてこの場所が皇神にバレたのか?

 その可能性を考慮に入れつつ、ボクは装備を確認しつつ扉に付いたモニターを経由して鳴らした人が誰なのかを確認する。

 その画面に映っていた人物、それはあの時の見慣れない戦車に乗っていた人物であり、ボク達の事を見逃してくれた()()

 その少年の名前はフェムト。

 ボクの蒼き雷霆(アームドブルー)と似た能力を持つ、電流を操る能力者の姿があった。

 その姿を見てボクは、この生活が終わってしまうのではないかと言う危機感による動揺を胸に仕舞い、何が起きてもいい様に気を引き締め、扉を開けた。






第八話 蒼き雷霆(アームドブルー)との会話、前哨戦

 

 

 

 

 良かった。

 

 あの時あった頃の彼ならば扉越しの不意打ちなんてしないと信じていたので、こうして堂々とお邪魔する事にしたのだけれど、上手くいったみたいだ。

 

 一先ず、第一関門は突破出来た。

 

 実はシアンの行方は三ヵ月位で把握する事が出来ていたんだけど、その時のシアンの状態を知り、私は頭を抱える事となったのだ。

 

 そう、彼女は学校に通っていた。

 

 それもご丁寧に何重にも偽装情報を気が付かれない様に重ねる事で。

 

 しかも、あのガンヴォルトも一緒にだ。

 

 学年は流石に違うみたいだけど、そんな事は如何でも良かった。

 

 何しろ、ここまで巧妙だと下手に手が出せないのだ。

 

 シアンは最終的に、歌姫(ディーヴァ)プロジェクトが終わり次第学校に通える位の自由を与えるつもりであったのだから。

 

 それなのに、私達の勝手な都合で無理矢理連れ出してしまったら、彼女の経歴に傷がつくのは避けられず、その後に学校生活が送れるようになっても、後ろめたい事を噂されるのは避けられない。

 

 そして、その噂が原因で彼女が狙われたら目も当てられないのだ。

 

 それを何とか出来る様に、歌姫プロジェクトの調整を週に一度程度に収められるように四苦八苦する事になったけど、そのお陰で冗長(じょうちょう)性が飛躍的に向上したので、悪い事ばかりでは無かったのが不幸中の幸いであったのだけれど。

 

 そういう訳であの計画は、紫電の原案ではシアンが居ないと成り立たない物であったのだが、第七波動の正体が判明した今、彼女の持つ能力因子の一部だけでも十分に出来る様になっているのだ。

 

 それに、洗脳して戦力と言う案も変更されて、従来のソナー機能に加えて能力封印のみに変更されている。

 

 これは戦力確保の手段が別に確立しつつあったからだ。

 

 そう、()()()使()()()()()と言う可能性に行きついた事で。

 

 つまり、第七波動達を本格的に実用可能な軍事転用と、戦力の規格統一が出来る可能性が出てきたのだ。

 

 その原理は能力因子が込められた宝剣に生体承認機能を持たせ、それに該当した人に力を貸すと言う形で変身現象(アームドフェノメン)を介さずに運用すると言う物。

 

 その試作タイプとして、専用の小さな宝剣を従来の装備に埋め込む事で強化すると言う形で進んでいる。

 

 例えば、火炎放射器に爆炎(エクスプロージョン)の能力因子の一部が込められた小さな宝剣を仕込んで効果を引き上げたり、エネルギー砲に青き交流(リトルパルサー)を同様の方法で仕込んだりと様々だ。

 

 そうなると当然問題になるのが、彼らに対してこの様な扱いをしてもいいのかと言う疑問が発生する事だ。

 

 その問題について彼らに直接訪ねてみた所、どう言う形であれ増える事が出来るのなら歓迎すると言う回答をリトル経由で皇神に所属している第七波動達から聞く事が出来た。

 

 これは恐らく、産めよ増やせよと言う生物的本能が理由だろう。

 

 彼らの本体である能力因子その物の培養は既に確立された方法である為、群体生物である彼らからすれば、何もせずとも安全に増えることが出来る為、結果として私達皇神と第七波動達からすれば両得なのだ。

 

 そしてこの事は、当然私達人間だけでは無く、私達が所属している第七波動達全員も含めて話し合われて決めた事だ。

 

 先ず話を聞いてもらうには相応の力を付ける必要と、彼らが人間と言う種族その物に敵意は無いという事を知ってもらう必要がある。

 

 力を付ける為に誰でも使える宝剣を、そして敵意が無い事を知ってもらう為に歌姫プロジェクトを通す事で。

 

 元より彼らは人間を傷付けたい訳では無く、ただ生きたいだけなのだ。

 

 だからこそ、今の時代の能力者と無能力者の争いは、彼らからしても損所か自身の生命を脅かす争いに他ならない為、こうして私達に力を貸してくれている。

 

 そして、この事を知った皇神グループの紫電派の関係者も、この事に対して未来に希望を持つことが出来る様になったと、目を輝かせて仕事に打ち込んでいる。

 

 そう、もう彼らは人体実験等と言う非人道的な行為をしなくて済むようになったのだ。

 

 だけど、それはそれとして別の問題がある。

 

 それは国内に潜入しているフェザーの連中だ。

 

 彼らの存在のお陰で、どうにも能力者は危ないと言うイメージが拭えないし、実際奴らのお陰で歌姫プロジェクトが必要になった側面もある。

 

 その中で特に厄介なのが、今はフェザーをやめて傭兵になっているらしいガンヴォルトの存在。

 

 それを何とかする為に、私はこうして足を運んできたのだ。

 

 彼を説得し、紫電の協力者になってもらう為に。

 

 

「とりあえずここで話すのもなんですから、上がってもいいですか?」

 

「…………」

 

「まあ、やっぱり警戒しますよね。予め言っておきますが、私は貴方と話をする為にここに来ました。もう分かってると思いますけど、既にこの場所は皇神に把握されています。そして、()()()()()()()()()も例外無く……ね。……ちなみに、この隠れ家は四人の宝剣持ちの能力者に囲まれています」

 

「……僕はもう、フェザーをやめている」

 

「知っています。ですが、私達はこうして貴方達の事を知っているのに、逆に貴方が状況を何も知らない状態で話し合おうだなんてフェアじゃない。そう言うのが嫌いな性格なんだって、あの時のやり取りで何となく分かりますから。だから如何か、この話し合いに応じて欲しい」

 

「……妙な事は、どうかしないで欲しい」

 

「分かっています。私も貴方と争うなんて絶対に嫌ですから」

 

 

 そうして私はこの家に上がり、その中にあったリビングにあるテーブルにて、ガンヴォルトとシアンの二人と対面する様に座り、対峙する事となった。

 

 ……シアンの様子を見る限り、彼に良くしてもらっている様だ。

 

 それに何所と無く、二人の間に流れる雰囲気と言う物があの時と違う感じがする。

 

 これは……デイトナ、君の恋は叶わないかもしれない。

 

 あの時は気にしては居なかったけど、ガンヴォルトは俗に言う「イケメン」と言う奴だ。

 

 背も私と比べて高いし、性格も実に誠実である事がこれまでの会話で分かっている。

 

 それに、さり気無く敵対している筈の私に飲み物まで用意してくれると言う気配りも出来ており、男として色々と負けている感をヒシヒシと感じるのだ。

 

 まあそれが分かった事で、益々彼が根っからの善人である事が分ったのは朗報なので、それはそれでいいのだけれど。

 

 

「さて、何から話しましょうか。正直、こうして貴方と対面すると何を話したらいいか分からなくなってしまいますね。……先ずは自己紹介をしましょう。私は貴方の事を知っている以上、先ずはこれを話さないとフェア所じゃないからね。……私の名前はフェムト。皇神に所属する電流を操る青き交流(リトルパルサー)の能力者です。改めて、よろしくお願いします」

 

「……ボクも改めて名乗るよ。ボクはガンヴォルト。嘗てフェザーに所属していた、蒼き雷霆の能力者だ。こちらこそ、よろしく」

 

 

 そうして始まった会話なのだが、それは少しの緊張感を含みながらも、何処か穏やかな物であった。

 

 他愛の無い日常の会話から始まり、シアンが最近やらかした事を話したり、皇神はこんな商品を流行らせようとしている裏話等の、互いを知る為のコミュニケーションは静かに、そして確実に進んだ。

 

 ただ、そうして私とガンヴォルトが仲良くなるにつれて先程からシアンによる冷たい視線が強くなるのを感じていたので、折角の機会なのでそれを尋ねる事にした。

 

 

「そう言えばシアン。私がガンヴォルトと話すにつれて視線が冷たくなってる気がするんだけど…」

 

「別にー、気のせいなんじゃないですかー?」

 

「……ねえガンヴォルト? シアンが私にあんな風にすっとぼけた態度を取るの初めてなんだけど、何か心当たり無い? 正直ちょっと辛い」

 

「うーん……ボクには良く分からないな。こういう時、モルフォが出て来てくれたら助かるんだけど」

 

 

 そうガンヴォルトが話した途端、彼女からモルフォが現れた。

 

 

『流石にもうこれ以上はフェムトが可哀そうよね。いいわよ。シアンがどうしてフェムトにそんな態度取ってるか教えてあげるわ』

 

「ちょ……ちょっと待ってモルフォ!」

 

『いい? シアンはね、フェムトの事を女の子と勘違いしてるの。本当は男の人なのにね♪』

 

「え……ちょっとモルフォ! それってどう言う事!? 私、そんな事聞いてないんだけど!!」

 

『何も聞かなかったシアンが悪いのよ? ただ、流石にこれが切欠でGVに嫌われるなんて嫌だし、この際話す事にしたのよ。って言うか、アタシが知ってるんだからシアンだって知ってる筈でしょうに。大方、聞き流して記憶の奥底に沈んじゃったって所かしら?』

 

「……まあ、誤解を招くような外見をしている自覚はありますので、私がこの事に文句を言う資格は無いのですが。まあ、誤解が解けたようで良かったです」

 

「うぅ~~~……」

 

「あはは……それにしても、どうしてその様(巫女服に白衣)な恰好を?」

 

「ええ、これは宝剣を開放した際のアーマーの様な物で、私の願望や見た目が元に形になっているんですよ。私の憧れる研究者から白衣が、そして、見た目が理由で巫女服がと言った感じで……。何しろ私は能力を利用して後方における情報処理を担当していますし、戦闘能力は私単独ではからっきしなので常時宝剣の開放が出来るんです。それこそ、この姿を解除するのはお風呂に入る時や寝る時くらいですよ」

 

「なるほど……じゃあ、髪がそんなに長いのは?」

 

「それはガンヴォルトと同じ理由だと思います。髪を切ったらただでさえ少ない出力が落ちたので、こうして髪を伸ばし続けているんですよ。他にも、髪飾りに蓄電機能持たせたりとか、髪が痛まない様な手入れだとか」

 

「あぁ~~……。分かります。ボクのコレ(テールプラグ)もそうなんですよ。……という事は、肌が乾燥したりも?」

 

「ええ、お陰で肌の乾燥にも気を配るようになってしまって…。ただでさえ低身長なのに、益々女の子らしい外見になってしまっているのを自覚してるんですよ……」

 

「それに関しては、ボクも他人事では無いですよ。時折潜入任務で女装を勧められそうになったりしますし……」

 

『雷関係の能力者って、突き詰めると女の人みたいに色々と手入れをする必要があるのねぇ……』

 

「強かったり便利だったりしても、手入れは色々と大変なんだね、モルフォ」

 

 

 シアンの誤解が解けた事が切欠で、私はガンヴォルトと上手く打ち解けることが出来た様だ。

 

 やっぱりこうして見ると、彼にはやはりテロリスト等辞めて欲しいと言う気持ちがより強く感じるようになった。

 

 お陰で、電子の謡精が()()()()と言うマイルドな表現をゴリ押しした甲斐があったと言う物だ。

 

 ただ、それでも世間における希望が攫われたと言うのは痛い。

 

 だからこそ、そろそろモルフォに復活して貰わないと皇神の信用問題にも関わる。

 

 さあ、ここからはいよいよ本題に踏み込もう。

 

 ガンヴォルトの引き抜き、そしてあわよくばフェザーを取り込んで、私達の本当の計画、皇神の乗っ取りに加担してもらう為に。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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